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大阪・南森町「LONG WALK COFFEE」。良質な音楽と共に目覚めのコーヒーが飲めるお店
大阪・南森町「LONG WALK COFFEE」。良質な音楽と共に目覚めのコーヒーが飲めるお店

大阪・南森町「LONG WALK COFFEE」。良質な音楽と共に目覚めのコーヒーが飲めるお店

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大阪天満宮や天神橋筋商店街を擁する、下町感満載の南森町エリア。歴史ある金融の町としていまも発展を続ける北浜エリア。それらのちょうど間に位置するビルの1階に、モーニングやランチ、ちょっとした休憩まで、さまざまなシーンで活躍する軽やかな喫茶店「LONG WALK COFFEE」があります。
その特徴はなんと言っても店内に流れるグッドミュージック!音楽好きはもちろん、そこまで詳しくないという人でも素晴らしい時間を過ごせること請け合いです。 店主の愛知アンディー有さんに、お店ができるまで、そしてこれまでの約8年間についてお話を伺いました。

「音楽をレコードで大切にかけるお店」になるまで

―真新しくはないけど清潔感があり、きれいな調度品やご趣味のものも溢れていてとても素敵なお店ですね。開店はいつのことだったのですか?

アンディーさん:「2016年の2月の開店で、物件自体は32年ほど営業されていた喫茶店の居抜きです」

―窓も大きくて気持ちがいいです。アンディーさんご自身、南森町に接点があったんですか?

アンディーさん:「ほとんどありませんでした。物件を探すまであまり気にしたこともなかったですし(笑)」

―そのなかでどうして南森町が候補になったのでしょう?

アンディーさん:「お店をやるうえで、大きな駅を1駅、2駅くらい外したところがいいなと思っていて、南森町に限らず、天満橋、谷町六丁目、中津も探しました。ここに決めたのは、レコードがかけられる環境、かつひとりで回せるくらいの規模だったからです」

―物件が決め手だったということですね。

ジム・ジャームッシュ監督作『ミステリー・トレイン』のオリジナルポスターはお客さんからのプレゼント
ジム・ジャームッシュ監督作『ミステリー・トレイン』のオリジナルポスターはお客さんからのプレゼント

アンディーさん:「そうですね。あとは自宅のある豊中からのアクセスの面も良いなと思って。いまは違うんですけど前はバイクで来ていて、高速に乗れば豊中からもすぐです」

―コーヒーはずっとやられていたのですか?

アンディーさん:「やっていたといってもアルバイト先で教えてもらったり、家で淹れたりというくらいです。アルバイトで生計を立てていた時期のほとんどはカフェや喫茶店で過ごしていたので、身近ではありました」

―独立を前提にした修業という意味合いでやられていたのでしょうか?

アンディーさん:「いえ、将来的に独立するという野心があったわけではなく、賄いがつくからです(笑)。ずっとバンド活動もやりながら、かつライブハウスでのアルバイトとの掛け持ちでしたし。師匠みたいな方もいないので、いわゆる“コーヒー道”は通ってきていないと思います」

―そうなんですね。では、ご自身でお店をやろうと思ったきっかけは?

アンディーさん:「子どもができたので、ちゃんと勤め人になろうと思って働き始めたんですけど、あまりにも向いていなくて辞めてしまいました。だからもう自分でお店をやるかって(笑)」

現在店内には400~500枚のレコードが。売ったものを含めたら2,000枚はくだらないとのこと。時にはお客さんとレコードをやりとりすることもあるそう
現在店内には400~500枚のレコードが。売ったものを含めたら2,000枚はくだらないとのこと。時にはお客さんとレコードをやりとりすることもあるそう

―ロックの魂を感じます(笑)。でも例えば、それまでの音楽活動の延長線上でロックに特化したレコード屋さんや、あるいは飲食店と言ってもより幅広い選択肢があったと思います。今のようにジャズレコードの流れる喫茶店にしたのはなぜですか?

アンディーさん:「2年間だけ東京に住んでいたのですが、そのときに西荻窪にある『JUHA(ユハ)』というお店に出合ったのが、大きなきっかけになっています。レコードで音楽をかけてくれるお店です。それまではiPodに曲を入れたり、CDRにコピーして音楽を聴いていたんですけど、そこでレコードに目覚めました。すると、自分のルーツにあるロック以外、それこそジャズにも目が向くようになりました。少しずつジャズの良さがわかるようになってから『JUHA』の感じがかっこいいなって強く思うようになって、自分も似たようなお店をやろうと。あとは昔からカフェや喫茶店に行くことが好きだったので、業態は自然とこうなりました」

―「JUHA」さん、気になります!

アンディーさん:「アキ・カウリスマキ監督の映画『白い花びら』の原題『JUHA』から名前を取られています。店主の方はもともとバンド出身だそうで、ドクターマーチンに細めのデニムにボーダーシャツみたいな、見た目もかなりロッキンな方です。後ろにはローリング・ストーンズのレコードが置いてあるんですけど、店内にはジャズがバン!ってかかっていてかっこいいんですよね」

ジャズ喫茶、コーヒー専門店にあらず

―ジャズが流れる喫茶店と聞くと、ちょっとストイックな雰囲気で入るのに勇気がいるお店も多い印象です。でも「LONG WALK COFFEE」さんはもっといろんなお客さんに開かれているように見受けられます。

アンディーさん:「僕自身はいわゆるジャズ喫茶も好きなんですが、ここにはジャズに詳しくない方や、コーヒーを飲めないお客さんにも来てほしいと思っています。そういう意味では間口が広いかもしれません」

―実際、お客さんはどんな方が来られますか?

アンディーさん:「かなりバラバラですね。Instagramの写真を見て来てくれる若い方、近くのママさんたち、音楽が好きな方、あとは単純にカフェとして気に入って来てくれるお客さんもいらっしゃいます」

―お店として軽やかですね。

アンディーさん:「音楽が好きな人だけが集まるお店にしたくなかったんです。なのでジャズ喫茶ではなく『音楽をレコードでかけるお店』と言うようにしています。僕が好きでやっていることなので、ママさんたちが井戸端会議をしてくれても、お子さんと来てもらっても、席で友だちと話してもらってもまったく構いません。でも音楽はお店にとって欠かすことのできない大事な要素なので、本当に音楽が好きな人にもちゃんと喜んでもらえるような良い塩梅を目指しています」

―いろいろなお客さんが来るからこそのご苦労はありますか?

アンディーさん:「今まさに言ったように、うちにとって音楽は欠かせません。そのことを理解してくださっているお客さんも多いのですが、時々、音量を下げてほしいと言われることがあります。でもそれは嫌なんですよ(笑)。音楽がかかっているお店だというのは入ってきたらすぐわかります。だからここじゃ話せないなと思われたら別のお店に行ってもらってもいいですし、こちらがお断りする権利もあると思うんです。とはいえ、レコードは盤の状態によって1枚ずつ音量も変わるので、自分でもさすがに大きすぎると思ったり、赤ちゃんが寝ていることもあるので、ケースバイケースで調整はもちろんしますよ」

―いろいろな方に開かれているなかでも、“レコードで音楽をかけるお店”という芯はブレないということですね。もうひとつ、お店の内装も気軽に入店しやすい要素なのかなと感じました。

店内の本は音楽関係がアンディーさんの、小説の多くが奥様の趣味。時々お母さんの持参した本もあるのがチャーミング
店内の本は音楽関係がアンディーさんの、小説の多くが奥様の趣味。時々お母さんの持参した本もあるのがチャーミング

アンディーさん:「妻やオカンの趣味が強めに出た結果です(笑)」

―お母さん!?

アンディーさん:「2人目の子どもが産まれたタイミングから、日曜と祝日だけ手伝ってもらっているんですよ。そしたら『もっとこうしたほうがよくなる』って、例えば、僕はほとんど読まない婦人誌の年間購読をさせられていますし、植物を増やしたりとか。結果的に喫茶感が強くなって入りやすくなったのかもしれません。『もうええって!』って感じですが、ほとんどタダ働きで手伝ってもらっているし、実際お客さんの中にオカンのファンもいるんですよ(笑)」

―すごく素敵ですね!

アンディーさん:「僕は父がイギリス人で母が日本人のハーフなのですが、当時外国人と結婚するくらいなので、ファンキー系というか……。金髪の刈り上げですし(笑)」

モーニングをグッドミュージックと共に

―では、お食事や飲み物についても教えてください。コーヒーはどんなテイストでしょうか?

アンディーさん:「基本的には深煎りです。マイルドブレンド、ビターブレンド、月替わりのマンスリーブレンドの3種類をご用意しています。モーニングセットはご指定がなければマイルドブレンドで、値段は変わりますが別のブレンドに変更もできます」

―お豆はここで焙煎されているんですか?

アンディーさん:「ケーキや料理の仕込みに関しては全部僕ひとりでやっているのですが、唯一焙煎だけは豊中の『チッポグラフィア』さんにお願いしています。焙煎師として有名な中川ワニさんのお弟子さんがやっていて、ワニさんのコーヒー教室の会場にもなっているお店さんなのですが、家も近いし好きでよく通っていたんですよ」

―ローカルな繋がりでいいですね!抽出方法も豊富です。

アンディーさん:「基本はペーパーですが、エアロプレス、クレバー、ネルのご用意もあるので、お代わりされるときに同じ豆でも別の抽出方法を勧めることもあります。コーヒー以外にも紅茶やジュース類のご用意もあるのですが、以前テレビの取材を受けたときに出演者の方がチャイを頼んでくれた影響で、一時期チャイばかり注文していただいて大変でした(笑)。一杯だてなので」

「ハムチーズトースト」の「サラダ&ヨーグルトセット」(830円)。カップとソーサーはイギリスの陶磁器メーカー「Poole(プール)」でスタイリッシュ
「ハムチーズトースト」の「サラダ&ヨーグルトセット」(830円)。カップとソーサーはイギリスの陶磁器メーカー「Poole(プール)」でスタイリッシュ

―モーニングの時間帯はどんなお客さんが来られますか?

アンディーさん:「平日の8時から8時半にほぼ毎日来てくれる常連さんが5人いるんですけど、そこから10時半までは一見さんがポロポロという感じで、静かな時間が流れています。一見さんといっても職場が近いというわけでもなさそうで、たまたま休日だったから目指してきて下さる方が多い印象です」

―お客さんとはけっこうお話しされますか?

アンディーさん:「話すのが好きなので、常連さんとは他愛のない世間話から音楽の話までよく喋ります。でも話しかけられたくないお客さんもいっぱいいると思うので、基本的には自分からは話しかけないようにしています。音楽が好きなお客さんだとお会計の際に『あの曲めっちゃよかったわ』ってひと声かけてくれたり、嬉しいコミュニケーションもありますよ」

―ちなみに朝にかける定番のレコードはありますか?

アンディーさん:「迷うなぁ。朝に調子いいのは、Chet Bakerの『TWILIGHT ENNUI』ですかね。チェットの晩年の作品で枯れ枯れなんですけど、初期のウエストコーストジャズらしい雰囲気より全然好きなんですよ。でもそのときの気分や天気も選曲に影響します。雨のときはなんとなくしっとりしたピアノソロが聴きたいなとか」

―毎日のように通っても、そのときによってかかっている音楽が違っていて、来るたびに気持ち良い時間が過ごせそうです。最後に今後の展望を教えてください。

アンディーさん:「正直言うとほんとに欲はなくて、潰れずに長く続けていけたらいいなと思っています。まだ子どもが小さいのですぐには難しいですが、妻がここに戻って来てっていう展開もあるかもしれないです」



◆今回取材したお店
「LONG WALK COFFEE」
住所:大阪府大阪市北区天神西町8-19
電話:無し
営業時間:平日 8:00~19:00(モーニング 8:00~10:30 / ランチ 11:30~14:00)
     土日祝 9:30~18:00(モーニング 9:30~10:45 / ランチ 11:30~14:00)
定休日:木曜日
Mail:longwalkcoffee@gmail.com
Instagram:@longwalkcoffee
X:@littlewood_info

大阪・南森町エリア 下町ながら、趣味性で繋がる天満橋、北浜とのコミュニティも!

今回紹介した「LONG WALK COFFEE」はOsaka Metro堺筋線、谷町線・南森町駅から徒歩5分弱に立地します。アンディーさんがお店を始めた頃は周囲に他の飲食店などはあまりなかったそうですが、ここ最近は徐々に増え始め、北浜からお店伝えに歩いてくるお客さんも多いとのこと。また、天満橋や北浜とは距離が近しいだけでなく、音楽や映画などの趣味的な側面を同じくしたコミュニティが生まれたとも教えてくれました。
南森町駅の平均家賃は6.81万円。梅田までひと駅と好立地ながら、生活の物価は比較的抑え目で住みやすそうです。「LONG WALK COFFEE」で音楽談議をしていたら、いつの間にか別のカルチャーの世界にも門が開く、なんてこともあるかもしれません。

取材・文:石川宝 写真:和田悠馬

IN/SECTS編集部

プロフィール:大阪という物理的なローカリティと、感性や共感といった同時代性的ローカリティを軸に、ローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行。現在、大阪の京町堀を拠点に、「IN/SECTS」のほか、書籍の出版も行う。年に一度、イラストレーターや飲食店、作家、アーティストと、アジアの出版社を集めたイベント「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」を、北加賀屋にて開催。LIFE LISTでは、個の視点を通して見えてくる街や人の姿を紹介する。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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