夏野菜の代表ともいえるトマトは、“トマトが赤くなると医者が青くなる”ということわざがあるほど、栄養価の高い野菜です。見た目の可愛らしさや育てやすさから家庭で栽培する人もいらっしゃいます。
トマトが安く出回る旬の時期にたくさん買ってしまったり、家庭菜園の収穫時期になって次々に実るトマトの大量消費に困ったりしたことはありませんか?
そのようなときに知っておいて欲しい、古くから親しまれてきたトマトの保存法が”ドライトマト”です。ドライトマトは家庭でも簡単に作ることができ、生のトマトに比べて栄養も旨みが凝縮されて美味しく、料理にも使いやすい食材です。
この記事では、料理人歴20年以上、イタリア料理の修業経験もある私が、お家で簡単にできるドライトマトの作り方やアレンジレシピをご紹介します。トマトを育てている方やトマト好きの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
- ドライトマトの基本情報
- ドライトマトとは?
- ドライトマトの定義
- ドライトマトの歴史と起源
- ドライトマト作りの体験談
- ドライトマトを作ったきっかけ
- ドライトマトの魅力
- ドライトマト作りの失敗談
- ドライトマトを作ってみよう!
- ドライトマトの材料と適した品種
- ドライトマトの作り方
- ドライトマトの保存法
- ドライトマト作りの注意点
- ドライトマトを使った料理レシピ
- ドライトマトのパスタ
- チキンソテー ドライトマトソース
- ドライトマト作りを存分に楽しめるのはこんな住まい
- 乾燥に適した環境(1)ルーフバルコニー付きの住まい
- 乾燥に適した環境(2)バルコニー付きの住まい
- 専用庭付き物件でトマト栽培から始めてみる
- おうちで簡単にドライトマト作りを楽しみましょう!
ドライトマトの基本情報
まずは、ドライトマトの概要と歴史について紹介します。
ドライトマトとは?
ドライトマトとは、トマトを乾燥させたものです。市販品では、完全に乾燥させた乾物のドライトマトや、オイル漬けされて瓶詰めになっているものが多いです。
トマトを乾燥させると余分な水分が抜けて旨みが凝縮され、干すことでトマトの旨み成分の「グルタミン酸」と「グアニル酸」というきのこと同様の旨味成分が増幅します。栄養価も、生のトマトよりも凝縮されています。
ドライトマトの定義
ドライトマトとは、トマトを乾燥させたものを指します。干し方はいろいろで、生からか加熱して機械乾燥させたもの、トマト生産者が自社の加工場で天日干しものなどが一般的です。
トルコやイタリアなどの海外産のものも多く市販されています。干し方により、柔らかさの残るセミドライトマト、完全に乾燥させたドライフルーツのようなドライトマトなど、いくつもの種類があります。
ドライトマトはオイル漬けされたものや、完全に乾燥させて乾物としてそのまま加工保存したものが販売されていることが多いです。使うときはオイル漬けのまま、もしくはお湯で戻してから調理します。
ドライトマトの歴史と起源
まずは、トマトの歴史からご紹介します。トマトの原産地はペルーを中心とした、アンデス山脈周辺だといわれています。16世紀にメキシコからヨーロッパにトマトが伝えられました。
当時のヨーロッパではペラドンナという植物にトマトが似ていたことから、最初は毒草として、食用ではなく観賞用として育てられていました。イタリアの一部の上流階級では、媚薬として乾燥させて煎じ薬や香油と共に用いられることもあったそうです。
その後、イタリアなどでは17世紀頃から徐々に食べられ始め、18世紀には食用のトマト栽培が始まり、貴族から庶民までトマトを使った料理を食べるようになりました。日本には17世紀頃に観賞用としてトマトが伝来しましたが、食用となったのは明治以降です。
乾燥トマトの起源は中東にあるといわれています。当時のトルコやイランでは、竹製のカゴにトマトを詰めて天日干しで乾燥させ、日持ちをよくする方法が使われていました。その後、乾燥トマトはヨーロッパなどに伝えられ、イタリアなどの国では、水煮缶の誕生する前から、保存方法として取り入れられていたそうです。
味的にも栄養的にも料理に欠かせないトマトを長期保存して美味しく食べるために、ドライトマトという加工方法は定着していきました。
ドライトマト作りの体験談
ここからは、私がドライトマトを作ったときの体験談をご紹介します。ドライトマト作りのご参考になれば幸いです。
ドライトマトを作ったきっかけ
私が本格的に料理人として働き始めたイタリア料理屋のキッチンで、初めてドライトマトに出会いました。今では、輸入食材店などでよく見かけるようになったイタリア産のオイル漬けドライトマトです。当時の私はオイル漬けされたドライトマトの存在を知らなかったので、イタリア産の梅干しかと思っていました。
あるとき、シェフが有機野菜に凝り始めて取引先の農園から取り寄せたプチトマトを大量に使い、自家製のドライトマトを作り始めたのです。味見させてもらったドライトマトの凝縮された甘酸っぱさや濃厚さ、旨みに驚きました。それから、シェフの作り方を真似して、自分でもドライトマトを作ってみることにしました。
オーブンで加熱しながら乾燥させ、その後干すというやり方です。私は、大量にトマトをいただいたときや、食べてみて味が薄いと感じたトマトの味を凝縮させたいときに、ドライトマトを作ります。ドライトマトにすれば長期保存できますし、シンプルなパスタやピザにのせるだけで美味しくなるので、気に入っています。
ドライトマトの魅力
ドライトマトの魅力は、なんといっても旨みが詰まった美味しさです。ピザやパスタ、ブルスケッタ(薄く切って焼いたフランスパンにトッピングする料理)、肉料理や魚料理のソースに旨みを足してくれます。生のトマトのように水っぽくならずにトマトの味を楽しめるところも魅力です。
水分が抜けているのでたくさん食べられて、トマトの栄養素であるリコピンやビタミンC、GABAやアミノ酸を、普通のトマトよりも摂取できます。
ドライトマト作りの失敗談
ここではドライトマト作りで私が失敗したケースをご紹介します。
・オーブン加熱する際、温度が高くてすぐに焦げてしまった。
・生から部屋の日当たりのいいところで干したところ、なかなか乾燥できずにただシナシナになっただけだった。
・水分の多い大きなトマトを薄く切って、オーブンで加熱しながら乾燥させようと試みたところ、トマトの身質によりぐちゃぐちゃに形が崩れてしまった。
・レンジで温めて乾燥させる方法を試したところ、水分が飛ばず、ただのトマト煮になっただけだった。
・常温保存しようとして、半生だったからかカビが生えた。
・保存するときにエクストラバージンオリーブオイルを使ったら、オイルの性質と濃厚さからか苦くなってしまった。
このように、ドライトマトは簡単に作れる反面、トマトの品種や保存方法に気をつけないと失敗することがあります。
ドライトマトを作ってみよう!
ドライトマトの簡単な作り方をご紹介しますので、実際に作ってみましょう!
ドライトマトの材料と適した品種
まずは、ドライトマト作りに必要な材料をご紹介します。
【ドライトマト作りの材料】
・トマト
・塩
・食用油(オリーブオイル・ひまわり油・グレープシードオイル・キャノーラ油など)
・お好みで好きなハーブ(ローズマリーなど)
ドライトマトはトマトを乾燥させるだけなので、使う材料はシンプルです。しかし、”私のドライトマト作りの失敗談”でもご紹介したように、ドライトマト作りに適さないトマトの品種があるので注意してください。
ドライトマト作りには、加熱・調理に適した品種や果肉がしっかりして緻密な品種が適しています。ゼリー部分が少なく、水分が出にくい品種もおすすめです。大玉よりも、中玉やプチトマトの方が加熱・乾燥しやすく、味も凝縮します。
【ドライトマトに適した品種の例】
・ポルゲーゼ
・サンマルツァーノ
・アイコ
・アメーラ
・ロッソナポリタン
私の経験では、‘‘桃太郎‘‘や‘‘ファーストトマト‘‘のような生食でみずみずしく、さっぱりした大玉タイプのトマトはドライトマト作りには適していないようです。なぜなら、大ぶりに切って時間をかけて乾燥する必要があり、形崩れしやすく、家庭で上手く乾燥させるのが難しく感じたからです。
ドライトマトの作り方
ここからは、おうちで簡単にできるドライトマトの作り方を紹介していきます。私はオーブンで加熱・乾燥させてから、さらに干す方法を採用しています。
【ドライトマトの作り方】
(1)トマトを洗ってヘタを切り落とし、横から半分にカットしたら種とゼリー状の部分を取ります。(薄く切り過ぎると裏返したときにぐちゃぐちゃに形崩れしたりして扱いにくいです。)
(2)塩を薄く振って、5分くらい置き、表面に水分が出てきたらキッチンペーパーで拭き取ります。
(3)オーブンの天板にオーブン用クッキングシートを敷き、(2)のトマトをキッチンペーパーで水分を抑えながら並べていきます。
(4)130℃のオーブンで1時間、加熱・乾燥させます。(焦げていないかときどき様子を見ましょう)
(5)1時間後、一度オーブンから天板を取り出し、トマトにまだ水分が残っている場合はキッチンペーパーで抑えて、さらに20分ずつオーブンで加熱・乾燥させます。
(6)オーブンから出したら、ザルなどに並べて粗熱を取ります。乾燥した日当たりのいい場所で天日干しをするか、風通しのいい窓辺などに置いて、さらに1〜2時間乾燥させます。味見をしながら、好きな干し加減で仕上げましょう。形崩れして保存に適さない状態になってしまったときは、トマトソースなどの煮込み料理に使い回せば問題なく使えます。
天日干しをする場合はカラッと晴れた日に、日当たりのいい場所に干すようにしましょう。干す時間は、太陽が出ている10時から15時ぐらいを目安にして、虫やほこり、急な雨などに注意してください。トマトは水分が多いので、あらかじめオーブンで加熱することで水分が抜けやすくなります。
ドライトマトの保存法
ドライトマトの保存法は、基本的にオイル漬けが多いです。業務用の機械などで乾燥させないと、湿度の高い日本では完全に乾燥させることが難しく、半乾き状態ままでは長期保存できません。オイル漬けにしない場合は、保存容器に入れ、冷蔵で5日、冷凍で1ヶ月ぐらいの保存期間となります。
オイル漬けにする場合は、消毒した瓶などにドライトマトを入れ、余計な水分が入らないように注意してください。ドライトマトが空気に触れないように、たっぷりかぶるくらいの油(上記のオリーブオイルやひまわり油など)を注ぎます。オイル漬けで保存するときも、高温にならないよう、冷蔵庫で保存しましょう。
お好みで乾燥ローズマリーなどのハーブと共に漬けるのもおすすめです。漬けているオイルはパスタや料理などに使えて、風味を楽しめます。ドライトマトはそのまま使うか、取り出してお湯やヴィネガーに3時間くらい浸けて柔らかく戻して使います。
ドライトマト作りの注意点
ドライトマト作りの失敗談でご紹介したように、注意点は、トマトの品種と作るときのオーブンの温度、乾燥させる環境と保存方法です。
【ドライトマト作りで注意したいポイント】
●トマトは身のしっかりした調理用トマト、もしくはプチトマト類が適しています。
●オーブン加熱する際は時間をかけてゆっくりと乾燥させましょう。
私は早くできるかなと160℃を越えるぐらいで作り、焦げてしまいました。ゆっくり時間をかけて、加熱・乾燥させたいので、温度は120℃から140℃ぐらいの設定がおすすめです。
●天日干しをするときは、湿度高い日を避けてください。
日本は高温多湿になりやすいですが、湿度があると乾燥させられません。トマトを天日干しするときは、よく晴れたカラッと乾燥した日が望ましく、外気が綺麗なところで行ってください。よく晴れた日に、日当たりのいい出窓やバルコニーで干すのがおすすめです。
●ドライトマトは適した方法で保存しましょう
ドライトマトを保管するときは、空気に触れたり水分があったりするとカビが生える原因になります。キッチンペーパーでよく水分を吸収し、完全にドライトマトが浸かるまでオイルに漬けて冷蔵保存しましょう。オイル漬けにせず、そのままで使いたいときは冷蔵庫か冷凍庫で保存し、早めに使い切るようにしてください。
ドライトマトを使った料理レシピ
ここからは、ドライトマトを使った料理の作り方レシピの一例をご紹介します。
ドライトマトのパスタ
【材料】(1人前)
・ドライトマト(プチトマトでも可) 10粒
・しらす 20g
・オリーブオイル(ドライトマトを漬けていたもの) 大さじ2〜3
・ニンニク 1〜2かけ
・大葉 1枚
・スパゲッティーニ(パスタ) 100g
・塩、コショウ 適宜
【作り方】
(1)ニンニクは薄くスライスかみじん切りにして、大葉は千切りにします。
(2)お湯を沸かし、湯量に対し2%の塩を入れ、パスタを茹で始めます。
(3)オリーブオイルを入れたフライパンに、(1)のニンニクを入れて弱火で加熱し、香りが出たらしらすとドライトマトを入れましょう。
(4)茹で上がったパスタを(3)に入れて、絡めながら炒めて塩コショウで味を調えます。
(5)器に盛り、(1)の大葉をのせて完成です。
チキンソテー ドライトマトソース
【材料】(1人前)
・鶏モモ肉 1枚(200gぐらい)
・塩、コショウ 適宜
・ドライトマトを漬けていたオイル 大さじ2
・☆ドライトマトソースの材料
・☆ドライトマト 20g
・☆バルサミコ酢か黒酢 大さじ3
・☆砂糖 大さじ1
・☆醤油 大さじ1
【作り方】
(1)鶏肉に塩コショウで下味をつけたら、皮面からカリッと焼きます。
(2)ドライトマトは粗みじん切りにして、☆のドライトマトソースの材料と合わせておきましょう。
(3)鶏肉が焼けたら、先に器に盛りつけます。
(4)鶏肉を焼いたフライパンに残った余分な油をキッチンペーパーで軽く拭き取り、(2)のソースの材料を入れて煮詰めます。半量くらいになるまで煮詰めたら、鶏肉にかけて完成です。
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ドライトマト作りを存分に楽しめるのはこんな住まい
ドライトマト作りをもっと楽しむために、理想の住まいをご紹介します。
乾燥に適した環境(1)ルーフバルコニー付きの住まい
ドライトマトは干し野菜なので乾燥に適した環境があると便利です。ルーフバルコニーは屋根付きで、しかもガラスで囲われている温室のような物件もあり、汚れた外気に晒されずに天日干しができます。ぜひ、カラッと晴れた日にルーフバルコニーで、天日干しで作るドライトマトにチャレンジしてみてください。
乾燥に適した環境(2)バルコニー付きの住まい
ルーフバルコニーまで豪華な設備ではなくても、バルコニー付きの物件で日当たりがよく空気の綺麗なところであれば、野菜を干せます。乾燥した天気のいい日にバルコニーいっぱいに野菜を広げて干し野菜を作るのは、丁寧な暮らしの中の優雅な時間になりそうですね。
専用庭付き物件でトマト栽培から始めてみる
ドライトマト作りの理想は、トマト作りから始められることです。食べるものを自分で管理して作ることができれば安心です。
専用庭付き物件なら、ドライトマトに適した品種を自分で有機栽培などのこだわりの方法で栽培できます。収穫したあとの加工や天日干しも、専用の庭があれば問題ないでしょう。
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おうちで簡単にドライトマト作りを楽しみましょう!
今回の記事では、お家で簡単にできるドライトマトの作り方についてご紹介しました。ドライトマトの魅力は、なんといっても使いやすさとギュッと凝縮された旨みです。たくさんあるトマトの大量消費にも困らず、むしろ常備しておくと重宝します。
ドライトマト作りから、野菜栽培へと気持ちが向かうこともあるでしょう。住まい選びや丁寧な暮らしの一環として、食にこだわり、食を大切にするための環境選びも大切だと感じます。
ぜひ美味しいものを手作りして、健康的な生活を送るための参考にしてみてくださいね。