「お金はかけられないけれど、子どもにかわいい帽子をかぶせてあげたい! 」
そう思ったのが、私がニット帽を作るきっかけでした。お手頃な価格のものはイメージに合わず、ピンと来たものは私にとっては高価なもの。そこで“ないなら作ろう”精神で、ニット帽を編み始めたのです。
当時は、動画での情報収集が今ほどスタンダードではなく、参考にするのは手芸の本。図書館で借りてきた本を見て、悪戦苦闘しながらのスタートでした。
息子の成長や娘の誕生とともに、作りたいニット帽も変化していき、毎年、肌寒くなる頃に編み針と毛糸を手に取るのが習慣に。手編みの没入感にも魅了され、ニット帽を販売するまでに至りました。
今回は、ハンドメイド好きの私が、素材やかぶり方で表情を変えるニット帽の魅力をお伝えします。ぜひオリジナルのニット帽作りに挑戦してみてくださいね。
さまざまな表情を持つニット帽の魅力
手編みの魅力は、同じ毛糸で、まったく別のものを作れるところです。道具や編み方を変えるだけで、その表情やかぶり心地が何通りにも変化します。
ニット帽を編むための道具
・棒針
棒針とは、毛糸を編むときに使う棒状の道具で、2本以上使用して編みます。基本の編み方は“表編み”と“裏編み”の2種類。セーターやネックウォーマーなど、伸縮性が必要な編み物に適しています。
・かぎ針
先端がフック状になった編み物用の針です。基本的には、1本で編みます。
かぎ針を使った編み方は、種類が豊富。円形や四角形、フリルなど、自由に形を作りやすいところが特徴です。バッグやコースターなどのハリが欲しいものや、手袋やコサージュなどの小物を編むのに適しています。
編み方でニット帽のアレンジを楽しむ
編み方は多岐にわたりますが、難しい編み方をいくつも覚えなくても大丈夫です。基本的な編み方を押さえるだけで、作品を作れるようになりますよ。身近なものにもよく使われる編み方には、次のような種類があります。
・ゴム編み
ゴム編みとは、棒針で作る、伸縮性に優れた編み方です。セーターの“リブ”部分をイメージするといいでしょう。縦方向に畝ができるように毛糸を織りなし、仕上がりがゴム状になります。頭にぴったりフィットさせたいニット帽を作る際にも、重宝する編み方です。
・ケーブル編み
ケーブル編みで作る模様は、アラン模様と呼ばれます。アラン模様は棒針で編むのが一般的ですが、かぎ針でも表現できます。
縄目を交差させたクラシカルな模様で、セーターやニット帽に使われることが多いです。立体感を出すことで厚みが増し、防寒性を高められるメリットもあります。
・細編み(こま編み)
かぎ針編みの、もっとも基本の編み方です。細編みを一つ覚えるだけで、コースターやあみぐるみ(毛糸で作ったぬいぐるみ)を作ることも可能。毛糸を麻ひもに変えると、マルシェバッグなども作れますよ。
・長編み
かぎ針のスタンダードな編み方の一つです。長編みを取り入れることで、目が詰まりすぎず、柔らかい手触りに仕上げることができます。
細編みと長編み、長々編みを順に取り入れることで、レース模様を作ることも。かぎ針編みにおいて、形作りのバリエーションを広げてくれる、便利な編み方です。
素材でニット帽のアレンジを楽しむ
“毛糸”と一口でいっても、その種類はさまざま。こちらの写真は、手前からウール、アクリル、コットンという素材の毛糸です。
ここからは順番に、素材ごとの特徴をご紹介します。
・ウール
ウールはご存知の通り、羊毛です。温かく、吸水性に優れており、セーターをはじめ、衣類によく使われる素材です。羊の種類によって質感に特徴があり、メリノやロムニーなどがあります。
“混紡”といって、他の繊維と一緒に製糸することも。これは、強度を上げたり軽量化したりすることが目的です。モヘヤと併せることでふわふわの質感に、カシミヤと併せることでしっとりした質感に変化するので、ウールと他の素材の長所を掛け合わせることができます。
毛糸の帯に“ウール80%、カシミヤ20%”といった表示があるので、毛糸選びの際に参考にしましょう。
・アクリル
アクリルは、アクリロニトリルという石油から作られた、化学繊維素材です。比較的安価で手に入り、鮮やかな発色のものが多く、型崩れや縮みなど、洗濯の影響を受けにくいのが特徴です。
ウールに比べ、毛玉ができやすい、静電気が起きやすいというデメリットもあります。100円ショップなど、身近なお店でも手に入りやすく、編みやすい素材なので、初めて編み物に挑戦するときにおすすめです。
・リネン、コットン
衣類や寝具として馴染みのある天然素材のリネン糸やコットン糸。こちらは通気性や吸湿性が優れているので、サマーニットに用いられることが多いです。
糸が細く、繊細で軽やかな仕上がりになる点が特徴。春夏の衣類はもちろん、年間を通して使うコースターやモチーフにも適しています。
赤ちゃんの帽子を手編みで作る際は、オーガニックコットンの糸を使用するといいですね。
髪型やアクセサリーと一緒にニット帽を楽しむ
同じニット帽を使っても、髪型やアクセサリーを変えるだけでずいぶん印象が異なります。
ヘアアレンジ
・前髪
イメージを左右する、前髪。前髪を出すと、かわいい印象になります。前髪が押しつぶされないように、普段よりふんわり感を意識したヘアセットを心がけましょう。
また、前髪を左右に分けると、スッキリした印象になります。ニット帽の形状によっては、子どもっぽさを強調することも。帽子の種類と場面によって、前髪のあるなしを使い分けましょう。
・横、後ろ髪
髪を耳に掛けるか掛けないかだけでも、かなり印象が変わります。ロングヘアの女性の場合は、ニット帽から出た後ろ髪をまとめたり、巻き髪にしたりしてもいいですね。
ショートヘアの方や男性の場合、角度やバランスに気を付け、ニット帽から出る毛先のアレンジを楽しむのもいいでしょう。
上部にゆとりを持たせて浅めにかぶり、髪を出すのが最近のトレンドです。ニット帽でつくる、ゆったりとしたシルエットが、大人のカジュアルを演出してくれますよ。
アクセサリー
ポンポンのあるなしは、ファッション全体のイメージを大きく左右します。子どものニット帽には、かわいくなるので、ポンポンをつけることが多いです。
写真の左は、シンプルなどんぐり帽子に、友人がプレゼントしてくれたブローチをつけました。無地のニット帽にブローチをつけるだけで、雰囲気がぐっと変わります。
右のニット帽は、赤い毛糸でニット帽の土台部分を作り、茎と葉を付けて、りんご帽子にしたものです。
こちらのニワトリのニット帽は、酉年のお正月に、子どもにかぶせました。
どんぐり帽子に、トサカ・くちばし・目玉・足をつけました。モチーフを加えることで、くすっと笑えるようなアレンジができるところも、ニット帽の魅力ですね。
あなたにぴったりのニット帽とは?
顔の形に合わせたニット帽を選ぶ
ご自身を「ニット帽は似合わないタイプ」と思い込んで、ニット帽を敬遠されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は顔の輪郭によって、似合うニット帽の形やかぶり方があります。
ここからは、3タイプに分けてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
丸顔タイプには
ニット帽が似合いやすい輪郭です。幼く見えるのが気になるときは、コンパクトなニット帽を選ぶと、遊び心と大人っぽさのバランスが取れますよ。
面長タイプには
高さが出やすい、立体感のあるニット帽は避けましょう。くったりとしていて飾りがない、シンプルなものがおすすめです。
前髪を出しておでこを隠すと、小顔効果がアップします。前髪を左右にわけて、ニット帽を深めにかぶるのもいいでしょう。
エラはりタイプには
頭頂部がとがったタイプや、折り返しがあるものを選ぶと、ニット帽に視線を集めやすく、エラが目立ちにくくなります。
また、女性の場合は、顔周りの後れ毛をゆるく巻いて、輪郭をカバーしましょう。こなれ感もアップして、大人の女性の魅力が引き立ちますよ。
ぴったりフィットする“ゴム編み”のニット帽作り
初めてニット帽作りに挑戦する方には、“ゴム編みのニット帽”がおすすめです。
ゴム編みのニット帽とは?
棒針を使って編む、伸縮性のあるニット帽です。ニット帽のスタンダードな形で、ファッションとして取り入れやすく、防寒性にも優れています。
目数を調整することで、自分にぴったりのサイズに仕上がるメリットもあります。お子さまやパートナーへの贈り物にもおすすめ。
編み方の種類も、最初の作り目以降は、表編みと裏編みの繰り返しです。複雑な編み方も必要ないので、慣れると1日で1つ作ることもできます。
100円均一でも買える“輪針”が大活躍
一番手軽にニット帽を作れる編み針は、実は100円ショップでも購入できます。“輪針”という、2本の短い棒針がチューブでつながれた編み針です。
通常、ニット帽のような筒状のものを作るには、かぎ針編みか棒針を4本使用しますが、難点があります。
かぎ針編みは伸縮性を出しづらいため、初心者の方にはサイズの調整が難しいです。また、棒針を4本使用すると編みづらく、取扱いが難しくなります。
そこで活躍するのが、先ほどご紹介した“輪針”です。途中で針を持ち替えたり、返したりする必要がなく、単純に編み進めることが可能です。チューブ部分の長さが何種類かありますが、ニット帽作りであれば、40cm程度の短めのものが適しています。
編んでかぶって、飾って。ニット帽のある暮らし
ビーズクッションを置いてくつろげるリビング
編み物をする際に困るのが、同じ姿勢を続けることで、腰や肩に負担がかかることです。この悩みを解消してくれるのが、ビーズクッション。大きめのものだと、全身を包んでくれるので、リラックスした姿勢で編み物ができます。腰や肩が痛むこともなく、時間を忘れて編み進められるので、気に入っています。
編み物を日常的に楽しみたい人には、ビーズクッションが置ける、ゆとりのあるリビングがおすすめですよ。
クローゼットや玄関に見せる収納を
ニット帽作りに慣れてくると、作品の数も増えてきます。玄関やクローゼットに専用の収納スペースを設けると、作品を飾ることもできます。身支度で帽子を選ぶときも、お気に入りの作品の中から選べると、心が躍りますよ。
小物を飾りたい人向けの賃貸物件
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オリジナルニット帽を手作りしよう
ニット帽作りの魅力は、市販の毛糸で自分にぴったりの帽子を作れるところです。材料や道具も、身近なお店で安価で手に入ります。
手芸の本の他にも、ウェブサイトや動画サイトで情報が収集できるので、気軽に挑戦してみましょう。ほどくと簡単に毛糸の状態に戻るので、どれだけ失敗しても大丈夫。作りたいニット帽のイメージをふくらませて、この冬はニット帽で暮らしを彩ってみてはいかがでしょうか。