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夏の風物詩、蚊遣り豚はなぜ豚の形? 三重・菰野町で作られる萬古焼の魅力
夏の風物詩、蚊遣り豚はなぜ豚の形? 三重・菰野町で作られる萬古焼の魅力

夏の風物詩、蚊遣り豚はなぜ豚の形? 三重・菰野町で作られる萬古焼の魅力

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母からの影響もあってか、いつしか陶器が好きになっていた私。私が住んでいる愛知県や、またその近隣は焼き物の産地が点在していることから、窯元さんを取材する機会もあります。そんななかで出合ったのが三重県の萬古焼(ばんこやき)。
今回は夏の風物詩といえる、萬古焼の蚊遣り豚(かやりぶた)をご紹介します。菰野町(こものちょう)で蚊遣り豚を30年以上作り続けている松尾製陶所さんにお話を伺いました。

萬古焼の歴史

萬古焼の始まりは、江戸時代中期。豪商・沼波弄山(ぬなみろうざん)が現在の三重県朝日町で窯を開き、自身の作品がいつまでも残るようにと「萬古」あるいは「萬古不易」という印を押したことが名前の由来とされています。弄山が亡くなってしばらくして途絶えた時期がありますが、江戸時代後期に復興しました。

急須と土鍋が有名

明治時代になり、商業が盛んになった隣市の四日市市には萬古焼の窯元が多く誕生し、地場産業となりました。四日市には港があり、鉄道も整備されたことで、国内だけでなく海外に輸出もされるようになったのです。そうして続いてきた萬古焼は、「四日市萬古焼」として国の伝統的工芸品に指定されています。

萬古焼の代表作が、急須です。鉄分の多い土を使った「紫泥急須」は、お茶の渋みを和らげる効果があるそうで人気なのだとか。

またもうひとつ、有名なのが土鍋です。萬古焼業界でペタライトという鉱物を配合した土が開発され、割れにくくなったことで、萬古焼の土鍋が全国に広まりました。全国シェア80%を占めるそうですが、わが家でも愛用中です。

菰野ばんこ

さて、今回取材にご協力いただいた松尾製陶所さんは、四日市の中心地から車で30分ほどの菰野町というところにあります。焼き物の産地というと、近くで良質な粘土が採れるというイメージがあります。ところが、菰野町は鈴鹿山麓の自然豊かな土地ですが、その山々では焼き物に使えるような粘土は取れないそうです。

松尾製陶所・2代目の松尾徹也さんも「ここでなんで栄えたかって、不思議でしゃぁない」と言いつつ、初代のお父様から聞いた菰野町での萬古焼の歴史を教えてくださいました。

戦後まもなく、四日市市で萬古焼の問屋業を営んでいた方が、お客様の要望を直接聞いた経験から、自分ならもっとこんな形のものを作れる、これなら売れる、という思いを抱くことに。そこで出身地である菰野町に土地があったため、窯を造り、菰野町に窯元ができていきました。当時は、最初の窯元と松尾さんのところを含め3つの登り窯があったそうです。

いまでは、松尾さんたち菰野町の窯元7人が集い、「菰野ばんこ」とブランド名をつけて町おこしに貢献する活動もしています。

菰野町で作られる萬古焼の蚊遣り豚

夏の訪れを告げる代名詞に

蚊遣り豚は、夏になると現れる蚊から私たちを守ってくれる蚊取り線香を焚くための容器。

1952(昭和27)年に創業した松尾製陶所で蚊遣り豚を作るようになって30年が経ちます。菰野町ではこちらとあと数軒の窯元で少し作っているだけだそう。

近年は電池式や薬剤の噴射タイプなど、さまざまな蚊よけアイテムが登場し、残念ながら年々生産数は少なくなっているとか。そんななかで松尾製陶所の蚊遣り豚は毎年、最盛期を迎える5~6月に新聞の記事で紹介され、夏の訪れを多くの人々に知らせています。いまも変わらない存在感がありますね。

蚊遣り豚は、なぜ豚の形?

ぽってりとした形で、ぽっかりと口? 鼻? があいた蚊遣り豚。どこか郷愁を誘う、かわいらしい風貌です。歴史をさかのぼると、蚊取り線香の誕生は明治時代ですが、蚊遣り豚の形状は江戸時代からあったようです。

そこで疑問となるのが「なぜ豚なの?」ということ。諸説ありますが、一説をご紹介します。

江戸時代、豚の野生種であるイノシシが「火伏せ(火災を防ぐ)の神」として崇められていました。その当時は蚊よけというと、草や木片などに火をつけて煙でいぶしていたので、火がほかのものに燃え移る危険も。そこで火伏せの神・イノシシにあやかって、似た形の豚が採用されたのではないかといいます。先人の願いが込められているんですね。

蚊よけアイテムとしてだけでなくインテリアにも

蚊遣り豚を体験

一戸建てのわが家ですが、10年ほど前に建て替えをしてからなぜか家の中で蚊に遭遇することは少なくなりました。そのおかげもあって、換気のために開けている窓を夕方早めに閉めるなどの対策はしていますが、蚊取り線香などは部屋の中では使用していません。

しかし、庭となると別で、植木の手入れや洗濯物の取り込み時に蚊に刺されてしまいます。そこで、今回、松尾製陶所で製作された蚊遣り豚を購入し、使用してみることに。昔、蚊取り線香を使ったことはありますが、久しぶりです。実は部屋で蚊取り線香を使用しないのには、愛犬の気管支が弱いため心配ということもありました。調べてみたところ、防腐剤や化学合成品などを使用していない天然の植物成分だけで作られている蚊取り線香があると知り、そちらで試しました。

蚊遣り豚の使い方

使い方は、蚊遣り豚に付属している針金を本体から外し、針金の先を線香の中心の穴に刺します。そして本体に線香を通した針金を戻します。蚊遣り豚の上部には針金用の穴が2つ開けられているので、それに通すようにして吊るすかたちです。

線香が蚊遣り豚の内壁に当たらないように針金の長さなどを調整したら、線香の先端に着火します。

しばらくすると煙が出てきました。天然の成分のみだからでしょうか、昔に感じたようなキツイにおいはありません。それでも、しばらく庭にいましたが、蚊よけの効果は絶大でした。煙は風にのって流れますので、風上に置くといいです。

なにより、蚊遣り豚のかわいらしさにとても癒されました。また、購入した蚊取り線香には金属製の線香立具が付いていましたが、それだと蚊取り線香がむき出しになってしまい、風が吹くと灰が舞ったり、倒れて草に火が燃え移ったりしないか心配になります。その点、蚊遣り豚は陶器の中に線香がすべて納まっているので、多少の風が吹いてもちゃんと見ていれば、安心感がありました。

松尾さんにお伺いしたところ、線香を針金に取り付ける手間を感じる方には、陶器のなかに線香を直置きするタイプの「すわり豚」という形がおすすめだそうです。

インテリアアイテムとしても活用できる

蚊遣り豚は実用品ではありますが、夏らしいインテリアとしてもぴったりです。実際に使ったことがないという人でも、テレビドラマなどの影響、あるいは祖父母の家で使っていたなどで、親しみがあるのではないでしょうか。

松尾さんが製作する蚊遣り豚は、素焼きで萬古焼の素朴な温もりを感じるものや、私が購入したススキやトンボなどの絵が描かれたものが昔ながらの商品です。一方で、松尾さんはインテリアアイテムとしても使ってもらえるようにと、水色など明るい色合いのものや、花柄を入れたりと工夫もされてもいるそうです。

実際に私も飾ってみましたが、一気に夏が来たような空間になりました。

菰野町の魅力

自然に囲まれたまち、菰野町

菰野ばんこのふるさと、菰野町は、鈴鹿山脈のふもとに位置し、雄大な山々がすぐ近くにあります。標高1,212mの御在所岳ではロープウエイで気軽に山上から四季折々の眺めを楽しめ、湯の山温泉やキャンプ場といったアクティビティも充実しています。
また、萬古焼のような伝統産業がある一方で、素敵なカフェや雑貨店も点在しているので、若い世代にも注目が高まっています。

電車で四日市市まで約20分、名古屋までは約50分

隣市の四日市市は、名古屋まで近鉄名古屋線特急で約30分とアクセス良好で、名古屋に通勤する人も多い地域。そこから菰野町は近鉄湯の山線で約20分という距離ながら、自然に包まれた豊かな環境のなかで暮らすことができます。

2019年には新名神高速道路の菰野ICが開通し、名古屋方面へのアクセスはもちろん、京都方面へも利用しやすくなりました。

夏の暮らしに昔ながらの風情で彩りを

菰野町で作られる萬古焼の蚊遣り豚。ノスタルジックで、愛嬌があるさまがなんともいえません。蚊よけの実用さは菰野町をはじめとした自然の多い地域ではもちろん大活躍してくれ、インテリアとしても夏の暮らしに寄り添ってくれます。ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。


取材協力:有限会社 松尾製陶所
参考文献:「よくわかる四日市萬古焼読本」

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