山梨県の大菩薩嶺は、作家、深田久弥の日本百名山のひとつにも選ばれている非常に人気の高い山です。その存在を一躍有名にさせたのは、大正から昭和にかけてのベストセラー小説『大菩薩峠』(中里介山)です。
大菩薩嶺の魅力は、たくさんあるといわれていますが、特に雷岩から大菩薩峠の間の稜線歩きの開放感と紅葉の美しさをあげる人が多いようです。
稜線については、歩いている間ずっと大きく裾野を広げる大迫力の富士山を見渡せ、同時に長く連なる南アルプスや八ヶ岳などの絶景も楽しめます。そして秋には、ブナなどの美しい紅葉が山肌を彩り、見頃の季節は混雑といっていいほど登山客でにぎわいます。
しかし、大菩薩嶺の見所はそれだけではありません。初夏から秋にかけては稜線上がお花畑となり、冬に雪化粧した姿も格別といえます。また、標高1,600m近くまでクルマで行けるアクセスの良さや初心者向けのコースがあるといったところも人気の理由となっています。今回は、比較的登山者の少ない降雪後の犬連れ登山の様子をお伝えします。
山の名前:大菩薩嶺
標高:2,057m
山域:大菩薩連嶺
都道府県:山梨県
※登山道の状況は、1回の豪雨などで変化することがあります。必ず出発前にネット等で確認しましょう。
※登山に出掛ける際は登山届を提出しましょう。提出方法は下記記事などでご確認をしてください。
登山コースとアクセス方法
登山コース
※コースタイムに休憩は含みません。
一般的には上日川峠駐車場から雷岩を経由して登頂し、稜線をたどって大菩薩峠経由で下山する周回コース(約7.2km)が人気です。しかし、冬期は上日川峠につながる道路が通行止めとなります。そこで今回は、丸川峠分岐駐車場からスタートして丸川峠経由で登頂し、稜線をたどって大菩薩峠を通り駐車場へ戻る約12.5kmの周回コースを選択しました。コースタイムは約7時間40分です。
アクセス方法
東京都内から行く場合、中央自動車道を利用して勝沼ICで降ります。所要時間は1時間40分前後です。
大菩薩嶺の犬連れ登山体験記
※犬のノーリードは周囲に他人がいないことを確認して行っています。
※私たちは写真を撮ったり、犬と遊んだりしながら登るのでコースタイムよりかなり遅くなりがちです。
真っ白に雪化粧した美しい稜線を発見
私は長い稜線歩きが好きです。スコーンと視界が突き抜ける稜線上に立つと爽快な気分になるからです。さらに見渡す限り白銀の世界なら申し分ありません。
ある日、登山情報サイトを眺めていると、まさにその通りの写真を見つけました。
「場所はどこ!?」
目を見開き、画面をスクロールさせていきます。そこで出てきた山名は大菩薩嶺。真っ白に雪化粧した稜線の延長線上に、どしっと裾野を広げた富士山が鎮座しています。その背景には澄み渡った青空が――。
「ぜひとも行ってみたい!」
直感でそう思い、大菩薩嶺について調べました。すると年に1~2回しか雪が積もらないことが判明。時は12月。待って、待って、待って3月になりました。「もう今年は無理か」と諦めかけていたら、山頂に40cmの雪が積もったという情報が入りました。しかもちょうど週末。もう行くしかありません!
駐車場はすでに満車状態
7時30分に丸川峠分岐駐車場に到着しました。わが家としては早めに着いたのですが、駐車場はすでに満車状態でした。雪の日を狙っている登山者は、意外に多いみたいです。だからといって諦めるわけにはいきません。何度も往復して何とか停めることができました。
着替えて7時55分にスタート。登山アプリで確認すると標高は980mでした。つまり、ここから約1,000m登ることになります。この時点で積雪はまったくありませんでした。最初の約1kmは崩壊した道路上を歩きました。
1km・25分で登山道の入り口に到着。そこからは急登がはじまりました。スキー場の上級者コース並みの傾斜です。大岩もゴロゴロしていて蓼科山(八ヶ岳)を思い出させます。大型犬の泰楽(愛犬)は、ぴょんぴょん登りましたが、小型犬連れはもしかしたら苦労するかもしれません。また、ずっと雪はなく、展望もありませんでした。要するに退屈なのにきつい――。
丸川峠で職人気質の猟犬に遭遇
1,400mを超えたあたりで地面に雪がちらほら。1,500mを超えると雪が薄っすらですが満遍なく積もるようになりました。3km・2時間で丸川峠に到着です。やっと視界が開けました。ここは牧場のような地形で、気持ちのいい雪原が広がっていました。そして、早くも富士山が顔を見せてくれました。癒される~。
ぼ~っと富士山を眺めていたら、突然、鹿が視界を横切りました。「えっ!?」と泰楽のリードを握りしめます。すると次々に鹿が走り出てくる。大人だけでなく子どもも含めて合計7~8頭はいたと思います。私たちからの距離は20mくらいです。登山をしていると、鹿に遭遇することは珍しくありませんが、それにしても近い。
「何ごと!?」
と思ってきょろきょろしていたら、今度は2頭の犬が飛び出してきました。猟犬です。それがわかったのは、首にGPSのような機械を付けていたから。「やばいっ!」と反射的に再度、泰楽のリードを握り直しました。ところが猟犬たちは泰楽のことを完全に無視。懸命に鹿の気配を探りながら追いかけていきました。その姿は、生真面目な職人といった雰囲気。頭が下がる思いでした。
その後、再び森の中へ。木々の枝に雪が積もり出しました。このような場合、通常なら絵本に出てくるようなメルヘンの世界になります。しかし、今回は樹高が高過ぎて、普通に歩いていたら雪が視界に入りません。要するに、また退屈なコースとなりました。
山頂を通り過ぎるといきなり富士山がどっかーん!
そんな感じで3時間52分・5.7kmで山頂に到着。残念ながら山頂は森の中で展望はありません。
しかし、そのことは事前に調べて知っていました。メインイベントは、そこから大菩薩峠に向かうことではじまるのです。5分・300mほど進むと森を抜けます。するといきなり真正面に富士山がどっかーん!
苦労が報われた瞬間です。そのすぐ左手に雷岩があります。登ると富士山の右側に南アルプスも巨大屏風のように横たわっていました。その迫力は富士山にも負けていません。
さらに右側にも存在感がある山塊がありました。金峰山など奥秩父山塊です。振り返ると霧氷がきらきら。
まるでCGでつくったような理想の風景が続く
爽快感・迫力感・うっとり感。総合力で歴代最高クラスの景観です。しかも、その感動的な絶景が大菩薩峠まで約1.7kmも続くのです。これぞ日本百名山の実力。まるでCGでつくったような理想の風景です。歩いている間はずっと富士山、南アルプス、白銀の尾根道を順番に眺め、「うわ~っ」「すごい!」「あそこ見て!」と声を出しっぱなし。写真を撮ってばかり。私たちはあっさりノックアウトされてしまいました。
風速は10m弱といったところ。若干強めで遮るモノがないので、途中でランチをとる気にはなれませんでしたが、歩くには支障ありませんでした。気温も2度と快適。そのままミドルレイヤーを着ることなく上着2枚で進みました。
13時14分に賽の河原に到着。小屋を風よけにしてハンバーグのホットサンドをつくって食べました。泰楽は定番のレンジでチンしてきたサツマイモ。これさえあれば、多少ハードな登山でも無尽蔵のスタミナでついてきます。そこから20mくらい登り返すと再度富士山がドン!絶景を堪能しつつ大菩薩峠に到着です。
本当に夢のような尾根道でした。しかし、そこから先は再度森の中に入ります。時々舗装道路も登場。下りが苦手な私は、途中で左ひざがズキズキ痛みだしました。
広場が見えたので「やっとゴールか」と思ったら途中の千石茶屋でした。心が折れそうになりました。そして、疲れ切った状態で丸川峠分岐駐車場に到着。8時間27分・13.8kmの山行でした。
初心者や長距離コースが苦手な人は冬期を避けた方が無難
上記にもあるように雷岩から大菩薩峠までの風景は、まさに秀逸でした。どこに視線を移しても想像上の風景を切り取った1枚の絵のようで、何度も「これは現実か?」とまばたきをしてしまいました。
その間は特に危険個所はなく、注意することもありません。それゆえ、初心者からベテランまで人気の山で、紅葉の季節などは登山客でごった返すのでしょう。しかし、今回のコースは中級以上の人向けだと思います。
まず、登山道に入るとすぐに大岩が転がる急登が続きます。ここは小型犬連れだと苦労するでしょう。何より個人的には長過ぎる上に尾根道以外に見所が少ないので、退屈に感じる場面が多々ありました。さらに復路は単調な下りが続くので左ひざが痛くなってしまいました。
ですから、初心者や長距離コースが苦手な人、または小型犬連れは冬期を避け、上日川峠駐車場から登った方が満足度は高いと思います。ただし、その時期は混み合うことも多いので、犬連れの場合は、くれぐれもマナーに注意しましょう。
大菩薩嶺を満喫できる住まい
駐車場付きは必須
大菩薩嶺に限らず犬連れ登山を満喫するなら、駐車場付きという条件は必須になります。クルマがあれば犬を乗せて様々な山へアクセスできます。また、登山に適した山の多くは地方にあります。地方はクルマ社会。そういった意味でも駐車場は必須といえるでしょう。