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料理家・東條麻備さんに聞いた京都のおせち料理あれこれ。白味噌の京風お雑煮の作り方もご紹介!
料理家・東條麻備さんに聞いた京都のおせち料理あれこれ。白味噌の京風お雑煮の作り方もご紹介!

料理家・東條麻備さんに聞いた京都のおせち料理あれこれ。白味噌の京風お雑煮の作り方もご紹介!

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おせち料理やお雑煮はお正月の楽しみ。たくさんの料理がお重に詰まっていて、見るからに豪華! 家庭の味もあると思いますが、近年は、デパートや有名料亭の贅沢なおせちなども話題になるお正月のごちそうです。一年の始まりに食べるということで、一つひとつの料理に、それぞれ「いわれ」があるとか。京都生まれ、京都育ちで、京都・嵐山にある、うつわのサロン&ギャラリー「麻乃屋」店主で料理家の東條麻備(とうじょう・まび)さんに、京都のおせちについて教えてもらい、京都独特の白味噌仕立てのお雑煮の作り方をご紹介します。

盛り付けは少し余裕を持って、が京都流

年に一度のハレの日を祝うおせち料理(写真提供:東條麻備さん)
年に一度のハレの日を祝うおせち料理(写真提供:東條麻備さん)

おせち料理の〝せち〟とは、季節の節目である〝節(せち)〟の日のこと。
「平安時代には宮廷で、お正月を含む5つの節に『五節会(ごせちえ)』の儀式が行われ、特別な料理を神さまに供えていたそうです。その風習が、おせち料理として今に残っています」と、東條麻備さん。
おせち料理はその内容から、「祝い肴(いわいざかな)」・「口取り(くちとり)」・「焼き物」・「酢の物」・「煮物」の5種類に分類できます。祝い肴・口取りは、少し耳慣れない言葉かもしれませんが、お正月に飲むお屠蘇(とそ)とともに食べる、いわゆるおつまみになるような料理です。
重箱(じゅうばこ)への詰め方にもルールが。地域や各家庭によっても異なりますが、五段の重箱に詰めるのが正式だと東條さん。一の重には祝い肴と口取り。そして、ニの重は焼き物、三の重は酢の物、四の重には煮物を詰め、五段目は〝福を詰める〟場所として空けておくそう。重箱には、幸せを積み重ねるという意味もあるといいます。
「あくまで一般的な傾向ですが、京都では重箱にお料理を隅々まで詰めるのを好まないといわれています。裏じろの葉を敷くなどし、お重の余白もいかして盛り付けます」(東條さん)

一つひとつの意味を感じながら食べる新年のごちそう

祝い肴の代表格である、数の子、ごまめ、黒豆(写真提供:東條麻備さん)
祝い肴の代表格である、数の子、ごまめ、黒豆(写真提供:東條麻備さん)

「数の子、ごまめ、黒豆、たたきごぼう、紅白なます。おせちの定番ともいえる、こういったお料理は、華やかさ・おいしさだけではなく、それぞれにもおめでたい意味やいわれがあり、一年を幸せに暮らせるようにとの願いが込められています」と、東條さんは話します。
例えば、数の子は、ニシンが親だということで、二親健在を連想させる縁起物。また、たくさんの粒があるので子だくさん、つまり子孫繁栄のイメージ。
ごまめは乾燥させたカタクチイワシを乾煎りして醤油とみりん、砂糖で味付け。イワシが田畑の肥料に使われていたことから、「田作り」とも呼ばれます。〝五万米〟の当て字で、豊年豊作を願う一品でもあります。
黒豆は、マメに働き、マメに暮らせるようにとの思いから。黒い色には、魔除けの意味もあるとか。
たたきごぼうは、地中深く根を張るごぼうのように、細く長く家族の幸せが続きますように、と一家安泰を祈願するもの。そのほかのおせちにも、年初めにふさわしい、縁起を担ぐ意味合いが込められています。

京都らしいおせち料理の一品として挙がるのが棒鱈(ぼうだら)。完全に水分が抜けてカラカラになるまで干した棒状のタラを1週間ほどたっぷりの水にひたし、身を戻してえび芋と炊き合わせます。
「〝たらふく(鱈福)食べられる〟の語呂合わせから、食べ物に困ることがないように、との願いがこめられた縁起物です。その昔、海の幸が手に入りにくかった京都においては、干物である棒鱈は、おせちの食材として重宝されたのでしょうね」(東條さん)

お皿に盛り付けるときも美しく。(写真提供:東條麻備さん)
お皿に盛り付けるときも美しく。(写真提供:東條麻備さん)

また、おせちは縁起物であると共に、その昔、三が日には家事を休めるようにと考えられた保存食でもありました。現代は、元旦から開いているお店も増え、そうした意味合いは薄れつつあります。
「我が家でも、昔ながらのおせち料理は夫も息子もあまり好まなくて(笑)。人気のあるローストビーフを入れるなど、少し現代風にアレンジをしています」と、東條さん。
それでも、伝統に敬意をもって「祝い肴三種」とされる数の子、ごまめ、黒豆(関西では数の子、たたきごぼう、黒豆の場合も)〟は必ずつくり、年末はおせちにかかりきりになるのだとか。
「まず、12月27日ごろに黒豆を水に浸すところから、スタート。その後、ごまめ、数の子…と、日持ちのするものから順に進めていき、だいたい30日にお煮しめを作って、大みそかに完成です。昔は、だいたいどこのお家も、年の瀬はこういった感じだったのではないでしょうか。確かにかなり手間はかかりますが、この時間が楽しい。これがないと、気が済まないし、年が越せません!」と、東條さんは微笑みます。

京都のお雑煮は、白味噌仕立て。丸餅を焼かずに使用

白味噌仕立て、丸餅のお雑煮。朱の漆のお椀は、東條さんが父方の祖母から受け継いだもので、お正月にだけ使うといいます。
白味噌仕立て、丸餅のお雑煮。朱の漆のお椀は、東條さんが父方の祖母から受け継いだもので、お正月にだけ使うといいます。

京都生まれ・京都育ちの東條さんがつくるお雑煮は、白味噌仕立て。まろやかで甘みのあるお汁が独特です。「おせちを好まない息子も、白味噌のお雑煮は大好物です。お正月以外にリクエストされることも」と、東條さん。

具材はいろいろですが、縁起が良いとされる祝い大根、金時にんじん、頭(かしら)いもなどが一般的とされています。また、丸餅を焼かずに使うのも特徴で、汁のなかで餅を煮溶かし、とろみにするつくり方もあります。
「京都のお雑煮は昆布だしのみで、というお家も多いようですが、我が家では昆布と共に、まぐろ節・かつお節も使います。幼いころには、大根やにんじんを梅の型で抜いてお手伝いしてつくっていた、実家でもずっと食べているシンプルなお雑煮です。今日は大根と金時にんじんは丸く型抜きし、日の出としました」

お雑煮をおいしく作るコツは、白味噌をたっぷり使うこと、と東條さん。「京都のお雑煮は、知らない人が見たら驚くほどの量の白味噌を使います。それだけに、味の要となる白味噌は、好みのものをここで買う、と決めている人も多いですよ」

【白味噌のお雑煮のつくり方】
〈材料(4人分)〉
だし汁……600cc
白味噌……200g
丸餅……8個
大根、金時にんじん、柚子の皮、かつお節……各適量

〈つくり方〉
①大根と金時にんじんを輪切りにし、型抜きして、面取りする。水からゆでて、軽く火を通しておく(歯ごたえが残るくらいのゆで加減に)
②だし汁を鍋に入れて中火にかけ、沸騰したら白味噌を加えて溶く。いったん火から下ろし、ザルなどでこして、もう一度、鍋に戻す。弱火でコトコトと10分くらい炊く
③別の鍋に湯を沸かし、丸餅を入れて弱火にし、餅を温める(5~10分くらい)
④お椀に❸の丸餅、❶の大根と金時にんじんを盛る
⑤ゆっくりと❷を注ぎ、柚子の皮を飾る。かつお節を乗せる

お餅は焼かずにゆでて。丸餅は、〝円満〟の願いがこめられているとか
お餅は焼かずにゆでて。丸餅は、〝円満〟の願いがこめられているとか
「お汁に白味噌を加えたあと、弱火でしばらくコトコト炊くと麹くささが消えるんです」と、東條さん
「お汁に白味噌を加えたあと、弱火でしばらくコトコト炊くと麹くささが消えるんです」と、東條さん
少しとろみのあるお汁を、丁寧に注ぎ入れます
少しとろみのあるお汁を、丁寧に注ぎ入れます
仕上げに松葉のかたちに切った柚子を飾り、かつお節をこんもりと乗せ、完成
仕上げに松葉のかたちに切った柚子を飾り、かつお節をこんもりと乗せ、完成

まったり、濃厚な味わいの白味噌仕立てのお雑煮は、寒い季節にぴったり。今年のお正月は、白味噌のお雑煮づくりにトライしてみませんか?


〈うつわのサロン&ギャラリー「麻乃屋」〉
https://asano-ya.com/

文と編集の杜

フリーで活動していたライター・瓜生朋美が、2013年に「文と編集の杜」を設立。2017年法人化。業務は「読みものをつくること」。インタビュー、観光系ガイド、広告記事、書籍などジャンルを問わず、企画・編集・ライティングを行っている。近年は、イベント運営や広報代行も担う。2020年、事務所内に、表現を楽しむスペース「店と催し 雨露」を併設。イベントの開催や、雑貨の販売も行っている。http://bhnomori.com/

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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