不動産の実務スキルの基礎になる専門知識に対する社会的なニーズが高まっています。宅建の資格がないとできない業務の需要もあり、宅建試験は合格基準点が上がることでやや難化傾向が起きているといえるかも知れません。
しかし、宅建がなかなか取れない資格になったわけではありません。国家試験は本来、年度によって合格率が変わるものではなく、一定量以上の勉強をして、知識が蓄えられれば、誰でも合格できるものなのです。
本記事では、宅建は本当に難し過ぎるのか、リアルな難易度の解説や、どのようにすれば受かるかの攻略法をご説明します。不動産業界を志望し 宅建の取得をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
こんな⼈におすすめの記事
・宅建試験が難しいと言われる理由を知りたい
・宅建試験が本当に難しいのか、どのくらい難しいのか知りたい
・どう対策したら合格できるか知りたい
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宅建が難しいといわれるようになった理由
宅建試験=宅地建物取引士試験は、不動産業務全般に通じる知識や、不動産仲介業を中心としたコンプライアンスを問う国家試験です。年1回の試験が全国の会場で行われ、合格者は宅建士として登録すると、有資格者としての勤務が可能となります。
宅建試験といえば以前は勉強はそこそこで、何度も不合格になっている不動産従事者の方も多数居る一方、普通に勉強すれば「そこまで難しくない試験」というトーンが主流でした。近年どのように変化しているのでしょうか。
以下の表は、過去10年間の宅建試験の合格率・合格点(合格基準点)を示しています。
宅建試験・過去の合格点・合格率
| 年度 | 合格点 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 |
|---|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 37点 | 18.6% | 241,436人 | 44,992人 |
| 令和5年度 | 36点 | 17.2% | 233,276人 | 40,025人 |
| 令和4年度 | 36点 | 17.0% | 226,048人 | 38,525人 |
| 令和3年度(12月実施) | 34点 | 15.6% | 24,965人 | 3,892人 |
| 令和3年度(10月実施) | 34点 | 17.9% | 209,749人 | 37,579人 |
| 令和2年度(12月実施) | 36点 | 13.1% | 35,261人 | 4,610人 |
| 令和2年度(10月実施) | 38点 | 17.6% | 168,989人 | 29,728人 |
| 令和元年度 | 35点 | 17.0% | 220,797人 | 37,481人 |
| 平成30年度 | 37点 | 15.6% | 213,993人 | 33,360人 |
| 平成29年度 | 35点 | 15.6% | 209,354人 | 32,644人 |
| 平成28年度 | 35点 | 15.4% | 198,463人 | 30,589人 |
| 平成27年度 | 31点 | 15.4% | 194,926人 | 30,028人 |
合格点に注目すると、近年35点を上回る状況が続いています。コロナ禍の影響で年2回試験を行った最初である令和2年は、2回試験のために1回の受験者数が少なく、高い合格点となりました
宅建は1点が大きな差を分ける
過去には合格基準点が31点となった年もありましたが、これは、試験主催者が「どのくらい合格者数を出したいか」で、合格点のラインを決めることから起こります。毎年20万人を超える受験者数のいる宅建試験は、1点の間に何万人という受験者がいます。
また、1958年開始という長い歴史を持っており、問題の難易度の工夫と合格基準点の決定で、合格者数を調整するだけのノウハウがあるとされています。
ただし、毎年何人くらい宅建士をつくるかというレベルはほぼ一定なので、絶対的な合格者数が減ることはほぼなく、過去においてもあまり変わっていません。
ただし、ライバルのレベルに合わせて頑張る必要はあります。合格ラインが37点の年は、50点中37点で正解する必要があり、1点差の36点でも不合格となります。
社会的なニーズの高まり
また、社会的なニーズの高まりも宅建を難化させている要因の一つと言えるでしょう。
たくさんの業界や仕事がある中で、新卒、あるいは社会に出て何年も経ってからでも資格を取って、高収入の世界に転身できる仕事は、多くはありません。
近年宅建が難しすぎる資格といわれてきた背景には、高収入な不動産業界で、資格手当が見込め、採用上も有利である点が情報として広まってきたためと考えられます。
また、宅建士の資格には独自のメリットがあります。宅建士しか行えない「独占業務」(契約関連業務)と、不動産会社が一定数の宅建士を雇い入れる決まりである「配置義務」があるため、有資格者の募集が絶え間なくある点も注目です。
不動産関連の求人で、「宅建必須」と条件を持つ募集もあり、持っていれば強みとなります。採用後も資格手当、未取得の場合は、取得補助金、取得奨励金などが準備されていることも多いです。
さらに、宅建士の資格は不動産業にとどまらず、以下の業種で役立つため、人気が定着している側面もあります。
宅建が役立つ職種(カッコ内は用途)
- 金融業界(融資・不動産担保評価)
- 建築業界(仕入れ・開発・完成物件販売)
- 保険業界(ライフプラン・資産管理)
- コンサルティング業界(FP・不動産投資・都市開発)
- 地方公務員(都市計画・企業誘致)
受験者のレベルアップ
合格率は17%前後と変化が少ないにも関わらず、合格点は高いのが近年の傾向でした。令和6年試験は合格率18.6%で合格基準点は37点でした。
毎年勉強せずに受験して落ちる実務経験者が減ってきて、真剣に業界を目指す人が増えたといえるでしょう。受験者の平均年齢は少しづつ上昇はしていますが、直近の合格者平均年齢は35.9歳でした。
また、試験勉強のために市販のテキストや予備校など、勉強の手段も種類が豊富になり、充実してきています。
難しい問題が増えた
宅建試験の範囲に関わる諸法令は民法、宅建業法、建築基準法、区分所有法、各種税法など多岐にわたります。それらが順次法改正をするため、宅建士に求められる知識は年々増加したり、変化したりします。
近年言われているのは、問題の長文化・個数問題の増加などが原因で、解くための時間が足りないという意見です。
宅建の難易度を他の資格と比較すると?
宅建士の資格は、収入アップに結びつきやすく実用的であるといわれています。試験の難しさを他の文系・法律系国家資格と並べ、使い道を含めて比較してみましょう。
以下の表は各資格の2024年の合格率を比較したものです。
各種資格試験の合格率(2024年)
| 資格 | 合格率 |
|---|---|
| 司法書士 | 5.3% |
| 中小企業診断士 | 18.7% |
| 社労士 | 6.9% |
| 弁理士 | 6.0% |
| 行政書士 | 12.9% |
| 宅建士 | 18.6% |
上記の資格はどれも難関資格で、特に司法試験は合格率は4割を超えるものの、レベルが高く非常に難関とされています。
その点宅建士は難易度はほどほどでも、前述のように非常に利用価値が高いため、多くの受験者を集める理由となっているのです。
また、以下は代表的な不動産系資格別の難易度を、必要とされる勉強時間でご紹介しています。
| 資格 | 必要な勉強時間=難易度 |
|---|---|
| 不動産鑑定士 | 3,000時間 |
| マンション管理士 | 500時間 |
| 宅建士 | 300時間 |
| 管理業務主任者 | 300時間 |
| 賃貸不動産経営管理士 | 100時間 |
上にあるほど取得のために勉強時間を必要とします。宅建は上記の3番目の位置づけといえるでしょう。賃貸管理業を目指す方は賃貸不動産経営管理士を先に取得するケースもあるでしょう。
不動産鑑定士は多くの勉強時間を要し、難易度も高いです。マンション管理士は、不動産会社の実務上は利用範囲が狭く、使い道を選びます。管理業務主任者は、分譲マンション管理会社のフロント業務に携わる人専用の資格です。
宅建は、不動産関連の業務をする基礎となり、応用が利きやすいといった利点が挙げられます。
宅建の難化に対応するための試験対策
難しすぎるといわれる宅建試験ですが、勉強方法を間違えず、一定の知識を積むことで、不動産業界を知らない人も、学校の勉強の苦手だった人も合格することができます。
どのような対策が必要か、独学・通学問わずとるべき対策を説明します。
やさしい問題を落とさない
宅建の試験問題は難易度がさまざまで、易しい問題も難しい問題も、正解すれば同じく1点です。したがって、簡単な問題=暗記で対応できる、正答率の高い問題を間違いなく正解できるよう、できれば過去10年分の過去問を繰り返し解いて覚えましょう。
合格のためには、正答率60%以上の問題を落とさない=間違えないのがひとつの目安です。
その正解だけで合格点の基準に達することができます。余裕が出たら民法などの難問に取り組めば良いのです。
やさしい問題は、合格のための基礎固めをしてくれます。したがって、宅建業法などの暗記科目が苦手というのは合格が遠のいてしまいます。しっかり覚えて得点力を上げましょう。
各科目の点数目標を立てる
宅建試験は、以下の5分野(科目)からなります。
- 権利関係
- 法令上の制限
- 税その他
- 宅建業法
- 免除科目
各分野はそれぞれ、暗記科目であったり、思考力を問われる部分があったり、特徴があります。各分野の特徴や自分の得意分野などから、各科目で目指す点数の目標設定をしてみましょう。
最初はできなくても大丈夫です。過去問を繰り返す中で間違えた回答を記録し、2回目以降にミスを減らすことで、できる問題を徐々に増やしていきましょう。
実地に即した勉強法を取り入れる
極力実務に近い、リアルな学習を取り入れてみましょう。
たとえば、契約書や重要事項説明書の実物を入手して、中身を確認するだけでも、テキストや過去問ではわからなかった点が見えてきます。そして35条・37条書面は実用的な知識として、立体化するでしょう。インターネットでも検索可能です。
また、都市計画図を見ながら街歩きをしてみると、「市街化を優先する・遅らせる」とはどういう意味なのかが理解できてきます。
このようにしてこの設問、この法律が「何のため」というのが明快になると、記憶の定着が一気に具体化します。
宅建試験にヤマ張りは基本的にありませんが、法令改正された部分は唯一ヤマ張りのチャンスですので、正解を狙いましょう。最新の法令改正に関する問題は当然ながら過去問にはないため、予備校や市販の模試で慣れておく必要があります。
5問免除を受ける
すでに不動産会社で勤務している方は、5問免除を受けることで合格率を上げることができます。例年宅建試験の合格率は総合計で17%ほどですが、5問免除を受けた方のみの合格率は20%前後と一般の合格率も高くなっています。
5問免除は不動産会社に従事する必要があります。5問免除講習(宅建登録講習)を申し込み、受講することで、宅建試験本番の5問分が正解となります。
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>>宅建士の5問免除とは?申し込みやメリットデメリットについて解説
なお、上記の「5問免除講習」と宅建合格後に受ける「登録実務講習」は別のものです。宅建試験に合格しても2年以上の実務経験がない場合に、登録実務講習を修了することで実務経験2年と同等以上の能力があるとみなされ、宅建士として登録できるようになります。
まとめ
宅建は本当に難し過ぎるのか、リアルな難易度の解説や、どのようにすれば受かるかの攻略法をご説明しました。
宅建試験は宅建業・不動産業の従事者を養成するためのもので、難易度の高い問題で専門家としてのステータスを競う目的のものではありません。コツコツと、じっくり一定のペースで勉強を続ければ、誰でも合格することができます。
ご自分に合った勉強法、合格が目指せる合理的な勉強法、すき間時間の活用などの工夫をしましょう。
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