プロジェクトの概要を教えてください。
地方課題である一次産業の担い手不足と空き家問題の解決を目指したプロジェクトです。2019年4月より、漁師や農家など一次産業の担い手となる若手見習いが、住居費の一部をそれぞれの親方に負担してもらいながら空き家を活用して共同生活をする弟子舎(でしや)事業を始めました。
地方課題である一次産業の担い手不足と空き家問題の解決を目指したプロジェクトです。2019年4月より、漁師や農家など一次産業の担い手となる若手見習いが、住居費の一部をそれぞれの親方に負担してもらいながら空き家を活用して共同生活をする弟子舎(でしや)事業を始めました。
陸前高田市で暮らしていると「人手が足りない」という声を地域のコミュニティや市役所、居酒屋なんかでも耳にすることがあります。人によっては「住居費用を出してでもいいから来て欲しい」という強い声も。この課題を何とかしたい気持ちは、このまちに暮らしていると自然と聞こえてくる声から湧いてきます。一方で、漠然と漁師や農家という職業に憧れている若者がいることも知っていました。この若者たちが挑戦できないのは、住居の問題をはじめとした「お金」の問題が大きいこともわかっていました。そんな中、地域の空き家活用を考えていた時にひらめきがありました。「使わなくなった空き家に、安価に住める共同住宅を1次産業者の見習いに住んでもらい、同世代の異業種の人たちが交流できる場を提供できれば、地域の課題も解決するのではないか。」これが弟子舎のはじまりです。この発想が芽生えてから、たまたま「東京から移住して漁師を目指したいという同級生」と「農家の見習いになりたいと言う民泊に泊まりに来た若者」が現れました。「このタイミングを使わないでどうする!」と思い弟子舎構想をスタートしました。
一つは見習いが安心して暮らせる環境を整えることです。そのためには「お金」と「気持ち」が大切と考えています。見習い期間中の収入は決して高くはありません。つまり、標準的な生活コストが発生すると移住という選択はより難しくなります。そこで家賃の一部を親方に負担していただいたり、空き家を活用し、共同生活をすることで暮らしのコストを下げることを大切にしました。また、共同生活では、「いい距離感の仲間」が生まれることを期待しました。1次産業の事業者さんの多くは家族経営です。そのため、その中に入ると、どうしても自然とコミュニティは閉鎖的になってしまいます。同じ境遇の人間が隣にいることや、地域のひとが集う場所に住むことでポジティブな効果が生まれると考えました。
もう一つは、親方が安心して見習いが取れる環境をつくることです。仕事以外に生活サポートまで親方が世話をすることは大変なことですし、特に地域になれていない見習いを地域に入れていくのは不安ですよね。地域のキーパーソンに一緒に挨拶に行ったり、地域のルールを教えてあげたり、そういうところを僕の仕事柄第3者としてサポートができると思いました。
弟子舎はあくまで1次産業の担い手である見習いが共同生活をする家です。しかし、先にお伝えした通り地域の方々が気軽に集えるコミュニティの場としても設計しています。ありがたいことに、僕の友人をはじめ、地元の若者やたまたま観光に来ていた方、移住したばかりの人など、多様な人たちに使ってもらっています。しかし、みんな気が合うのか毎日のように宴会が続いた月があり、光熱費が驚くほど高くなったことがありました。(笑) コンセプト上、毎月の光熱費も含めた住宅費にしていますので、光熱費があまりに高騰すると続けられない事業となってしまいます。今となっては笑い話ですが、運営していて大変だった1つの出来事です。
光熱費の高騰を抑えるためにどのように管理をするか少し悩んだというか、考えました。例えば、飲み会は月に4回までなどルールを設けることで簡単に問題は解決することができます。しかしながら、「弟子舎として大切にしているコミュニティが成り立たなくなるのではないか」とも思いましたし、何よりもルールで縛るのは違うなと思いました。弟子舎に関わる全ての人が「どうするべきかを考えて」行動して貰いたいと。配慮し合うことで自由に使える場にしていきたいと考えました。また、所有者の方からお借りしている大切なお家です。ちゃんと想いをくみ取って使ってもらいたいと考えています。「自分たちが楽しければいい」ではなくて、どんな風に活用されたら関わっている人が嬉しいかを考えて欲しいと思っています。それはビジネスオーナーの僕に対しても同じです。なので、直接みんなに光熱費の金額を見せて「高いよ!考えてね!」と伝えました。それ以来、考えて宴会を開いてくれているのか、光熱費の最高記録は更新されていません。(笑)
弟子舎の構想は2018年の夏に思いついて、ぴったりな空き家がないかを探していました。探していることを仲間内に話していた時に、いい物件があると教えてもらったのが出会いです。
空き家をただ単にお借りすることとは意味合いが異なると思っていましたので、何に使うかを所有者の方にちゃんとご理解いただくことを心掛けていました。見習いの課題の一つにお金ということがあったので、そもそも僕が借り受ける費用が高いと成り立たないビジネスです。空き家のままにすると管理コストが発生することを含めて、誠意を込めてお伝えさせていただきました。空き家と言えど所有者の方やそのご家族にとっては大切な家です。貸し出すことに対して、正直後ろ向きなお考えの方もいらっしゃったと伺っています。それでも最終的にはご理解いただき、とても安価にお借し頂くことができました。
繰り返しお伝えしている通り、安価に住み始められるようにコストを最小限に抑えた物件です。なので、大きなお金を伴うような工事などは行っていりません。網戸を付けたり、畳がなかった部屋に畳を入れたりしました。畳を入れた時のことですが、SNSで募集をしたところ、たくさんの人が協力してくれたのも印象的です。また、居間くらいは少し僕のほうで多少費用をもって変えようかとも思っていたのですが、タイミング的に忙しく何もしないままでオープンとなりました。しかし、入居人の趣味であるアニメのポスターが張られたり、山岳の雑誌があったり、よく来る地元の人の好きな芸人の本が並んでいたり、個性あふれる居間になっています。使う人が作り上げていく空間になっているため皆が愛着をもって作り上げていく空間になっていると思いますね。
今年の夏にこの地域の盆踊りが復活しました。なんとその立役者の一人がこの弟子舎によく通う人間なのです。弟子舎で出会った仲間もその復活のために協力していました。お酒の席をきっかけに、弟子舎に来る仲間が面白がって復活の一助になったという話なのですが、これってすごいことだと思うんです。地域の文化を復活させたこともそうですが、1人の想いを持った人間に対して、弟子舎というコミュニティは応援をしている。見習いのためにつくった家をきっかけに、地域の課題を1つ解決できた良い成果だと思っています。誰か1人がやりたいことを口にすると、それを応援してくれる仲間がいて、いつの間にか実現してしまう。これがまた違うことで続くと、この地域は更に魅力的になると思います。
弟子舎にはあくまで、「弟子」が一人前になるまで住んでいることに意味があると思います。つまり、1人の人間が長く住まうのではなく、いつかは1人前になって出ていくということです。ポジティブな意味で「早く弟子舎を卒業したい!」って思ってもらいたいんですよね。「20年間住んでます!」ってひとがいるのはちょっと違うかなと。(笑)
でも、弟子舎に集う仲間の中に元弟子舎に住んでいた先輩がいて、同じ時間を共有してもらいたいって思います。異業種の同世代が集う横のつながりをイメージしてつくった弟子舎ですが、歴史を重ねることで世代間の交流が生まれると、一人ひとりの課題が解決されたり、やりたいことが実現していくと思っています。それは親方も一緒です。家賃の一部を親方に負担いただいているのも、「人を育てている」ということを改めて意識してもらえたら嬉しいという側面があります。親方だって見習いたちが自分たちの地域で生き生きと暮らしていたら嬉しいですよね。そんな人たちがいる地域は絶対に面白く、新たな人を呼び込んでくれると信じています。なので、新しい見習いを迎えるごとに面白くなる場所にしていきたいですね。
| 物件名 | 弟子舎 | ||
|---|---|---|---|
| 所在地 | 岩手県陸前高田市広田町 地図を見る | ||
| 物件タイプ | 空き家(一戸建て) | 築年月 | - |
| 取引形態 | 賃貸 | 入手時期 | 2019年3月 |
| 間取り | 4LDK | 事業開始時期 | 2019年4月 |
| 建物面積 | 105.78 m² | 賃料・購入価格 | 非公開 |
| 土地面積 | 289.23 m² | 事業用リノベ費用 | 非公開 |
| 活用分野(詳細) | ルームシェア+コミュニティスペース | ||
| 資金調達方法 | 自己資金 | ||
|---|---|---|---|
| 自己資金 | 非公開 | 投融資 | - |
| クラウドファンディング | - | 補助・助成金 | - |
| その他 | - | ||
| 初期投資は回収できたか | |||
| プロジェクトオーナー | 越戸 浩貴 |
|---|---|
| プロジェクトURL | - |
| プロフィール | 一般社団法人 マルゴト陸前高田 理事 特定非営利活動法人 高田暮舎 副理事長 |