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“遊び”からの地方創生

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“遊び”からの地方創生 寛容と幸福の地方論Part2

地方創生は地域の幸福度(Well-being)を目標にすべき、というのがLIFULL HOME’S総研の基本的なスタンスです。しかし幸福観は人それぞれ多様です。多様性は時に互いに矛盾し摩擦や軋轢を起こすので、Well-beingは寛容性を伴わなければなりません。これが「寛容と幸福の地方論」の基本理念です。
昨年発表した『地方創生のファクターX』では、不寛容が地方の衰退を招いていることを明らかにし、寛容の重要性を提言しました。続編と位置づける本作では、地方創生でこれまであまり関心を持たれなかったレジャーや娯楽・趣味など広義での遊びに着目しました。
今回の研究を通して、遊びが寛容度と幸福度を高めるという知見が得られました。特に、文化芸術系の遊びは寛容度に強く作用するようです。現状では東京を中心とする大都市圏と人口規模の小さい地方都市では遊びに格差があり、総じて言えば地方には遊びが足りないのではないかと考えられます。

2022/09/26

“遊び”から地方創生を考えてみる

なぜ若者は東京を離れないのか。

昨年LIFULL HOME’S総研が発表した『地方創生のファクターX 寛容と幸福の地方論』で実施した調査では、地方出身で東京圏在住の18歳〜39歳の男女で、出身地へのUターンを希望しない者(全体の48%)が、Uターンを希望しない理由としてもっとも多く選んだのは「東京の暮らしが気に入っているから」(51.0%)で、これは「やりたい仕事が少ないから」(43.9%)や「収入が下がって生活レベルが下がるから」(27.4%)を大きく上回っている。

では、地方出身者を東京に引き留める東京の暮らしとは、どのような暮らしなのだろうか。それは地方の暮らしとはどこが違うのだろうか。『地方創生のファクターX』での調査では、東京圏に住む地方出身の若者に「あなたにとって東京とはどんな街ですか?」と東京観をたずねている。

もっとも回答が多かったのは「最先端の知識や技術を吸収できる街」(46.9%)ではなかった。僅差だが「質の高い遊びや余暇が楽しめる街」(49.0%)がトップである。特に、18〜29歳の若年女性では「質の高い遊びや余暇が楽しめる街」を選んだ割合は55.2%と高く、「最先端の知識や技術を吸収できる街」の49.7%を上回っている。

また、地元へのUターンを希望する層と希望しない層で東京のイメージを比べると、「最先端の知識や技術を吸収できる街」については、Uターン意向者で46.8%、非意向者で49.4%と差は僅かであるのに対して、「質の高い遊びや余暇が楽しめる街」は、Uターン意向者43.3%に対して非意向者は55.4%と10ポイント以上の差が開く。東京へ出てきた地方出身の若者がUターンをしたくないのは、雇用の問題だけではなく、地方に余暇や消費の楽しみが少ないことも大きな要因としてあると推察できる。

このような知見は、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が実施した調査でも確認することが出来る。「若年層における東京圏・地方圏移動に関する意識調査」(2019年4~5月)では、20〜34歳の間に地方圏から東京圏へ移住した人に、東京についての印象を尋ねている。その結果は、「同じ会社や同じ業種でも、やりがいのある仕事は東京圏に多い」が35.4%で最多であるものの、「娯楽・レジャー・文化・芸術等に触れる機会は東京圏に多い」も30.8%で続いており、広い意味での余暇環境が、雇用環境に負けず劣らず東京の大きなアドバンテージであることが分かる。

どうやら若者の東京一極集中は、これまでの地方創生議論で中心的な関心だった雇用環境の違いだけではなく、余暇環境の違いにもよっても引き起こされている可能性が高い。東京の魅力は仕事(だけ)ではなく、”遊び”なのではないか。裏を返せば、地方の弱みは仕事(だけ)ではなく、”遊び”なのではないか。昨年発表した『地方創生のファクターX』の続編として位置づける本研究では、地方創生における”遊び”について考えることにする。これまで述べてきた各種のデータを元にした考察から、“遊び”が第二のファクターXなのではないか、という仮説にもとづくものである。

なお本報告書で言う“遊び”とは、レジャー、娯楽、趣味、芸術・創作活動などさまざまな余暇活動の遊びにとどまらず、 遊びが持つ精神的・心理的な側面、すなわちマインドとしての遊び(遊び心)、また余白や隙間を意味する遊びまで包含する幅広い概念を意図している。

文:LIFULL HOME'S 総研所長 島原万丈

報告書

全データ

報告書全体(65.7MB)

各章データ

  1. 0.PROLOGUE
    1. 序章

      Intro: 三浦 展と山内マリコ いま、あらためて読むファスト風土論

      本研究の問題意識と仮説 地方創生には“遊び”が必要だ(4.8MB)

      島原万丈(LIFULL HOME'S 総研 所長)

  2. 1.INTRODUCTION
    1. 01. 遊びの自由 ──距離化の運動と管理社会批判(1.5MB)

      渡會知子(横浜市立大学 都市社会文化研究科 准教授)

    2. 02. 幸せの場所と時間(2.2MB)

      清水千弘(一橋大学 ソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター 教授)

    3. 03. [外部統計レポート]「社会生活基本調査」にみる遊びの実態(3.2MB)

      橋口理文(株式会社ディ・プラス 代表取締役)
      吉永奈央子(フリーリサーチャー/株式会社ディ・プラス フェロー)

  3. 2.RESEARCH
    1. LIFFUL HOMEʼS 総研

      「遊び」と幸福・寛容に関する調査

    2. 01. [アンケート調査分析 ❶]「遊び」と幸福・寛容に関する調査(28.6MB)

      橋口理文(株式会社ディ・プラス 代表取締役)
      吉永奈央子(フリーリサーチャー/株式会社ディ・プラス フェロー)

    3. 02. [アンケート調査分析 ❷]「遊び」から見るその人の幸せと寛容さ(14.5MB)

      有馬雄祐(九州大学大学院 人間環境学研究院都市・建築学部門 助教)

  4. 3.REPORT & DISCUSSION
    1. 01. 自治体、企業、個人が語る“楽しい遊び方” 「遊び」は地域を変えるか(4.9MB)

      中川寛子(株式会社東京情報堂 代表取締役)

    2. 02. 別府におけるアートプロジェクトの取り組み ̶ 夜になっても遊びつづけろ(3.3MB)

      中嶋文香(株式会社丹青社)

    3. 03. 娯楽は命の次に大事なものである ~反・ヴァーチャルファスト風土論序説(5.3MB)

      三浦展(カルチャースタディーズ研究所 主宰)

  5. 4.EPILOGUE
    1. “遊び”からの地方創生 終章

      NO PLAY, NO LIFE(7.3MB)

      島原万丈(LIFULL HOME'S 総研 所長)

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