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二つの川が織りなす景観、中之島の街並みを建築家・高岡伸一さんと歩く【大阪まちあるき 第1回】
二つの川が織りなす景観、中之島の街並みを建築家・高岡伸一さんと歩く【大阪まちあるき 第1回】

二つの川が織りなす景観、中之島の街並みを建築家・高岡伸一さんと歩く【大阪まちあるき 第1回】

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毎年秋に開催される「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」、通称「イケフェス大阪」は、大阪市内の現役で使われている100を超える建築を、無料で一斉に公開する日本最大級の建築フェスティバル。開催期間の2日間に、全国から建築マニアが数万人は集まるというこの一大イベントの事務局長を務めるのが、大阪生まれ大阪育ち、現在も大阪在住の建築家・高岡伸一さんです。
レトロな魅力が人気の名建築から、大阪市民に親しまれてきた公共建築、新しい風景をつくる現代建築まで、大阪の「生きた」建築を知り尽くした高岡さんと一緒に、まちあるきを楽しみます。
エリアごとにさまざまな魅力のある大阪のまち。高岡さんとのまちあるき第1回は、中之島・北浜周辺を歩きます。

二つの川にはさまれた大きな中洲、中之島

高岡さん:「大阪は、昔から水の都・水都と呼ばれるくらい川を中心としたまちなんです。まち全体が川にぐるっと囲まれていて、大阪を上から見ると都市に対する水の面積がとても大きくて、それはほかの大都市にはない特徴ですね」

―たくさん橋がありますね。橋を渡ると少しわくわくします。

高岡さん:「川の上は見晴らしがいいですからね。中之島は、堂島川と土佐堀川という二つの川にはさまれた大きな中洲状の場所で、都会のど真ん中なのに空が広くて、川と橋と建物が同時に目に入ってきて、歩いていてとても楽しいんです。川や公園に面したちょっと休憩できるようなカフェも増えてきました。この20年の間に、公園や水辺がどんどん整備されて、きれいになっています。何度も修理や改修をして現役で使い続けられている古い橋や建物もたくさんあるし、これから案内するような、一見すごく古いように見えて実は昔の部材を使って復元されている建築物もあります。来るたびに新しい変化や発見があるので、自然と人が集まってくるのも納得ですよね」

気の遠くなるような手作業で元に戻された、ダイビルの装飾

ダイビル全景
ダイビル全景

―さっそく中之島を歩いてみます。まずは、ダイビル本館へ。下の方はクラシックですが、上を見ると新しいビルにも見えますね。

高岡さん:「もともと大阪ビルヂングという名前で1925年に建てられました。2013年に元の建物を完全に壊して建て替えられたのですが、壊すときに入り口や外側の柱についていたレリーフや外壁のスクラッチ煉瓦を一つずつ丁寧に取り外して、新しいビルの低層部分に付け直しています。入り口の上にある『鷲と少女の像』は彫刻家・大国貞蔵の作品で、それも取り外したものを元の位置に戻しています」

―同じような見た目に再現したのではなくて、元の彫刻や材料を再利用しているんですね。

高岡さん:「そうです。手作業で部材を外して、洗浄して、分類して、また取り付ける、という気の遠くなるようなことをしていますが、そうすることで本物の手触りとか雰囲気とか歴史そのものを残そうとしたのだと思います。今こういうものを新しく作ろうと思っても不可能でしょうね。ビルの左右の大きさは、建て替えのときに少し小さくなっているのですが、外から見える8階分の高さは同じです」

―そう聞くと歴史の重みが伝わってきます。道路から見える煉瓦の建物は、約100年前と同じ景色なんですね。

高岡さん:「当時はまだテナントビル自体が珍しくて、いろいろな会社が入っていたのですが、吹き抜けになっているエントランスホールも外観と同じくらい凝っていて、エレベータガールがいたりして、ここで働いていることが自慢のビルだったと聞いたことがあります。内装も一部は元のタイルや石材を再利用していますし、装飾も再現されています。1、2階にはレストランやカフェが入っているので入ることもできます」

ダイビル足元装飾
ダイビル足元装飾

高岡さん:「柱のレリーフもかなり凝っています。動物や鳥がいたり、人の顔のようなものがあったり、小さな建物のようなものもあるし、壊さないように取り外すのは大変だったと思いますが残ってよかったですね」

日本銀行大阪支店に見る、権威を象徴するような左右対称の古典主義

日本銀行大阪支店
日本銀行大阪支店

―日本銀行大阪支店は、川に沿って建っていますね。

高岡さん:「建物としての正面は東面です。その部分がもともとの旧館本館で、東京の日本銀行本店と同じ辰野金吾が設計しました。辰野金吾といえば赤煉瓦の東京駅が有名ですが、これは東京駅よりも10年ほど前の1903年に完成した、赤煉瓦になる前の辰野建築です。東側から見ると完全に左右対称の古典主義で、いかにも権威がありそうな風貌ですよね」

―先ほどのダイビル本館よりもさらに昔に建てられたんですね。この建物も保存か復元工事がされているのでしょうか。

高岡さん:「1980年に大きな新館が完成して、新館に本体機能を移した後で、1982年に復元・改修工事が完了しました。ただ、復元とはいっても外観全体と、内側は真ん中のドームの下にある貴賓室、あとはごく一部だけを移設保存しています。内部は申し込み制での見学もできますし、イケフェス大阪では毎年貴賓室を公開してくれています」

―正面から見るとあまり目立たないですが、かなり大きく増築をしているんですね。

高岡さん:「本館の背後、川に沿っているのが新館で、日建設計が設計しています。高さや素材感を旧館にそろえているので、邪魔にならないけれど品格もあって、よい増築だと僕は思います。取ってつけたような違和感がまったくないですよね」

大阪のまちあるきは橋にも注目したい

錦橋
錦橋

高岡さん:「ちょっと建築からは脱線しますが、中之島は橋もおもしろいんですよ。僕が好きなのは『錦橋』と『淀屋橋」で、とくに錦橋はモダンなデザインでかっこいいんです」

錦橋は、車が通れない橋なんですね。

高岡さん:「コンパクトな橋で、もともとは可動堰として架けられました。門を下ろして川を堰き止めておいて、ある程度水位が上がったところで一気に解放すると、その勢いで川底の掃除をする仕組みだったそうです。船で橋の下を通って見上げるとその仕掛けの名残が見えるんですよ」

淀屋橋は大きな橋ですね。途中にバルコニーのようなものもついています。

高岡さん:「淀屋橋は、中之島の反対側に架かっている『大江橋』と同じデザインなのですが、当時としては珍しい橋のデザインコンペが行われて1等の案で同時に二つの橋が架けられました。中之島の景観に大きく関わるので、デザインを重要視したんですね。明治から昭和にかけての関西建築界を率いた武田五一がコンペの審査と監修に関わりました。今はどちらも重要文化財に指定されています。淀屋橋と大江橋の間に、日本銀行や市役所、図書館、中央公会堂が並んでいます。橋の位置や大きさは昔からあまり変わらないので、それぞれの橋を眺めてみるのも、橋の上からまちを見るのもどちらもおもしろいですよ」


―次回は水辺を通って、北浜のほうへと巡っていきます。お楽しみに。

<今回巡った建築物はこちら>

■案内人
高岡伸一(たかおか しんいち)さん

1970年、大阪生まれ。高岡伸一建築設計事務所主宰、近畿大学建築学部建築学科准教授、大阪市生きた建築ミュージアム推進有識者会議委員。大阪を中心に、近代建築や戦後建築の再評価・利活用について研究・実践を行う。2008年、戦後ビルの魅力を発信する集団「BMC(ビルマニアカフェ)」を結成。2013年より「大阪市生きた建築ミュージアム事業」に参画、「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(通称 イケフェス大阪)」実行委員会事務局長を務める。主な著書および共著に『新・大阪モダン建築』(2019年、青幻舎)、『生きた建築大阪』(1(2015年) 2(2018年)、いずれも140B)、『大大阪モダン建築』(2016年、青幻舎)、『いいビルの写真集』(2012 年、パイインターナショナル)、など。
Twitter:@shinichitakaoka
大阪市生きた建築ミュージアム:https://ikenchiku.jp/

◆本記事の担当者
取材・文:古屋歴 写真:米田真也

IN/SECTS編集部

プロフィール:大阪という物理的なローカリティと、感性や共感といった同時代性的ローカリティを軸に、ローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行。現在、大阪の京町堀を拠点に、「IN/SECTS」のほか、書籍の出版も行う。年に一度、イラストレーターや飲食店、作家、アーティストと、アジアの出版社を集めたイベント「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」を、北加賀屋にて開催。LIFE LISTでは、個の視点を通して見えてくる街や人の姿を紹介する。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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