美しい街、神戸で暮らす。自然と共生するための高い防災意識

美しい街、神戸で暮らす。自然と共生するための高い防災意識

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北側に六甲山系の山々が、南には神戸港を中心とした海が広がる神戸の街。細長い街には、山や海の自然と、神戸に古くから暮らす華僑をはじめとする海外から来た人たちと、街の人たちが育んだ文化が息づいています。

私にとって美しい故郷でもある神戸は、1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災によって大きく様変わりしました。当時大阪に住んでいた私が感じたことや、離れていたから見えてきた神戸の魅力について、ご紹介します。

震災後に生まれ変わった神戸

阪神・淡路大震災は、神戸に住む人にとっては寝耳に水の出来事でした。大阪で暮らしていた私の家も大きく揺れて、タンスがずれたり、食器が落ちたりという被害はありました。ですが、まさか神戸に甚大な被害をもたらすなどとは考えも及びませんでした。

人生リセット

震災後、状況が少し落ち着き、土台からずれてしまった実家を見たときの衝撃は、今でも忘れることはありません。一寸先は闇、という言葉が頭にこびりつき、我慢の多かった当時の夫との関係をふくめリセットする決意をしたのでした。

しばらく大阪に住んでいましたが、もう大阪で暮らす意味が見いだせなくなり、親の病気を期に神戸へ帰ることにしました。神戸が傷つき、壊れてしまったことで、幼い頃から自分を育んでくれたのは、両親や親戚だけでなく、神戸の街そのものだったことに気づきました。

震災後、20年以上の長い年月をかけて神戸市は中心地からどんどん復興していき、もはや震災の爪痕を探すことも困難です。ですが、震災前と後とでは、そこに住む人の意識や家々、風景などが変貌したと感じます。もちろん変わらないものもあります。私が現在の暮らしの中で見る街の風景をご案内しましょう。

海と山のある神戸は風通しの良い街

現在は大阪で仕事をして、暮らしているのは神戸の中心部、三宮のマンションです。毎朝三宮駅へは山を見ながら向かいます。震災後、電線が地中化されて切り取られることのない空が見えます。

私にとって、夏の大阪は住みづらい地域です。ビルとビルの間に空気が澱み、埃や熱が空に逃げることなく、ぐるぐるまわっています。お昼休みに外に出れば、地面という鉄板に乗せられて炙(あぶ)られているような気分になることも。

なんとか暑いお昼をやりすごして、電車で帰った神戸・JR三宮駅から外に出るだけで「あ、涼しい」と感じます。六甲の山をおりてくる風は冷たく、海を渡ってくる風は少し湿り気があります。肌にあたる感触だけで、山風か海風かが分かるのです。

休日のお散歩コース

休日にはストレス発散のために布引(ぬのびき)の滝へ行きます。三宮駅から40分ほど歩けば、あっという間に自然を感じられるエリアです。ぼんやり水の音を聴き、渓流を見つめていると心が落ち着きます。

私は大阪文学学校の通教部で小説を教え、文芸同人誌に所属して小説を書いていますが、心がクリアになったときにアイデアが生まれます。私の書く小説の舞台はほとんどが神戸です。

また、灘駅(なだえき)から北へ徒歩約10分のエリアには、「神戸文学館」や「横尾忠則現代美術館」があり、芸術を身近に感じられます。そこからHAT神戸へと続くミュージアムロードはお気に入りの道です。ゆるい坂を真っ直ぐに海へと向かうと開放感が広がります。

大阪との比較で見えてきた神戸という街

大阪で長く暮らした経験と、今もなお毎日大阪へ通勤する中で、同じ関西圏でありながら神戸と異なる様相が見えてきます。大阪駅は2011年に大きな変貌を遂げました。大きな屋根ができて、見るものを圧倒する大阪ステーションシティが開業。

大阪駅の改良工事が着々と進むのを目の当たりにしながら、嬉しい反面、神戸は取り残されていく、と悲しい気持ちになりました。それでも神戸は、独自の道を歩んでいました。

震災の象徴の街HAT神戸

JR灘駅から徒歩約10分で行けるHAT神戸は、「Happy Active Town」の頭文字から名づけられました。阪神・淡路大震災を記念してできた「人と防災未来センター」は夜になると、時期によってライトアップの色が変化して、異彩を放ちます。この建物を中心とするHAT神戸は震災後の防災意識が生んだ新しい神戸の象徴ではないか、と捉えています。

同じHAT神戸の海辺にある「兵庫県立美術館」も大好きなスポットです。震災後1999年に着工した新しい美術館は、建築家、安藤忠雄氏の斬新なデザイン。美しい絵画作品を身近に感じることで自分の中の意識に変化が生まれます。特に現代アートには、既成概念を壊す力があります。同じことは「横尾忠則現代美術館」にもいえます。

昔と同じ六甲山と震災後の東遊園地

神戸の中心地からぱっと顔を上げただけで目に入る六甲山。その姿は震災前とまったく変わっていません。暑い夏、車に乗って30分も走れば涼しい山の上に行けます。私のお気に入りは「六甲ガーデンテラス」です。展望台からはお天気が良ければ大阪のほうまで見渡せます。そこから見える神戸の街の風景もまた震災前とは変わりません。

1868年からの古い歴史がある「東遊園地」は震災後もそのまま市民の憩いの場として機能しています。震災後には震災犠牲者を追悼する「慰霊」という顔を持つようになりました。私の家からであれば徒歩約3分で到着します。

「東遊園地」で毎年開催される「阪神淡路大震災1.17のつどい」には、できるかぎり参加しています。午前5時46分に黙とうを捧げるため、夜明け前の暗闇の中、たくさんの人が集まってきます。「神戸ルミナリエ」も震災から生まれたイベントで、鎮魂とともに復興や再生への夢と希望が託されています。

悲しみから生まれる勇気もあることを、「阪神淡路大震災1.17のつどい」と「神戸ルミナリエ」を通じて学びました。この2つのイベント以外の「東遊園地」は、家で淹れたコーヒーをポットに入れて、木陰で読書を楽しむただの明るく美しい広場でしかありません。

美しさと防災が共存する街

神戸市には港町としての歴史があり、それを今に映すのが旧居留地です。レトロな建物が建ち並び、新しくできた建物も景観を壊さないように配慮されています。神戸を代表するといっても過言ではない、スポットをご紹介します。

レトロな街並みが残る旧居留地

家から歩いて10分ほどの旧居留地には、大好きなレトロな外観や内装が印象的な「神戸市立博物館」があります。旧横浜正金銀行の重々しさがある建物は、さまざまな想像をふくらませてくれます。神戸に関する歴史の資料や古地図などを所蔵しており、小説を書くときのイメージづくりにも役立つ場所です。

旧居留地から港のほうに行くとメリケンパークに行き当たります。広々とした海が目の前に広がり、ぱーっと気持ちも広がります。ここには震災の記憶を留めるスポットがあり、観光で訪れた人たちに震災の生々しさを見せつけます。

割れたコンクリートと歪んだ鉄柱が物語る、大きな震災。文字や写真よりも、大きなインパクトを与える、平和な日常の中にある生の姿。安心して暮らすことの大事さを何度も何度も考えさせられます。

1886年に生まれた日本の近代文学を代表する小説家の谷崎潤一郎は、関東大震災のあとに関西へ移住し、神戸に住んでいたことがあります。『細雪』は神戸に住んでいるときに生まれました。文豪もやはり安心して暮らさなければ作品を書けなかったのだなと思い、安心こそが何よりも大切なのだと実感します。

震災後に建設された三宮のマンションで暮らす

私は現在、「大きな震災がきても大丈夫!」という謳い文句で震災後に建てられたマンションで暮らしています。室内には大きな柱と梁(はり)があり、画像内の幅約90cmの本棚と比較していただければ、その大きさがイメージできるでしょうか。すべての室内に火災報知器が設置され、定期点検があるのも特徴です。

日ごろのちょっとした防災

日常における防災については、日本全国で地震があるたびに考えます。災害とは、地震や大きな台風そのものではなく、その後のインフラが途絶えたときこそが、日常生活を送る人たちにとって本当の災害なのではないかと考えます。

水が出ない、電気がつかない…などが生きていく上での災害となって襲いかかってきます。大きな災害としないための備えこそが防災ではないでしょうか。

長い間、水のない生活を強いられた両親や妹、親戚。そのときの体験を聞いて今でも印象に残っているのは、ぐらりと来た瞬間にバスタブに水を張ったという妹の言葉です。それだけの水でどれほど助かったか、と。

シュラフやちょっとした料理ができるキャンプ用品、定期的に買い替えるペットボトルの水、大人用の尿取りパッドなどの用意が、被災時にサバイバルするための私の備えです。地震の揺れを少々防いでも仕方ない、というのは家の地盤そのものがずれて崩れた実家を見たから思うことかもしれません。

西宮も大きく様変わり

阪急電鉄沿線の西宮北口駅周辺も大きく変わりました。震災後にできた複合施設の「阪急西宮ガーデンズ」にはじめて行ったときに驚いたのは、エントランスをくぐったときの天井の高さです。風通しの良さを実感しました。

美月麻希

美月麻希

フルタイムで働きながら小説を書いています。『鳩の血(ピジョン・ブラッド)』にて神戸エルマール賞佳作受賞。大阪文学学校通信教育部小説クラスチューター。文芸同人誌『白鴉』同人。趣味は旅行、寺社仏閣巡り、お能の謡。神社好きが高じて『古事記』にはまり、オリジナル小説化を試み、仲間とともにYouTubeにて『神々鼓動』を配信中。

※このページの内容は、2019年12月3日時点での情報です。掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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