Wさん(72歳)の兄から相続した一戸建ての売却に関する体験談

~売却した住まい(Wさんの兄が住んでいた家)について~
エリア/東京都杉並区

家族構成/現在、さいたま市内の一戸建てで妻(72歳)と2人暮らし。
       息子2人(46歳、43歳)はそれぞれ結婚して独立。
概要/生涯独身だった兄が死亡。兄の遺産を共同で相続したのはWさん、Wさんの姉と妹の3人。相続した遺産のなかには、兄が1人で住んでいた一戸建てがあった。姉、妹とも話し合い、その一戸建てを売却。兄が住んでいた家は、もとはWさんの両親が建てた家で、Wさんたち兄弟の実家。

立地/最寄り駅から徒歩10分
土地面積/約40坪
建物面積/約25坪
間取り/モルタル2階建て・5DK
築年数/約40年(建て替えてからの築年数)
売却年月/2015年9月

亡くなった兄が住んでいたのは、自分たちが生まれ、育った実家

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お兄さんから家を相続したWさん

Wさんの兄(77歳)が亡くなったのは、2015年2月。脳梗塞で倒れ、意識が戻らないまま、入院先の病院で亡くなってしまいました。兄は生涯独身。両親は既に他界しており、葬儀の喪主を務めたのはWさんでした。

葬儀は無事終わりましたが、兄の遺産をどうするのか、解決しなければなりません。兄には妻子はいないので、相続人となるのは兄弟姉妹。とすると、Wさん、姉(74歳)、妹(69歳)の3人が、遺産を相続することになります。兄の預貯金などは3人で分ければいいとして、問題は兄が1人で住んでいた家のことです。

兄は東京都内の一戸建てに住んでいました。約40坪の土地に建つ、5DKのモルタル2階建て。建築年数は約40年ですが、この家はKさんたちにとっては実家でもあるのです。家の歴史は昭和初期の1935年頃にさかのぼります。

「両親がこの場所に家を建てたのです。ここで僕たち兄弟姉妹が生まれ、育ったのです。姉と僕、妹が次々に結婚して家を出たあと、1975年頃に建て替えました。その後、両親と兄の3人がここで暮らし、両親が亡くなったあとも兄が1人で住んでいたのです」。

建て替えているとはいえ、長年の思い出の詰まった実家です。
「でも、僕も自分の家があるし、姉も妹もそれぞれに住んでいる一戸建てがあります。実家に戻って住もうという者は誰もいません。誰かに貸すという選択肢も考えてみましたが、貸すにしても不動産会社との連絡や管理をする者が必要になります。僕、姉、妹の3人のなかでそんな煩わしい係を引き受けようという者はいませんでした」。

そうしてWさん、姉、妹の3人で話し合い、実家を売却しようと決断しました。この決断の背景には、もう1点、実家が空き家になることへの不安もあったといいます。
「空き家のまま放置しておくと、放火などの心配もあるし、荒れてしまいますよね。両隣の方からも、『お庭の手入れだけはよろしく頼みますね。雑草をのび放題にしておくと、害虫が増えてしまって大変なんです』と言われました。空き家にしておくとご近所迷惑になるうえ、私たち相続人には固定資産税もかかってきます。それに兄の遺産を相続することで、私たち3人には相続税が発生することになりそうだったのです。それこれ考えると、実家を売るのが一番いいという結論になったのです。姉と妹も賛成でした」。

売却のことをまず相談したのは、不動産会社ではなくて都市銀行だった

では、売却活動はどのようにして進めたのでしょうか?

Wさんがまっ先に相談したのは、大手都市銀行のA銀行でした。A銀行には兄の普通預金口座があるうえ、兄は貸金庫の契約をしていてそこに本人の預貯金通帳や生命保険証書、印鑑などを保管していたのでした。A銀行が兄にとって、メインバンクだったことはわかります。

でも、不動産の売却なのに、WさんはなぜA銀行に相談したのでしょう? 
「兄が脳梗塞で入院中、私が兄の成年後見人となって、兄の預貯金の出し入れをしていたのです。入院費を支払ったり、公共料金の支払いの管理、年金などの入金確認などです。姉と妹は実家から片道2時間以上かかる遠方に住んでいたので、私に任されていました。その成年後見人になる際の手続きや、兄が契約する貸金庫の利用でA銀行にはお世話になっていたのです。そんな経緯があったので、兄が亡くなったことをまずA銀行に知らせるのは筋ですし、家の売却に関する相談を持ちかけやすかったのです」。

ちなみに成年後見人とは、判断能力が不十分な人に代わり、被後見人(この記事の事例ではWさんの兄)を援助する立場の人のこと。Wさんの兄は脳梗塞で倒れ、入院中はずっと意識不明の状態でしたので、兄の預貯金を出し入れするには、法的な手続きにのっとって、成年後見人を選任する必要があったのです。

法定後見人になれるのは被後見人の家族や親族、あるいは弁護士や司法書士など専門職にある第三者と決められていて、今回のケースでは被後見人の弟であるWさんがその任に就いたというわけです。

信託銀行の仕切りのもと、遺産相続の手続きを進めた

妹の3人の共有名義にする)など、相続にまつわる手続きはB信託銀行へ、実家の土地・建物の売却についてはC社へ任せることに決定。B信託銀行、C社との連絡・交渉の役目は、Wさんが担いました。

兄の遺産の分け方については、Wさん、姉、妹の3人で1/3ずつ等分に分けることになりました。家は、3人の共有名義として相続。一般に遺産の取り分をめぐって、親族の間で話がまとまらず、トラブルになることもあるのですが、「僕らの場合はスムーズでした。妹が『父親が病気で倒れたとき、私はけっこう看病に来ていたんだからその分を考慮してもらいたい』などと、昔の話を持ち出してきて、僕と姉を慌てさせたりもしましたが、すぐに解決。もめ事にはなりませんでした。B信託銀行という第三者が仕切ってくれたのがよかったと思います。兄弟姉妹だけで遺産相続の話をしていたらうまくいかなかったかもしれません。B信託銀行へ支払った手数料は安くはなかったですが、頼んで正解だったと僕は思っています」と、Wさんは話します。

相続登記が済んだら、いよいよ実家の売り出しです。C社の査定による売り出し価格に対し、Wさんたちには異論はありませんでした。実家の建物は築年数が経過しているため、古家付きの土地として売り出すことになりました。

「公示価格や基準地価といった、公的な指標に準じた査定だったと思います。それ以上のことは僕ら素人にはよくわからないし、C社に全面的にお任せしました」。

C社の売り出し方法は、「レインズ」への登録のみだったそうです。「レインズ」とは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営するコンピュータ・ネットワークシステムのこと。そこで登録された不動産売買の情報は、会員である不動産会社に公開されています。

複数の購入希望があったなかで、住宅メーカーに売却決定

Wさんの実家は最寄り駅から徒歩10分くらいの場所にあり、商店街にほど近い便利な立地とあって、すぐさま数社の不動産会社から購入の問い合わせがありました。

「C社からは、電話や郵送でこまめに報告がありました。『買いたい』と言ってくる不動産会社のなかには、私も知っている地元の会社もいくつかありました。実は兄の葬儀を終えたあと、『もしお宅を売るのなら、私が買いたいんですが…』と言ってくる方が3人ほどいらしたんです。聞けば、みなさん、お子さんのために購入してあげたいというご希望でした。その頃はまだC社と契約するなど何も決めていなかったのですが、僕たちは素人だからご近所の方と直接、家の売買の取引をやろうとは考えていなかったし、『売るとしても、不動産会社に任せますので…』とお答えするにとどめました。その判断は間違えていなかったと思いますよ。ご近所の誰かに売却した場合、買えなかった方たちから『なんで、私に売ってくれなかったの?』と恨まれるし、いさかいのもとになりますから」。

2015年7月に売り出しを開始し、1ヶ月も立たないうちに買い取り先が決まりました。買ったのは、大手住宅メーカーのD社でした。購入に興味を示す不動産会社は複数あったなかでD社に売ることになった決め手は何だったのでしょう?

「他社は『売り値を下げてほしい』とか『家の解体費用を売主さんのほうで支払ってほしい』といった希望があったそうです。が、D社だけがそうではなく、『売り出し価格のままで買います。家の解体費用もうちがもちます』という好条件だったのです。姉も妹も『それならD社に売ろう!』と喜んでいました」。

大変だったのは遺品整理や不用品の片づけ、そして庭の草刈り

Riding in the morning fog
相続して大変だったのは・・・

ここまで大きな問題もなく、実家の売却活動を進めてきたWさんですが、引き渡し日の9月末までには家の中の不用品や遺品をすべて片づけなければなりません。

「これが思っていたより大変だったんです。両親が亡くなったあと、そのまま兄が住んでいたので、これまで親の遺品整理はしていなかったものですから…。姉と妹も一緒になって形見分けを兼ねて片づけましたが、処理しきれません。古道具を引き取ってくれるリサイクル店に来てもらったり、不用品回収会社にも依頼しました。それでも家の中はモノであふれ、不用品回収会社への支払いはかさむし、困り果ててしまいました。そこで、実家のある区の清掃局へ相談にいき、区の粗大ごみ引き取りサービスを利用できることになったんです。区の粗大ゴミ引き取りも有料ですが、不用品回収会社に比べれば格段に安く済みます。引き取りの前日、姉、妹と汗だくになって片づけ作業をやりました」。

家の片づけとともに意外と苦労したのは、庭の草刈りでした。ご近所から苦情がこないように定期的にやらなければならないのですが、Wさんたちは地元に住んでいるわけではないので、庭の草刈りに通うことはたやすいことではありません。

「実は当初、姉から『家を売るのは、お兄さんの一周忌が済んでからでもいいんじゃないの?』という意見が出ていたんです。でも、姉、妹も揃って初めて庭の草刈りをしたとき、『大変だね』と、姉がねをあげてしまいました。『草刈りなんて続けられないから、家は早く売る方がいいわね』ということになったんです」。

しばらくの間はWさんが草刈りに通ってきていたものの、途中から手に負えなくなり、草刈り代行サービス会社に依頼したそうです。そうして迎えた引き渡しの日。親が築き、兄が守ってきた実家を手放してしまうことになって、何とも言えない気持ちになったと、Wさんは言います。

「でも、住み手のいない家ですから、売るのがベストの選択だったという思いには変わりません。姉、妹とのトラブルもなく、家の相続と売却ができたので、天国の両親と兄もほっとしていると思います」。

実家の売却を経験し、必要ないものはどんどん処分するようになった

Wさん自身は、現在、持ち家の一戸建てで妻(72歳)との夫婦2人暮らし。お子さんは長男(46歳)と次男(43歳)で、結婚してそれぞれ家庭をもって独立しているそうです。将来、何かあったときに備え、Wさんご自身が準備しておこうと思っていることはあるのでしょうか?

「実家の売却を経験しての教訓なんですが、今のうちから不用品などの整理をしておかなければと思うようになりました。それまでは着なくなった服でも『いつかまた着るかもしれない』と、箪笥の奥に仕舞い込んでいましたが、取っておくのはやめました。サラリーマン時代に使っていた文具なども大事に持っていたんですが、この先、使うわけはないなと、思い切って捨てました。絶対に必要なもの以外、どんどん捨てるようにしています。僕に何かあったとき、妻や息子たちが大変ですからね」。

ちなみにWさん夫婦は、夫婦のどちらかが体力的に衰えてしまったら、今の住まいである一戸建てを売り、バリアフリーの高齢者専用マンションに住み替えるというプランを描いているそうです。

High-rise apartment and street trees of green
高層マンションの住み替えも

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