みなさんは、香川県の郷土料理と聞くと、何を想像するでしょうか。
香川県には、多くの人が食べたことのある「さぬきうどん」や丸亀市発祥の「骨付き鳥」といった名物があります。地元に密着した香川の郷土料理は、独特のあたたかみを感じます。
今回は、香川県で暮らして20年以上になる私が、その“あたたかみ”の秘密とともに香川県の郷土料理をご紹介します。働き方や暮らしの変化に伴って、地方への移住を考えている人が増えている今、香川県の魅力を知っていただけるとうれしいです。
香川県の郷土料理といえば、まずは「うどん」!
海と山、両方を楽しめる香川県
香川県は日本で一番面積の小さい県です。四国の中でも岡山県に一番近く、本州とは、坂出市にある瀬戸大橋でつながっています。
香川県は狭いながらも、海と山の両方を楽しめます。県全体に、ことでん(高松琴平電気鉄道)やJRなどの交通機関がバランスよく配置されているため、住みやすいです。山間部での生活には自動車が必要ですが、高松市内は車がなくても自転車で自由に移動できます。
香川県での生活に欠かせない、うどん
香川県にはいろいろな郷土料理がありますが、やはりソウルフードといえば、うどんです。「安い・早い・うまい」を叶える食事として、今や全国にさぬきうどんのチェーン店が存在します。
香川県で発達したのが、自分で麺の上にダシやトッピングを乗せていく「セルフうどん店」です。高松市内には飲食店が多く、お昼休みには「どのお店に行こう」と悩んでしまうほど。香川県での暮らしに、セルフうどん店は欠かせません。
比較的目立たない場所に、民家がのれんを出しているだけのような外観のお店が多数あります。
控えめな雰囲気のお店が多いですが、うどんの味は一級品です。モチモチとした食感となめらかなのど越し、旨味のつまったダシを楽しめます。できたてのうどんをすぐに味わえるので、短い休憩時間でもサッとうどんをかきこみ、仕事へ戻るのが香川県民の定番です。香川県民は、仕事場の近くにお気に入りのうどん店をいくつか知っていて、日によって違うお店の味を楽しんでいる人が多いです。
食べるだけじゃない、うどんで生まれる地域交流
香川県は、寺院が生活に根づいている県でもあります。私の家は地域のお寺に檀家という形でお世話になっており、小さいころからお寺のイベントに参加していました。
その中でも楽しみだったのが、「うどん作り」のイベントです。大人がうどんの下準備を行い、地域の小学生がお手伝いをするというもので、地域に暮らす人たちの交流の場になっていました。
イベントの会場は広い食堂で、下準備をしたうどんの種が運ばれてきます。うどんの種は塩・小麦粉・水でできており、時間をかけて練っていくのですが、この作業はとても大変です。
さぬきうどんには強いコシが必要なので、うどんの種を分厚いビニール袋に入れ、足でうどんを踏んで練っていきます。はじめは食べ物を踏むという行為に抵抗を感じていました。しかし、あたたかくてぐにゅっとした不思議な感覚に魅了され、夢中で踏んでいたのを今でも覚えています。
踏み方のコツは、真ん中から外に向かって円を描くように踏んでいくことです。不安定なうどんの上でバランスを取るのは難しいため、壁などにつかまってうどんを踏み続けます。バランスが取れない子どもは、大人の手につかまってうどんを踏むこともあり、親以外の大人と仲良くなるきっかけにもなっていました。
うどん作りの過程で、ゆでたりうどん生地を切ったりする作業には、大人の手伝いが必要です。踏み方を教えてもらうときや、自分たちが踏んだうどんをゆでてもらっているときには、子どもたちと大人の会話が自然に生まれます。
新型コロナウイルス感染症の影響で、今はお寺さんの活動自体が縮小傾向にあるようです。私としては、いつまでも残ってほしい地域の文化の1つです。
香川県の郷土料理、うどん以外には何がある?
香川県の郷土料理は、うどんのほかにもあります。甘辛く煮た「しょうゆ豆」や、家にある具材をすべて入れたような「しっぽくうどん」、高菜を豆腐と炒めた「まんばのけんちゃん」と呼ばれる料理などです。
どれも親しみやすく美味しい料理ばかりです。「香川県=うどん」と思っている人にこそ知ってもらいたい、「まんばのけんちゃん」についてご紹介します。
給食の定番「まんばのけんちゃん」とは
どの地域でも、郷土料理は給食のメニューとして採用されることが多いです。私の地域の給食には、「まんばのけんちゃん」がよく出ていました。
「まんば」とは、葉物野菜のひとつ、高菜のことです。「けんちゃん」は、豆腐と野菜を炒めた精進料理である「けんちん」が語源といわれています。幼い私はこのまんばのけんちゃんが苦手で、嫌々ながら食べていたのを覚えています。
高菜はアブラナ科の植物で、独特のアクがあります。もちろん料理に使うときには、アクは抜かれていますが、それでもかすかに残る苦味がとても苦手だったのです。一緒に入っているお豆腐が高菜の色に染まっていると、見た目にも抵抗がありました。私の周りの友達も、まんばのけんちゃんが苦手な子が多かったです。
しかし、大人になってからまんばのけんちゃんを食べてみると、高菜本来の苦味にお豆腐の甘味が合わさり、とても美味しく感じました。醤油味が薄めになっていると苦味と甘味を同時に感じられます。子どものころは苦手な味でしたが、今ではすっかり気に入ってしっかりと味わって食べています。
地元野菜から生まれる郷土料理
余談ですが、私の住んでいる地域は、高松市から少し離れています。田舎のほうでは自営業で農業をしている家が多く、季節によっては畑で取れた野菜が余ってしまうことも多いそうです。そのようなときは、ご近所さん同士でお野菜を分け合っています。
畑作をしていない人は贈り物のお菓子をおすそわけしたり、いただいた野菜で作った料理をお返ししたり、私の暮らす地域では物々交換の習慣が根づいています。
いただきものの野菜が多すぎて食べきれなかったり、お返しに悩んでしまったりしたこともありましたが、今では素直に「食べきれないから、ほかのおうちにも持って行っていい?」と、聞けるようになりました。感謝の気持ちを心から伝え、できる範囲でお返しをしています。決して無理をするのではなく、相手のことを思ってお返しを考える時間も大切にするようになりました。
地元で採れた野菜が手元にあると、自然と郷土料理を作るようになります。このような物々交換の習慣が根づいているからこそ、あたたかみのある郷土料理が今も受け継がれているのでしょう。
家庭でも簡単! 香川県の郷土料理レシピ
ここでは簡単に作れる、香川県の郷土料理レシピをご紹介します。さきほどから登場している「まんばのけんちゃん」は、高菜さえ手に入れば簡単に作れるので、ぜひ試してみてください。
「まんばのけんちゃん」レシピ
【材料(2人分)】
・高菜 100グラム
・煮干し 一握り
・豆腐 半丁
・油揚げ 一枚
・醤油 適量
【ポイント】
苦味を減らしたいときは、高菜の量を減らして豆腐の量を増やしてみましょう。
【作り方】
① まんば(高菜)をゆでます。ゆで時間はまんばの量によりますが、あとで煮込むのでここでは軽くゆでるくらいでいいでしょう。ゆで終わったらザルにあげ、冷たい水にさらしてアクを抜きます。ここでアク抜きが足りないと、苦くなるので注意してください。
② 油揚げを細長く切り、木綿豆腐の水気を切っておきます。
③ アクを抜いたまんばも水気を切ります。
④ 底が深めのフライパン、または中華鍋に油をひき、煮干しを炒めていきます。さらにまんば、豆腐、油揚げを加えて炒めます。
⑤ 最後に醤油で味付けし、豆腐を適度に崩しながら煮込むと完成です。
わが家では味付け後に生卵を入れて一緒に煮ています。卵を加えることで全体がまろやかになり、苦味が和らぎますよ。
煮干しは、観音寺にある伊吹島という島の煮干しが有名で、どの家庭にも大抵常備されています。最近はスーパーやアンテナショップでも手に入るようになっていますが、やはり地元の直売所で購入したほうが安い場合が多いです。地元民に大人気で、すぐに売り切れてしまうことも少なくありません。
郷土料理「まんばのけんちゃん」はどう食べる?
まんばのけんちゃんはお味噌汁だけでなく、パンとの相性もいいです。一度に大量の野菜と、タンパク質である豆腐を摂取できるので、野菜不足で悩んでいる人にうってつけの料理といえるでしょう。
香川県の住み心地
私は香川で暮らして20年以上になりますが、とても住みやすい地域だと感じています。ここからは地方移住などを考える方の参考となるよう、香川県の住み心地をご紹介します。
香川県の特徴と住み心地は?
香川県は、温暖で過ごしやすい気候で災害が比較的少ない地域です。
県庁所在地の高松市は、コンパクトな都会という印象です。図書館や美術館などの文化的施設が近隣に集中しています。バスも充実していて、ショッピング・モールやスーパー、コンビニも各所にあります。高松の土地勘がなくても住みやすい地域だといえるでしょう。
ちなみに、私の実家がある西讃地区は完全に車社会です。とはいえ道路が整備されているので、車の運転に慣れていない人でも、西讃地区の道なら安心して走れるでしょう。道が広い分、スピードを出して走る人もいますので、油断せず気をつけて走りましょう。
香川県はアクティブなファミリー層におすすめ
香川県はマリンスポーツを楽しみたい方や、山でキャンプをしたい方におすすめの県です。香川県の中心部である高松市を選ぶなら、ことでんの駅近くの住まいが便利です。
ことでんは、高松市から志度線・長尾線・琴平線と香川県全体をカバーしています。香川県の周囲には海が広がり、登山向きの山もあるため街に住みながらアウトドアエリアにも足を運びやすくなっています。
家族で高松市に住む場合は、賃貸物件からはじめて高松市での暮らしが肌に合うかどうかを体験してみてください。現在、高松市には新しいマンションが次々と建てられているので、選択肢は豊富です。もし、暮らしが合うようなら一戸建てを検討し、永住を考えてみてはいかがでしょうか。
香川県高松市の賃貸物件
自然を楽しみたい方には、東かがわ市や三豊市がおすすめです。香川県の中心地からは少し離れていますが、学校や図書館など公共施設は充実しています。面積が広いので、のびのびと子育てがしたいという人に向いているでしょう。
空き家が多い地域でもあるので、賃貸マンションだけでなく中古物件の購入もおすすめです。庭があると、家庭菜園を楽しむこともできます。
庭に小型ボートを置いて、休日のたびに軽トラックにボートを乗せて海に釣りに行くという人もいます。大人も子どもも自由を満喫できる地域です。車が必須の地域なので、免許を取得する準備はしておきましょう。
香川県東かがわ市・三豊市の賃貸物件
美味しい料理がたくさん香川県で暮らそう
香川県は、あたたかい人との交流が生まれる地域です。都会のような便利さはないかもしれませんが、高松空港から飛行機や大阪への直通バスを使えば、都会でのお買い物も楽しめます。リーズナブルな価格の物件が多いことに加え、自然や美味しい食事が身近にある住みやすい県なので、胸を張っておすすめします。