全期間固定金利の「フラット35」は現行で90%までの融資

1~2割程度の自己資金を用意することが基本だが……1~2割程度の自己資金を用意することが基本だが……

独立行政法人住宅金融支援機構が民間金融機関の窓口を通して融資をする「フラット35」は、最長35年にわたる全期間固定金利の住宅ローンだ。金利は取扱う金融機関によって異なるが、2013年9月の時点では1.940%(返済期間21年以上35年以下の場合)が最も多い。住宅ローン金利の先高観が強まる中で、比較的低い金利である「フラット35」のニーズも高まっているようだ。

融資限度額は現在、新築・中古住宅の購入価格、または注文住宅の請負金額(一定の諸費用を含む)の90%以内だが、この上限をなくして100%の借入れを認めることが検討されている。2014年4月の消費税率引上げと同時に実施され、その期限は設けられない予定だ。
現時点では、国土交通省による2014年度予算の概算要求に盛り込まれているだけだが、リーマン・ショック後の経済対策として2009年6月から2012年3月まで「フラット35」の全額融資が認められていた経緯もあり、この措置自体は目新しいものではない。
消費税率引上げ後における住宅市場の落ち込みを抑える観点からも、国土交通省の要求どおりになる可能性は高いだろう。


(注)本記事執筆後に、フラット35の全額融資が2013年度補正予算に盛り込まれ、それが2014年2月6日に成立したため、2月24日融資分から適用がスタートすることとなった。ただし、90%以内の融資に比べて「一定幅の金利上乗せ」および「より慎重な審査」が掲げられている。

住宅ローン全額融資のリスクを理解することが大切

住宅の購入金額などをすべて住宅ローンの融資でまかなうことができれば、購入のハードルが下がることは確かだ。しかし、それに伴うリスクを十分に理解しておくことが欠かせない。
まず初めに、「これまで貯蓄ができなかった人が多額の住宅ローンを抱えても大丈夫なのか」という問題がある。
一般の消費財とは異なる高額な住宅では、「何年も前から計画的に資金を蓄えてから購入を検討するべきであり、その計画性がなく貯蓄もできない人はそもそも購入するべきではない」という考え方が一般的だ。

また、何らかの事情で住宅ローンの返済ができなくなったとき、住宅を売却してその代金で残った住宅ローンを全額返済できれば深手を負うことはない。ところが新築住宅の場合には、いったん入居した時点で中古住宅の扱いとなり、新築価格より1割から2割程度は価格が下がることも多いだろう。このとき、購入価格の全額に相当する住宅ローンを借りていれば、かなり長期にわたって売却価格よりも住宅ローン残高のほうが多い状態が続くことになる。

さらに、全額を借りることによって毎月の返済負担が大きくなることにも留意しなければならない。購入金額の全額を借りなければ買えないような資金計画では、家計にゆとりが持てないケースも多いだろう。
毎日の生活を切り詰めて住宅ローンの返済をしても、ちょっとした収入の変化で途端に窮地に追い込まれるのでは、何のためにマイホームを購入したのかも分からなくなってしまう。

アメリカにおけるサブプライムローン問題とは異なるが……

「フラット35」の全額融資について、「日本版サブプライムローン」と懸念する論調もみられるが、そもそもサブプライムローンとは何だったのかを考えてみよう。

アメリカで2000年代の初頭に流行したサブプライムローンは、信用力の劣る個人を対象に金利の上乗せをして融資された住宅ローンだ。過去1年間に複数回の延滞があったり、一定期間内に破産歴があったりするなど、日本では到底、融資が認められないような層を対象としたものだが、当時は住宅価格の値上がりが前提となっていた。住宅ローンの返済ができなくなれば住宅を売却して融資金を回収することができ、返済を続けてくれれば高い利息による利益が得られたのだ。

ところが、アメリカは原則としてノンリコースローン(非遡及融資)であり、返済ができなくなった個人は、住宅を手放すことですべての責任から逃れられる。つまり、融資のリスクは金融機関が負うのであり、住宅価格の値上がりという前提が崩れたことによって金融破綻を招いた。
それに対して、住宅ローンのリスクは原則として個人が負うのが日本のシステムだ。住宅を売却してもローンの残高を返済しきれなければ、残った債務を負担しなければならないことになる。不動産競売で処分されても任意売却で処理をしてもそれは同じで、自己破産しない限りはその返済義務から逃れられない。

日本とアメリカとでは住宅ローンのシステムそのものが異なるわけだが、返済能力の乏しい人に多額の住宅ローンを融資すれば、個人の破綻を招きかねない。
民間金融機関よりも審査が甘いと指摘されることの多い住宅金融支援機構だが、「フラット35」の全額融資にあたっては、審査の厳格化も求められるだろう。

住宅ローンの全額融資を受けても問題ない場合がある?

個人がリスクを負うことになる住宅ローンをどう選ぶのかは、あくまでも個人の責任とされる。
しかしその一方で、2014年4月からの「フラット35」に限らず、現時点でも全額融資を実行している金融機関は地方銀行やネット銀行を中心に少なからず存在し、フラット35の90%融資に独自の10%融資を加えて「100%融資」としている金融機関もある。しっかりと資金計画を吟味したいところだが、全額融資を受けてもそのリスクが低いケースも考えられる。

たとえば相続した土地などがあり、建築費用の負担だけで注文住宅を建てることができる場合。あるいは、これまで大都市に住んでいた人が地方都市に移り住む場合などだ。都心部に住んでいた人が郊外の親の家の近くに住宅を買う場合も考えられる。住む場所が大きく変わることによって、これまでの賃貸住宅の家賃よりも、全額融資を受けた住宅ローンの返済額のほうが大幅に安くなるなら、決して無理な資金計画だとはいえない。
仮にこれまでの家賃が毎月20万円でまったく貯蓄できなかったとしても、移り住んだ後の住宅ローン返済が10万円程度で済むのなら、それは十分に検討するべきだろう。もちろん、仕事や収入面での変化がないかどうかを先に考えなければならないが……。

家賃と住宅ローン返済額だけの比較は危険!その他の費用も考える

住宅ローン金利の先高観が強まり、大都市圏における住宅価格の上昇も懸念されている。
自己資金が足りなくても、早いうちに住宅を買ってしまおうと考える場合があるだろう。そのとき、全期間固定金利の「フラット35」で全額の融資が受けられるようになることは魅力的だ。しかし、そのリスクを十分に理解したうえで慎重に行動することが欠かせない。
くれぐれも背伸びをしたり無理をしたりして購入することがないようにしたいものだ。

「家賃以下で買えます」のような広告を目にすることも多いが、マンションであれば「住宅ローンの返済額+管理費・修繕積立金+固定資産税・都市計画税」が現在の住居費以下となり、かつ、家計に一定の余裕が生まれるように考えるべきだ。
一戸建ての場合でも、住宅ローンの返済額や固定資産税・都市計画税の負担に加えて、家の維持管理費用を見込まなければならない。

購入金額の全額を借りてまで住宅を購入することは勧められないが、十分に検討をした結果として家計に一定の余裕が生まれるようであれば、購入を決断するのも悪くないだろう。

ただし、この「一定の余裕」をどのように判断するのかは、あくまでも個人の責任として問われることをお忘れなく。

2013年 10月07日 10時12分