管理不全のマンションを発生させないために

改定されたマンション管理ガイドブックの表紙<br>
東京都マンションポータルサイトより<br>
http://www.mansion-tokyo.jp/kanri/03guidebook.html改定されたマンション管理ガイドブックの表紙
東京都マンションポータルサイトより
http://www.mansion-tokyo.jp/kanri/03guidebook.html

2020年3月27日、東京都が「東京マンション管理・再生促進計画」を発表した。この計画は、1年前の2019年3月に制定された「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づくものだ。東京都では、マンションの基本的な施策を具体化し、総合的かつ計画的に推進するとしている。併せて、「マンション管理ガイドブック」の改定と、新たにアドバイザー派遣費用を助成することも発表された。

都内のマンションは2017年で約181万戸あり、およそ4世帯に1世帯がマンションで暮らしていることになる。着工から40年以上になるマンションも増えていて、2023年には約43万戸になると推計されている。昨年制定された条例が目的としているのは、増え続ける東京のマンションの維持・管理、修繕が適切に行われ、将来にわたって良好なマンションストックと居住環境を維持することだ。逆に言えば、東京都は管理不全のマンションが発生することを懸念し、先手を打って管理不全の予防を行うということだろう。

条例は「都や管理組合、事業者の責務や役割の明確化」「マンションの管理状況について、管理組合などからの届け出の義務化」「管理状況に応じた助言や支援の実施」の3つの柱から構成されている。なかでも「管理状況の届け出の義務付け」は、全国の道府県に先駆けて行うものだ。

目的は適切なマンション管理と老朽マンションの再生

今回の計画では、条例を踏まえて「マンションの適正な管理」と「老朽マンション等の再生の促進」について、それぞれの目標と施策を設定している。計画の期間は2020年から10年間が予定されている。

■マンションの適正な管理の促進
目標1:管理組合による自主的かつ適正な維持管理の推進

2019年10月に制定された管理適正化指針や管理ガイドブックの活用、 防災対策やコミュニティの形成など、マンションの社会的機能を高める取り組み、 アドバイザー制度など、マンション管理士等の専門家の活用を、それぞれ推進する。

目標2:管理状況届出制度を活用した適正な維持管理の促進
管理状況届出制度の積極的な周知、確実な運用を行う。制度の対象となっているのは、管理組合について明確な規定のなかった1983年の区分所有法改正以前に建設された6戸以上のマンションだ。また、届出制度により把握した管理状況に応じて、必要な助言・支援等を実施する。

目標3:管理の良好なマンションが適正に評価される市場の形成
既存マンションの購入希望者に対して、マンションの管理情報の的確な提供を促進する。また、優良マンション登録表示制度の登録に向けて、インセンティブとなる方策などを検討する。

■老朽マンション等の再生の促進
目標4:マンションの状況に応じた適切な再生手法を選択できる環境の整備

省エネルギーなどの環境性能を向上させる取り組み、都市居住再生促進事業等を活用したバリアフリー化などの改修を、それぞれ促進する。マンションとその敷地を一括で売却できる「敷地売却制度」に関して、効果的な支援策を検討する。

目標5:旧耐震基準のマンションの耐震化の促進
管理状況届出制度などを活用して、マンションの耐震化の取り組み状況を把握する。市区町村に助成制度の創設を働きかけるとともに、都の補助事業の充実を検討する。

目標6:まちづくりと連携した老朽マンション等の再生
東京都の「マンション再生まちづくり制度」の普及、活用の促進を図るとともに、複数のマンションの一体的な再生に対して支援策を検討する。

マンション管理ガイドブックの改定

「マンション管理ガイドブック」は、マンションの適正な管理と円滑な再生に向けて、マンション管理組合が取り組むべき事項、マンション管理士、マンション管理業者、マンション分譲事業者が、それぞれの業務で実施することが望ましい事項を解説したもの。マンションに関する相談窓口や東京都の支援制度などの情報もまとめられている。

今回の改定では、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づいて制定された指針において、管理組合が取り組む必要があるとされた事項の解説を行っている。具体的な事項には「維持保全の実態に応じた修繕積立金の設定」「総会の議事録、設計図書及び修繕工事の履歴情報等の保管」「管理者等への外部専門家の活用」などがある。

また、「マンションの浸水対策や参考となる事例」「電気自動車等用充電設備の導入方法や事例」「住宅宿泊事業(民泊)への対応」などのコラムを追加。防災対策や環境性能の向上のために、管理組合が取り組む際の具体的な方法などが紹介されている。

「マンション管理ガイドライン」から名称も変更になったガイドブックは、全文が東京都のマンションポータルサイトに掲載されている。冊子は、東京都庁の都民情報ルーム(緊急事態宣言で休業中)で販売されている。


マンション管理ガイドブック
http://www.mansion-tokyo.jp/kanri/03guidebook.html

マンション管理ガイドブックでは、「マンションの浸水対策や参考となる事例」「電気自動車等用充電設備の導入方法や事例」「住宅宿泊事業(民泊)への対応」などについても触れられている。画像は「参考事項35 住宅宿泊事業(民泊)への対応」<br>
東京都マンションポータルサイトより<br>
http://www.mansion-tokyo.jp/pdf/48kanri-guide/03guidebook_all.pdfマンション管理ガイドブックでは、「マンションの浸水対策や参考となる事例」「電気自動車等用充電設備の導入方法や事例」「住宅宿泊事業(民泊)への対応」などについても触れられている。画像は「参考事項35 住宅宿泊事業(民泊)への対応」
東京都マンションポータルサイトより
http://www.mansion-tokyo.jp/pdf/48kanri-guide/03guidebook_all.pdf

アドバイザー派遣の助成も

アドバイザーの派遣は、管理状況届出制度に基づいて届け出を行った管理組合を対象とするもの。管理状況に応じてマンション管理士などの専門家を派遣し、マンションの管理、建て替えや改修について、アドバイスや講義などを行う。その派遣費用を、新たに助成することになった。管理状況届出制度の対象となっている、1983年以前に建設された6戸以上のマンションの管理組合には、1回分の派遣費用を全額助成。届け出のあったマンションで、管理不全の兆候のあるマンションの管理組合には、5回まで全額助成する。なお、東京都では、管理組合や管理規約がない、管理者がいない、1年以上総会を開催していない、修繕積立金を積み立てていないなどのマンションを、管理不全の兆候のあるマンションとしている。アドバイザーの派遣や助成についての問合せ窓口は、分譲マンション総合相談窓口となっている。

これからも東京が魅力的な都市であるかどうかは、マンションの適切な維持・管理にかかっている。少々オーバーに感じているのかもしれないが、東京都の条例や計画からは、そんな危機感や強い思いが伝わってくる。

マンションの管理や建替え・改修についての相談は、東京都のアドバイザー派遣費用の助成の実施ページを参照のこと<br>
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/03/27/05.htmlマンションの管理や建替え・改修についての相談は、東京都のアドバイザー派遣費用の助成の実施ページを参照のこと
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/03/27/05.html

2020年 06月16日 11時05分