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地方創生の希望格差

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地方創生の希望格差 寛容と幸福の地方論Part3

本報告書は、『地方創生のファクターX』『“遊び”からの地方創生』に続く「寛容と幸福の地方論Part3」として、引き続き地方創生について考えるものです。
過去2作では、LIFULL HOME’S総研は「地方創生議論はWell-beingの増大を目標とすべきである」と主張してきましたが、今作ではそれを、持続的なWell-beingという考え方にアップデートしたいと思います。持続的なWell-beingとは、いまの幸福が将来にも続くと信じられることであり、また、たとえいまは幸福度が低くても将来はもっと幸福になれると思えることです。
そこで着目したのは地域の希望です。自分の住む地域の未来に対して明るい希望を持つことができなければ、自分の将来に持続的なWell-beingを実感することは困難です。本研究プロジェクトでは、47都道府県の在住者を対象にした調査で地域の希望の実態を測定し、人口減少時代にあっても地域の希望を見出す方法を模索します。

2023/09/29

持続的Well-beingと地域の希望

国民生活において追い求めるべき新しい豊かさとして、Well-beingを重視する時代が確実に来ている。政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」において、その目的を「個人と社会全体の Well-Being の向上」を掲げ、内閣府は継続した世論調査(「満足度・生活の質に関する調査」)によってWell-beingに関する指標群(ダッシュボード)を作成している。また、デジタル庁は独自のWell-Being指標(Liveable Well-Being City指標:LWC指標)を開発し、各自治体のデジタル田園都市構想において活用することを提唱している。過去2作のレポートにおいて幸福度(Well-Being)を地方創生の目標にすべきであると提唱してきたLIFULL HOME’S総研としても、このようなWell-Being重視の流れは歓迎している。
しかしながら、Well-being が定義の上でいま現在に照準し、かつ高齢層がもっとも高くなる一般的な傾向があるとすれば、地方創生における Well-being 指標の活用には一定の注意が必要である。単純な話として、地域の高齢化率が高くなれば、地域平均でみる Well- being は自動的に高くなるのである。さらに、必要な改革を先送りにしてでも、市民の刹那的な要望に応える政策のほうが Well-being には効果的に働く可能性もある。だが、それでこの国の近未来、いまの現役世代が高齢期になったときに、いまの高齢者と同じように 高い幸福度を実感できるかどうかは約束されるわけではない。

このような問題意識を踏まえ、LIFULL HOME’S総研がこれまで提唱してきた幸福(Well-being)を、「未来にも続く持続的なものでなければいけない」という考え方にアップデートしたいと思う。 自分の未来が明るいという個人の希望、すなわち持続的なWell-Beingはどのようにもたらされるのだろうか。もちろん、現状での幸福度によるところがとても大きいだろう。調査をするまでもない。現在の幸福を掴み取った実績に基づく自己効力感は、不透明な未来を切り拓く自信を与えてくれるに違いない。ただそこで議論を片付けると、将来にわたって持続する幸福感を実感するためには、いま現在が幸福でなければならない、というトートロジーに陥ってしまう。ほかには個人のパーソナリティの影響も小さくないだろう。グラスに半分入ったワインを見て、「もう半分しかない」と悲観的に考えるのか「まだ半分もある」と楽観的に考えるのか、個人の認知スタイルには癖がある。だが我々の調査研究は、個人の内面には踏み込まないほうがいいだろう。社会の成員みんながみんな楽天家である必要はないだろうし、おそらくそうあるべきでもない。

それよりも本研究で検討したいのは、個人の持続的幸福は、自分の生活の基盤的環境である地域社会の未来は明るいという見通しを土台にしなければ成立しないのではないか、という仮説である。
急激な人口減少と超のつく高齢化は、確かに未来に対して暗い影を落としている。特に地方では影響は深刻だろう。そんな状況で、どのようにして地域社会の未来に明るさを見出し、それを土台に個人の持続的なWell-beingを高めていくのか。それが、地方創生が考えるべき重要な論点であると、我々の調査研究プロジェクトに新たな課題を設定したいと思う。

文:LIFULL HOME'S 総研所長 島原万丈

報告書

全データ

報告書全体(38.7MB)

各章データ

  1. 0.PROLOGUE
    1. 巻頭エッセイ:琥珀色の希望

      序章:地方の希望は失われたのか(3.2MB)

      島原万丈(LIFULL HOME'S 総研 所長)

  2. 1.INTRODUCTION
    1. [1]希望の語り方

      ‒E. ブロッホ『希望の原理』と「他でもあり得る」現実の行方 ‒(1.4MB)

      渡會知子(横浜市立大学都市社会文化研究科准教授)

    2. [2]地方創生は幻想?:期待と希望が変える地域の未来(1.9MB)

      清水千弘(一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科教授)

  3. 2.RESEARCH
    1. LIFFUL HOMEʼS 総研 アンケート調査分析

      地域の希望に関する調査

    2. アンケート調査分析 ❶地域の希望に関する調査(22.3MB)

      橋口理文(株式会社ディ・プラス 代表取締役)
      吉永奈央子(リサーチャー/株式会社ディ・プラス フェロー)

    3. アンケート調査分析 ❷地域の希望とウェルビーイング(4.2MB)

      有馬雄祐(九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門助教)

  4. 3.CASE STUDY
    1. インタビュースペシャル

      聞き手:島原万丈(LIFULL HOME’S 総研 所長)(2.6MB)

      [1]ローカルに飛び出す若者のリアル

      脱・人口増減論 「まちの幸せは、ぼくらの幸せである」

      指出一正氏(『ソトコト』編集長)

      [2]リノベーションまちづくりのリアル

      脱・人口増減論「まちづくりは、地域のポテンシャル探しだ」

      大島芳彦氏(株式会社ブルースタジオ 専務取締役/クリエティブディレクター)

    2. [寄稿]市民の希望をつくる行政(1.9MB)

      林・小野・有理(有理舎主宰/前四條畷市副市長)

  5. 4.EPILOGUE
    1. 地方創生の希望格差 終章

      「失われた希望を求めて」(8.2MB)

      島原万丈(LIFULL HOME'S 総研 所長)

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