大阪・新町にあるラーメン店「いかれたnoodle Fishtons」。音楽好きなら店名からも分かるようにFishmansを愛する店主が営む店。そんな店主・木下知也さんの元、朝らぁ麺と称して、不定期にて朝の7時からラーメンを提供しています。
「朝からラーメン?」と思うなかれ、同店にはその日しか出合えない特別な麺を求めたくさんのファンが集まります。今回は、朝らぁ麺を企画した理由やお店のこと、ラーメンについて、修行時代からじっくり伺ってみました。
アパレルからラーメン業界に、朝5時から仕込みの修行時代
―2017年12月16日にオープンされて、修行時代を挟んで前職はアパレル業界だったそうですね。
木下さん:「大学卒業後でアパレルに入社して5年半くらい勤めてかららラーメンの道に行きました」
―ラーメンは子どもの頃からお好きで?
木下さん:「アパレルで働きだしてからですね」
―そこからどんどんのめり込んでいったと。
木下さん:「はい」
―ラーメンを好きになっていった理由などありますでしょうか?
木下さん:「そうですね。食べた後は、「もう、いらんな」と思うんですけれど、翌日になると食べたくなるような中毒性があって(笑)」
―(笑)なるほど。それで他にももっと食べてみようという興味が出てきたと。
木下さん:「はい」
―食べるのが好きというのと、作りたいというのは動機が違うように思いますが、作りたいと思ったのはどのようなきっかけがありましたか?
木下さん:「アパレルで働いている当時、一人暮らしで、友達を招いて家で(料理を)作っていて。それを振る舞ったら喜んでもらえて、人に食べてもらう喜びをその時に感じて」
―もてなすっていうことが結構好きだったんでしょうか?
木下さん:「そうですね」
―でも、そこからいきなり修行にとはならなかったとは思うのですが、ラーメン業界に飛び込もうと思った理由はどのようなところに?
木下さん:「服が好きで、アパレルに入ったんですけど、興味の方が服から食の方に移って行って、働いていても、一生懸命にはするんですけど、ラーメンについて考える時間が長くなっていって。それで、あまり良くないなと思って…」
―(笑)なるほど。そして、決断を。最初は右も左もわからない状態ですよね?
木下さん:「そうですね。『麺や輝』というところで修行させてもらって、その『輝』の方針として、新しく入った弟子は仕込みからスタートっていう感じで、まず仕込みを勉強しました。通常、7時から仕込みをするんですけれど、間に合わないので、5時ぐらいからスタート。1週間だけ先輩がついてくれて全部覚えて、後は一人で仕込みをします」
―結構大変ですね。1週間…。割と短いですよね。それは全体の仕込みするんですか?
木下さん:「朝の営業準備まで全てします。スープを濾したり、「げんこつ」っていう骨を叩いて割ったり、卵を仕込んだり、和だしとかも…工程で言うと20個ぐらいあるんですけど」
―それを一人で? その当時新人は木下さんお一人だけで?
木下さん:「僕はラッキーでした(笑)。僕が入った1ヶ月半後に新人が入ってきて、そしたらもう僕は新人じゃなくなるので、仕込みを抜けられました(笑)」
―ものすごくラッキーですね(笑)。
木下さん:「はい。僕の前の人は1年間やられていたので」
―1ヶ月半とはいえずっと仕込みを一人でやるというのは大変だと思います。失敗もされましたか?
木下さん:「そうですね…数え切れないですけど」
―そうですか(笑)どのような?
木下さん:「最初の失敗は料理ではなく、出勤の時に、鍵だけをもらっていて、鍵の開け方を聞いていなくて。セコムが入ってるんで、警報が鳴るんですけど、その解除方法をちゃんと聞いていなくって最終、警察が来ました(笑)」
―その失敗から、いろいろと勉強しながら。でも、やめようと思ったことは一度もなく?
木下さん:「そうですね。気持ち的に、やめようと思ったことは修行時代一度もなかったですね」
修行から1年、少し分かり始めて、また苦労。3年を経て独立へ
―働き始めてどのくらいで、ラーメンについて分かってきた感覚がありましたか?
木下さん:「一年くらいやって、ちょっと分かってきた感じになって。それから『輝』って何店舗かありますが、新店の店長に任命されましたが、また、そこでも大変でした」
―店長というのはラーメンを作るだけではない苦労がありますよね。ちなみに、思い出に残っているエピソードなどは?
木下さん:「『ラーメンダービー』という京都の競馬場でやっている催しに出たことがあって、それをみんなでやったので、結構思い出深いです。出すメニューもさんまの豚骨ラーメンみたいなのにして、メニューの味とかは考えていないですけど。何杯売れたかは覚えていないですけれど、一日1,200杯とかいってました。お店の営業は毎日同じことなので、ほんまは良くないんですけれど、飽きてしまうんですよね。だから、そういう違う環境でできるイベントとかはやっぱり楽しく感じますね」
―働き出して、店長も経験し、徐々に独立が具体的になっていきましたか?
木下さん:「そうですね。最初働いていた店舗は大型ではないんですけれど、客数的に1日200人以上くるお店で、ちょっと個人店とのイメージとは違くて。次に僕が店長をしていたお店は1日100人くらいで、自分のやりたい店とマッチしていました。結局2年間店長をやったんですけど、1年目は失敗の繰り返し。失敗したことを次のもう一年で見直して。スープも春夏秋冬で出方も変わるので、覚えてと」
新町でのオープンと女性の来やすさを重視したお店のつくり方
―独立の際に、どのようなお店にしたいなど希望はありましたか?
木下さん:「ざっくりいうと女性も入りやすいようなお店にしたいなとは思いましたね」
―それに向けて考えたことはどのような?
木下さん:「そうですね。お店の造りとやっぱり味。味的にはそこまで濃厚にしすぎないで女性の方にも食べやすいように。結局、男性だけより女性にも入ってもらえる店にしないと、と」
―確かにそうですね。試作を繰り返して味を決められたのでしょうか?
木下さん:「いや、試作は基本しません。一発勝負です」
―え!すごいですね。
木下さん:「なんか、(試作を)していた時はあるんですけれど、やっぱり上手くいってしまうと、「これぐらいでできるんかな」って思って気を抜いたり、本番の量って全然違うので、結局おんなじようにはできないし。だから、集中して一回勝負でやった方が上手くいくっていう経験から、あんまり試作はしないですね。でも自分の店の調味料でないと難しいです。原料の味を知っているからできます」
―なるほど。このお店を新町で開こうと考えたのには理由があったんでしょうか?
木下さん:「ほぼ馴染みがなくて。僕は吹田出身なんで、あまりこの都会には出てこなくて(笑)もちろんきたことはありますけど、土地勘がめっちゃあったというわけではなく。一応、最初は京都で出店しようかなと思っていたんです。でも、物件がなかなか見つからなくって。大阪に標準を絞ってから、肥後橋と靱公園あたりと、新町辺りでずっと探していて。会社員が多いエリアだとみていたので、価格帯を上げてもきていただける客層だなと」
―価格が許せば、チャレンジングなメニューや食材も割と自由に使えますね。実際オープンしてみていかがでしたか?
木下さん:「そうですね。初めは、お客さんは少ないし、人通りも多いわけではないので、特に夜は厳しい日もありましたね」
―どのくらいからうまくいき始めましたか?
木下さん:「多分3年目ぐらい」
―でも3年目ってもうコロナ禍直前くらいでしょうか?
木下さん:「そうですね。丸2年。ほぼ利益出ていない」
―辛抱の時があったわけですね。でも今では、イベントに出たり、朝のらぁ麺もされて。
木下さん:「朝のイベントは最近で2023年の、最初にやったのが6月ぐらいやと思います」
―現在、そうしてイベントに出向いたりされていますが、これまでと違うところは?
木下さん:「今弟子が2人いるんで、自分が抜けても店は回ります」
―それで、いろんなところに出向いたり。他にはどのような。
木下さん:「Fishmansのボーカルの佐藤さんの命日に立ち飲みをやっていたんですが、周年などでもやっていきたいなと。特にイベントごとをやっていきたい訳ではないんですが、弟子が増えて自分に余裕ができたんで、自分がしたいことをできる時間としての朝だったり、立ち飲みだったりやって行きたいと思います」
新町にある「いかれたnoodle Fishtons」の最寄り駅はOsaka Metro長堀鶴見緑地線の西大橋駅。ここからさらに西に行けば、なにわ筋を挟んで閑静な住宅街、東に行けば、イタリアンやフレンチ、カフェなどのモダンな店のほか、美容室やコーヒーショップなど昼間に混み合う店が多く、夜の飲めるお店もありますが、点在していて賑やかな街というよりも穏やかな大人の街という印象です。とはいえ、新町からは若者の街・アメリカ村、堀江にも徒歩圏内ですので、住み心地は抜群のようにも思います。
平均家賃は7.01万円と大阪市内でも少し高めなのも納得の立地。街中ではあるものの夜は静か。住まいと遊び場を分けたいと人におすすめです。
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◆今回取材したお店
「いかれたnoodle Fishtons」
住所:大阪市西区新町1-25-18
電話:06-6535-9929
営業時間:11:00-15:00 18:00-21:00(L.O.) 金・土曜 22:30(L.O.)
定休日:不定休
Instagram:@fishtons
取材・文 松村貴樹 写真 米田真也