依然として超低金利の競争が続く住宅ローン市場

日本銀行による大胆な金融緩和が実施された2013年4月以降、その意図とは裏腹に長期金利は上昇し、住宅ローン金利の上昇傾向も表れた。5月から7月まで3か月連続で金利が上がるとともに先高観も強まったため、急いで住宅を購入しようとする動きもあったようだ。マンションのモデルルームや住宅展示場に集まる人、住宅ローンの相談に訪れる人などを映したテレビのニュースをご覧になった方も多いだろう。

ところが8月からは一転して、再び住宅ローン金利は低下傾向を示している。みずほ銀行が8月中旬に異例の金利引下げを実施し、9月は各行が主力商品の金利を引下げた。10月は一部商品が引下げ、一部商品が引上げとなっている。

依然として超低金利競争が続く背景には、消費税率引上げ前の駆け込み需要を取り込もうとする意図もあるようだが、以前とは違う傾向が表れ始めていることに注意したい。とくに大手都市銀行では横並び意識が強く、これまでは1行が引下げを実施すれば他行がそれに追随するというのが通例だったのに対し、最近では住宅ローン金利にバラつきがみられるようになった。それと同時に、金利以外の付加価値による特色を出そうとする動きも強まっているようだ。これについては後ほど説明しよう。

都市銀行のローン金利に差が表れ始めている都市銀行のローン金利に差が表れ始めている

ネット銀行は固定期間選択型が有利?

実店舗を持たないネット銀行は、業務の効率化などによって低金利の住宅ローンを提供しているイメージが強いが、変動金利の場合には都市銀行とあまり大きな差がみられない。金利面でネット銀行のほうが有利なのは、当初数年間の金利を固定した「固定期間選択型」だろう。下表では「全期間優遇」の場合における主なネット銀行の住宅ローン金利を比較したが、当初期間の優遇幅を手厚くする場合には、さらなる低金利の商品もみられる。

また、一般的に都市銀行が幅広い住宅ローン商品を扱っているのに対して、ネット銀行は特長のある商品だけに絞り込んでいる例も少なくない。商品構成の違いにより、他行との比較が難しい場合も多いので注意が必要だ。申込み手続きの簡便さ、繰上返済の手軽さなどもあるネット銀行だが、検討をするときには事務手数料、保証料、保険料なども含め、さまざまな角度でチェックをすることが欠かせない。さらに、ネット銀行ではその母体企業の特色を生かした商品もある。たとえばイオン銀行では、住宅ローン契約者の特典として「イオンでの買物が毎日5%OFF」としている。近くにイオンの店舗がある人にとっては便利なサービスだろう。

ネット銀行は金利以外にサービス内容も重視ネット銀行は金利以外にサービス内容も重視

住宅ローン商品が多様化して、選ぶのが難しくなった

住宅ローンの超低金利による貸出競争は、そろそろ限界だという話も聞かれる。かつて、2003年頃に住宅金融公庫の貸出金利(当時は2段階金利)が2.0%まで下がったときには「これ以上の低金利は考えられない」とされたものだが、現在はそれをはるかに下回る金利水準が続いている。

しかし、前述したとおり都市銀行でも住宅ローン金利のバラつきがみられるようになり、商品内容も変わりつつあるようだ。みずほ銀行が今年8月から取扱いを始めた「ライフステージ応援プラン」は、出産や子どもの進学、リフォーム工事などによる出費が増える年に返済額を減らすことができるものだ。1回あたり1年以内の減額ができ、借入期間中に累計で5年まで適用が可能。減額した分は、余裕が生まれたときに返済額を増やすことで対応する。

特定の疾病により返済の免除を受けられる保険付きの住宅ローンは、従来から多くの金融機関が取り扱っているが、三井住友銀行は56歳未満を対象に「8大疾病以外の病気やケガ」で働けなくなったときにも返済を免除するサービスを今年10月から始めた。13ケ月以上働けなくなったとき、14ケ月目(46歳以上56歳未満は13ケ月目)に住宅ローンの残高をゼロにする。また、通常の疾病保険付きの住宅ローンは、働けない状態が1年間程度続くなどの条件があるものの、三井住友信託銀行は特定の疾病であれば猶予期間を設けず、すぐに返済が免除される保険付き住宅ローンの提供を始めている。一方で、埼玉りそな銀行は太陽光発電装置を設置した一戸建て住宅を対象に、日照不足が一定時間を超えれば補償金を支払う住宅ローンを開発した。りそな銀行と埼玉りそな銀行では、女性向け住宅ローンのサービスを強化している。

特色のある住宅ローンといえばこれまではネット銀行だったが、都市銀行も金利以外のサービスや付加価値によって消費者へアピールする姿勢がみられ、今後もその傾向は加速していくだろう。対するネット銀行も、たとえば住信SBIネット銀行では1円だけの一部繰上返済にも無料で応じるなど、利便性の向上に努めているようだ。

さまざまなサービスの向上は消費者にとって嬉しい反面で、住宅ローン選びはますます難しくなっているといえるかもしれない。

今後の住宅ローン金利はどうなるのか?

一時期にみられた住宅ローン金利の先高観は薄れたものの、現在の超低金利状態がいつまでも続くとは考えにくい。一般的な住宅ローンの金利が3%~4%台に上がることは十分に考えられるシナリオだろう。しかし、2015年10月に予定される消費税率の再引上げ(8%から10%への引上げ)の影響が落ち着く頃まで、日銀による金融緩和策を背景に低金利状態が続くという見方も強いようだ。

その一方で、国内の景気回復が順調に進めば金利の上昇局面が早くやってくることも考えられる。現在、大都市圏を中心に地価が上昇を始めているが、前回、地価が高騰を示した2006年から2008年頃、それに比例するかのように住宅ローンの店頭金利が上昇したことにも留意しておきたい。現在は店頭金利(基準金利)から一定幅の優遇をするキャンペーン金利が主流となっているが、この優遇幅が縮小されるのは、金利上昇よりも早いタイミングとなることもあるだろう。

また、超低金利による住宅ローンの「貸出競争」と称されることも多いが、その実態は「優良顧客の獲得競争」であることも忘れてはならない。提示される金利は上がらなくても、融資の審査が厳しくなることで、従来は借りられた条件の申込者が断られたり、審査の結果によって優遇幅が縮小され実質的な金利引上げになったりすることも考えられる。これまでも、申込者の条件に応じて保証料の割増しを求められるなど不透明な部分も散見されたが、今後ますます混沌としていく可能性も否めない。

2013年 10月29日 10時22分