和歌山駅から徒歩10分ほど歩くとたどり着く、発色が鮮やかな緑と水色に彩られたちいさなお店。ここ「メシカ」は、元喫茶店の場所へ2017年に開いたメキシコ料理店です。
オーナーの山口恭子さんは、和歌山出身。東京でさまざまな料理に携わったのち、一番好奇心をくすぐられたのがメキシコ料理だったのそう。東京そして現地のメキシコで、メキシコ料理に触れた山口さんがオープンした「メシカ」は、どのようなお店なのでしょう?どこかメキシコの温かな雰囲気を感じる店内で、山口さんとメキシコ料理の出合いについてお聞きしました。
衝撃的なメキシコ料理との出合い
―ここはもともと喫茶店だったんですね。でもメキシコの雑貨や飾りともすごくマッチしていて素敵です。
山口さん:「そうなんです、意外とマッチしました(笑)。物件を探していた時に『もうすぐ営業を終えるから』と、たまたま見に来た場所で、おばあちゃんが一人でやっている喫茶店だったんですね。営業最終日の次の日から使わせてもらうことになって、『掃除もするし置いてって〜』という感じで、全部置いていってもらって(笑)。サイフォン珈琲の器具など、使えるものはそのまま使わせてもらっています」
―この独特な雰囲気、温かみがあって、メキシコの家庭料理のお店は、もしかしてこんな感じなのかな?と想像が膨らみます。山口さんは、そもそも料理に興味を持ったのはいつ頃なんですか?
山口さん:「高校生の頃ですね。先輩の紹介で、地元の中華料理店でアルバイトをしていたのですが、次々と注文が入り料理を作っていく、そのスピード感が楽しくって。そこから料理という現場に興味を持つようになりました」
―それはまた、独特なきっかけですね。そこから、料理の世界へ?
山口さん:「はい。カフェなどをはじめいくつかの飲食店で働くようになって。経験を積んだ後、デリカテッセンのセントラルキッチンでレシピ開発に携わることになったんです。その時に出合ったのが、メキシコ料理でした」
―そうだったんですね。
山口さん:「レシピを開発するために、いろいろなレシピ本を手に取ったのですが、『メキシコ料理大全』という本が衝撃的で」
―どんなところが、でしょう?
山口さん:「唐辛子の使い方が、衝撃的だったんです。メキシコ料理は約100種類唐辛子があるといわれていて、日本のように炒めるだけでなく、昆布のように水に浸して唐辛子をふやかして、出汁をとったりするんです」
―そうなんですね!?それは、想像していませんでした。
山口さん:「でしょう?日本でメキシコ料理というと、ストリートフードのイメージが強く、濃い味付けの料理のように思っていたのですが、それも全然違って。出汁が効いたもっと奥行きのある味わいのものや、優しい味わいの料理がたくさんあったんですね。そこから『メキシコ料理大全』の著者のお店『サルシータ』で働かせてもらうことに。知れば知るほど、メキシコ料理が大好きになっていきました」
昔から伝わる料理の数々を丁寧に受け継ぐメキシコ料理
―メキシコ料理のどんなところに、強く惹かれますか?
山口さん:「メキシコ料理は、はしょってしまってもいいような工程がたくさんあって、それをわざわざするんです。そういうところがかわいいなって(笑)」
―例えばどんなところですか?
山口さん:「例えば『ポソレ』というスープがあるのですが、材料のコーンの発芽部分を一つひとつとることで、茹でた時にポップコーンのように弾けるんですね。発芽部分を取らなくても美味しいんですが、現地では『弾けているポソレがいいポソレ』と言われているので、丁寧に取っていく。そういうマメなところが好きですね」
―なるほど。山口さんは、メキシコへもいかれていますが、実際にいってみてどうでしたか?
山口さん:「レシピは『サルシータ』で学んで知っているものが多いですが、現地で実際どのように食べられているのかを知ることができて、よかったですね。それに、食という視点で言うと、メキシコはすごく活気を感じます。食べることに対して楽しんでお金を使っているように感じる。日曜日なんか、お昼から家族で集まってレストランで2〜3時間かけて食事をするんですよ。警察官だって仕事をしながらタコスやアイスを食べているし、本当に食が身近な国だと感じます。今年は初めて、メキシコのユカタン半島へ足を運びました。この島でしか育たない唐辛子があったり、料理も全然違って興味深かったです。あと、うちの常連さんにメキシコ人の方がいるんですが、その方がちょうど里帰りをされていて、向こうで合流しました(笑)」
―どこの町なんですか?
山口さん:「メキシコシティから100キロほど東の位置にある、プエブラという街です。京都のように歴史地区のある街並みで、料理も街並みも伝統を重んじている雰囲気があって。その方を通して知り合ったおばあちゃんに、料理を教えてもらったりしていました。ユカタン半島では、常連さんの日本人の方とも合流して」
―結構メキシコを訪れている、お客さんがいらっしゃるんですね!
山口さん:「うちに来たのがきっかけで、メキシコに行った方は何人かいますね。うちのお客さんは、いろいろな方がいらして面白いです。旅行好きな方や、昔メキシコに赴任していたと言う方もいたり」
―ちなみに、和歌山にお店を出そうと最初から決めていたんでしょうか?
山口さん:「初めは、暮らしていた東京にするか地元の和歌山にするかで迷うこともありました。でもちょうど、和歌山がメキシコのシナロア州と姉妹都市になって。これも何かの縁だと思って和歌山で開店することにしたんです」
―和歌山に戻ってきて、どうですか?
山口さん:「当時メキシコ料理店もまだなかったのですが、『タコス』以外の料理も知ってもらいたいと、モレ料理などさまざまなメニューを出すことにしました。でも和歌山は年配の方も多いので、オープン当初は理解してもらうのが大変で…。そのうち旅好きの方が来てくれるようになって、そこから広がりができ、県内外からお客さんが来てくれるようになりました。皆さん『メキシコってどういう国?』と興味を持ってくれてうれしいです」
―暮らしという視点では、どうでしょう?
山口さん:「以前和歌山で暮らしていた頃は、何もない街だと思っていたのですが、今はなんでもある街だなと思います。電車で1時間弱で大阪にも出られるし、買い物にも困らない。何より自然がある落ち着いた雰囲気が、東京暮らしを経て戻ってきた自分に合っているなと感じますね。大阪でイベント出店などをした時も、『早く和歌山に帰りたい』と思うくらい好きになりました(笑)。和歌山暮らし、最高やなって思います」
◆今回取材したお店
「メシカ」
住所:和歌山県和歌山市新中通2-37-37
電話:073-488-2868
営業時間:ランチ(日曜のみ)11:00〜14:00(LO)、ディナー18:00〜21:30(LO)
定休日:月曜
Instagram:@ mexica.wakayama
和歌山で、自然と都心の狭間で暮らす
メキシコ料理店「メシカ」の最寄駅は、JR和歌山駅。駅からメシカまでの道のりは、純喫茶や昔からお店も残り、そこに少しずつ新店ができているような変化を感じます。大阪の天王寺までは一本で行けるので、美術館で芸術鑑賞や百貨店で買い物をしたい時なども、交通の便が◎。普段は車や公共交通機関を使って少し行けば、山や海が広がり、暮らしやすい街です。
メキシコと日本の架け橋のような「メシカ」にいくと、美味しい料理だけでなく、旅に興味のある方々に出会えるのも魅力。タコスをはじめとしたメキシコのひと皿と共に、好奇心を湧き立たせてくれる「メシカ」。お腹を満たしてくれるだけでなく、新しい世界を教えてくれるような場が暮らしの中にあることほど、魅力的なことはないでしょう。
家賃平均は4.84万円、3LDKでも相場は9万円台。選択肢が広がる和歌山での暮らしを、お楽しみください。
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◆本記事の担当者
取材・文:小島知世 写真:沖本明