狭くてもメリットが上回った! 8平米での一人暮らし体験記

狭くてもメリットが上回った! 8平米での一人暮らし体験記

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賃貸住宅市場では、近年3〜5畳のワンルームしかない「極狭物件」が人気のようです。常に満室で、空き室待ち状態のマンションも少なくないといいます。

広さを求める人には不可解かもしれませんが、狭いからこそのメリットもたくさんあります。私は22年前、延床面積8平米、居室3畳ほどの物件に住んだことでそれを実感しました。

そこで今回は、「時代が私に追いついた!」と、一人悦に入っている私が、極狭物件の魅力をお伝えします。

極狭物件の意外な住み心地

「寝られればいい」で始まった8平米ライフ

1998年、私は大阪・心斎橋の広告制作事務所で働いていました。実家からの通勤時間は約1時間でしたが、大変忙しく、終電に間に合わないときには近くのビジネスホテルに経費で泊まっていました。

しかし、連泊になると社長にも気を使います。そのうち寝袋を事務所に持ち込むようになり、とうとう2週間ほとんど家に帰れなくなりました。朦朧とした意識のまま衝動的に駆け込んだ不動産会社さんで、「とにかく寝られればいい!」と決めたのが、延床面積8平米の極狭物件です。

立地は、事務所から徒歩10分の繁華街。以前は小さなスナックがたくさん入っている雑居ビルだったので、一見するとマンションとは思えない建物でした。しかし、改装したてで室内はとてもキレイで、バス・トイレ・洗面の3点ユニットはピカピカ。スナック時代の名残らしい、こじゃれた出窓がついていることも私的にはツボでした。

「生活の90%は仕事」という毎日でしたが、「この出窓まわりをステキにしよう」ということが私のささやかな希望になりました。ちょうど近くにインテリアショップができたので、休みの日はそこで雑貨を眺めるのが習慣に。おいそれとモノを増やせないため、熟考を重ねたモノしか買えませんでしたが、それも楽しかった思い出です。

延床面積8平米は、畳数に換算すると江戸間で5.17畳、京間なら4.83畳です。水まわりの面積を引くと、居室といえるスペースは3畳もありません。それでも私は、初めて 「自分だけの城」を持ってわくわくするような気持ちでした。

でも、実際に住んでみると、ちょっと大変なこともありました。

笑うしかない狭さ!

物件を契約したあと、友人がパイプベッドを譲ってくれることになりました。わざわざ奈良から車を出してくれた友人と、心斎橋のど真ん中からベッドを運び、狭い階段を3階まで上りました。(エレベーターはなかったので…。)

ところが、部屋にベッドを入れることはできませんでした…!

玄関口はなんとか通るのですが、置けなかった…。普通のシングルサイズのパイプベッドなのに、無理でした。

同じ8平米の部屋でも細長ければ入ったかもしれないのに、正方形に近い部屋だったことが災いして数cm足りなかったのです。友人が爆笑してくれたので救われましたが、その日におごらされたことは言うまでもありません。

住み始めてみて、1番大変だったことは、キッチンの使い勝手です。ここは物件選びで妥協した部分なので致し方ありませんが、ミニキッチンでは大した料理ができません。

冷蔵庫は元から付いていたものの、霜だらけになる小型のもので少ししか食材が入らず、冷凍室もありません。しかし、新しい冷蔵庫を置こうとすれば、寝るスペースが侵食されます。

1口しかない電磁コンロにカセットコンロを加えて何度か料理しましたが、仕事が忙しいせいもあり、すぐにやらなくなりました。それまで実家暮らしだったので自炊にも興味はありましたが、すっかり外食に慣れてしまいました。

このようにデメリットも少なからずありましたが、それよりもよかったことのほうが圧倒的に多い8平米ライフだったのです。

とにかく安い、早い、その上おいしいネタになる

まずは何といっても家賃が安いこと! 心斎橋という超便利な立地にもかかわらず、家賃は忘れもしない月々3万7,000円。そのおかげで、他のことにお金を使ったり、貯金したりすることもできました。

また、狭いからこそ、動き回らなくても必要なモノに手が届く「コックピットのような快適さ」がありました。掃除もあっとういう間に終わりますし、冷暖房もエアコン1台ですぐに効きます。

あまりの狭さに友人は呼べないと思っていましたが、思い切って招いてみると、最初はあぜんとしていた友人もすぐに気に入ってくれました。部屋が狭いと必然的に距離が近くなるので、より親密な関係を築きやすいと思います。そして普段も、極狭物件に住んでいれば絶好の会話のネタになります。

余談になりますが、ここでの暮らしは思いがけず安心でした。マンションの隣に、当時ミナミで最大といわれるキャバクラがあり、周辺には客を呼び込む黒服のお兄さんたちがいっぱい。明け方まで文字どおり「黒山の人だかり」で、不審者が近づきにくい状態だったのです。

毎晩0時以降に帰宅する私は、いつも黒山をかき分けるようにしてマンションに入りました。私はすっかり「夜の人」と思われていたようで、最初は「ウチの店のほうが稼げるよ〜」と、よくスカウトされていました。そのうち顔なじみになり、黒服のお兄さんたちが「おつかれー!」と手をヒラヒラさせながら迎えてくれたのもいい思い出です。

そんな愉快な8平米ライフも、約1年で急な幕引きとなりました。あまりの激務で気づかなかったのですが、「卵巣嚢腫(のうしゅ)」という病気が発覚し、すぐに入院・手術となったのです。それを機に私は事務所を辞め、マンションを引き払って、実家で静養してから独立することになりました。

おかげで今の自分があるわけですが、病気にさえならなければ、もっと長く続けたかった8平米ライフ。ここまで読んでいただいて「いいかも…」と思いはじめたアナタに、極狭物件での暮らしを楽しむ極意をお伝えします。

快適に暮らすための3大ポイント

持ち物は最小限にし、兼用を増やす

私の場合、実家を出て初めての一人暮らしだったため、実家の自室に持ち物を残したまま、最小限のモノだけを買い足しました。

既に一人暮らしをしていて、引越し先として極狭物件を検討している人は、これでもかと処分して持ち物を減らすことが絶対条件です。ミニマリストにならなければ、快適に暮らすことはできません。

私はテレビさえ置きませんでした。もともとあまりテレビを見ないので不便はありませんでしたが、それくらいの思い切りが必要です。
また、自分で家具を用意するなら「ソファベッド」のように、一台二役以上の家具がスペースの節約になるのでおすすめです。

外に出せる機能はどんどん外に出す

住まいの中にあれこれ役割を詰め込もうとすると、極狭物件には収まりません。外でできることは外ですることが重要で、割り切ることで持ち物を減らすことにもつながります。

たとえば勉強や仕事は、図書館・カフェ・コワーキングスペースなどを使うと、パソコンさえ持っていればデスクやチェアは不要です。趣味も、ジョギングやカフェ巡り、映画鑑賞など、家ではなく外で道具を使わずに楽しめることにすればモノが増えません。

もっと割り切るなら「私のキッチンは外にある」と考えるのもいいでしょう。基本的に食事は外食ですませ、家ではごく簡単な調理しかしない、という手もあります。キッチンは家の中でもっともゴチャつきやすい場所です。今の時代は、外食でも安くて健康にいいメニューが豊富にありますから、困ることはないでしょう。

水まわりが整備された物件を選ぶ

バスルームやトイレは生活に欠かせない設備だけに、清潔でなかったり、不具合があったりすると不満が募ります。新品でなくとも、きちんとメンテナンスされているか、物件選びの際にチェックしておきましょう。

できればバス・トイレはセパレートが理想的ですが、それだけ居室が削られることになります。また、セパレートであっても、浴槽ではなくシャワーブースのみという物件も増えています。自分が何を優先するのか、あらかじめしっかりと考えておきましょう。

もちろん、自炊をきちんとしたい人はキッチンも要チェック。今の新しい物件なら、寝るスペースをロフトに上げるなど、空間を立体的に活かすことでスペースを確保しているところも多いです。普通の物件と遜色ないキッチンが設置されていれば、自炊も存分に楽しめますね。

10平米以下の賃貸物件探し

極狭物件がおすすめの人

ここまで極狭物件のさまざまな魅力について、実体験も交えつつお伝えしてきました。

極狭物件はすべての人におすすめできるわけではありません。ただし、本気で貯蓄に励みたい人にはイチオシです。支出を抑えるには固定費のテコ入れが必須ですが、家賃はその最たるものだからです。おまけに家具などの準備も最小限ですみますから、初期費用も高くなりません。

そして昔の私が「寝られればいい」と考えたように、住まいに求める役割が少ない人にもぴったりです。ハマる人には、どハマりする極狭物件を、さっそく探してみましょう!

サブ住居にぴったりの極狭物件

今の時代、2つの地域に拠点を持って生活する「デュアルライフ」も注目のキーワードとなっています。

たとえば、普段は郊外から長時間かけて通勤している人が、都心部にある会社の近くにサブ住居を構えることもデュアルライフの一つ。サブ住居があれば、仕事や飲み会で帰りが遅くなったときや、週末に都心で用事があるときなどにとても便利です。

この場合、サブ住居はほとんど「寝るだけ」の用途になるので、まさに極狭物件がぴったりです。家では寝るだけでも、都心なら外に出ればできることが無限に広がっています。メイン住居としては考えられない人も、デュアラーとしてなら極狭物件も検討の価値があるでしょう。

まとめ

「立って半畳、寝て一畳」ということわざがあります。生活するのに必要な広さは、起きているときが半畳、寝ているときも一畳あれば足りるので、ぜいたくは慎むべきであるという教えです。

私も8平米での暮らしを経て、むやみにモノを増やさないようになりました。そして、ハングリーに頑張っていた自分と、出窓の向こうから聞こえる夜中のざわめきを思い出すと、なんだか鼻の奥がツーンとします。
シンプルライフが身について貯金が増え、ちょっと切ない思い出もくれた極狭物件。長い人生、一度は経験してみるのも面白いと思いますよ!

Matsuyakko

Matsuyakkoライター/編集者/プランナー

専門知識:住宅・住宅設備関連の知識が豊富。もともとインテリアや建築が大好きで、趣味と実益を兼ねて仕事をしている。「お宅拝見」的な取材を数多く経験し、これまでに取材した実例は200邸以上。

※このページの内容は、2021年1月23日時点での情報です。掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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