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スイス人はとにかく“散歩が大好き” ハイキングを安心して楽しめるスイスの仕組みと楽しみ方
スイス人はとにかく“散歩が大好き” ハイキングを安心して楽しめるスイスの仕組みと楽しみ方

スイス人はとにかく“散歩が大好き” ハイキングを安心して楽しめるスイスの仕組みと楽しみ方

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山岳の国として知られるスイスでは、週末や休暇中に軽くウォーキングしたり、数時間歩いたりする人がとても多い印象を受けます。実際、日ごろ行うスポーツや運動として「ハイキング」を挙げている人は、15歳以上の国民の56.9%(スイス連邦道路局の2019年調査)に上り、2位の「ジョギング」の27%を大きく引き離しています。このように“スイス人は散歩が大好き”といっても決して言い過ぎではありません。

ハイキング人口が多い背景の1つには、スイス国内のハイキングコースの整備が進んでいることもあります。手軽に歩けるコースから上級者向けのコース、さらにドイツの偉大な作家ゲーテの歩いた「ゲーテ道」もあります。今回は、そんなスイスの散歩・ハイキング事情を私の体験も含めてご紹介していきます。

スイスのハイキングコースが安心して楽しめるワケ

スイスのハイキングコースの総距離は6万5,000㎞以上。都市部に住んでいても、自然環境へのアクセスが本当に簡単です。散歩感覚のコースも多数あります。初心者向けのハイキングコースは途中に黄色い標識があるため、地図がなくても安心です。

このように誰でも安心してハイキングが楽しめるようになったのは、「スイスハイキングコース協会」の取り組みが大きいといえます。実はこの標識、1934年に同協会が設立された翌日に設置が決められたもので、現在では全国約2,000人以上のボランティアが標識を定期的に掃除し、交換しています。

スイスハイキングコース協会の黄色い標識「(一般)ハイキングコース」 © Satomi Iwasawa
スイスハイキングコース協会の黄色い標識「(一般)ハイキングコース」 © Satomi Iwasawa

協会の標識は3種類あり、初心者でも歩きやすいハイキングコースは黄色。登山道など「少しハードな道」になると、白・赤・白の2色3段の標識です。さらに難易度の高い「アルプスハイキングコース」は白・青・白の3段。難易度の高いコースは、すべてのハイキングコースの1.5%を占めるのみです。また、冬の間のハイキングコースにはピンクの標識が設置されます。

冬でもハイキングできる。ピンクに塗ってある木の棒が「雪の道」の標識(写真左) © Schweizer Wanderwege
冬でもハイキングできる。ピンクに塗ってある木の棒が「雪の道」の標識(写真左) © Schweizer Wanderwege

登山道を示す「白・赤・白」の標識。世界遺産に登録されているスイスのアレッチ氷河一帯にある登山道(標高2000m前後)にて(写真右) © Satomi Iwasawa  協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp 

チューリヒ郊外にある文豪ゲーテが歩いた「ゲーテ道」

私が好きな散歩感覚のコースはたくさんあります。そのうちの1つは、ドイツの偉大な作家ゲーテも歩いた「ゲーテ道」です。チューリヒ市郊外にあり、大人3人が横に並んで歩ける幅の細い道です。長さは400mほど。たった5分で歩けてしまうので、私は周辺のハイキングコースと合わせて歩きます。道の両端のどちらからでも歩けます。

チューリヒ市郊外の町にあるゲーテ道の入り口。ドイツの文豪ゲーテはこの町に滞在した。   © Satomi Iwasawa
チューリヒ市郊外の町にあるゲーテ道の入り口。ドイツの文豪ゲーテはこの町に滞在した。   © Satomi Iwasawa

周囲は住宅街ですが、この道を歩くとチューリヒ湖が一望でき、湖の反対側の街並みや遠くの山々も眺められ、「ああ、リフレッシュできる」という気分に浸れます。
今から200年以上前、ゲーテはこの町に住む友人を訪ねました。道沿いには赤いベンチがあり、そこには「ゲーテもここで立ち止まった」との言葉が。このベンチに座ってくつろいでいる地元の人をよく見かけます。

ゲーテ道から、チューリヒ湖を見渡せる © Satomi Iwasawa
ゲーテ道から、チューリヒ湖を見渡せる © Satomi Iwasawa

ゲーテ道から見下ろすぶどう畑は圧巻

ゲーテ道から一望できるチューリヒ湖沿いの日当たりの良い斜面では、ワイン用のぶどうが栽培されています。スイスの食べものというと、真っ先に浮かぶのはチーズやチョコレートでしょう。実は、スイスはワインの製造も盛んなのですが、ほとんどが国内消費のため国外に出回らず、幻のワインとも言われています。ゲーテ道から見える美しいぶどう畑の光景は、私のお気に入りの場所の1つです。

スイス各地のワインの産地には、歩きながらぶどうの木々を見られる場所があります。南部ヴァレー州は、スイスで最もワインの生産量が多く、ぶどう畑も広大です。ぶどう畑の間のハイキングコースは、地元の人たちに愛され、国内外の観光客からも人気を集めています。

ゲーテ道とつながるハイキングコースの見晴らし台。ぶどう畑を見下ろせる © Satomi Iwasawa
ゲーテ道とつながるハイキングコースの見晴らし台。ぶどう畑を見下ろせる © Satomi Iwasawa
スイス南部ヴァレー州の広大なぶどう畑にあるハイキングコース © Satomi Iwasawa  協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
スイス南部ヴァレー州の広大なぶどう畑にあるハイキングコース © Satomi Iwasawa  協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp

「湖岸」、「森の中」のハイキングコースで味わう非日常 

チューリヒ湖周辺を満喫できる「湖岸」のハイキングコース

チューリヒ湖を見下ろす高台から、湖に近づいてみましょう。
スイスには約1,500の湖があり 、チューリヒ湖は5番目に大きい湖です。湖岸には私有地も多く、住んでいる人もいるため、全周87.6㎞に沿って公道があるわけではありません。湖上を走る遊覧船やフェリーの船着き場には散歩道が整備されていることが多いです。

チューリヒ湖沿いのハイキングコース © Satomi Iwasawa
チューリヒ湖沿いのハイキングコース © Satomi Iwasawa

チューリヒ市のヴォリスホーフェン地区の湖沿いは、湖畔に座って談笑したりカフェで食事をしたり、ハイキングコースを歩くなど、ゆっくりと過ごせます。非日常的な雰囲気が漂い、旅行している気分にさせてくれるので、ここも私のお気に入りの場所です。

湖の前には、赤レンガの建物「ローテ・ファブリック」があります。元々ここは絹織物工場で、40~50 年前にチューリヒの若者たちが文化センターとして使うよう求めたといいます。そして、1987 年に正式に文化センターとして認められました。コンサート、アート活動、演劇が催され、映画の上映もあります。食事もできます。

文化センター「ローテ・ファブリック」 ©Satomi Iwasawa
文化センター「ローテ・ファブリック」 ©Satomi Iwasawa

ローテ・ファブリックは、チューリヒ中央駅から電車で20分です。ここのハイキングコースは、片側はヴォリスホーフェンの町中を歩く道につながり、もう片方はチューリヒの繁華街まで約30分かかる湖沿いのハイキングコースにつながっています。歩いてちょっと汗をかきたいときに、ぴったりです。

たくさんの人々が行き交う湖上にかかる橋

ローテ・ファブリック付近では、湖上を歩くことができます。小さい木製の橋が湖にかかっていて、開放感は抜群。犬を連れて歩く人、ジョギングする人はもちろん、釣りをしている人も見かけます。

もう1つ、橋を紹介しましょう。お天気がよい休日、たくさんの人たちが行き交う湖の橋といえば、チューリヒ市郊外にある、スイスで1番長い木造橋「ホルツブリュッケ ゼーダム」 です。長さは841m。233本の杭の上に細長いオークの角材が敷き詰められており、片側の手すりは空間が多めでスタイリッシュなデザインになっています。2001年春に開通しました。この橋の両側も、ハイキングコースにつながっています。

チューリヒ市郊外にある、スイスで1番長い木造橋「ホルツブリュッケ ゼーダム」 ©JamesQube
チューリヒ市郊外にある、スイスで1番長い木造橋「ホルツブリュッケ ゼーダム」 ©JamesQube

暑い夏は別天地の「森の中」のハイキングコース

スイスのハイキングコースで忘れてはならないのは、森の中のコースです。スイスハイキングコース協会以外が定めた道もあり、迷路のように感じられる場所もありますが、協会の黄色い標識はハイキングコースの随所にあります。迷いそうになっても、標識を目印にして歩けば大丈夫です。

日差しが強く暑い夏に、木陰で少し涼しい森の中を散歩するのはとくに快適です。スイスの森の中では虫刺されに注意が必要なので、虫よけスプレーは忘れずに塗っておくとよいでしょう。

幹にペイントされた黄色いハイキングコースの標識。右手奥には飲料用の噴水も見える ©Satomi Iwasawa 
幹にペイントされた黄色いハイキングコースの標識。右手奥には飲料用の噴水も見える ©Satomi Iwasawa 

スイス散歩の真骨頂「山のハイキングコース」

最後にご紹介するのは、山のハイキングコースです。多くの山にハイキングコースがありますが、スイスの南部ティチーノ州にある標高1,704mのジェネローゾ山を歩くのもおすすめ。私は、昨秋、初めてジェネローゾ山を訪れました。

ジェネローゾ山の鉄道の脇に複数のハイキングコースがある。標識には、登山道を示す「白・赤・白」が付いている ©Satomi Iwasawa 協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
ジェネローゾ山の鉄道の脇に複数のハイキングコースがある。標識には、登山道を示す「白・赤・白」が付いている ©Satomi Iwasawa 協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp

山には国鉄の最寄り駅・カポラーゴ駅から山頂まで、130年の歴史を持つ登山鉄道が通っています。オレンジと青の車両は、つい写真を撮りたくなる愛らしさ。山頂までのハイキングコースは、この鉄道に沿うよう作られています。カポラーゴ駅から乗車して、標高1,223mの途中駅ベラヴィスタまで行き、ベラヴィスタから山頂まで歩くと片道約1時間30分。逆ルートで、まず登山鉄道で山頂まで行き、山頂からベラヴィスタ駅まで歩いて下ってくるのもよいでしょう。

登山鉄道駅ベラヴィスタはレストランになっている © Satomi Iwasawa 協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
登山鉄道駅ベラヴィスタはレストランになっている © Satomi Iwasawa 協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp

ジェネローゾ山のハイキングでは、ぜひ食事を取りましょう。ベラヴィスタ駅でも、山頂に建てられた石造りの展望レストラン「石の花」でも、地産の食材を使った料理が楽しめます。山頂では酪農家がチーズを作っているので、そのチーズをレストランで食べることもできます。山頂にはピクニックエリアもあるので、ランチを持っていってピクニックするのもいいですね。

登山鉄道駅ベラヴィスタでの食事 © Satomi Iwasawa 協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
登山鉄道駅ベラヴィスタでの食事 © Satomi Iwasawa 協力:スイス政府観光局 www.myswiss.jp

山頂から見る山肌と湖の素晴らしい景色には、心が洗われる思いでした。「ティチーノ州の人たちはジェネローゾ山によく行きますね」と観光局スタッフから聞きましたが、「また、ここに来たい」とリピートしたくなるのも納得です。

ジェネローゾ山の山頂。中央の建物は、スイスの著名建築家マリオ・ボッタによる「石の花」という名の展望レストラン   © Ticino Turismo - Foto Loreta Daulte
ジェネローゾ山の山頂。中央の建物は、スイスの著名建築家マリオ・ボッタによる「石の花」という名の展望レストラン   © Ticino Turismo - Foto Loreta Daulte

自身にあったハイキングコースで新しい発見を

ハイキングは健康を保つための簡単なエクササイズです。スイスは平均寿命が世界第2位で、第1位の日本と並んで高いのは、スイス人たちに歩く習慣があることも関係しているのかもしれません。日本にも素敵なハイキングコースがある街はたくさんあります。ぜひ、お気に入りのコースを見つけて楽しんでみてください。必ず新しい発見があるはずです。

トップ画像:© Satomi Iwasawa

岩澤里美ジャーナリスト/ライター 

東京都認定NPO(特定非営利活動法人)「Global Press」監事
東京で、教育・心理系雑誌の編集に携わった後、大学院博士課程留学のため渡英。2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信のチューリヒ通信員になり、その後、フリーランスで執筆を開始。フットワークの軽さを強みに、スイス内だけでなく欧州各地でも取材を続けている。社会現象、ユニークな新ビジネス、文化の話題で、さまざまな媒体に寄稿。最近は、欧州発の穴場のアート展のルポや、日本であまり知られていない芸術家のインタビュー記事執筆に夢中になっている。
ウェッブサイト:https://www.satomi-iwasawa.com

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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