JR大阪環状線の駅を起点に、ライターのスズキナオさんとぶらぶらと散策して気になるお店行ってみるこの連載。駅も残すところ3分の1となりました。そして、今回、13駅目に登場するのが桜ノ宮駅です。
駅近くには町名の由来点される櫻宮神社もあり、歴史も深い。そんな桜ノ宮は、住宅地としても整備されているようですが、少し足を延ばせば、新しいお店などもちらほらとできている様子。さて、今回はどのようなお店に出会ったか。ご期待ください。
スズキナオさんによる人気連載が書籍化! 加筆修正を大幅に行ない、「大阪環状線」1周の降りて歩いて飲んでみるが楽しめます。
駅のすぐそばを流れる大川沿いに桜並木が続く
JR大阪環状線の天満駅と京橋駅に挟まれた桜ノ宮駅の駅前は、両隣の二つの駅に比べるとだいぶ静かな雰囲気です。駅の西口からほど近い位置に大川が流れており、川沿いの遊歩道には桜並木が長く続きます。そのため、桜が咲く季節には花見客で賑わいます。また、天神祭りの花火がよく見えるスポットとしても有名で、その当日は大変な混雑ぶりです。
しかし、春と夏の特別な時期をのぞけば特に駅前が混み合うようなことはなく、閑静な住宅地が広がるエリアになっています。とはいえ、駅の南口には本格的なベトナムの味が楽しめる「バインミーウィン」が、北口にはラーメン通の厚い支持を集める「光龍益」があったり、その他にもいくつかの居酒屋や喫茶店、寿司店が点在しています。
桜ノ宮駅から北東方面に10分ほど歩くとOsaka Metroの都島駅があるため、JRと地下鉄が併用でき、交通の便はいいエリアです。キタエリアの繁華街にアクセスしやすい割に、落ち着いた空気が流れる暮らしやすい街といえそうです。
生活に必要なものは都島駅周辺で大抵そろう
都島駅方面へと歩いてきました。大通りに面して多くの飲食店、ドラッグストアやコンビニが並び、さらに北方面に向かえば複数の大型スーパーがあります。フードコートや家電量販店の入った複合商業施設「ベルファ」もそれほど遠くない距離です。
マンションや集合住宅も多く、近くで生活をするために必要なものはたいてい都島駅周辺で手に入りそうです。下校中の小学生たちの姿を眺めつつ細い路地をあちこちに散策して「七曜書房」という古い街の書店で本を買った後、すぐ近くにある大衆酒場「酒の大丸」で一休みすることにしました。
ここは1969(昭和44)年創業の老舗で、BS-TBSの人気番組『吉田類の酒場放浪記』で取り上げられたこともある店です。コの字のカウンター席のほか、テーブル席、座敷席もあり、軽く一杯飲みたい時も、ちょっとした宴会にも利用しやすそうです。
まずはビールから。居酒屋ながら全面禁煙というのも家族連れにやさしい。
「タラきのこあんかけ」と「ほうれん草」のなんとも落ち着く味わいに、ちょっと濃い目のチューハイがぴったりと合い、気持ちがほぐれていくのを感じます。家族連れのお客さんがお店の方と仲良く話している様子を見て、さらに心が和みました。
桜通商店街にポツンとあるメキシコ料理店へ
「酒の大丸」を出て、都島駅近くのアーケード街・桜通商店街へとやってきました。駅から近い好立地なのですが、シャッターを下ろした店が目立つ通りです。とはいえ、惣菜を売る店、鮮魚店、ふとん店など、営業しているお店もちらほらとあります。
奥まで歩き、この商店街の雰囲気の中にあるのがちょっと不思議にも感じられる「カンペチャーノ」というメキシコ料理店に入ってみることにしました。
ジューシーなチキンタコスにピリッと辛い自家製のサルサをかけて頬張りつつ、幼い頃からこの辺りで遊んでいたという店主の後藤治さんのお話を伺うことができました。
豚肉のタコス。オリジナルのマリネ液に漬け込まれた豚肉が美味
鶏肉のタコス。こちらも鶏肉と野菜を炒めた具材がお酒にピッタリ
それによると、後藤さんは商店街の近くに店舗を構える「大阪王将 都島店」の店主として40年以上お仕事をされていたそうです。それが、バックパッカーとして世界を旅していた息子さんがメキシコの文化に魅入られたのをきっかけに、後藤さんご夫婦もメキシコに興味を持ち、メキシコ出身の友人に教わって現地の料理を作るようになったのだとか。
2020年5月に現在の場所でメキシコ料理店を開き、当初は息子さんもお店に立っていたそうですが、その後、息子さんはメキシコの企業に就職することになり、今ではご夫婦二人がお店を引き継ぐ形で営業しています。本格的な味わいが評判を呼び、海外からのお客さんも多いのだとか。
「ブランコ」「レポサド」「アネホ」という、熟成度合いの違うテキーラを飲み比べられるセットがあるというので飲ませていただきました。なるほど、爽快な味わいの「ブランコ」から、樽で2ヶ月以上熟成させた「レポサド」、1年以上熟成させた「アネホ」へと、どんどん香り高く、まろやかな味わいになっていくのが感じられます。
その後も、メキシコの蒸留酒「メスカル」を飲みつつ、そのおつまみに相性抜群の「ワカモレ」をいただき、徐々にほろ酔いになっていくのでした。
商店街のこれからを感じさせる「パンク食堂」
締めの一杯を、同じ桜通商店街に2022年10月にオープンしたダイニング「パンク食堂」で飲んでいくことにします。
木材の風合いを生かした外装・内装が素敵なお店で、自由な発想で作られた多彩なおつまみ料理を、バリエーション豊富なお酒類と一緒に味わうことができます。
「あつあつウナギのポテトサラダ」「薬味まみれの揚げ出し豆腐」「タイ風豚肉パクチーサラダ」と、これはメニューの一部を抜粋しただけですが、それだけでもうこの店でおつまみを注文する楽しさが伝わるはずです。
今回は「大葉のジェノベーゼ風水餃子」を、スパイス焼酎のソーダ割りと合わせつついただきました。モチモチした食感の水餃子に大葉の爽快な香りが鮮やかです。豚足や、パスタのかわりに二八蕎麦を使った「蕎麦パス」もこの店の名物だと聞いたので今度はそれを食べに来たいと思います。
「カンペチャーノ」の後藤さんは、「パンク食堂」をはじめ、この商店街に近年オープンしたお店の方々とも知り合いだそうなのですが、かつては賑わっていたという商店街のことを回想しつつこんな風に語っていました。
「この辺りは市場もあったし映画館もあったし、昔はむちゃくちゃ賑わってたんですよ。それが、高齢化もあって徐々にシャッター街になっていったんです。でも都島は立地もいいし、商店街にもここ1、2年で新しい店が増えてきていますから、『あそこに行ったらなんかある』と思ってもらえる場所になったらええなと。来月にはイタリアンもオープンしますし、これからいい方に変わっていくと思います」
そんなお話を思い出しつつ、桜ノ宮駅~都島周辺の楽しみな今後を想像しながら帰路につきました。
◆今回取材したお店
「酒の大丸」
大阪市都島区都島本通3-25-7
06-6923-1397
15:00~23:00
不定休
「カンペチャーノ」
大阪市都島区都島本通3-9-20
080-4234-2483
火・水・金・土・日 12:00~14:00 18:00~23:00(L.O22:00)
月 ディナー営業のみ18:00〜23:00(L.O22:00)
木曜休
「パンク食堂」
大阪市都島区都島本通3-23-21
18:00~23:00(Lo22:00)
不定休
観光スポットの最寄、桜ノ宮駅
桜ノ宮駅周辺には、マンションも多く大川に沿って南に下るとたくさんの集合住宅が立ち並び、ファミリーを中心に若い世代が多数住む住宅街に出ます。都島方面に向かっても、全国的な多店舗展開のスーパーをはじめ、大阪固有の健康食品を多数取り扱うスーパーなどもあり、意外と見落とされがちなエリア。環状線の駅はもとより、OsakaMetro都島駅も近く、京橋までも徒歩圏内です。公共施設も都島スポーツセンター、毛馬中央公園、桜之宮野球場などもあり、生活はしやすい環境です。