LIFULL HOMES App

LIFULL HOME'S/ホームズ

アプリで住まい探し!(無料)

アプリを開く

大正区と浪速区をつなぐ橋の上にあかりを灯す屋台。カモメ・ラボ、今村謙人が考える街と屋台の可能性とは
大正区と浪速区をつなぐ橋の上にあかりを灯す屋台。カモメ・ラボ、今村謙人が考える街と屋台の可能性とは

大正区と浪速区をつなぐ橋の上にあかりを灯す屋台。カモメ・ラボ、今村謙人が考える街と屋台の可能性とは

  • はてなブックマーク
  • タイトルとURLをコピー

大正区と浪速区をつなぐ大浪橋。そこに突如として現れる屋台、その名も「橋ノ上ノ屋台」。こんなところに!?と思わず足を止めてしまう人が続出し、夜な夜なその屋台にさまざまな人が集っているそうです。
そんな、まちに屋台を仕掛け、まちなかに屋台があるのをあたりまえの風景にしようと実践し続けているカモメ・ラボの今村謙人さん。大阪・大正区に拠点があると聞き、屋台活動についてお話を伺いにいくことに。そこには屋台を実践する人ならではのまちの見え方がありました。

世界一周中に思い立って始めた屋台

―屋台をはじめられるようになったきっかけからお伺いしてもよろしいでしょうか?

今村謙人さん(以下、今村さん):「夫婦で世界を一周していた時にメキシコの路上でゲリラで焼き鳥を焼いて販売していたことがあって、それがめちゃくちゃおもしろかったんですよ。僕はサラリーマンで、給料をもらうという働き方しかしてなかったので、その時初めて自分で仕込んだものをお金を払って買ってもらうという体験をして」

―お金のやり取りも含め、屋台をリアルに体感したのが、メキシコだったわけですね。

今村さん:「メキシコでやった時は自分でお金を稼げたことがすごい自信になりました。3日間ほどメキシコでやったんですけど、宿が一泊700円くらいだったので、週に1・2回、路上で焼き鳥を焼けば、メキシコでも生きていけるなと実感しました(笑)」

―その後、日本に戻られてから屋台を作って自分で使ってみるという活動を始められたんですか?

今村さん:「そうですね。世界一周が終わったあと、昔働いていた設計事務所の人に『大阪の大正区で空き家活用の事業を一緒にやらない?』と声をかけてもらって。それがきっかけで大阪へ来ちゃったんですよ。ただそれだけでは食っていけなくて。メキシコでは焼き鳥を販売してお金を稼げたけど、日本では個人で何をして稼げばいいかわからなかったんです。何をしていいかわからないけど生きていかないといけないから、というあまりポジティブではない理由で個人でも仕事を探してはじめました」

泉尾商店街のすぐそばにある今村さんの事務所
泉尾商店街のすぐそばにある今村さんの事務所

まちの人と対話をしながら屋台を続けていきたい

露店営業の許可をもらうため、必要なものを詰め込めるように、でもコンパクトに。と少し背丈が高くなったという橋ノ上ノ屋台の一部
露店営業の許可をもらうため、必要なものを詰め込めるように、でもコンパクトに。と少し背丈が高くなったという橋ノ上ノ屋台の一部

―今村さんは橋ノ上ノ屋台という名前で大浪橋の上で屋台を不定期で開かれていますが、あの場所でやろうというきっかけは何だったんでしょうか?

今村さん:「大正にきて、いろんな仕事をやりながら、屋台にまつわる仕事がどんどん増えてきて。でもメキシコでやった『街中で自由にやっちゃおう』みたいなものが、結構長い期間、自分の体の中に記憶として染み付いていました。それを日本でもやりたかった。でも日本でのルールのこともあるし、そもそも1人だとさびしいし(笑)。誰かと一緒にできたらなと2年ぐらい考えていた時にちょうどコロナ禍になって。その時はお店でお酒飲めなかったので、今一緒にやっている笹尾さんと橋の上で飲んだりしてたんです(笑)。 笹尾さんは『PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う』(学芸出版社)という本を出していて、もっと自由に個人でもまちを活用して使っていってもいいんじゃないのかなっていう本を書かれています。普段からよく会ったりしていたから、一緒に銭湯に行った時に「笹尾さん一緒に屋台やらない?」って言ったら、「いいねえ、ヒリヒリすることしたいわ」って言って(笑)。それでやることになりましたね」

―まさに橋の上でお酒を飲んでいたことがきっかけだったんですね。実際に街中で実践されていく中でどんなことを感じられていますか?

今村さん:「特に街中でやろうとすると、クレームがあるとその場所でできなくなっちゃうので、どうすれば路上でやり続けられるかを日々考えています。例えば、営業中、道ゆく人に挨拶をしたりすることで線を引かれるんじゃなくて、屋台へ行ってもいいんだなって近隣の人に思ってもらえたりとか。雰囲気が同じような人だったり、男性ばかりが集まるよりも、いろんな人がいる方がお客さんになってくれやすいとか、そういうのを笹尾さんと一緒に考えています。
結局、路上で営業し続けるためには、いろんな人と関係して関わらないとやり続けられないなと思ってきました。
たとえば、クレームも直接言われるとまだ対話ができるのですが、警察を通されてしまうと誰からクレームがきているのかがわからないんですよね。『街は誰のもの?』というブラジルのストリートを捉えた映画を製作した阿部さんにお話を聞くと、ブラジルだと街中で不満があると直接自分で声をかける人たちもいるらしいんです。そういう対話から自分たちのいい落とし所を探していくっていうのが、めっちゃ羨ましくて。
日本だとそこを飛び越えて、警察にとりあえず言ったらなんとかしてくれるだろうってなりますよね。それはすごく整った環境になってるからある意味、楽でいいんですけど、そうじゃないやり方ができたらいいなと思っています。でも、なかなか直接は言ってはくれないですね。毎回いろんな課題が勉強になっておもしろいです」

―マナーをみんなで守るっていうよりはルール化された中でみんなが生きている。人を飛び越えて警察に行くとかまさにそうですね。

今村さん:「そうなんですよね。自分たちで解決するんじゃなくて、ルールの中であるから、なんか違うことをやっていたら警察に言ってなんとかしてもらうみたいな」

―街は誰のもの、っていうのはまさにそのことですよね。ちなみにどういった方々がお店に来られますか?

今村さん:「路上でやっていると、たまたま通りがかった人が『お酒飲めるの?』みたいな感じでお客さんになってくれたり、『いつもここ仕事帰りに通っていて、気になっていたけど、ちょっと勇気が湧かなくて…なのでお父さん連れてきました!』っていう人がお客さんになったりとか、普段出会わないような人とも出会えたりするのが、路上でやっていておもしろいところですね」

―橋っていうのが絶妙ですよね。普通、ただ渡ることしか用事はなく、移動するための便利な建造物ですよね。

今村さん:「みなさん橋を越えて仕事に行ったり、遊びに行ったりするから結構人は通るんです。ただみんな通り過ぎていくし、車もバンバン通っているだけ。そんな中、笹尾さんと2人で立ちどまって夜景を見ながらお酒を飲むっていうのがおもしろかったんです。その体験を分かち合いたいといいますか」

Instagramにて漫画も描いている今村さん #やたいのやたろー
Instagramにて漫画も描いている今村さん #やたいのやたろー

出典:今村謙人さんの Instagramより(@ kentomura )

その場所にあった営業方法でまちを楽しく!

今村さん:「やっぱり海外へ行くと動いているものに興味が湧いてしまう(笑)。どういう場所で、どういう営業をしているのかがすごく気になります。この前もタイのチェンマイに行ったんですけど、朝だけやっている屋台があったりだとか。それがすごくおもしろくて3回も行ってしまいました(笑)。朝10時くらいまでしかやってないんですけど、めっちゃ強面のおばちゃんが広場で炭火で焼いたトーストとコーヒーを売ってるんです。旅行客らしきお客さんがお会計しようとしてたんですけど、めっちゃ声をかけずらそうにしていて(笑)。

観光客向けの屋台が増えている中、現地の暮らしの中での屋台というか、そういう日常が見えておもしろかったです。知らない人たちが外で一緒に朝ごはんを食べているんですよ。日本だと夜はみんなで食べることもありますが、朝は家で食べることが多いかなと思うので、朝ごはんを外でいろんな人と共有するその感じがすごくいいなと」

―想像ですが、すごくその光景がよさそうです。今村さんの屋台は、身軽で移動しやすいことが印象的ですが、そのスタイルは海外で見たものなどから影響を受けているのでしょうか?

今村さん:「見たものもそうですけど、やっぱりメキシコでやった焼き鳥屋台の経験が大きいですね。屋台って言いながら、路上に座卓を置いて正座して僕は焼き鳥を焼いていたんです。屋根すらなかった。でも、メキシコでやろうとした時に形にこだわると多分できなかったし、あの時のできる範囲でやってみたのがあの形になったので、あんまり屋台の形には僕はこだわっていません。
たとえブルーシートを敷いてものを並べて売ったりしていても、それも屋台だなと思って。何かあればモノをシートで包んですぐにさっと運べちゃう。移動できるモノであればなんでも良くて、続けやすいとかその場で商売しやすいとか、そういうのが屋台じゃないかなと思っています」

―屋台というと車輪がついているもののイメージが強かったのですが、拝見したものの中には、肩からかけられるものもあったり…。

今村さん:「駅弁屋台を作りました(笑)」

―子どもたちが駅弁屋台を首からぶら下げて、走ったその先に、一つの空間ができるというのがすごく素敵です。

今村さん:「駅弁屋台は、元々は芦原橋にあった『ソルトバレー』っていう場所で知り合いが『御バカの天才大集合』というイベントを開催していて、そこで生まれました。3階建てのビルの広くもないスペースに出店者が100人ぐらい集まるんですよ。
そうすると、全ての出店者にテーブルなどを提供するとスペースがなくなってしまうので、物販の人は基本、鞄とか箱に商品をディスプレイして移動しながら売り歩くっていう形でイベントをしていました。その光景がおもしろかったのでそれをもう少し屋台っぽく出来ればと思って。屋根の部分に看板があるとお店っぽく見えるので、屋根をつけて屋号をかけるようにして、もうタイヤはなくていいやと思い首から下げる屋台を作りました」

ー場所から屋台が生まれるんですね。

今村さん:「自転車の『前かご屋台』というのもあるんですけど、それは、尼崎の塚口駅で、駅前のスペースが使えるけど何かできないかな、と尼崎の仲のいい飲み友達から相談があって話していたら『尼崎って自転車めっちゃ多いんですよね』みたいなことを聞いて。駅前にちょうど自転車スタンドもあって、みんな自転車を日常的に使うんだったらもうそこで自転車を止めたままマルシェできたらおもしろいんじゃないのっていうので、自転車の前かごを屋台にしたっていう(笑)」

つくって・実践して・アップデートする「屋台の学校」

―今村さんは「屋台の学校」というプロジェクトもされています。プログラムには屋台をつくるだけではなく、マルシェに出て売ってみるというところまでが含まれていますが。

今村さん:「屋台のワークショップをすることは結構増えてきていて、みんなでつくって使ってもらうんですけど、つくって渡しちゃうとそこから僕は関われなくて。もうちょっと上手く使えるのにとか、こうやったらいいのにっていうのがあって、それがすごい歯痒かったんです。
つくった後も、屋台のアップデートの相談や、売り方やそもそも何を売るのか。そして屋台を続けるための仕組みやコミュニティなどもっと一緒に考えていけたらと思って、「屋台の学校」というのをはじめました」

―大正区で「Taishoさんぽ日和」というイベントもされています。

今村さん:「『Taishoさんぽ日和』は元々大正区の会社さんと空き家を活用したイベントができないかってという話になりまして。そこでいくつかの空き家の前に屋台を設置して空き家自体をイベント会場にしたんです。街を歩きながら空き家を見てもらうことで、街のことも知ってもらえる。そうした新しい不動産仲介にもなるようなまちあるきイベントを継続的にやっています」

―今後はどのような活動予定ですか?

今村さん:「また海外でも屋台をやりたいなと思っています。妻が韓国人なので、まずは韓国で屋台をつくってやってみたいなという実践の話と、「屋台の学校」のように屋台をいろんな人にもっと気軽に、自由にしてもらいたいですね。そんなスクールをいろんなところですることで、屋台の人口が増えて、屋台があるのがあたりまえの風景になっていくといいなと思っています。そんな実践や、コミュニティの受け皿としてまちにくりだす動きまわる屋台だけでなく、まちに開いた動かないラボのような場所もつくっていきたいなと思っています。屋台の相談から、つくるワークショップの開催、屋台をいろんな人に使ってもらう今よりも広い、ベースのような場所ですね。でも屋台に限らず、何か新しいことをしたいなどの受け皿になっていく場所をつくっていき、そこからまたまちへみんなで飛び出して行きたいなと思っています」

ファミリーにも人気の大正区エリア

今回紹介した今村さんの事務所がある大正区にあるのは、Osaka Metro長堀鶴見緑地線とJR大阪環状線の大正駅。二つの川と大阪湾に囲まれた工業地帯ではありますが、西部はウォーターフロント地区として整備が進み、多くの住民たちが住まう住宅街になっています。区域中央部には飲食店や雑貨店などが入る商業施設も増える中、昔ながらの商店街なども残る落ち着きのある下町です。
平均家賃相場は6.01万円と周辺の地域と比べても安く、また比較的安価で一戸建てが買えることから、ファミリー層にも人気のエリアです。今村さん曰く、「どこへいくのにも橋を渡る。身近に川がある風景がとても気持ちがいい」とのこと。大正での生活では橋の上でたのしくホッとするひとときを過ごせそうです。

◆本記事の担当者
取材・文:藤本らな 写真:水谷伸之

IN/SECTS編集部

プロフィール:大阪という物理的なローカリティと、感性や共感といった同時代性的ローカリティを軸に、ローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行。現在、大阪の京町堀を拠点に、「IN/SECTS」のほか、書籍の出版も行う。年に一度、イラストレーターや飲食店、作家、アーティストと、アジアの出版社を集めたイベント「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」を、北加賀屋にて開催。LIFE LISTでは、個の視点を通して見えてくる街や人の姿を紹介する。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

この暮らしの記事を共有しませんか?

  • はてなブックマーク
  • タイトルとURLをコピー

LIFULL HOME'S アプリ

オリジナルの機能が充実!

  • ・ハザードマップで洪水リスク確認
  • ・地図上でなぞった範囲で物件を探せる
浸水マップ機能をONにすると洪水リスクがわかる!
  • App Storeからダウンロード
  • Google Playで手に入れよう
浸水マップ機能をONにすると洪水リスクがわかる!

LIFULL HOME'Sは安心・安全のための取り組みを行っています

  • 信頼できる物件情報サイトNo.1を目指して

    このサイトは「不動産情報サイト事業者連絡協議会」が定める情報公開の自主規制ルールに則ったサイトとして承認されています。

  • 情報セキュリティマネジメントシステム国際規格
    すべての情報を適切に取り扱うために

    株式会社LIFULLは、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 27001」および国内規格「JIS Q 27001」の認証を取得しています。