茨城県の南東部に位置する、人口約3万人の行方市(なめがたし)。読み方が非常に難しく、行方=「ゆくえ」と間違えられやすいですが、行方「なめがた」が正しい読み方です。
霞ヶ浦と北浦の2つの湖に挟まれていることから「弐湖(にこ)の国」とも呼ばれます。霞ヶ浦湖岸の一部は「水郷筑波国定公園」に指定されており、筑波山や富士山を望む雄大な自然景観が特徴です。
私は結婚をきっかけに神奈川県から移住し、行方市で田舎暮らしを満喫しています。現在は夫と小さな赤ん坊、動物たちとともに暮らしています。
移住当初の私は、行方市に対して「夕日がダイナミックで素晴らしい町」という印象を強く持っていました。しかし、実際に暮らしてみると、子育て支援制度の手厚さや農産物の豊富さなど、住むことで知った魅力がいくつもありました。
そこでこの記事では、行方市在住歴5年目の私が、市内の魅力をさまざまな観点から紹介します。
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行方市はどんなところ?基本情報
はじめに、行方市の特徴や名産など、基本情報を紹介します。私が行方市に住もうと思った決め手や、気に入っている点にも触れていきますので、ほどよい田舎で暮らしたい方はぜひ参考にしてみてください。
行方市の概要
行方市は、茨城県の南東部に位置する町です。霞ヶ浦と北浦の2つの湖に面しており、沿岸部はレイクビューが特徴的で、「湖が目の前」という立地の住まいも多く、独特な景観を楽しめます。内陸部は標高30m前後の丘陵大地になっており、農産物の栽培に適した環境です。
2024年7月現在の人口は3万1,710人、1万3,136世帯です。
東京都心から行方市(玉造庁舎)までは車で約2時間、水戸県庁からは約45分の場所に位置しています。東京駅から高速バスを使えば、「常磐自動車道」か「東関東自動車道」を経由して約2時間。2026年度には行方市内に「東関東自動車道」のICが開通予定で、高速道路を利用したアクセスがより便利になる見通しです。
市内に電車の駅はありませんが、JR常磐線の土浦駅・高浜駅・石岡駅や、JR鹿島線の潮来駅を利用できます。東京駅から市役所の庁舎まで高速バスも運行中です。
また、行方市(玉造庁舎)から茨城空港(第一駐車場)まで車で約15分、行方市(麻生庁舎)から成田空港(第一ターミナル)まで車で47分と、空港までのアクセスも良好です。わが家は頻繁に旅行へ出かけるため、空港が近いのは大きなメリットだと捉えています。
行方市の住みやすさ
ここでは私が行方市で暮らし始めたきっかけと、気に入っているところを紹介します。
行方市に住んだ決め手
私は現在、行方市に移住して5年目を過ごしています。ここに住むことにした決め手は、とにかく夕日が美しかったこと。私たち夫婦は全国各地を旅するのが好きなのですが、行方市の夕日の美しさは全国でもトップクラスだと思っています。奈良時代(700年代)に編纂された『常陸国風土記』にも、行方市は風光明媚な地として登場します。
また、農産物が豊富な点も魅力的でした。行方市では、年間100品目以上の農畜産物が生産されています。直売所へ行けば、安くて新鮮な野菜が一年中選び放題。行方農業の特色は「多品種」ですが、これは気象災害の少ない温暖な土地柄で露地栽培がしやすいことが関係しています。
特に名産のサツマイモは「行方かんしょ」として、2023年に地理的表示(GI)保護制度に登録されたばかり。わが家のおやつは、高確率で焼き芋です。ほくほく系からねっとり系まで、幅広い品種のサツマイモを堪能できます。色も黄・オレンジ・紫と多様で、見た目も楽しいです。
行方市の気に入っているところ
実際に暮らしてみると、夕日や農産物以外にもたくさんの魅力があることがわかりました。たとえば災害の少なさが挙げられます。行方市は大きな自然災害を受けたことがなく「千年村」に認定されています。
千年村とは、1,000年を基準として自然的社会的災害・変化を乗り越えて、生産と生活が存続してきた土地のことです。2011年の東日本大震災後に、優れた生存立地を発見・調査する目的で発足した「千年村プロジェクト」が認定者です。私も移住してきてから、大きな災害を体験したり、聞いたりしたことはありません。
また、行方市は以下のような子育て支援に力を入れています。
●不妊検査・不妊治療費補助
●不育症治療費助成
●妊産婦健診料助成
●育児支援品贈呈(紙おむつ・おしりふき)
●出産・子育て応援給付金
●誕生祝金
●乳児健診料助成
●ブックスタート(絵本・トートバッグ)
●こども医療費助成(18歳まで医療費の一部助成)
●小・中学校や高校入学時に支援金支給
※助成制度の内容は変更になる場合がありますので、必ずお問合せください。
わが家も、不妊治療にかかった全額(保険適用外の部分)を補助してもらいました。子どもが生まれたタイミングで合計数十万円の給付金の他に、おむつ8袋とおしりふき2ケースを頂きました。
市によると今後も子育て支援は政策の中心に据えていくそうなので、子育て世帯には経済的に助かる場面が多いのではないかと思います。
行方市の住まい事情
ここでは、行方市で暮らした場合の家賃相場や、エリアごとの特徴を紹介します。今後の住まいを探す際の参考にしてみてください。
行方市の家賃相場
行方市には賃貸アパートが少なく、現在家賃相場の平均が出しにくくなっているようです。私が掲載されている物件を確認したところ、2LDKで5万~6万円台、2DKで4万~5万円台が多い印象でした。間取りは2LDKなど、ファミリー向けの広々した部屋が一般的です。空き家バンクには、タイミングによって一戸建ての賃貸物件も出ています。
参考までに、茨城県南部の中核都市である「土浦市」の家賃相場は以下です。
1R・1K・1DK:6.48万円
1LDK・2K・2DK:7.96万円
2LDK・3K・3DK:5.49万円
行方市の住みやすいエリアの特徴と魅力
行方市は2005年に3つの町(玉造町・麻生町・北浦町)が合併して誕生しました。そのためエリアを把握する際は、3つの地名に分けるとわかりやすいです。
ここからは、それぞれのエリアの特徴とともに、私が特に気に入っているスポットを紹介します。
ある程度便利な生活がしたい人には玉造エリア
玉造(たまつくり)エリアは、道の駅や展望台があり観光客がよく訪れる地域です。2024年7月31日には、道の駅に隣接した区画に動物園が開業しました。
観光帆引き船(ほびきせん)も毎年夏から秋にかけて操業中。帆引き船とは、明治から昭和にかけて霞ヶ浦の漁で使われていた船で、現在は観光用として引き継がれています。
霞ヶ浦沿いは湖岸道路がサイクリングロード「つくば霞ヶ浦りんりんロード」として整備されているため、サイクリストが多く訪れます。
また、道の駅たまつくり内にある「行方市観光物産館こいこい」では、野菜や農産物加工食品などの特産品を多数販売しています。観光で訪れるのはもちろん、住民も楽しめるショッピングスポットです。
特に人気なのが、店内で食べられるご当地バーガーの「行方バーガー」です。こちらは地産地消のハンバーガーで、霞ヶ浦で捕れたナマズ・コイ・カモなどがパティに使われています。地域の野菜もふんだんに使用した、ヘルシーな味わいです。
玉造エリアには貴重な歴史スポットもあります。茨城県指定有形文化財「大山守大塲家郷士屋敷」は、水戸黄門の愛称で知られる徳川光圀が、鹿島神宮詣での際に頻繁に宿泊した屋敷として知られています。
立派な茅葺き住宅で、水戸藩主が領内を巡視する際の宿泊所や藩政事務所として重要な拠点でした。現在は入場料を支払えば誰でも見学できるように、施設が整備されています。
生活に必要なスポットとしては、ウェルシア・ベイシア・カインズ・コメリハード&グリーン・ケースデンキ・ダイソー・西松屋・セブン-イレブン・ローソン・常陽銀行などがあります。玉造エリアは、土浦市や石岡市など店舗や飲食店がより充実した地域へも行きやすいです。
天然温泉が好きな人には麻生エリア
麻生(あそう)エリアには、霞ヶ浦湖畔に湧く天然温泉「あそう温泉・白帆の湯」があります。茨城県は温泉地が少ないといわれていますが、ここでは毎分95リットルの水が湧き、浴槽に加水を行う必要がありません。
ケイ素が多く含まれた黄褐色の温泉は、美肌にいいお湯です。日暮れ時に行くと、湯に浸かりながら夕日が沈んでいく様子を見られます。施設内には休憩室もあるため、入浴と食事をいっぺんに楽しむことも可能です。
温泉に隣接した「天王崎」は、茨城の自然100選に選ばれています。天王崎公ではキャンプイベントなどが開催されており、広い芝生スペースが気持ちいいスポットです。レジャーシートとお弁当を持っていけば、楽しいピクニックになるでしょう。湖岸沿いには砂浜もあるため、水遊びもおすすめです。
行方市商工会は、麻生エリアにあります。事業や補助金に関する事は商工会へ行くと快く相談にのってもらえるので、田舎で起業したい人などは頻繁に出向くことが多い場所です。私も商工会の職員さんには日頃からお世話になっています。
生活に必要なスポットとしては、ウェルシア・カワチ薬品・セイミヤモール・コメリハード&グリーン・セリア・セブン-イレブン・常陽銀行などがあります。麻生エリアは、鹿嶋市や千葉県香取市などへのアクセスが便利です。県をまたぎますが、私は車で30分程度の距離にある香取市のスターバックスコーヒーによく行っています。
より田舎の雰囲気を味わいたい人には北浦エリア
北浦(きたうら)エリアは、その名の通り北浦に面したエリアで、霞ヶ浦に面した他のエリアとは異なった風景が広がっています。
エリアを代表するスポットに、大型観光バスの立ち寄り場所としても人気の「らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ」があります。こちらは2013年に少子化で廃校になった跡地を利用した体験型農業テーマパークで、行方市・JAなめがたしおさい・白ハトグループが協力して完成しました。ミュージアムやレストランなどが集まっており、ここに行くだけで半日は楽しめます。
施設名:らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ
所在地:茨城県行方市宇崎1561
アクセス:JR潮来駅より路線バス鹿島北浦ライン「あそう温泉」行き乗車(なめがたファーマーズヴィレッジ中央下車・バス停より徒歩約1分)
営業時間:10時~17時(火曜日を除く)
1958年創業の和洋菓子店「菓心 松屋(かしんまつや)」では、行方市のふるさと納税返礼品にもなっている「はんなまチーズ」が購入できます。一口サイズの小さな半生チーズケーキは、市自慢のお菓子です。そのほかにもおいしいケーキやクッキー、大福などが盛りだくさん。わが家でも手土産や来客で必要なときによく買っています。
霞ヶ浦には「あそう温泉」があることは先述した通りですが、北浦にも温泉が湧いています。「北浦温泉・北浦荘」は激熱の湯が特徴の小さな温泉です。「つるるんの湯」は宿泊施設になっているため観光客にもおすすめです。
私は家からいちばん近く、静かで落ち着く雰囲気の「あそう温泉」に行くことがほとんどです。回数券を買うとお得に入浴できます。
湖に囲まれながらちょうどいい田舎暮らしができる行方市
行方市内で車の運転をしていると、湖が真横に見えていることが多く、湖をドライブしている気分になります。湖畔まで散歩に行くと視界が一気に開け、心落ち着く風景がすぐそこに見えます。このように、レイクビューを暮らしに取り入れたい人にとって、行方市はおすすめです。
多品種の野菜はもちろん、湖の水産物もおいしく行方市の食卓は豊かです。ワカサギ・シラウオ・コイ・ナマズなど、ふだんあまり耳にしない湖ならではの魚を堪能できます。健康的な食生活を送りたい人にとっては、魅力的な暮らしができるのではないでしょうか。新しい住まいを検討している方は、ぜひ行方市も検討してみてくださいね。