おうちで簡単に陶芸を楽しめる、「オーブン粘土」をご存じですか?
器、小物、アクセサリーなどを自宅のオーブンで簡単に作ることができます。「陶芸には興味があるけれど難しそう」「子どもと一緒に何か工作をしてみたい」と考えている方にぴったりです。
在宅時間が増えた今、自分好みの器や小物を作り、おうち時間を楽しんでみてはいかがでしょうか? 今回は、ハンドメイド作家である私がオーブン粘土の使い方や作品の作り方などをご紹介します。
おうち陶芸が楽しめる、オーブン粘土とは?
陶芸といえば、工房でしか作れないイメージがあるかもしれませんが、おうちでも十分器作りやアクセサリー作りが楽しめます。
オーブン粘土とは
オーブン粘土は、160℃~190℃の低温で焼成が可能な陶芸用の粘土です。樹脂などが配合されており、加熱後はプラスチックのような硬さになります。家庭用のオーブンで陶器を焼成することができるため、「おうち時間を楽しむ趣味」としてオーブン粘土での陶芸を楽しむ人も増えています。
ちなみに本格的な陶芸用粘土を焼く場合の焼成温度は、800℃~1,250℃と高温です。自宅で楽しむことはなかなか難しいですが、オーブン粘土であれば可能になります。また、本格的な陶芸とは違い、土を練る必要がなく、手で成形できるという特徴があります。
オーブン粘土は陶芸用のろくろを使うこともできるので、陶芸作品に劣らない仕上がりになります。器やアクセサリー、小物、貯金箱や植木鉢など、自分好みの物も作れます。
オーブン粘土の種類
オーブン粘土には、土色や赤土色、黒土色や白っぽい色など色がついているものもあるので、幅広い作品を作ることができます。色つき粘土は、土の質感を生かした器作りなどに向いています。
オーブン専用の粘土は必ずオーブンで
オーブン粘土はオーブンで焼く必要があります。オーブントースターでは代用できないので、必ずオーブンを使いましょう。オーブン機能付きの電子レンジ、ガスや電気のオーブンなどが必要です。オーブンによって温度や焼け具合が異なるため、お手持ちのオーブンの様子を見ながら焼いていきます。
オーブンが必要ない粘土もある
オーブンが自宅にない場合は、自然乾燥で完成するタイプの石粉粘土や樹脂粘土がおすすめです。熱を使わないため、小さな子どもと陶芸を楽しむときも気軽に使えます。これらも100円ショップで手に入れられますよ。
オーブン粘土と道具の入手方法
オーブン粘土にはいろいろなメーカーのものがあるので、ホームセンターや手芸店、ネットショップでの購入がおすすめです。お気に入りの質感やカラーのものを探してみてくださいね。
ある程度のサイズの器を作る場合は粘土の量が必要になりますが、少量で試すようであれば100円ショップでも購入できます。
オーブン粘土の基本道具
粘土以外にそろえておきたい道具と目的をまとめます。
・オーブンペーパー…成形するとき、焼成するときに作品がくっつかないよう、下敷きとして使用
・のし棒…粘土を均一にきれいにのばすために使用
・粘土ベラ、爪楊枝、ナイフ…粘土を切ったり模様をつけたりするときに使用
・クッキー型…型抜きをする際に使用
その他の道具は、作りたいものに合わせて準備します。たとえば、絵付けをする際や耐水性のある食器を作りたい場合は、アクリル絵の具や耐水コート剤も用意しましょう。
絵付けを楽しむために必要な道具
絵付けを楽しむ際は、アクリル絵の具と筆も準備しましょう。これらも100円ショップで手に入ります。極細タイプの筆なら細かい絵も描けますので、できるだけ描きやすそうな筆を選んでくださいね。
食器として使用するなら耐水コートも準備
手作りした器やカップを食器として使用する場合や、絵付け後の色落ち防止、艶を出したいときには耐水コートが必要です。耐水コートを使うタイミングは、焼き上がった後です。作品に塗って再度乾かして焼き上げます。耐水コートを塗るだけで、ワンランク上の仕上がりになります。
「土の質感を生かしたい」「艶消しのマットな質感が好み」という方には、マットタイプの耐水コートがおすすめです。
オーブン粘土の使い方・作品のつくり方
それでは、実際にオーブン粘土の作品作りに挑戦してみましょう。器やコップ以外にも、以下のようなものが作れます。
・箸置き
・人形
・貯金箱
・小物入れ
・アクセサリー(ピアス、ブローチ、髪留め、ネックレス)
まずは、オーブン粘土の基本的な使い方をご紹介します。初めての方は、コップなどの難しい形よりも成形が簡単な、器や箸置きといった小物作りから始めてみましょう。
オーブン粘土で作品作り! 基本の手順
① オーブン粘土を袋から出します。使いたい分量をひとまとめにします。麺棒などののし棒でのばせないほど硬いようであれば、少し水をつけた手でこねて使いやすい硬さにしておきましょう。
時間がたって練れないほど固くなってしまったときは、粘土に水分を補給しましょう。濡れ布巾を用意し、濡れ布巾に粘土を包んでビニール袋に入れます。この状態で半日くらい置くと元の柔らかさに戻ります。使い始めは、よく練って均一になめらかな状態にしてから使用しましょう。濡れ布巾では水分が足りないほどカチカチに固まってしまった場合は、粉々にして水でこね直すと復活しますよ。
② オーブンペーパーの上で成型します。粘土の厚さが5mm~8mmほどになるように麺棒や、のし棒でのばし、お好みの形にカットしたり、型抜きをしたりします。
③ 好きな形を作りましょう。粘土同士をくっつけるときはしっかり水を使うとうまくいきます。また、角をなめらかにしたいときなども水をつけた指でなでると丸みをつけることができます。模様をつけるときは彫刻刀やヘラ、爪楊枝を使うと簡単です。
④ オーブンペーパーの上で、1週間から10日ほど乾燥させます。乾燥時間が足りないとオーブンで焼いた際にひび割れが起こります。せっかくの作品を無駄にしないためにもしっかり乾かしましょう。梅雨時期など湿度の高い時季や、温度の低い場所で乾燥させる場合は、少し長めに乾燥時間をとってください。
⑤ 表面をきれいに仕上げたい方は、一度乾燥させた作品にオーブン粘土を溶かした水を表面に塗りましょう。筆できれいに塗ってから焼成することで、なめらかな表面になります。また、アクリル絵の具での絵付けの際にも色がのりやすくなります。
このとき使用する粘土は同じ色のものにしましょう。コップなどに水を入れて粘土を溶かし、トロッとするくらいの濃度になったら、筆で表面にきれいに塗っていきます。完全に乾くまで半日~1日ほど待ちます。
⑥ オーブンペーパーを敷いた天板にのせ、オーブンで焼きます。焼き時間と温度は作品の大きさや厚み、お使いのオーブンによっても変わりますが、大体180℃で40~50分です。様子を見ながら焼いていきましょう。お子さまと一緒に作業する場合はやけどにご注意ください。
⑦ 焼き上がったらよく冷まします。絵付けや耐水コートを塗る場合は、焼く前ではなく、焼いた後の作品に塗ります。間違えやすいので、順番に注意しましょう。
⑧ 絵付けをする場合は、アクリル絵の具を筆で塗ります。全面にベタ塗りするのもOKです。お好みの柄を描きこんでください。水で薄めずに塗ると、はっきりとした色で着色できます。絵付けが終わったら絵の具が乾くまでよく乾かします。
⑨ 最後に耐水コートを塗りましょう。筆で耐水コートを均一になるように塗ります。厚塗りにならないように気をつけてください。
耐水コートが完全に乾くまで30分~1時間ほど乾かしましょう。完全に乾いたら、オーブンで再び100℃~120℃の温度で15~20分焼き、冷ませば完成です。耐水コートが乾いているかどうかの目安は、手で触れてみてべたつきがなければOKです。
子どもと作る、小物の作り方
小さなサイズの焼き物はお子さまとの作業におすすめです。厚さ5mm程度にのばしたオーブン粘土で好きな形を作りましょう。クッキー型で抜いたり、ナイフでカットしたりしてもOKです。
今回は、クッキー型で抜いたお花、手で成形した丸や四角、リボンの形を作ってみました。ピアスやイヤリング、ブローチなどのアクセサリーを作る場合は、裏側に強力な接着剤で金具を付けます。ペンダントの場合は、紐が通せる穴をつくります。ストローの穴の大きさがちょうど作業しやすいかなと思います。
人形などの立体的な置物を作ることもできます。下の写真は白いオーブン粘土を使って、わが家の子どもが作ったひな人形です。絵筆での細かい色付け作業がお子さまにとって難しい場合は、油性ペンで色つけしてみてもOKです。
食器など器の作り方
器の場合は、5mm~8mmにのばしたオーブン粘土を使います。ちょうどいい厚さになった粘土を、ボウルなどで型抜きします。固く絞った濡れ布巾をボウルの底面にかぶせましょう。布巾をかぶせる理由は、粘土がボウルにくっつかないようにするためです。その上に型を抜いた丸いパーツをかぶせ、手で凹凸をなじませてカーブを作り、ボウルから外します。
水をつけた指でシワなどをなでて消しておきます。スベスベになるまでなでると、シワが消えてきれいな仕上がりになります。ただし薄くなってしまわないよう、優しく行いましょう。周りをへこませてフリル状にしてみたり、爪楊枝などで模様をつけてみたり、角度をつけて深めの器にしてみたりと、いろいろ挑戦してみてくださいね(その他の工程は基本の作り方と同様です)。
丸い小皿は簡単なので、初心者でも作りやすいです。形を作るのに慣れてきたら、四角い器やカップなどにも挑戦してみてください。
オーブン粘土作品作りを楽しみやすい住まい
オーブン粘土を使った陶芸を気軽に自宅で楽しむには、作業する場所や作品の保管場所の確保が必要です。
作業スペースを確保しよう!
広いダイニングテーブルや作業台があると、形作りの際に作業がしやすく助かります。
また、乾燥中の作品を1週間ほど保管できるスペースも必要です。焼く前に落として割ってしまわないように、子どもの手の届かない場所やダイニングテーブル以外の場所に、作品を置いておける一時保管場所があると安心です。
焼成時も、キッチンまわりに焼き上がった作品の熱を冷ませるスペースが確保できていると、作業がスムーズです。
家で始める陶芸体験
自宅で簡単に陶芸体験ができる、オーブン粘土の使い方を紹介しました。
夏休みの工作に、子どもと一緒にオーブン粘土で陶芸を楽しんでみるのもいいですね。普通の粘土や紙粘土などで作る作品とは一味違ったすてきな作品になります。
わが家では怪獣形のカップや、フルーツ形の器を作ってみました。自由に形を作り、絵付けもできるので、子どもの想像力を養う、いいアクティビティになります。
世界に1つだけのオリジナルの食器を使ってみんなで食べるごはんは、さらにおいしく感じるかもしれません。子どもと一緒に手を動かしておうち時間を目いっぱい楽しんでみてはいかがでしょうか?