被災地の子どもたちを支援する「南相馬子ども保養プロジェクト」

地域を顧客ととらえ、地域の困りごとを解決することによって地域から信頼を得ている不動産会社が増えてきた。

小田急線の東海大学前に店舗を構えるゆう有限会社 松屋不動産の福嶋社長は、東日本大震災後すぐ大家さんを説得し、保証人がいなくても被災者の受け入れ可能な態勢を敷くとともに、自ら現地でボランティア活動を始めた。入居者に南相馬市出身の人がいたことから、2015年からは毎夏、南相馬の子どもたち約30名を1週間招待し、地元の秦野市の子どもたちと一緒に海で遊んだり、山でバーベキューをして楽しんでもらう「南相馬子ども保養プロジェクト」を行っている。

昨年は参加した子どもが140名、協賛企業45社、個人協賛100名、ボランティア延べ400名、水や香取線香など現物協賛品は段ボールで20箱が集まるほどの規模になった。このプロジェクトの目的は被災地の子どもたちへの継続的な支援はもちろん、障がい者支援や秦野市民のコミュニティの形成という意味合いも含んでいるとのこと。しかも協賛金やボランティアはすべて福嶋社長の声がけで集めている。

「お金の正体は“信用”です。信用を集めるには“人が喜ぶことや、人がやりたがらないことを継続してやり続ける”ことです。そうすれば感謝が集まりそこに信頼が構築され、その信頼をお金に変えることができます」。

子どもたちとボランティアの大人でバーベキューを楽しむ子どもたちとボランティアの大人でバーベキューを楽しむ

人を喜ばせる行動がすべてを切り開く

被災地でのボランティア活動以外にも、2013年からは地域に恩返しをしたいという思いで、地元の子どもたちに、元日本代表の木村和司氏を迎えたサッカー教室や、“命の尊さを教えよう”と、肺がんと闘っている湘南ベルマーレフットサルクラブの平光重貴選手を招いてのサッカー教室などを開催している。

さらに2016年の熊本大地震の際には、アパートに住む熊本出身の学生の家賃を一律5,000円下げ、震災の翌月から1年間、熊本出身の学生と会社の前で募金活動をしたり、2018年には西日本豪雨で被災した倉敷市真備町に入り災害ボランティア活動をしている。
このような活動を普段から行うことで、「あいつがすることなら間違いがないだろうと信用してもらい、多くの方がいろいろな形でサポートしてくれるようになります」という。

地元の子どもたちが参加するサッカー教室地元の子どもたちが参加するサッカー教室

物件の案内はまずまちの案内から

夜道の様子は日中の物件見学ではわからない夜道の様子は日中の物件見学ではわからない

本業である賃貸業における仕事の仕方でも顧客本位の考え方を徹底する。入居希望者が来たらすぐに物件を案内するのではなく、まず1時間かけてまちのツアーをし、スーパーや病院などの場所や評判を伝える。

同社のメインターゲットは大学生ということもあり、特に地方から来る学生については「親の代わりに4年間子どもを預かるという気持ち」でいるそうだ。ユニークな取り組みが『松屋ナイトツアーズ』という試みだ。地方の学生は物件を見る時間があまりないので、女子学生が決めた物件が夜道の暗い危ない物件だったということもあり得る。そこで、地方からの客にはナイトツアーとして前日の夜に来てもらい、夜道などを確認したあと、翌日に物件の案内をする。このようなひと手間をかけるかどうかで信頼面に差がつくのだ。

「私は『儲ける』という言葉が好きです。『儲』の字を分解すると『信者』になります。自分を信じてくれる人や自分のファンをつくれば商売は成り立つということです。その意味で商売の醍醐味は『紹介』です。信頼があるからリピートが生まれます」。

人と人を紡ぎ、恩を送っていく

社内に貼られたお礼状の数々社内に貼られたお礼状の数々

そのような活動をしていると、小中学校から授業に呼ばれ経験談を話す機会が最近増えてきたそうだ。
そこでは震災後の東北の様子を伝えるだけではなく、「“南相馬のプロジェクトを通じて、お金やモノ、情報や仲間が集まる理由は何だろう?”ということを考えてもらう」ようにしている。

「ボランティアの仕事については、“働く意味は人の役に立ってハタの人を楽にすること”、ボランティアが提供しているのは“時間”で、それはお金では買えない貴重なものだということを伝えます。現地の写真を見せながら、線量が高い福島に住んでいる人たちが今どういう思いで生活しているのかということを考えてもらい、“相手の立場を慮りましょう”と話します。また、最初は皆から無理と反対されたプロジェクトが“何故実現できたのか?”と問いかけます。それは行動したからで、“行動がすべてを切り開く”と伝えます。そして最後が『恩送り』。

“恩を受けたらそれを他の人に送ってあげてほしい。震災の支援は直接できなくても、電車の中でお年寄りに席を譲ったり、道路のゴミを拾うことはできるはず”、そして、その行動が巡り巡って情報やお金やモノの形で返ってくることを伝えます。話のタイトルは『紡ぐ』です。

南相馬のプロジェクトでは、福島の子どもと秦野の子ども、ボランティアの仲間や福島の友人など、これまでにいろいろな人をつなぐことができました。このようにコミュニケーション力を生かしながら、人と人の間に入り、お互いをつないで素敵な社会にしていくこと。まさにこれは不動産業の仕事と一緒だと思います」。

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福嶋社長はブログやフェイスブックで、自分のことや会社についての情報発信を徹底することで、消費者の理解と安心を得るようにしている

松屋不動産ホームページ
南相馬子ども保養プロジェクト
松屋ナイトツアーズ
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2019年 05月23日 11時00分