私はハンドメイドを10年以上楽しんでいますが、生地選びは作品作りの第一歩。
素材によって生地の持つ特徴や機能はさまざまです。肌着に使われる綿やインテリアファブリックとして重宝される麻は、身近な存在ですね。
同じ自然由来の生地の中でも、シルクは高級なイメージがあるのではないでしょうか。また、扱いづらいと思われ、敬遠されることもあるかもしれません。
しかし、シルクには昔から愛され続ける理由があります。優美な輝きの高級感はもちろん、機能的にも非常に優れた面があるからです。
私自身、直接肌に触れるスカーフやハンカチ、マスクといったものをハンドメイドする際は、シルクを選ぶことがあります。暮らしにシルクを取り入れることで、冷え性や肌の乾燥といったトラブルの予防にもつながりやすいです。
今回の記事では、シルクのある暮らしの楽しむために、シルクの特徴やお手入れ方法についてご紹介します。
シルクの特徴と魅力
シルクとは
シルクは絹とも呼ばれ、古くは弥生時代から衣類の材料として愛されてきた天然繊維です。カイコのまゆが原材料となり、主成分はフィブロインやセシリンという糸状のたんぱく質。人間の皮膚に近い、アミノ酸が集まった成分です。身に着けても肌への刺激が少ないという、うれしい特徴があります。
シルクの魅力
ここでは、シルクが持つメリットについてさらに詳しくご紹介します。
見た目の高級感
最も特徴的なのが、見た目の高級感です。綿や麻などの、シルク以外の天然繊維、また、ポリエステルやナイロンといった合成繊維では、シルクのような立体感のある光沢を表現することはできません。シルクの繊維は三角形をしており、光を反射、透過、屈曲に分散させる構造をしています。そのため、特有の上品な輝きが生み出されるのです。
また、生地が染まりやすいという特徴も。染料が生地の奥まで浸透することで、他の素材にはない、深みのある色合いを表現することができます。
なめらかな手触り
シルクは、手にしたときのなめらかな触感も特徴です。しなやかで吸着しづらいため、衣類として身にまとうと、ゆったりしたシワやドレープにより、優美な風合いが表現されます。また、生地の摩擦が起こりにくいため、静電気が軽減される効果も期待できますよ。
これらの特性は、チリやほこりといった日常の小さな汚れを寄せ付けず、シルク製品そのものを清潔に保つことができます。
UVカット効果
シルクにはUVカット効果があります。主成分となるたんぱく質繊維が、紫外線を吸収するためです。シルク製のスカーフやショールをまとうと、ファッションを楽しみながら、肌を保護することができますね。
夏はサラっと、冬は暖かく
シルクは、吸湿性、放湿性、保湿性が高いとされています。それは、繊維の構造に由来します。 もともと、シルクの原材料となるまゆには、カイコを守る役割があります。そのため、繊維に多くのすき間があるのです。 夏場は汗を吸収し、その水分を放出。また冬場には、繊維のすき間が保温や保湿の効果を発揮するのです。一年を通して快適に過ごすことができる、機能的な素材といえるでしょう。
シルクのデメリット
魅力的な特性を兼ね備えたシルク。しかし、取扱いの際には、次のような点に気を付ける必要があります。
紫外線や経年による変色
シルクは、紫外線により変色する恐れがあります。また、染色されていないものは、経年により黄変することも。保管の際は、紫外線を避ける、定期的に状態をチェックするといった注意が必要です。
摩擦に弱い
シルクは非常に繊細な繊維の構造をしており、摩擦に弱いという一面があります。摩擦が原因となり、毛羽立ちが起こり、生地が破れてしまうことも。こすれ、引っ掛かりなどが起こりにくいシーンで活用するよう、配慮が必要です。
虫がつきやすい
高級感が特徴のシルク製品は、大切にしまわれることも多いでしょう。いざという場面で使用したいときに、虫食いされていた、ということも起こりやすいのです。穴を開けるだけでなく、生地の表面をなめるように食べて、毛羽立ちを起こす虫もいます。 手触りが損なわれてしまうと、シルクの魅力は半減。シルク製品を扱う上では、虫をよけるための注意と工夫が特に必要です。その方法については後ほどご紹介します。
シルクを取り入れたアイテム
シルクには、たくさんのメリットがあることをご紹介しました。ここからは、そんなシルクを取り入れたアイテムを身近なものの中からご紹介します。
シルクの衣類
シルクといえば、スカーフやパジャマをイメージされる方も多いのではないでしょうか。その他にも、肌着や腹巻、靴下など、さまざまな用途のシルク製品が販売されています。
化学繊維の機能性インナーがたくさん販売されている中、シルクの肌着は、天然繊維ながらとても高機能。皮膚に近い成分で、吸湿や通気のコントロールができることから、お肌のトラブルも起こりづらいのです。身に着けるだけで美肌を期待できるなんて、理想的ですよね。
シルクの寝装品
布団のシーツやまくらカバーなども、シルクの定番アイテムです。布団の中は、1日のうち、3分の1を過ごす場所です。長い時間肌に触れるからこそ、シルク素材で肌や髪をケアしたいところです。
寝具と一緒に用意するといいのが、ナイトキャップ。頭皮の乾燥や、毛髪の摩擦を軽減できるほか、朝の寝ぐせ対策にもなります。
シルクの持つ保湿性を活かすことで、髪のツヤやカラーリングの持ちにも効果があります。頭部は、日中は外気にさらされ、ケアをするのが難しい部分。シルクの寝装具を取り入れることで、おやすみの時間に寝ながらケアをしてみてはいかがでしょうか。
シルク製品を初めて取り入れる方におすすめのアイテム
続いては、たくさん販売されているシルクアイテムの中でも、特に取り入れやすいおすすめのアイテムを、2つご紹介します。実際に私もシルク製品が欲しいと思ったときに、最初に購入したアイテムです。
シルクの腹巻
私は一年を通して、シルクの腹巻を愛用しています。夏場は汗がこもることがなく、冬場はほっこり温かい。薄手なので見た目に響くこともありません。
冷えや肌の乾燥に悩む私にとっては、手放せないアイテムのひとつです。同じような悩みを持つ方には、一年を通して役立つアイテムになりますよ。
シルクの枕カバー
ベッドリネンの中でも特に取り入れやすいのが、枕カバーです。好みの肌触りのものを取り入れると、睡眠時のリラックス効果が高まります。また、シンプルな形でサイズも小さいため、手洗いや陰干しの際も取扱いやすいですよ。
シルク製品の中でも、枕カバーはお手頃価格のものも多いため、初めてのシルクアイテムとして挑戦しやすいでしょう。
初めてシルク製品を選ぶときに押さえたいポイント
ご紹介したアイテムは、洗濯やお手入れに時間をかけられない私でも無理なく日常に取り入れています。初めてシルク製品を選ばれる方は、“洗いやすい”、“一年中使える”という2点を押さえましょう。
洗いやすいことで、普段の衣類と同じように気軽に使用することができます。また、一年中使えればしまったり保管したりといった手間が省けます。
お手入れが大変だというイメージが先行し、敬遠されることもあるシルク製品。次にご紹介するお手入れのポイントを押さえれば、とても身近なアイテムになりますよ。
シルクは洗濯可能? シルクのお手入れ方法
ここからは、シルクのお手入れ方法についてご紹介します。洗濯の方法やアイロンがけ、保管時の注意点についてもお伝えします。
シルクの洗濯方法
繊細なシルクも、次のような点に気を付ければ家庭で手洗いすることができます。ポイントを3つご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
シルクの洗濯方法(1) 洗濯表記を確認しよう
洗濯機で洗うことができるシルクもあります。たたんで洗濯ネットに入れ、中性洗剤で洗いましょう。「おしゃれ着洗いコース」のある洗濯機であれば、シルク単体で、そちらのコースを使用するのがおすすめです。
“手洗い可能”の表記がある場合は、やさしく手洗いすることができます。“水洗い不可”の表記がある場合、ドライクリーニングをする必要があるでしょう。
水にぬれることで、シワや縮みの原因となることも。シルクを長く愛用するためにも、洗濯表記の確認は必ず行いましょう。
シルクの洗濯方法(2) 手洗いの際は、洗剤や水温に気を付けて手際よく
手洗いに取り掛かる前に、目立たない場所で色落ちチェックをしましょう。薄めた中性洗剤をティッシュなどにつけ、トントンとたたきます。ティッシュへの色移りや、シルクの柄に変化がなければ大丈夫です。
洗剤を30度以下の水で薄めた洗濯液で、30秒ほど押し洗いをします。洗面器をきれいな水に入れ替え、泡が出なくなるまですすぎましょう。
シルクの洗濯方法(3) タオルドライ後、日陰で乾かす
すすぎが完了したら、タオルではさんで水分を取り除き、陰干しをします。型崩れの恐れがあるものは、平干しをしましょう。
シルクにアイロンはかけられる?
シルク製品は、アイロンをかけることもできます。素材の特性上、丁寧に洗っても小さなシワができてしまうことがあります。アイロンを使用する際は低温(110~130℃)で、あて布をすることで生地への負担を軽くできますよ。
シルクの保管やケアで気を付ける点
長く大切に使いたいシルク製品。保管やケアのための知識として、次の2点を押さえましょう。
頻繁に使って、風通しを良くする
シルクは「大切なものだから」としまいこまず、頻繁に使うようにしましょう。身に付けることで、ご紹介したようなメリットが受けられることはもちろん、風通しの効果も得られます。使わないときでも、状態を定期的にチェックすることは欠かさないようにしましょう。
防虫対策を忘れずに
誰もが避けたい虫食い被害。一番の方法は、清潔な状態で保管することです。 着用後そのままの状態で保管してしまうと、身体の老廃物や食品の飛沫などが虫を寄せ付けます。生地そのものにも防虫対策がされていないため、防虫剤とセットで保管しましょう。
暮らしにシルクを取り入れよう
シルクを取り入れた暮らしをイメージしてみましょう。
身に着けるものの素材を意識する
これまでファブリック製品の見た目や形にしか注目してこなかったという方は、素材が備える機能を活用することで悩みやトラブルが解決するきっかけになるかもしれません。繊維素材それぞれが持つ効果を知り、ファブリック製品を選ぶ際の基準にしましょう。
お部屋に鏡を置いて、ファッションを全体で見たときの素材の統一感もチェックできるといいですね。
お気に入りの服を収納できるスペースを確保する
お気に入りの洋服を収納できるスペースを確保しましょう。シルク製品はていねいに手入れしても、収納環境がよくないと虫食いや毛羽立ちが起こりやすくなります。
収納スペースの中でも特におすすめなのが、つるし収納ができる、日光が当たらないクローゼット。不織布や和紙でできた衣類カバーをかけ、つるして収納をしましょう。
通気性もあり、洋服同士の摩擦を避けることができます。ご紹介の通り、直射日光は変色の原因となるため、暗所での保管を心がけましょう。
肌にもいい効果が期待できるシルク
摩擦を減らして肌への負担をやわらげたい方や、保湿・保温をしたい方には、シルクがピッタリです。乾燥肌でかゆくなることに悩んでいた私も、シルクの腹巻を使用してからは、腹部のかゆみが軽くなりました。保温効果を期待して取り入れたため、予想外のうれしい効果でした。
こだわりの製品を取り入れることで、トラブルも解決できるとなると、一石二鳥ですね。
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シルクを取り入れて、お肌も暮らしも整える
シルクのある暮らしについてご紹介しました。
おうち時間が増えた今、お手持ちのファブリック製品を見直すチャンスです。素材のもつ機能について知り、シルクを暮らしに取り入れてみることをおすすめします。手触りのよさや機能性の高さは、癒しや暮らしの満足度を高める効果につながります。
シルクのある暮らしで、家にいながら少しリッチな気分を味わってみてはいかがでしょうか。