Kさん(45歳)の離婚に伴う売却体験談

概要/離婚後、住んでいた一戸建てを売却。
    離婚する前は元夫、子ども3人、Kさんの母親と一緒に暮らしていた。
    売却した一戸建ては、土地はKさんの母親の名義。建物はKさん、元夫、母親の共有名義。
    住んでいた一戸建てには夫名義の住宅ローンの残債があった。
家族構成/現在、家族2人暮らし(母親68歳)

立地/最寄り駅から徒歩20分
土地面積/約50坪
間取りなど/鉄筋3階建て(屋上付き)・
1階は賃貸(1Kのワンルームが2室)、2階と3階はKさんたち一家の居住スペースで5LDK
築年数/築5年
居住年数/5年
売り出しから売却までにかかった期間/約1年
売却年月/2015年3月

離婚協議の結果、住宅ローンの支払いを負うことに…

ThinkstockPhotos-503707808
離婚協議の結果・・・

18年前に結婚し、一男二女に恵まれたKさん。都内の賃貸一戸建て暮らしていましたが、Kさんが37歳のとき、実家の父親が亡くなり、残された母親と同居することになりました。母親との同居のために実家の建物を取り壊し、鉄筋3階建ての家を建てたのです。2010年のことでした。土地は約50坪。1階には駐車場、そして事業を営む夫の資材置き場があり、さらには1Kのワンルームが2室。この1Kの2室は賃貸ルームとして人に貸していました。2階と3階は5LDKの居住スペースで、そこにKさん一家5人と母親が暮らしていたのです。

しかし、ほどなく、Kさんと夫は不仲になり、夫は家を出ていってしまったのです。離婚に向け、弁護士を立てての協議が続きました。その渦中にあるとき、Kさんが深刻に悩んだのは子どものことのほか、家がどうなるのだろうということ。この家は、土地は母親の名義。建物はKさん、夫、母親の共有名義でした。権利関係が複雑なうえ、夫の名義で借りていた住宅ローンがあるのです。返済期間35年で組んだ住宅ローンで、まだ4年分ほどしか返していなくて、7000万円ほどの返済が残っている状態でした。

離婚に伴う財産分与の協議を重ねるなかで、住まいについてはほぼ決着。建物に関する夫の共有持ち分をKさんがもらう形になりました。ただ、その後のKさんに影響を及ぼす、新たな問題が発生してしまいました。住宅ローンの残りの支払いを、Kさんが負担することに決まってしまったのです。住宅ローンの残債約7000万円を30年で返済しなければならなくなり、月々の返済額は金利も含めると、およそ25万円。
「私には返済は無理だと思いました…。途方に暮れてしまいました」と、Kさん。
Kさんは専業主婦ではなく、医療の検査機関で技術職として働いていましたが、月収は住宅ローン返済額とほぼ同じく約25万円。Kさんは派遣で働いていたため、ボーナスはありませんでした。

住宅ローンを返済するために家を売る決心をした

1階に2室ある賃貸1Kの家賃収入を、住宅ローンに充てることもできるのでは? と聞くと、「確かに家賃収入はありました。でも、意外と不安定で当てにはできなかったのです」と、Kさんは言います。
1室の家賃は7万円。2室ともに常に借り手がいる状態なら毎月の家賃収入は14万円になり、Kさんの月収からの住宅ローンへの出費は11万円で済むことになります。しかし、思うようにいかないのが賃貸ルームの経営。
「単身者向けの賃貸ということもあって、長く住んでもらえません。借りてくれる人の入れ替わりが激しくて、空き室になってしまう時期もあるんです。過去には半年間も空いたままだったこともありました。空き室でも管理しないといけないし、新たな借り手を募集するために壁をリフォームするといった手入れが必要になる場合もあります。賃貸経営は意外と大変なんです」。

そんななかでも離婚後は自活していかなければなりません。そうして悩みに悩みぬいた末、Kさんが下した結論は、家を売却することでした。売却するには、家の建物と土地に関わる権利をもつ人たち全員の同意が必要です。Kさんの場合、土地の名義人でもあり建物の共有名義人である母親、そして、建物の共有名義人の夫です。母親も夫(以下、記事では“元夫”と記述します)も売却には同意してくれました。

次のページ:契約。そして家の共有名義人の元夫が、必要書類にサインをしてくれない…

大手不動産会社のA社と専属専任媒介契約

そうして離婚が成立した時期とほぼ同じ頃、2014年2月、不動産会社に売却の査定を依頼しました。声をかけた不動産会社はA社、B社、C社の3社。なかでもA社は、母親の強い希望があって依頼したといいます。
ちなみに母親は、今回の売却活動で中心になって関わると言ってくれました。

「私は平日は仕事で家にいないという事情もありましたが、もともと母親の土地に建てた家だから思い入れが強かったんだと思います。その母親がどうしてもA社に頼みたいと言うんです。老舗だし、テレビCMでも見慣れている会社だし、街にも支店はたくさんある。安心して任せられると思ったんでしょう。私も同感でした。わが家の場合、住宅ローンを完済できるだけの金額で売りたいと考えていて、そうなると、7000万円、8000万円という売り値になります。それだけの高額な取引をまとめることができるのは、A社のような大手不動産会社だろうと思いました。ちょっと言葉が悪いけど、街の小さな不動産会社だといまいち信用できないかなと。A社のほかに、私がインターネットで調べて査定を依頼したB社、C社も大手でした」。

3社の営業担当者に来てもらい、査定してもらった結果、A社と契約し、売却活動を進めることになりました。3社とも査定額に差はなく、営業担当者の対応がどうだったかでA社に決めたといいます。契約形式はA社のみに依頼する専属専任媒介契約でした。

「訪問査定には私が同席できなかったときもあるので、母親の意見で不動産会社を決めました。母親が言うには初対面の印象は3社とも変わりがなかったけど、その後に問い合わせをしたときの対応に違いがあったようです。メールのレスが早くて、電話でも親切に対応してくれたのがA社だったようで、“A社の人はすごくいい人だ”と、母親が褒めていました。私が離婚して家を売ることになったという事情も、A社には話しています」。

家の共有名義人の元夫が、必要書類にサインをしてくれない…

ただ、大変だったのは売り出し価格を決める際、元夫がなかなか承諾してくれなかったことでした。この売り出し価格の決定をはじめ、家の売却活動で必要書類への署名捺印が必要なときには、共有名義人である母親、元夫の3人全員のものが必須。つまり、離婚して縁が切れてしまっても、家の買い手が現れて売却が成約するまでの間、要所要所で元夫の承諾は欠かせないのです。
「私は母親の意見を最優先に考えていたので、母親と私の間ではほぼもめることはありません。問題は元夫です。元夫との連絡役は、A社の営業担当者がやってくれたのですが、元夫は私と母が決めた売り出し価格に口出しをしてきたんです。7600万円と決めたのに“これでは安い。この売り値では俺はサインしないよ”と…。売ったお金は彼のもとには全く入らないことになっているのに、名義があるというだけで難くせをつけてくるんです。これには困ってしまいました」。

A社の営業担当者や、離婚協議で依頼した弁護士も介して、元夫との意見調整をはかりました。その結果、決定した売り値は8000万円。
「元夫は建築関係の事業をやっていて、建物の知識がありました。だから不動産会社の査定額にも不満で、“すごくいい家だからもっと高く売れるはずだ”と自分の主張を曲げなかったのです。高く売れれば売れるほど、売却額を受け取る私や母にはメリットがあるかもしれません。でも、私は売ることで利益を得ようなんていう考えは全くなかったです。住宅ローンの負担が重かったので、一刻も早く家を売り、払い終えてしまいたい。それしか考えていませんでした」と、Kさんは当時の苦しい思いを打ち明けます。

できるだけ早く家を売りたいのなら、いくら対応がよくてもA社だけではなく、他の不動産会社にも売却を依頼する手もあったのでは?
「私もインターネットで調べて、複数の不動産会社に依頼ができる一般媒介契約や、1社のみにしか依頼できないけど自分で買い手を見つけることができる専属媒介契約という2つの方法があることがわかりました。でも、我が家の売却の場合、元夫と連絡をとって必要書類の署名捺印をしてもらうという役目も、不動産会社にお任せすることになります。だから複数の不動産会社ではなく、1社に任せるのが最善の策だと考えました。また、売値が8000万円の物件ですから、私の友人知人のネットワークで買ってくれる人を探すなんて、絶対に不可能です。だからA社の専属専任媒介契約で進めるのが一番いいと納得していました」。
そうしてKさん宅の売り出しが始まりました。売り出し方法は新聞の折り込みチラシ広告と、インターネット広告です。鉄筋3階建てで、1階の賃貸スペース2室には入居者がいる状態での売り出しでした。

売り値を下げてもなかなか売れない…

内覧に備えて準備したことは?
「建ててから5年くらいの家ですからほぼ新築です。なので、内覧に備えてリフォームなど特別なことはしていません。掃除をいつもより念入りにやった程度で、片付けも楽でした。私にとってはとてもつらいことですが、子どもたちもいなくなっていたので…。親権を元夫に取られてしまったんです」と語るKさん。

しかし、内覧希望者は思いのほか少なく、なかなか売れません。2014年2月に売り出してから11月までの9ヶ月の間、内覧に来たのは5組。その5組とは、家族揃っての内覧が3組、一家を代表して見にきた男性、そして投資目的とおぼしき男性だったそうです。

「早く売れてほしいと思っていたので、あせりました。でもよく考えてみると、我が家は賃貸用の部屋があって、しかも売り値は8000万円と高額です。こういう家を買って住もうという人はなかなかいないんだろうなと思いました」。

とにかく早く売りたかったので、A社の営業担当者からの提案で売り値を下げました。11月までの9ヶ月間で200万円ずつ、2回、値下げをしたといい、「その都度、元夫の承諾が必要だったので、A社の営業担当者が連絡を取ってくれたのですが、すんなりOKしてくれなくて…。説得に時間がかかりました」。

そんな状況が続いたせいか、A社の営業担当者の様子にも変化が感じられるようになったそうです。
「最初の頃は、わが家を売るためにすごく頑張っているという印象でした。それがメールの返事が遅くなったり、報告がおざなりになってきたり。うちの売却が最優先ではなくなっているのが、伝わってきました。でも営業担当者の立場になって考えてみると、元夫との連絡を取るのが大変で、そういう手間がかかわるわりになかなか売れない。売れなければA社に媒介手数料が入らないし、営業担当者にも歩合給が支給されないでしょうから、モチベーションが下がってしまったのかもしれません」。

<<ようやく購入希望者が現れ、売却できた>>
そうして12月、3度目の値下げに踏み切って、売値を7400万円にしたところ、ようやく買い手が現れました。購入したのは、40代の男性。妻と未就学の幼い子ども2人の4人家族で住みたいということでした。
「わが家を気に入ってくれた理由は、駐車場が広々としている点と、1階に資材置き場があることだったようです。買い主の男性は自営業で、資材置き場があると助かると、おっしゃっていました」。

「これでやっと売れる!」と思ったKさん。が、想定外のことがありました。買い主の男性が住宅ローンを借りられる金融機関の確保に時間がかかってしまい、正式な売却契約ができずにいたのです。
「買い主さんが自営業であるうえに借りる金額が高額になるからなのでしょうね。金融機関の審査が厳しかったようです。でも買い主さんが住宅ローンを借りられないことになると、売却契約ができません。そうなったらどうしようと…。心配で毎日ドキドキしていました」とKさんは言います。

そんな紆余曲折があった末、2015年3月、売却契約が成約。即引き渡しとなりました。
「ここまで長かったし、いろいろなことがあったので、肩の荷がおりた感じでした。でも子どもたちと暮らした思い出の詰まった家です。出ていくとき、家の中のすみずみまでビデオで録りまくりました。家は私のものではなくなるけど、子どもたちとの思い出は永遠に私のものだから大切にとっておきたいと思ったんです」。

家を売却後、賃貸アパート生活を経て、今はKさんが購入したマンションで母親と2人で暮らしています。
「家を売却したお金はすべて住宅ローンの返済やもろもろの手数料で消えました。今の住まいは2LDKの中古マンションです。ここを買う際にも住宅ローンを組んでいますが、私の収入で無理なく返済していける額です」と、再出発の住まいについて語るKさん。

離婚のケースでは住宅ローンという負の財産も財産分与の対象に

もしもこの先、再び、住まいを売却するようなことになったとき、今回の売却経験から活かせそうなことは? 
「基本、出たとこ勝負になるのではないでしょうか。今回の経験で、家の売却は自分たちや不動産会社が頑張ってもどうにもなることではないんだなと痛感しました」。

Kさんのように離婚のため、家を売却せざるを得ないというケースは少なくないでしょう。
「一般に財産分与というと、夫だった人から財産を分けてもらえるイメージがあると思います。でも住宅ローンという負の財産も、財産分与の対象になるんです。離婚なんてしないに越したことはないけれど、もしものことが起きそうだったら、住宅ローンがどうなっているか、確認してみていただければ、と思います。住宅ローンの残債がいくらなのかによって、家を売る・売らないの判断にも関わってくるでしょう。私の場合、できれば家に住み続けたかったのですが、住宅ローンの残債があまりにも高額だったので、家を売るという決断をしたのです」と、Kさんはアドバイスも含めて話してくれました。

関連記事

子どもが成長し、決意。30年以上住んだ家を売り新築一戸建てへ住み替え~売却体験談
住宅ローン残債が残っている住まい。売って住み替えるまでの段取りとは?~売却体験談
一戸建てやマンションを売る時の流れやポイントとは?大まかなスケジュールを知ろう
不動産を高く売る方法とは?査定の仕組みを知って“売却のコツ”を知ろう
不動産を売却するときにどの契約を選ぶ?3種類ある媒介契約のメリット・デメリット

公開日: