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【神戸 勝手にまち探訪】第5回 古墳の町・大阪府藤井寺市を住むように歩く
【神戸 勝手にまち探訪】第5回 古墳の町・大阪府藤井寺市を住むように歩く

【神戸 勝手にまち探訪】第5回 古墳の町・大阪府藤井寺市を住むように歩く

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「港町」や「異国情緒あふれるまち」など、独特なイメージのあるまち・神戸。そんな神戸のステレオタイプなイメージは、実は一部だけで、小さな商店街や長屋の趣など、下町情緒あふれるまちの姿も、まだまだたくさん残っています。時に坂道が多く、時に山道のような。そして時には歴史が垣間見える通りを通って、歩けば歩くほど、そのまちならではの魅力に出会えるまち歩き。一見普通の住宅街でもまちを知る喜びが詰まっています。

そんな神戸の小さなまちを“勝手に”散策し、“勝手に”魅力を掘り出すまちあるきイベントが、「勝手にまち探訪」。塩屋のまちでさまざまな遊びを生む「シオヤプロジェクト」が主催しているイベントです。坂と車の入れないような小径が繰り広げられる塩屋を歩く、「勝手に高低差学会」から活動は始まり、その後舞台を塩屋の外に飛び出した「勝手にまち探訪」がスタート。「同じ道を2度通らない、一筆書きのまちあるき」をモットーに、ほぼ毎月小さなまちをみんなで7時間歩き探訪しています。

第59回となる今回は、神戸のまちを飛び出し、大阪のまちに進出した番外編です。藤井寺市と羽曳野市を一括りにひとまず土師ノ里エリアと呼び、その一帯をまち歩き。題して「勝手にまち探訪 土師ノ里編」。国内有数の古墳群を擁することで知られる同エリアを、案内人の極私的散歩ルートをなぞったまち歩きを踏まえ、大きく3つのポイントでレポートします!

土師ノ里といえば、やっぱり、まず古墳

集合時間に土師ノ里駅に集まったのは36人。まち歩き常連さん、告知を見て初めて参加した方、土師ノ里にお住まいで飛び入り参加した方など、さまざまな面々が集まりました。シオプロ主宰の森本アリさんが「番外編だと思って油断しました」と思わずつぶやくくらいの大所帯です。毎度のことながら本企画の案内人もひと筋縄ではいきません。今回は、藤井寺にて週末のみ開く書店「アサノヤブックス」を主宰し、音楽家speedometer.としても活動する、高山純さん。先頭に立って入り組んだ細い道をアテンドしてくれたかと思えば、案内を半ば放棄し、列の中に入って参加者と談笑する光景も見られた、自由で頼れるとても魅力的なお人柄です。「アサノヤブックス」については後ほど詳しく紹介します。

ところで、大阪に“土師ノ里”という地名は存在しないにもかかわらず、なぜ同名の駅があるのか不思議に思ったことはないでしょうか。そもそも土師とはかつて埴輪や古墳など、土にまつわる仕事に秀でた社会集団に与えられた名。その土師を氏とする集団が藤井寺市を拠点にしていたことの名残として、いまだに駅名にも使われているといいます。

この町における古墳の存在感は駅前の地図を見るだけでもわかる
この町における古墳の存在感は駅前の地図を見るだけでもわかる
道路を挟んで向こう側に見えるこんもりとした丘のようなところが古墳
道路を挟んで向こう側に見えるこんもりとした丘のようなところが古墳

さすがというべきでしょう、駅を降りて顔を上げるとすぐに古墳が確認されました。鍋塚古墳です。古くは雑木林が広がり、この辺りにも「沢田の七ツ塚」と呼ばれる複数の古墳があったものの、戦後に行なわれた開発の結果、現在のように鍋塚古墳のみが残る形になりました。

まち歩きの最初に恒例の自己紹介を鍋塚古墳で行いましたが、「なぜこの古墳は入っていいのだろう」と疑問の声が。宮内庁の管理する古墳は皇族に関係する人物が眠っているという理由で基本的には立ち入りが禁じられているからです。一帯の歴史に詳しい参加者の辻岡さん(写真中央、右)によれば、「誰が眠っている古墳なのかが詳しくわかっていないから入ることができる」とのこと。鍋塚古墳は陪塚(大型古墳の周辺の小規模な古墳)であることも教えてくれました。毎度、参加者のなかにずば抜けて町に詳しい方がいらっしゃるのもこの企画のおもしろいところです。

古墳そのものよりも現場を盛り上げたのは、赤ペンキが退色して読めなくなった看板。恐らく将来的に「宮内庁」という記載だけが残る看板は、見るひとにどんな印象を与えるのか
古墳そのものよりも現場を盛り上げたのは、赤ペンキが退色して読めなくなった看板。恐らく将来的に「宮内庁」という記載だけが残る看板は、見るひとにどんな印象を与えるのか

次に訪れた仲姫命陵古墳は日本で9番目に大きな古墳。その名の通り、応神天皇の皇后である仲姫皇后の陵とされています。立ち入り禁止のため、周りに張られたフェンス沿いを歩きました。今回は立ち寄りませんでしたが、古墳のほど近くにある古室八幡神社 からの眺めがよいそうです。

後半戦で立ち寄った、藤井寺のお隣、柏原市にある玉手山2号墳は墓on墓(古墳)の新旧折衷スタイルが面白い
後半戦で立ち寄った、藤井寺のお隣、柏原市にある玉手山2号墳は墓on墓(古墳)の新旧折衷スタイルが面白い

土師ノ里の旧家に生まれた書店「アサノヤブックス」のこと 高山純×森本アリ

お昼休憩を目前にして立ち寄ったのが、案内人である高山純さんが2021年から営む「アサノヤブックス」。雰囲気のある日本家屋の玄関から洋間にかけて古書とレコード、雑貨がずらりと並ぶ、きっとこれからどんどん存在感を増していくであろうスペースです。いったいこの「アサノヤブックス」はどういった背景から生まれたのか、どんな活動をしているのか。森本アリさんが投げかけた質問に答えるかたちで、高山さんが丁寧にお話ししてくださいました。

―この建物はかなり歴史がありそうですね。

高山さん:「築160年です。もともとは麻野さんという方のお宅で、いまもご子息のひとりが裏に住んでいます。麻野邸だから『アサノヤ』。僕は毎週末『アサノヤブックス』という屋号で、本やレコード、古物などを販売しています。玄関で商売するだけではなく、洋間、和室にも自由に入ってもらえるようにもしています」

―商品は高山さんの私物ですか?

高山さん:「麻野邸の蔵にあった本、古物に加えて、僕の私物も販売しています。もともと『アサノヤブックス』は麻野邸から出てきた大量の本を販売する場所として始まりました。お母さんが教育者、お父さんが繊維関係の仕事をされていたそうなのですが、とにかく蔵書の数がものすごかったからです。だったら売ったらええやんと。僕がここを管理することが決まったタイミングで、個人的な終活の意味も込めて、いままで買ってきた本やレコードも販売することにしました」

―私物のなかには本心では売りたくないものもあるんじゃないですか?

高山さん:「そういうものには値札をつけていません。売るつもりで持ってきたはいいものの、お客さんに値段を聞かれた途端、売りたくなくなります(笑)。『これはうちの私物です』って」

―商売にならない(笑)。週末以外はどのように運営しているんですか?

高山さん:「平日はレンタルスペースとして貸し出していて、これまでにアパレルのコレクション展示、美術作家の個展、音楽ライブなど、さまざまな方面で使ってもらっています。もちろんうちで企画することもあります。大阪教育大学、大阪芸術大学が近くにあるので学生さんもよく遊びに来てくれますね」

当時大阪教育大学在籍中だった西村昂祐さんの作品。個展開催時に唯一残った希少な本作を、床の間に展示している
当時大阪教育大学在籍中だった西村昂祐さんの作品。個展開催時に唯一残った希少な本作を、床の間に展示している

―ここ以外で高山さんはどういった活動をしているのですか?

高山さん:「グラフィック、ウェブの両分野でのデザインワークと、企画仕事、それと音楽活動です。2023年は久しぶりすぎるくらいにアルバムもリリースできたので、今のところはバランスが取れていると思います。仕事の打ち合わせをここですることも多いです。そっちのほうが感じがいいし、みんなおもしろがってくれるので集まりやすいです」

―3年間やられていまの感触はどうですか?

高山さん:「ようやくおもしろいメンツが自然発生的に集まって来たなと実感しています。いまはそのなかで遊んでいるだけかもしれませんが、ゆくゆくはここで飲食を始めるなどして定期的に足を運んでもらえるようなスポットにしていきたいです」

―これまでまち歩きをしてきた印象ですが、土師ノ里はいわゆるベッドタウンなのでしょうか?

高山さん:「そうですね。東住吉まで行くと都市的な機能が増し、逆に千早赤阪村まで行けば田舎暮らし的なモードに入ります。土師ノ里はそのちょうど間くらい。昔は農家が多く、大きく栄えた経験のない町なので下町とも言えません。そういう意味ではニッチですね。いまちょうど建て替わりの多い時期なので、ついこの間あった建物がなくなっていたなんてことも増えてきました。町の様子は一日一日変わっていくし、生ものです。このあとのまち歩きでも、見られるうちにいろんな建物や景色を見ておきましょう」

シオヤプロジェクト的!土師ノ里の絶景&珍景

シオプロのまち歩きといえば、細い道や高低差に惹き寄せられ、絶景や珍景を愛でるスタイルがお馴染みです。土師ノ里では歴史的な好奇心から古墳に目が行きがちですが、いつもの自分なら通らないであろう道を積極的に歩いたり、別の目線を持ってみると、豊かな光景に出合うことができます。

例えば、思わず「あ!」と声を上げてしまったのがこの澤田八幡神社。仲姫命陵古墳のすぐ近くに立地する、澤田地区の氏神さまが祭られている神社です。敷地内を近鉄南大阪線が走っています。調べてみると、大正期に同線が道明寺駅から大阪阿部野橋駅を繋げる際、町内と古墳を避ける方針で整備したからだとか。珍しい光景にシャッターを切るも、思いのほか、列車は高い頻度で通ります。

高山さんが「近鉄名物」と呼ぶ、ステンシルで書かれた注意書き。踏切りごとに設置されているらしい
高山さんが「近鉄名物」と呼ぶ、ステンシルで書かれた注意書き。踏切りごとに設置されているらしい

前半戦に訪れた閑静な住宅地でも四方に目線を散らしながら歩きます。すると、お米屋さんの看板を発見。さっと読み飛ばしてしまいそうですが、“区内町”御用達……。宮内庁の管理する古墳を多く擁する町ならではのユーモアが顔を覗かせていました。

シオプロの大好物「トマソン」(©赤瀬川源平)。不自然な位置に設置されたドアに一同大興奮
シオプロの大好物「トマソン」(©赤瀬川源平)。不自然な位置に設置されたドアに一同大興奮

お昼ご飯を済ませた後は、近鉄道明寺駅方面に。駅の東側を流れるのが石川です。岸の抜け感と川幅がどことなく京都の鴨川と似ているように思います。その石川の上、藤井寺市と柏原市を繋ぐように架けられた橋が玉手橋です。装飾などの細部が西欧的なだけでなく、実際の歴史もひじょうに深いため、間近で見てもとても雰囲気がありました。1908年に開園し、1998年に閉園した「玉手山遊園地」がお客さんを呼ぶため1928年に架けた橋だといわれています。ちなみに橋としては国内で初めて認定、登録された有形文化財としても知られています。

玉手橋を渡ると、柏原市。「阪南ジャンボハイツ」は高山さんのご親戚も入居していたこともあるという築50年越えのマンションです。どこか工業的でありながら確かに人間らしさも感じる、見事なバランスの面構え。この一帯では「Don’t GOMI」など、日本語以外の言語で書かれた注意書きを多く目にしました。高山さんによると、付近に工場が多数あり、そこで働く外国人が住んでいるからだそうです。特にベトナム人の割合が高く、近年ではベトナム料理屋さんもでき始めているとのことでした。

高山さんの極私的散歩ルートをなぞるという色が強かった今回のまち歩き。スポットひとつひとつに対して詳しい説明を受けるのではなく、まるで何年もそこに住んでいるかのように歩くことで地域に流れる空気を直に感じることができました。
高山さんをして「コンビニがいちばんの賑わいスポット」と自虐的に言わしめるように、たしかに古墳以外に大声でプレゼンするに足る場所はないのかもしれません。しかしだからこそ町から滲み出したある種の諦念は、むしろ成熟と言い換えるにふさわしいようにも感じられ、利便性とはまた別の住みやすさに繋がっているように思いました。

まち歩きとしては、面白がり方の引き出しの多い上級者向け。見落としてしまいそうな細部から想像力を膨らませ、ときに本にあたり、ときに人に話を聞けば、歴史ある町の昔と現在を地続きで考えることができるでしょう。もっと引き出しを増やしてから再チャレンジしたい町となりました。

〇今回の主なルート
土師ノ里駅(集合場所)―仲津姫古墳―澤田八幡神社―允恭天皇陵古墳―アサノヤブックス―nowhere hajinosato―道明寺駅―玉手橋―阪南ジャンボハイツ―柏原市立老人福祉センター―玉手山2号墳―勝松山公園―石川橋―道明寺天神通り商店街―道明寺天満宮―土師ノ里駅(解散)

今回のまち歩きの舞台となった藤井寺市は、大阪で最小の市として知られています。北の端から南の端までを歩いてもたった1時間程度。コンパクトだからこそより町の事情に精通することができるかもしれません。だからといって住民相互のまなざしを強く感じるようなコミュニティではなく、むしろ適度な距離感を持ったご近所づきあいがあるように感じました。

アクセス面は幹線道路ほか、土師ノ里駅、藤井寺駅、道明寺駅と良好であり、都市部へ出勤する人のベッドタウンとして多くの住民が暮らしていることにも納得です。土師ノ里駅の平均家賃は3.56万円。近鉄南大阪線のお隣駅である藤井寺、道明寺と比べてもお得。歴史ある古墳の町で、固定費を抑えながら静かな生活を送りたい方におすすめです。もちろん歴史好きの方は言わずもがな!

取材・文:石川宝

IN/SECTS編集部

プロフィール:大阪という物理的なローカリティと、感性や共感といった同時代性的ローカリティを軸に、ローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行。現在、大阪の京町堀を拠点に、「IN/SECTS」のほか、書籍の出版も行う。年に一度、イラストレーターや飲食店、作家、アーティストと、アジアの出版社を集めたイベント「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」を、北加賀屋にて開催。LIFE LISTでは、個の視点を通して見えてくる街や人の姿を紹介する。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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