土砂災害警戒区域の基礎知識
土砂災害警戒区域とは、土砂災害により住民の生命や身体に危害が生じるおそれがあると指定された区域のことです。「イエローゾーン」とも呼ばれ、特に危険度の高いエリアは「レッドゾーン」である土砂災害特別警戒区域に指定されます。
詳しくは、「土砂災害警戒区域とは」をご覧ください。
土砂災害警戒区域のリスクと備え
土砂災害警戒区域に家を建てると、災害時に建物が損壊するリスクがあり、住宅ローンだけが残る可能性も考えられます。万が一に備え、火災保険の水災補償の適用範囲や、被災者生活再建支援法などの公的補助金の仕組みを理解しておくことが重要です。
詳しくは、「土砂災害警戒区域のリスク」をご覧ください。
住宅ローンへの影響と事前の確認
土砂災害特別警戒区域は、住宅ローン「フラット35S」の適用対象外となるなど、家づくりに影響を及ぼします。土地を購入する際は、重要事項説明で必ず説明されますが、事前にハザードマップで自ら確認しておくことが大切です。
詳しくは、「土砂災害特別警戒区域が住宅ローンに与える影響」をご覧ください。

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マイホームを建てる土地を探す際には、利便性や快適さとともに、安全性をきちんと確かめておくことが大切です。

 

今回は、土砂災害リスクが高いとされる「土砂災害警戒区域」について詳しく解説していきます。土地を購入するリスクや注意点、住宅ローンの利用に与える影響などを具体的に見ていきましょう。

ハザードマップ

土砂災害警戒区域とは、土砂災害防止法に基づいて、「土砂災害の際に住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがある」と指定された区域のことです。

 

「イエローゾーン」とも呼ばれており、土石流や地すべり、がけ崩れなどの災害による被害を防止するために、警戒避難体制を特に整備すべきエリアとされています。

なお、警戒区域のうち、より危険度の高いエリアは、「土砂災害特別警戒区域」とされ、「レッドゾーン」とも呼ばれています。

 

まず地形によってイエローゾーンが判断され、そこからさらに高さや斜度、土質といった要因を計算してレッドゾーンが指定される仕組みです。

 

土地の状態や安全性は、時間の経過や環境の変化によって変わっていきます。そのため、およそ5年ごとに基礎調査が行われ、区域の指定が公表されます。

 

地形の変化、対策工事などにより、後から指定が解除されたり、追加されたりするケースもあるのです。

 

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土砂災害

土砂災害警戒区域に指定された土地には、さまざまなリスクが存在します。ここでは、どのような注意点があるのか具体的に見ていきましょう。

土砂災害警戒区域のもっとも大きな注意点は万が一、土砂災害が起こった場合に、建物の損壊や生命に多大な影響を及ぼすおそれがあることです。

 

さらに、後から土砂災害特別警戒区域に指定された場合は、構造の安全性によっては移転勧告を受けてしまうケースもあるのです。

 

また万が一、建物が損壊してしまっても、住宅は私有財産であるため国費による補償は受けられません。住宅ローンは完済するまで支払わなければならないため、経済的にも大きな打撃となってしまうのです。

 

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火災保険

万が一、土砂災害によって住宅が損壊してしまった場合、どのような保険に加入しているかによって、その後の結果は大きく異なります。ここでは、土砂災害に関する保険の仕組みについて詳しく見ていきましょう。

土砂災害は、さまざまな災害のなかでも「水災」に分類され、火災保険の適用範囲となります。水災については、豪雨や洪水などによる浸水がイメージされることが多いものの、台風や大雨で引き起こされる土砂災害も対象範囲内なのです。

 

ただ、火災保険の通常プランには、水災が組み込まれていない場合もあります。また、水災が組み込まれていても、火災などに比べて頻度が低いと判断され、保険料を抑えるために除外してしまうケースもあります。

 

そのため、補償内容については、事前にきちんと調べておく必要があります。なお、火災保険には「建物部分のみの補償」「家財も含めた補償」など、商品による適用範囲の違いもあるため注意しておきましょう。

現状において、国費による全額補償の仕組みは設けられていないものの、公的に補助金を受けられる仕組みは存在しています。

被災者生活再建支援法

たとえば、阪神・淡路大震災をきっかけに策定された「被災者生活再建支援法」では、被害の状況や世帯数などの条件に該当した地域に、一定の基礎支援金を支給する決まりが設けられているのです。

 

具体的な支給金額は細かな条件によって異なるものの、損壊の程度に応じて50~100万円と定められています。さらに、生活再建のための資金として、建設や購入の場合は200万円、補修は100万円、賃貸は50万円の加算支給金の仕組みも設けられています。

自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン

また、2016年4月1日からは、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(被災ローン減免制度)の運用が開始されました。

 

これは、自然災害によって住宅ローンの支払いが困難になった被災者について、一定の要件を満たした場合に減額や免除が認められるという仕組みです。

 

こうした制度は、やや仕組みが複雑な面はあるものの、万が一のときに経済的な基盤を整える重要な役割を持っています。そのため、土砂災害警戒区域に該当する土地を購入する際には、きちんと理解しておくことが大切です。

 

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住宅ローン

土砂災害特別警戒区域は、特に災害リスクが高いエリアであるため、新たに建てる建物の構造などに規制がかけられています。しかし、国土交通省の資料(※)によると、全国の土砂災害特別警戒区域内には20万世帯以上があります。

 

そのため、政府は土砂災害特別警戒区域への人口流入を防ぐために、住宅ローンの仕組みを変更する方針を固めているのです。具体的な内容は、2021年10月から「フラット35S」の適用除外にするというものです。

 

フラット35Sは、住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して扱う住宅ローンのひとつであり、一般的なものと比べて金利が優遇されています。

 

多くの人が利用しているフラット35Sの適用範囲から外すことで、土砂災害特別警戒区域に住む人を減らしたいという政府の意向が反映されているといえるでしょう。

 

こうした取組みは、今のところ土砂災害特別警戒区域に指定された区域に関するものではありますが、イエローゾーンにあたる土砂災害警戒区域もまったく関係がないというわけではありません。

 

後から指定区域が変更されてしまうリスクを考慮すると、こうした流れを理解しておくことも大切となるのです。

 

(※)国土交通省「まちづくりを巡る状況について

 

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土砂災害警戒区域を調べる

これまでに見てきたとおり、土砂災害警戒区域には多くのリスクがあります。そのため、指定されるとすぐにハザードマップへ追加され、住民に通知するなど警戒避難態勢の整備が図られます。

 

ハザードマップは、インターネットや市役所などで閲覧することができるため、事前に確認しておきましょう。土砂災害だけでなく、洪水や津波といったリスクも同時に調べることができます。

 

なお、不動産売買の際には、必ず重要事項説明において説明される項目となるため、基本的に土砂災害警戒区域内であることを知らずに購入することはありません。もし自身が売却するときにも、必ず説明をしなければならないため覚えておきましょう。

 

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住まいの窓口を利用する

土砂災害警戒区域で住宅を建てる場合、重要な判断をしなければならない場面が多く、何かと不安を感じやすいものです。

 

住宅ローンなどについても相談できる相手が見つからない場合は、LIFULL HOME’Sの「住まいの窓口」の利用を検討してみるといいでしょう。

住まいの窓口では、住宅ローンに関する悩みはもちろん、購入にかかる費用についても細かくアドバイスを受けることが可能です。また、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家につないでもらえるため、住宅購入の心強い味方となります。

 

さらに、購入段階に入ったときには、不動産会社との打ち合わせの調整やキャンセルの代行といったサポートも受けられます。すべてのサービスを無料で受けられ、中立の立場で相談に応じてもらえるため、住宅に関する悩みを抱えたときには利用してみてください。

 

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土砂災害

  • 土砂災害警戒区域とは「土砂災害の際に住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがある」と指定された区域
  • 土砂災害警戒区域のうち、特にリスクの高いエリアは「土砂災害特別警戒区域」として指定される
  • 土砂災害による損害には火災保険が適用されるものの、範囲に水災が組み込まれていない場合もあるため注意しておく
  • 2021年10月から土砂災害特別警戒区域はフラット35Sの適用除外に
  • 土地の購入の際には、事前にハザードマップなどで調べておくことが大切
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Q1. 土地探しで「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」とありました。どのような場所で、家を建てても安全ですか?

A1. 「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」とは、大雨などによって崖崩れや土石流といった土砂災害が発生した場合に、住民の命に危険が及ぶおそれがある区域のことです。建物が倒壊するなどの被害を受けるリスクがある土地だと理解しておきましょう。

Q2. 土砂災害警戒区域には「イエローゾーン」と「レッドゾーン」があると聞きました。何が違いますか?

A2. 「レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)」は、イエローゾーンの中でも特に災害のリスクが高く、建物が壊れるなど大きな被害が出るおそれが大きい区域です。レッドゾーンに指定されると、住宅の建築に制限がかかるなど、イエローゾーンよりも厳しい規制が設けられています。

Q3. 検討している土地が「土砂災害警戒区域」かどうか、自分で調べる方法はありますか?

A3. はい、ご自身で確認できます。自治体が作成している「ハザードマップ」で確認するのが一般的です。ハザードマップは、自治体の窓口やホームページで入手・閲覧できます。「〇〇市 ハザードマップ」のように検索すれば、インターネット上でも手軽に確認可能です。洪水や津波といった他の災害リスクもあわせてチェックしておくとよいでしょう。

Q4. もし土砂災害警戒区域の土地で被害にあった場合、何か補償は受けられますか?

A4. はい、主に2つの方法で備えることができます。
1. 火災保険の「水災補償」を利用する
土砂災害による損害は、火災保険の「水災補償」でカバーされます。ただし、契約プランに水災補償が含まれているか、事前に必ず確認しましょう。
2. 公的な支援制度を利用する
住宅が全壊するなど、生活の基盤に著しい被害を受けた場合は、「被災者生活再建支援法」によって支援金を受け取れる可能性があります。

Q5. 土砂災害警戒区域にある土地の購入で、住宅ローンに不利な点はありますか?

A5. 特に危険性の高い「レッドゾーン」内の土地は、住宅ローンの審査に影響が出ることがあります。たとえば、住宅ローン【フラット35】Sは、レッドゾーン内の物件では利用できません。これは、国がより安全な場所への居住を促しているためです。現時点でイエローゾーンは直接の対象ではありませんが、金融機関によっては審査が厳しくなる可能性もゼロではなく、将来レッドゾーンに指定変更されるリスクも考慮しておきましょう。

Q6. 万が一、土砂災害で家が壊れて住宅ローンだけが残ってしまった場合、救済措置はありますか?

A6. はい、「被災ローン減免制度」という救済措置があります。これは、自然災害で住宅ローンなどの返済が困難になった場合に、一定の条件のもとでローンを減額・免除してもらえる制度です。利用には専門家への相談が必要ですが、万が一の際に生活を立て直すための大切な仕組みとして覚えておきましょう。

Q7. 不動産会社から土地を紹介される際、土砂災害警戒区域であるかは教えてもらえますか?

A7. はい、必ず説明があります。宅地建物取引業法により、不動産会社は売買契約の前に、対象の土地が土砂災害警戒区域にあるかどうかを「重要事項説明」で買主へ説明することが義務付けられています。そのため、買主が知らないまま契約してしまうことはないので、ご安心ください。

更新日: / 公開日:2021.05.27