施主Mさんは「顔」で決める

施主のMさん(奥さま)施主のMさん(奥さま)

古っぽく見えるけど、新築。新築だけど、ピカピカに新しい感じがしない家。
それが古新築なのだ!
今回は、施主のMさん(奥様)と、建築家の大川三枝子さんにお話しをお伺いした。

---まずは、大川さんを設計事務所さんに選んだ経緯を。

Mさん:「きっかけは雑誌です。
建築の雑誌を見ていて、あ、この方いいな、と思って。
そうしたら、2回続けて違う雑誌でオオカワ建築事務所さんのことが
掲載されていて、あ、これは運命だなと。」

---いいな、というのは、大川さんが設計されたお家を見て?

Mさん:「それはもちろんそうですけど、それよりも大川さんのお顔の写真を見て。」

---へえ?顔写真で?

Mさん:「はい。私は、顔にはその方自身が表れると思っているんです。
例えば、美容師さんも顔で決めています。」

うわお。Mさん、とっても感覚的。
自分の感性を信じていて、その方向にブレがないんだな。
私もどちらかというとカンに頼ることが多いので、その感覚はわかる。

大川さん:「その時、たまたま続いたタイミングで雑誌に掲載されたのだと思います。
建築の雑誌は、家の写真は載るんですけど、建築家の写真は載らなかったりしますから、ほんとにタイミングが良かったんですね。」

建築家のイメージというと?

建築家 大川三枝子さん建築家 大川三枝子さん

私は「建築家」というと……
「髪は短く、丸いフレームのメガネをかけ、あごひげ、口ひげを生やし、スタンドカラーのシャツに黒いスーツを着た人(男性の場合)」というイメージがある。
写真はグレーのバックで、斜めにかまえて写っている、みたいな。
ちょっと近づきがたい雰囲気、というイメージだ。

大川さんもそういうステレオタイプな「建築家」のイメージは承知していて、だからこそご自分の顔写真は、親しみやすい、普段のご自身を出せるようにしているという。

---他の施工会社さんということは考えなかった?

まわりからは、何社か提案をしてもらって比べたほうがいい、と言われましたけど、結局、大川さんのところ以外に相談はしませんでした。

自分の好みの人に会う、好みの仕事をしている人を見つける、というのは、かなり大変なことだと思う。
これだけインターネットが便利に使われていても、私はいつもそう思う。
「シンプルで親しみやすいデザイン」と文字で書いてあったとしても、受け取る側の感性によってその感じ方はさまざまだから。

Mさんが大川さんを探し当てたのは、やはり「見つけたい」という強い思いと、ご自分の好みがはっきりしていることが大きいと思う。
もしくは、大川さんのお顔の説得力によるのかも。

お願いする会社は決まった。ではイメージの固め方は?

分厚いファイル分厚いファイル

家を一軒つくるのだから、施主さんの好みのイメージを形にしていくのって、
とても大変な作業だと思うのだ。
そういうイメージの摺合せ、みたいなのは具体的にどうやっていくのだろう?

大川さん:「Mさんのお洋服の好みとか、お話した感じとか。
そういうことから、
“あまりきらびやかなのはお好みではなく、味のある感じがお好きなんだな”
ということがわかってきました。
あと、なるべくたくさん、お好みの家とか庭とか、部屋の写真を資料でください、とお願いしました。
そうしてやり取りしているうちに、あの「パン屋さんの写真」を見せていただいたんです」

集めた家づくりのための資料を見せていただく。
書類や図面の入った分厚いファイルの中に、雑誌の切り抜きが貼り込まれている。

自分の中のイメージを人に伝える、というのは意外に難しい作業だ。
自分と相手の中に、まずは共通の世界観がないといけない。
まずはそこの認識があっていないと後々イメージがずれていくことになりかねない。

イメージを共有のすることの難しさ

ネコが昼寝をしているマンガネコが昼寝をしているマンガ

以前、私が4コママンガのお仕事をいただいて、
仕上げの段階で
「仕上げはシズル感を出してね」
と指示されたことがあった。

シズル感…。
シズル感とは、焼けるステーキからしたたる肉汁や
しっとりと濡れて光る唇、のようなことらしい。

あべ「えーと、なんか濡れてテカテカ光ってる感じですかね?」
クライアント「そうそう、そんな感じ!」

と、この時点で、私と担当の方の中には共通の認識ができた。
でも、その4コママンガは、2匹の猫が昼寝をしている内容だったので、
「昼寝をしているネコが濡れて光っている感じ」がいったいなんのことやらよくわからず、
結局マンガは普通に仕上げた、という思い出がある。

例として正しかったかはわからないけど、
それほどイメージの共有というのは難しいのだ。

Mさんのお家のイメージはこれだ!

でもMさんは
「最初の大川さんとのヒアリングで、イメージは伝わった」と思ったそうだ。
大川さんの顔写真をみて「この人だ!」と直観した時の、
Mさんのファーストインプレッションは正しかったのだ。

そして何度か話し合っていくうちに
これからつくっていくMさんのお家のイメージが徐々に固まってきた。

---最終的に決まったイメージは?

大川さん:「Mさんのお宅のイメージは
『ハワイに住む日系三世の方のお家だ!』
と思ったんです。これは私が勝手に思ったのですが。」

あべ:「??ハワイに住むハワイの方の家ではなく?」

大川さん:「最初はそう思ったんですが、それだとやりすぎなんです」

あべ:「日系一世でも二世でもなく?」

大川さん:「日系3世の方の家なんです!」

きっと、いい感じに年期の入った古っぽいけどいかした家なんだろうな。
でもハワイの、しかも日系の方のお家のイメージのない私は
悲しいことにぽかーんとしてしまった。
できればウソでも「ああ、なーるほど!」とわかったふりをしたかったな…。

そこで考えたお家がこの章のイラストですが、
多分こういうことではないと思います。
このことでイメージの共有は難しい、とお察しいただけると助かります。

さて、次回はいよいよ施工の始まった現場を見に伺います!
ハワイに住む日系三世の方の家!ワクワク!

最終イメージがハワイに住む日系三世の家!?最終イメージがハワイに住む日系三世の家!?

2014年 06月26日 10時46分