リビング内に階段を設置するリビング階段は、おしゃれで開放的なイメージなどから、ここ数年非常に人気が高まっています。
実際、リビング階段には、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか? また、リビング階段を取り入れる場合はどのような間取りが適しているのでしょうか?
そうした疑問について、数多くの住宅建築を手がける一級建築士の佐川旭さんに解説していただきました。
注文住宅カタログを探す
リビング階段とは

リビング階段とは、リビングの中に設置される階段のことで、「リビングイン階段」と呼ばれることもあります。
従来、階段は廊下や玄関ホールなどに設けられることが多いものでしたが、15年くらい前からリビング階段を取り入れた間取りが増えてきました。
リビング階段は吹き抜けとセットで取り入れられることが多いのですが、吹き抜けは開放感がある一方、暖かい空気が上に逃げてしまうという難点がありました。
しかし、高気密・高断熱の家づくりや複層ガラスの普及など、吹き抜けでも暖かく快適に生活できる状況が整うに従って、吹き抜けのリビングやリビング階段の人気も高まってきたことが考えられます。
今では、開放的でおしゃれな間取りとして、定番のひとつに挙げられるほどになっています。
注文住宅の事例を探す
リビング階段のある間取りのメリットは?

リビング階段を取り入れるメリットを挙げます。
開放的な印象
吹き抜けのリビングとリビング階段は、広々とした印象を与えます。
階段を骨組みと踏み板だけでつくられた「スケルトン階段」にすると、段と段の間の板(蹴り込み板)がないため、光が通り、より圧迫感がなく開放的な空間を演出できます。
家族のコミュニケーションが生まれやすい
階段が家族の団らんの場であるリビングにあることで、1階と2階が自然につながり、家族のコミュニケーションが増えるというメリットもあります。
上下の階を行き来するときは、必ず家族のいるリビングを通ることになり、もし子ども部屋が2階にいても、リビングから様子をうかがったり声をかけたりすることができるなど、お互いの気配を常に感じられるため、安心感があります。
スペースを節約できる
リビングに階段があると、階段につながる廊下をつくる必要がなくなるため、廊下を省いたコンパクトな間取りを設計することが可能です。
注文住宅カタログを探す
リビング階段のある間取りのデメリットは?

人気のリビング階段ですが、デメリットや注意すべき点もあります。
寒さ対策が必要
最近の住宅は、気密性の高さや暖房設備の発達で昔よりも暖かく快適に過ごすことができるようになりましたが、やはり吹き抜けの場合は、天井がある場合に比べると暖かい空気は上へと逃げてしまいがちです。
床暖房など足下が暖かくなる暖房システムを採用する、シーリングファンを天井に取り付け空気を循環させるなど、暖かく過ごすための工夫は必要です。
煙やにおい、音が伝わりやすい
1階と2階がつながることで、煙やにおい、音なども伝わりやすくなります。
たとえば、リビングとキッチンが隣接している場合、階段をキッチンの近くに設置してしまうと、調理中のにおいや煙が上の階に流れ込んできて気になるかもしれません。
その場合は、階段途中に換気設備を設ける、キッチンと階段を一時的に引き戸で区切るなどの対応をするといいでしょう。
プライバシーを確保しづらい
リビング階段は家族間のコミュニケーションを円滑にする半面、プライバシーを確保しづらいともいえます。間取りによっては、1階のリビングに来客があったときなどに、2階の部屋が丸見えになってしまう場合があります。
2階のスペースに余裕があれば寝室などは少し奥まった場所に配置する、もしくはパーティションやついたてで目隠しをするなどの工夫が必要になるかもしれません。
コストが上がる可能性がある
リビング階段は、目に触れる場所にあるため、通常の階段よりもデザイン性など見た目が重要になります。しかし、デザインや素材にこだわると、コストが上がる原因になります。
安全性に注意が必要
スケルトン階段はデザイン性も高く人気ですが、小さい子どもが隙間から落ちたり、足を滑らせたりといった事故が起きる可能性があります。
子どもや高齢者のいる家庭であれば、踏み板に滑りにくい素材を使ったり、手すりを付けたりといった安全対策をしっかりととるようにしましょう。
無料で住まいの窓口に相談する
リビング階段をつくるならどんな間取りがいい?
リビング内で階段をどこに配置するのかを考えるとき、大きなポイントとなるのは、壁とどのくらい接するかです。部屋の中央に設置したリビング階段は存在感があり、デザイン性が高く、おしゃれに演出することも可能です。
しかし、階段の両側が壁に接しないので、しっかりと自立できる構造にするために、鉄骨など強度の高い素材を使う必要があり、その分コストもかかります。
一方、壁に接した場所にリビング階段をつくる場合は、壁の強度を利用することができるため、より丈夫です。

壁に接した位置につくるリビング階段
リビング階段の形状は、部屋の広さによって変わります。折り返しのないまっすぐなリビング階段は、それだけ直線のスペースが必要になります。
あまりスペースに余裕がない場合は、折り返しがある形状やらせん階段などのほうが、スペースをうまく使えるかもしれません。

スペースに余裕がない場合はらせん階段も検討を
また、リビングとダイニング、キッチンがシームレスにつながっている場合、煙やにおいが気になる人は、キッチンからはやや離れた位置に階段を配置することも検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
人気のリビング階段は、おしゃれさや開放感、家族間のコミュニケーションを増やすというメリットがある一方、コストアップやプライバシーの確保などの面でデメリットもあります。
リビング階段を取り入れたいと考えている場合は、その家でどんなふうに過ごしていきたいのか、ライフプランをイメージしながら家族でよく話し合い、コスト面なども含めて検討しましょう。
無料で住まいの窓口に相談する 注文住宅を探す
更新日: / 公開日:2019.05.13










