渓谷の美しさを存分に味わおう、「沢登り」の魅力と注意点を解説

渓谷の美しさを存分に味わおう、「沢登り」の魅力と注意点を解説

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登山が好きな人なら、「沢登り」というジャンルをご存じかもしれません。普通の登山道ではなく、沢沿いを登っていく「沢登り」というスタイルは、夏の暑い山の中で爽やかな清涼感を味わえます。

登山道ではない登攀(とうはん※岩を登るクライミングを伴う登山)ルートを登ることから、ハードルの高さを感じている人も多いと思います。確かにレベルによっては危険を伴うアクティビティではありますが、初級の沢であれば、初心者の方でもチャレンジすることができます。
今回は、登山のバリエーションの一つとして沢登りを楽しんでいる私が、沢登りの魅力と楽しみ方についてご紹介します。

沢登りとは

沢登りとは

沢登りとは、山に流れる「沢」や「谷」、「滝」を登頂路として登る登山スタイルです。広義の意味でいえば、山頂や稜線、尾根に到達することを目標としなくても沢登りと呼びます。

最近では英語で「シャワークライミング」と呼ばれることもありますが、元々は渓谷や水が豊富な日本の山で生まれた登山形態です。日本で登山道が整備される以前、山仕事を生業にする人の間では谷筋を登ることがあり、それが現在の沢登りつながっているそうです。

岩壁登攀(ロッククライミング)との違いは、大きな滝を登ることを目的するものが岩壁登攀。小さな滝だけ登ったり、巻き道を積極的に利用したりするのが沢登りです。

沢水の中に入るため、当然半身~全身が水に濡れます。装備も水に浸かることが前提となり、これが一般的な登山とは異なる点です。また、道も未整備、ルート不明瞭な箇所があるため、ルートファインディング能力が求められますし、ヘルメットや登攀具、ロープ確保が必要な箇所も出てきます。

私の趣味の一つ、沢登り

私は大学時代に登山を始め、次第に登山にハマり、一般登山ルートだけでなく、登山の幅を広げたいと思うようになりました。

そこでまず、雪山登山に挑戦し、準バリエーションルートともいえる岩稜縦走(がんりょうじゅうそう)などを経験してきました。その流れで、沢登りにも興味を持つようになりました。
最初のうちは経験者と同行しつつ、単独でも行けるような沢には一人でも行くようになりました。とはいえ、レベルは初心者ですので、身の丈に合ったやさしい沢を選ぶようにしています。

初級レベルの沢でも沢登りができるようになると、一気に登山のバリエーションが増え、山の楽しみ方が多彩になります。一般登山の場合、真夏の低山は暑すぎるので高い山に涼を求めがちですが、沢登りができると低山でも選択肢に入れることができます。沢登りであれば水に入れますので、暑い季節には絶好のアクティビティでもあるのです。

沢登りの3つの魅力

魅力1. 渓流美、渓谷美が楽しめる
登山で景色を楽しむ、というと一般的には山頂からの壮大な展望…つまり、周囲の山の山容や雲や太陽が織りなす景色を想像する人が多いと思います。そのような景色も日本の山岳景観の大きな魅力の一つですが、渓谷美というものも同じく私たちの心を引き付ける山岳景観の一つでしょう。

日本は国土のほとんどが山林であり、多雨な気候のため、大小の渓谷がよく発達しています。小さいながらも深く複雑に切れ込んだ谷や、水の流れで浸食されて作り出された自然の美しさは古くから愛されてきました。

その代表的なものが「滝」で、「日本の滝百選(百名瀑)」があるくらい、滝は景観として愛されています。そういった水の流れの美しさは日本庭園などでも再現され、古くから日本の美の一部として根付いているといえます。

その渓谷、渓流の美しさの真髄を味わえるのが沢登りといえるでしょう。水は澄み、山域によっては透明感のある「碧色」をたたえており、日常では決して見ることのできない水の美しさがあります。そして水の流れが削り出した渓相は、その山の独自の岩石の性質により、自然が作り出したとは思えないような芸術的な形状になります。

こういった景観が優れた沢は、登っていて飽きることがありません。普通、登山であれば序盤から絶景が広がることは稀です。同じような道をひたすら登り、森林限界を越えたり、展望台と呼ばれる場所に到達したりして、初めてその景色に感嘆の声をあげることがほとんどですよね。しかし沢登りであれば、序盤から美しい渓相に出会うことができます。

魅力2.焚き火の魅力に気がつく
沢登りの魅力として、ベテランの方がよく挙げるのは焚き火です。
沢登りを泊まりで行うときは、キャンプ場には泊まりません。沢の脇の野営に適した開けた場所でタープを張ったり、テントを張ったりして寝ます。

指定キャンプ地ではなく、あくまでビバーク(緊急避難的野営)のため、伝統的に焚き火を行う文化があります。焚き火は沢で冷えた体を温めてくれますし、心を癒やしてくれる効果もあります。道なき道を行くバリエーションルートだからこその醍醐味といえるでしょう。
もちろん焚き火禁止エリアかどうかは事前に必ず確認しましょう。また、火の不始末が絶対にないようにするのが必ず押さえるべきルールです。

魅力3.釣りを楽しめる
釣りが趣味の人であれば、沢に登りながら渓流釣りを楽しむこともできます。
登りながらだと魚が警戒して逃げてしまうため、なかなか難しいこともあるようですが、山中で一泊しながら、野営地付近でのんびりと釣り糸を垂らすというのも一興です。
釣った魚はその場で食べることができるので、沢登りがより一層野趣あふれるものになるでしょう。

沢登りをするには? 準備するもの

準備するもの

・沢靴
靴は沢登り専用の物を使います。
沢登り用の靴は、主に靴底がフェルトタイプのものとゴムタイプのものがありますが、日本の多くの山では岩が苔でぬるぬるしているため、フェルトタイプがおすすめ。
足袋のような形状のものもあります。いずれも中に水が入ることが前提になっていますので、水が抜けるしくみになっています。防水の登山靴とはかなり構造や使い方が違うので、兼用はしないようにしましょう。靴下は速乾性の高いものやネオプレン製の専用のものを選びます。

・専用スパッツ、膝あて等
スパッツは、すねに巻くゲイター(スパッツ)のこと。沢登りでは岩をよじ登ることもあるため、足を保護する役割があります。また足回りは常に水にさらされるため、保温効果の面も見逃せません。さらに足回りをすっきりさせることで水圧の低減にもなりますし、足元が見やすくなり、足の置き場を確認しやすくなるなど、重要な役目を果たします。

・ヘルメット
沢登りは整備されていないルートを進むケースがあります。滑りやすい水の中の岩を歩くため、転倒・滑落のリスクの観点からヘルメットは必須です。

・ハーネス、カラビナ、スリング等
初級レベルの沢では使うことは少ない登攀具ですが、万が一引き返すときや、通過が難しい場所で確保が必要な場合もあります。懸垂下降や確保の仕方は一通り学んでおきましょう。

・ザック
基本的に普通の登山用のもので大丈夫です。登山用であれば耐久性や速乾性に問題はありません。
ただし、基本的にずぶ濡れになりますので濡れてもいいものにしましょう。また、ザックの中身はドライサック等を使い荷物を防水しておく必要があります。専用のザックで水抜き穴があるものもあります。

・ウェア
これも登山用のもので構いません。化学繊維でできていて速乾性があれば何でもよいのです。沢登りで使用されることを視野に入れた、水の切れがいいウェアも少ないながら販売されています。

沢登りの注意点

沢登りはいくら初級でも道ではない場所を歩くため、注意が必要です。
まず増水には特に気を付けましょう。事前に天気をよく確認して、雨の後や当日が雨であれば中止にしたほうが無難でしょう。ガイドブックでは簡単と書かれているような場所も、増水によってまったく様子が変わっている可能性もあります。

実際に沢登りに行くにあたって、初心者はまず経験者と同行して沢登りをしっかり体験する必要があります。また、ガイドブックをよく読んだり講習に参加したりして沢登りへの理解を深めましょう。

沢登りは、いわば日本の登山における「山の総合力」を試される場といっても過言ではありません。水の中という特殊な場所にありながら岩登りの要素があり、そして読図をしながら山頂を目指すバリエーション登山の要素もあり、さまざまな能力が総動員されます。

一般登山道と違い、道案内やマーキングはほとんどありません。まず地形図をきちんと読めるようにならなくてはなりません。大きな沢沿いを歩いているときは問題なくても上部の分岐や詰め(稜線に出る直前)は読図とルートファインディング(道を見つける能力)に慣れが必要です。大きな滝を避けて脇から回り込むことを「高巻き」といいますが、これもルートをしっかり見極めないと進退窮まる可能性もあるでしょう。

やさしい沢でも、小さな滝は頻繁に現れることはしばしばあります。一般登山でも北アルプスの槍ヶ岳、穂高岳、剱岳といったような山の岩場は平気で登れる程度の経験値は必須です。

慣れていない人はクライミングジムでボルダリングをやるといいでしょう。簡単な沢で出くわす多くの滝、岩はほとんどがボルダリング程度のスケール感ですので、練習になると思います。

最初は一人で行くのは避けよう

初めての沢登りに一人で行くことはおすすめできません。まずは経験者と一緒に行き、徐々に慣れていく必要があります。
数回経験者と沢に行ったあとでも、一人で沢に行く場合は慎重になる必要があります。一人で行く場合、補助であったり、確保であったり、その場での救助などをしてくれる人がいません。沢でそれは非常に危険なことです。

また、登山道と違い登っている人も多くはありません。ですから単独の沢登りは本来危険な行為です。それでも私が一人で行く場合は、必ず近くに登山道が平行して走っているような沢を選びます。何かアクシデントがあっても、すぐに一般登山道に復帰できると何かと安心。万が一のときも救助を求めやすくなりますし、自力下山も容易です。

上述のように安全面ではもちろん、個人的には沢登りは複数で行ったほうが楽しさが倍増する気がします。一つの滝をどう登るか、この人は登れた、自分は登れなかった…など次々と現れる冒険的な障害を仲間とゲームのように乗り越えていく楽しさがあるからです。滑り台のように沢を滑ったり、飛び込んだりするのも仲間とやると面白いですよ。
一方、一人の沢登りは人がほとんどおらず、人工物もない分普通の登山より孤独感が強くなります。仲間とワイワイ登ったほうが不安も少なく、楽しいですね。

沢登りを楽しむには

登山など気軽に楽しみたい人におすすめのエリア

登山でもトレイルランニングでもそうですが、フィールドに近い場所に住んでいるほうが何かと便利です。
関東地方で沢登りに人気のエリアは、神奈川県の丹沢山系になります。初心者向けのルートから上級者向けのルートまでたくさんあるのが丹沢の特徴でしょう。

丹沢山系に電車でアクセスするには、小田急線沿線が便利です。沢登りをした後は着替えが必要だったり、装備が濡れていたりすることもあるので、できれば公共交通での移動は最小限にしたいですね。

沢に行くのが趣味なら駐車場もしくはカーシェアリングは近くにほしい

沢登りは、登山口(入渓地点)にバスなどの公共交通が通っていないことも多々あるため、マイカーやレンタカー等を利用すると便利です。着替えや濡れた装備の取扱いが気軽にできるという点でも、車を使うと楽になります。

車を使うのであれば、住む場所は駐車場がある住まいが望ましいですね。私も駐車場付きの家に住んでいますが、最初から自家用車を持っていたわけではなく、後から購入しました。登山をするにあたって後から車を買うこともあるかと思いますので、あらかじめ駐車場が用意されていることや、近くに駐車場があるという条件は重要です。車を持っていなくてもカーシェアリング、レンタカーなどが近くにあると便利でしょう。

まとめ

沢登りは、日本の山の渓谷美を存分に味わえる魅力な活動です。しかし整備された登山道を外れて歩くため、当然危険も伴います。
単独、独学ではなかなか難しいこともあるので、始めてみたい人はまず経験者と同行したりガイドや登山用品店の講習などを受けたりするのがいいでしょう。

普通の登山と違い、必要な知識、技術が多くなるのが沢登りですが、少しずつステップアップをしていけばきっと楽しく沢登りができるはずです。

ジョア

ジョア

大学で登山や自転車ツーリング、カヌーツーリングなどに親しむ。テントを担いでの縦走登山を好んできたが、最近はファストハイクやトレイルランに興味あり。現在は育児の傍ら、山のことを妄想する日々。自身の登山経験を徒然に語るブログ「絶対にマネをしてはいけない山歩き。」を運営。

※このページの内容は、2021年5月8日時点での情報です。掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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