長く生活の拠点にしてきた住まいには、自然と特別な愛着が生まれるものです。ライフステージの変化などによって、どうしても家を手放さなければならない場面が訪れたときには、できれば子どもに譲りたいと考えることもあるでしょう。今回は、親子間で不動産を売買するときのポイントと、贈与や売却の際にかかる税金について詳しく解説していきます。

家族イメージ

親子間であっても、通常の不動産取引と同じように家の売買を行うことができます。ここでは、子どもに家を売るときの基本的な仕組みについて見ていきましょう。

親から子へ不動産の名義を変更する方法には、大きく分けて「贈与」と「売却」の2種類があります。贈与は自分の財産を無償で相手に渡すことを指し、譲る側と受け取る側の双方の意思が一致することで成立する契約です。

 

一方で、売却は譲渡とも呼ばれ、金銭の対価があって初めて成り立ちます。親子間での不動産取引においても、基本的には一般の取引と変わらず、売却を行うことが可能です。

 

子どもとの間で金銭のやりとりをすることには、違和感を覚えるかもしれません。しかし、売却と贈与では課税される税金に違いがあり、状況によっては売却のほうが金銭的なメリットを得られるケースもあります。

 

そのため、漠然と贈与の手続きを進めてしまう前に、売却についても検討しておきましょう。ただ、売却をするタイミングなどによっては贈与と見なされてしまうこともあります。

 

また、売却においては売主と買主との間でさまざまなルールを設けられるため、自由度の高さが思いがけないトラブルの原因となる場合があります。特に支払いの方法やタイミングなどについては、細かくルールを決めておくことが重要です。

 

大きなお金をやりとりする不動産取引では、親子間でも契約書をきちんと交わして、事前にトラブルを避けることが大切なのです。

不動産取引においては、親子間であっても通常の取引と変わらず、いくつかの手続きを踏む必要があります。お互いの意思がそろってからも、実際に売却を終えるまでにはある程度の時間がかかるのです。

 

ここでは、家族や親族に不動産を売却するときの基本的な流れについて解説していきます。

子どもや親族に家を売る場合、一般的な取引ともっとも大きく異なるのは、一から買い手を探す必要がないという点です。内見などの手間を省くことができるため、通常と比べればスムーズに取引を進められます。

 

以下の表は、親子間の不動産売却に関する大まかな流れを示したものです。全体的な手順を押さえておけば、手続きに必要な期間を計算することができます。

売却価格の決定
 
媒介契約の締結
 
資金の確認
 
売買契約・決済
 
確定申告

家の売却価格を決めるうえでは、相場価格を押さえておく必要があります。主な手段として挙げられるのは、自分で価格を調べる方法と専門家に依頼して査定してもらう方法の2種類です。

 

自分で相場を調べるのであれば、まずインターネットで大まかな相場を見たうえで、手元に届く固定資産税の納税通知書から「固定資産税評価額」を確認します。また、国土交通省が発表している「不動産公示価格」や、国税庁が示している「路線価」なども参考になります。

 

自分で価格を決める方法以外に、不動産会社や不動産鑑定士などの専門家に査定を依頼する方法もあります。自力での価格設定に不安がある場合には、利用を検討してみましょう。

子どもや親族に不動産を売却する場合には、不動産会社を介さなくても契約を結ぶことができます。自分で売買契約書をつくれば、問題なくやりとりを進められるのです。

 

ただ、普段から契約書を取り扱っていない人にとっては、親族同士のやりとりであっても不安を感じる場合があります。書面の作成は司法書士などの専門家に依頼することもできるため、無理をせず利用するほうが無難です。

身内同士であっても、売買契約を行う際にはきちんとお金の支払いを行わなければなりません。契約上は売買であっても、実際に資金の支払いがなければ贈与と見なされてしまうのです。

 

その際、子どもに購入資金がない場合には、住宅ローンを利用することとなります。ただ、通常の売買契約とは異なり、保証人の問題やほかの相続人がいる可能性などの面から、審査が厳しくなることもあるため注意が必要です。

 

購入資金については、事前に金融機関に相談するなどして、子どもに用意しておいてもらうほうが安心だといえます。資金調達が無事に済んでいれば、スムーズに売買契約へと移れるのです。

 

子どもから親へ売却金額が支払われたタイミングで決済が終了し、そこから鍵の引き渡しと登記の手続きに移行します。登記をすることで、初めて家の所有権が子どもへと移るため、忘れずに手続きを行いましょう。

 

登記手続きは自分で行うことも可能ですが、用意すべき書類が多く、やや複雑な手順を踏まなければなりません。そのため、多くの場合は司法書士などの専門家に依頼することになるでしょう。

不動産の売却を行った際には、翌年の確定申告で譲渡所得として申告を行う必要があります。必要な書類は国税庁のホームページで入手でき、案内に従って自分で記入することも可能です。

相続の観点から考えると、子どもに家を売ることにはさまざまなメリットがあるといえます。ここでは、具体的なメリットについて見ていきましょう。

大きなメリットとして挙げられるのは、生前に名義を変更できる点です。売却によって、明確に持ち主が子どもへと移るため、死後の相続についてもめ事が起こる心配がなくなるのです。

 

また、生前に名義を移す方法としては、売却のほかに贈与もあるものの、税負担の面では大きな違いがあります。多くのケースで、贈与よりも売却のほうが税金上で有利になるのです。

 

そして、何より愛着のある家をわが子に守ってもらえるという安心感が、親子間売買の最大のメリットだといえます。

親子間での不動産売買にはさまざまなメリットがあるものの、注意しておかなければならないデメリットも存在します。ここでは、具体的な注意点について解説していきます。

親子間での不動産売買は、通常の不動産取引と比べるとそれほど頻繁に行われる取引形態ではありません。そのため、取り扱っている不動産会社が少なく、仲介を頼みたい場合には依頼先を見つけるのに手間がかかります。

 

また、親子間では、住宅ローンの審査が厳しくなりやすい面もあります。金融機関からすれば、ほかの相続人ともめてしまうリスクなどが気になるため、融資に消極的になってしまうケースも考えられるのです。

不動産にかかわる税金

生前に親から子どもへ名義を移す方法には、贈与と売却の2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。ここでは、両者のメリット・デメリットを比較したうえで、どちらがお得になるのかを確かめてみましょう。

購入資金の準備が不要である点から、贈与のほうが売却よりも手続きがスムーズに済むケースが多いといえます。ただ、贈与税は税率が高く設定されており、税額負担の大きさがデメリットです。

 

不動産の贈与を行った場合には、土地と建物の評価額を個別に計算したうえで、合計した贈与額から110万円の基礎控除を差し引いた額に税金が課せられます。親から20歳を超えた子どもへの贈与は「特例贈与」とみなされ、通常の贈与税よりは税率が低くなるものの、それでも譲渡所得税や相続税と比べると高額になります。

親子間の売却では、手続きの煩雑さがデメリットとなります。しかし、税額の負担については、贈与税よりも低くなるケースが多いのです。

 

譲渡税は贈与税と異なり、不動産の売却価格をもとに計算されます。また、不動産の所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」、それ未満であれば「短期譲渡所得」としてみなされ、それぞれ税率には大きな違いがあります。

 

長期譲渡所得であれば税率は20%となり、金額によっては贈与税よりも大きく税額の負担を減らすことができます。そのため、支払う金額や必要な手続きをきちんと把握してから、どちらを選ぶかを決めることが大切なのです。

税額の負担から考えれば、売却のほうが贈与よりも有利であるといえます。しかし、きちんとルールを守っておかなければ、売却をしたつもりでも贈与と見なされてしまう可能性があるのです。

 

ここでは、みなし贈与について詳しく見ていきましょう。

みなし贈与とは、当事者同士に贈与の意思がないにもかかわらず、贈与税が発生してしまうことを指します。これは、本来、金銭のやりとりがなければ課税されてしまう贈与税を逃れる目的で、あえて少額でのやりとりをするケースを防ぐために生まれた仕組みです。

 

親子間の不動産売買においては、あまりにも安すぎる金額で売却を行ってしまうと、みなし贈与と判定されてしまう場合があります。そのため、みなし贈与を避けるためには、売買価格の決め方が重要です。

 

価格の妥当性については、特に法律で明確な基準が設けられているわけではないため、判断が難しいポイントとなります。親子間では、他人同士で行う不動産取引よりも価格が安くなる可能性が高いため、税務署のチェックも厳しくなるのが一般的です。

 

そのため、売却価格の設定は特に注意が必要なポイントとなるでしょう。

  • 親子間でも売買や贈与などの形で不動産の取引はできる
  • 子どもへの家の売却は、相続のもめ事を解消できたり、税金を安く抑えられたりするなどのメリットがある
  • 親子間での不動産取引は取り扱ってくれる会社が少なく、住宅ローンの審査も厳しい
  • 税金の面から見れば、売却のほうが贈与よりもお得
  • あまりにも安すぎる価格での売却は贈与とみなされる可能性がある

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