地域共生ステーションとは?

2014年8月末日、長久手市まちづくりセンターで『南の座談会~南のステーション、みんなでつくりませんか?』が開催された。この座談会は、前回紹介した“長久手市役所くらし文化部たつせ”がある課の、市民協働事業の一つ。その記念すべき第1回目のワークショップを見学させていただいた。

まずは、長久手市が推進する「地域共生ステーション」について、あらためて説明しておこう。地域共生ステーションは公共施設だが、公民館ではない。必要なときだけ貸し出す施設ではなく、“常に人が集う憩いの場”が地域共生ステーションだ。

長久手市には6つの小学校区があり、現在は西小学校区だけに地域共生ステーションが整備されている。そのステーションも、地域の人たちが何度も話し合いを行ってつくりあげた。

施設の中を覗いてみると、コミュニティスペースでは子どもたちが遊び回り、すぐそばのダイニングテーブルでは若いお母さんたちが談笑している。広いキッチンも設けられており、集っている人たちで料理を作って食事をしてもいいそうだ。

また、この施設を使って地域の人が何かすることもできる。たとえば、工作教室や無料学習サポート、味噌づくり教室など、住民の提案による地域のためのさまざまなプログラムが定期的に開催されている。

地域共生ステーションは、各小学校区の地域性に即した施設をつくるというのが基本ルール。だからこそワークショップを開催し、地域の人たちがステーションを必要としているかどうか、どんなステーションをつくりたいかを話し合う機会を設けるのである。

すでに稼働している西小学校区のステーションでは住民が企画提案するイベントが随時開催されているほか、社会福祉協議会の相談コーナーも設けられている。市に転入して間もない人や一人暮らしの高齢者などが気軽に立ち寄れて利用しやすいすでに稼働している西小学校区のステーションでは住民が企画提案するイベントが随時開催されているほか、社会福祉協議会の相談コーナーも設けられている。市に転入して間もない人や一人暮らしの高齢者などが気軽に立ち寄れて利用しやすい

まずは地域の基本データの確認から

グラフや図を提示しながらの説明に聞き入る参加者の皆さん。数字で見てあらためて実感することもあるようだグラフや図を提示しながらの説明に聞き入る参加者の皆さん。数字で見てあらためて実感することもあるようだ

さて、南小学校区の地域共生ステーション設置に向けた座談会が行われたこの日は、20名を超える人が参加していた。まずは自分たちが住んでいる地域をあらゆる角度から分析しようということで、ワークショップを行う前に、たつせがある課の地域担当職員・粕谷さんから南小学校区のさまざまなデータが紹介された。

〈平成26年3月31日現在〉
■基本データ/人口1万463人、世帯数4204世帯、自治会加入率47.84%、高齢化率13.4%。
■データ分析/人口、世帯数は長久手市の小学校区のなかで一番多く、自治会加入率は西小学校区の次に低い。自治会加入率が低い理由は、名古屋市のベッドタウンであり大学が多いという特徴があるためと思われる。小学校区内をあらためて見てみると単身用のアパートが多いことがわかる。某経済誌の全国自治体ランキングで長久手市は4位に入っており、利便性が高くて非常に住みよいため困りごとが少ないといった背景から、地域活動の要請があまりないと考えられる。
■課題/防犯・防災の取り組みの強化が必要。

地域の魅力と課題を書き出してみる

粕谷さんの説明のあと、いよいよグループワークのスタート。テーマは「南小学校区の魅力と課題~住んでいる地域をあらためて見直してみる!」。

4つのグループにわかれ、それぞれ自己紹介シートを記入していく。記入する内容は、住まい、名前(呼び名)、南小学校区で好きなもの(おもしろい人・場所・お店・イベントなど)。参加者は顔見知りの人もいるようだが、初対面の人が多い様子。どのグループも静かに用紙に書き込みながら、ぎこちない会話を交わしている。まずはウオーミングアップといったところだろうか。

次に、用意された色違いの付箋に南小学校区の魅力(好きなところ)と課題(困っているところ)を書き、模造紙に貼っていく。「一つの付箋に一つの意見を、短く簡単に書いてください」と職員からの説明があると、皆さんさっそくペンを手に取ってどんどん意見を書き込んでいく。どのグループも先ほどとは打って変わってずいぶん打ち解けた様子だ。地域をよく知る人たちの集まりだけに、話が通じやすいようで会話も盛り上がっている。

グループワークが進むにつれて意見交換に熱が入る。魅力と課題を書いた付箋も模造紙にびっしりグループワークが進むにつれて意見交換に熱が入る。魅力と課題を書いた付箋も模造紙にびっしり

魅力はやっぱり住みやすさ。課題は防災・防犯

南小学校区の課題と魅力の洗い出しが終わったところで、グループごとに意見を発表。それぞれのグループから出された意見を集約してみた。

〈魅力〉
●街路灯が多くて明るい ●温かくて明るいというイメージがある ●公園が多く、緑が多い ●大型ショッピングセンターなど店舗が多い ●住みやすい ●若い ●便利なまち ●アクセスが良い ●人が優しい、穏やか ●運動会の昼食を親子で一緒に食べるのがいい ●中学校から給食がある ●病院が多くて安心 ●まちがきれい ●自然がたくさん残っている ●リニモ駅前が整備されている など。

〈課題〉
●自治会の加入率が低い ●単身アパートのゴミ出し ●空き地の雑草 ●課題がないのが課題 ●せせらぎ径が有効利用されていない ●グリーンロードが南小学校区を南と北に分断していて人の交流がしにくい ●自治会への不参加 ●防災・防犯対策の不足 など。

〈対策〉
●まちの美化 ●防犯パトロールの強化 ●N-バス(長久手市が運営する循環バス)の有効活用 ●顔の見える交流 ●予約なしでいつでも誰でも利用できる拠点をつくる など。

たとえば、行政に要望するほどではないが個人で対策を講じるのが難しい問題などは、地域の人たちで相談して対処するほうが、解決が早いかもしれない。地域共生ステーションは憩いの場としてだけでなく、そういった話し合いをする拠点としても活用できそうだと感じた。

グループごとに意見を発表し全員で共有する。この日初めて集まったとは思えないようなチームワークの良さに感心するばかりグループごとに意見を発表し全員で共有する。この日初めて集まったとは思えないようなチームワークの良さに感心するばかり

市民と行政が一緒に知恵を絞り行動する

「地域共生ステーションをつくることがゴールではなく、ステーションを10年、20年後まで有効活用する方法を考えるのが私たちの目標です」と、たつせがある課の福岡さんは言う。長久手市の安心・安全なまちづくりの取り組みは始まったばかりだ「地域共生ステーションをつくることがゴールではなく、ステーションを10年、20年後まで有効活用する方法を考えるのが私たちの目標です」と、たつせがある課の福岡さんは言う。長久手市の安心・安全なまちづくりの取り組みは始まったばかりだ

座談会の最後に参加者から感想が述べられたので、いくつか紹介する。

「南小校区のいいところを再発見できました。また、魅力と課題は表裏一体だと感じました。地域の人がつながる場所、集まる場所の必要性を、グループでの話し合いや皆さんの発表を聞いて強く感じることができました」

「それぞれの課題と魅力を聞き、みんな同じようなことを思っているんだなと感じました。課題としてあがっていた防犯対策の強化を、皆さんと一緒に頑張ってやっていきたいと思います」

「ここにいらっしゃる方は、まちを良くしたいという意識がとても高いということを発表から感じました。今日、参加されていない方々が今後たくさん参加してくださると、もっといいまちづくりができると思います。行政だけでは何ともならない課題を私たちみんなが考え、解決に向けて行政と一体になった動きをしていきたいと思いました」

「南の座談会」は今後も続いていく。南小学校区の地域共生ステーションが実際に設置されるのか、設置されるとしたら何年後になるのか今はまだわからないが、この日の座談会を見る限り、地域住民でなくとも“どんなステーションができるのだろうか?”と期待が高まる。

【取材協力】
長久手市役所  http://www.city.nagakute.lg.jp/


2014年 09月29日 12時17分