ポイントは“消費者目線”。今年2回目を迎えた「ウッドデザイン賞」

ウッドデザイン賞の表彰式が行われた、東京ビッグサイトの「エコプロ2016」会場ウッドデザイン賞の表彰式が行われた、東京ビッグサイトの「エコプロ2016」会場

木材利活用の優れた取り組みを顕彰するため、林野庁の補助事業として2015年に創設された「ウッドデザイン賞」。その表彰式とシンポジウムが、12月8日、東京ビッグサイトの「エコプロ2016」会場内で行われた。

このウッドデザイン賞は、木のよさや価値を再発見させる建築や製品、取り組みなどを消費者目線で評価し、さらなるイノベーションを促すことによって、森林整備や国産材の需要拡大につなげることをねらったもの。2回目となる今年は451点の応募作品があり、審査委員長の赤池学氏以下、建築家・隈研吾氏やプロダクトデザイナー・益田文和氏、アーティスト・日比野克彦氏、慶応義塾大学大学院教授・伊香賀俊治氏など、各界の第一人者が審査に当たった。
今回、ウッドデザイン賞を受賞したのは251点。このうち25点が、最優秀賞(1点)、優秀賞(9点)、奨励賞(15点)に輝いた。

表彰式に先立ち、山本有二・農林水産大臣の祝辞が、今井敏・林野庁長官によって読み上げられた。
「農林水産省では平成17年度から、木材の利用拡大につなげるため『木づかい運動』を展開。その一環として、昨年度、優れた製品や取り組みを消費者目線で表彰する、ウッドデザイン賞を創設しました。今後、木材利用の秀逸性や、木の温もりを感じさせる作品、さらには地域を活性化させる取り組みが全国に広がり、各地のモデルケースになることを期待しています」

車体の8割に木材を使用。最高賞を射止めたトヨタの飽くなき挑戦

今回、栄えある最優秀賞(農林水産大臣賞)に輝いたのは、トヨタ自動車の木製コンセプトカー『SETSUNA』(愛知)。エンジン走行する自動車のボディを木で作る、という斬新なアイデアを形にしたものだ。

SETSUNAのボディは86枚の木製パネルからなり、電動モーターやタイヤ、サスペンションを除く車体の8割に木材を使用。車としての運動性能を担保するため、外板には杉、フレームには樺、フロアにはケヤキを使うなど、適材適所の木を選んでいる。ドアミラーやシートなどは「拭き漆」で木目の美しさを強調し、木の接合部分には釘やネジを使わず、「送り蟻」や「くさび」といった日本古来の伝統技法を採用。公道を走ることはできないが、電動モーターを搭載し、時速45kmで走行するれっきとしたクルマである。
その試みは高く評価され、「多様な業種、分野において、消費者目線で木材を積極的に活用するという明確な目的を果たしており、ウッドデザイン賞の趣旨に最もふさわしい」として、今回の最高賞受賞に至った。

『SETSUNA』の開発に関わったトヨタ自動車のコンセプト企画室主幹・辻賢治氏は、こう語る。
「SETSUNAのコンセプトは、『世代を超えて時を刻むクルマ』。このコンセプトを表現するために、さまざまな材料を検討し、最後に行き着いたのが木でした。木は時を経て変化するので、使う人がどれだけ手間をかけ愛したかということを、鏡のように映し出す。実際に乗っていただくと、皆さん『いい香りがするね』『肌触りがいいね』とおっしゃいます。やはり、人間と木は、とても近い距離で生活してきたんだなあ、と。その思いが今も脈々と受け継がれていると思います」

最優秀賞(農林水産大臣賞)に輝いた、トヨタ自動車の木製コンセプトカー『SETSUNA』最優秀賞(農林水産大臣賞)に輝いた、トヨタ自動車の木製コンセプトカー『SETSUNA』

木材の利活用にイノベーションをもたらす受賞作品の数々

当日は「エコプロ2016」の特設ステージで、上位入賞作品の表彰が行われた当日は「エコプロ2016」の特設ステージで、上位入賞作品の表彰が行われた

ウッドデザイン賞の表彰部門は、「ライフスタイルデザイン部門」「ハートフルデザイン部門」「ソーシャルデザイン部門」の3つ(トヨタ自動車『SETSUNA』はソーシャルデザイン部門からの選出)。優秀賞(林野庁長官賞)は9点(1部門につき3点)、奨励賞(審査委員長賞)は15点(1部門につき5点)が選ばれた。以下、優秀賞を受賞した作品の中から、特に目を引いたものを3点ほどご紹介しよう。

■ライフスタイルデザイン部門
『Roll Press Wood』 株式会社天童木工(山形)
従来、杉などの軟質針葉樹は、軟質のため家具用材には不向きとされてきた。この針葉樹を部材として活用するため、ロールプレス工法を独自開発。国産の針葉樹から、丈夫で自由な曲線を持つ部材を作り、これまでになくデザイン性の高い家具を生み出すことを可能にした。

■ハートフルデザイン部門 
『日本橋とやま館「富山らしさを表現する木づかい」』 富山県(富山)・株式会社乃村工藝社(東京)
2016年にオープンした富山県のアンテナショップ。原木や製材品、木材加工品などを現地で選び、調達してデザインしている。立山連峰の山並みを伝統の木格子で表現し、地酒の飲み比べができるカウンターを設けるなど、高い美意識とアイデアで集客力を高め、地域の魅力を発信することに貢献している。

■ソーシャルデザイン部門
『平成28年熊本地震における木造応急仮設住宅の供給』 公益社団法人日本建築士会連合会(熊本)、一般社団法人 木と住まい研究協会(東京)
熊本地震の際、熊本県産の木材を多用して作った応急仮設住宅。材料調達や施工などで地元事業者が連携し、宇城市で60戸を建設。地域材の活用と被災地対応を両立する取り組みとして注目される。

木材の分野では“門外漢”とされてきた企業の参入に期待したい

シンポジウムでは、ウッドデザイン賞と木材利活用の可能性について、熱い意見が交わされたシンポジウムでは、ウッドデザイン賞と木材利活用の可能性について、熱い意見が交わされた

表彰式に続いて開催されたシンポジウムでは、審査員5名がパネリストとして登壇。今回のウッドデザイン賞について感想を述べた。
「昨年と比べて、作品のクォリティは間違いなく上がっています」と、赤池学氏(審査委員長/科学技術ジャーナリスト)が口火を切ると、多くのパネリストが賛同。単に地元産の木材を使っていればいい、といった安易な発想のものは激減し、プロダクトや取り組みとして興味深いものが増えた、という意見が多数を占めた。
一方で、伊香賀俊治氏(慶応義塾大学大学院教授)からは、こんな辛口の意見も。
「私は技術・研究分野の審査を担当したのですが、去年の方がかなり突っ込んだものがあったように思います。今年のプロジェクトについて言えば、自動車に木を使うという点で、材料としての意外性があった。今後も技術・研究の分野で、もっと意欲的なものをどんどん出していただきたいと思います」

シンポジウムの最後には、各パネリストが今後の展望についてコメント。
「これまで、木については門外漢とされてきた業界に、ぜひ木を使っていただきたい。たとえば、車椅子や点滴台など、医療機器の分野でも木材は十分使えるはず。SETSUNAの受賞を契機として、さまざまな業者の木に対するコミットメントが広がっていくことを期待したいと思います」
赤池氏はこう語り、国産材の利活用が一層広まっていくことに期待を寄せた。

自然素材としての木が持つ「癒し」の力が求められている

頻発する災害、少子高齢化、経済不況――先行きの見えない不安とストレスの中で、人々は安らぎを求めている。そんな中、生活の中に木の温もりや肌触りを採り入れたい、と考える人は少なくない。

今回の受賞作品では、オフィスや病院、観光列車や仮設住宅など、従来、木材とは縁遠いイメージがあった環境に木材を採り入れる試みが目立った。また、木材加工技術のイノベーションにより、防災性やデザイン性に優れたもの作りが可能となり、さまざまな社会的課題の解決に向けて大きく前進していることにも感銘を受けた。

そんな中、あらためて実感させられたのは、自然素材としての木が持つ「癒し」の力である。この力を最大限に活かし、より一層豊かな生活環境を実現するためにも、ウッドデザイン賞が木材の利活用に大きな役割を果たすことを期待したい。
なお、今回受賞した作品は、「ウッドデザイン賞2016」のホームページで詳しく紹介されている。興味を持たれた方は、ぜひご覧いただきたい。

ウッドデザイン賞2016
https://www.wooddesign.jp/

2017年 01月07日 11時00分