長期にわたって安心で快適に住み続けられる家を「長期優良住宅」と呼びます。法律によって定められた基準をクリアした住宅が、長期優良住宅として認定される仕組みとなっています。どのような基準が設けられているのかを知ると同時に、認定を受けることで得られるメリットも押さえておきましょう。認定を受けるまでの流れや必要書類、注意点などを含めて解説します。
目次
長期優良住宅とは? 4つの認定基準と9つの認定条件
長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で住み続けられる措置が講じられた住宅のことを指しており、2009年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」を制度の根拠としています。国が定めている認定基準は4つあり、以下のとおりです。
- 長期にわたって良好な状態で住むことができる構造・設備を備えている
- 居住環境に配慮をしている
- 一定面積以上の住居面積を確保している
- 住宅の維持管理の方法や期間等の適切な維持保全計画が決められている
4つの認定基準のすべてを満たした状態で、自治体に申請を行うことで長期優良住宅として認定されます。具体的な取組みとして、新築一戸建ての場合では次のような認定条件をクリアしている必要があります。
認定条件 |
ポイント |
---|---|
耐震性 |
極めてまれに発生する地震に対して、損傷を軽減させるために必要な改修を行っている |
省エネルギー性 |
必要な断熱性能を備えるなど、省エネルギー性が確保されている |
劣化対策 |
数世代にわたって住み続けられる構造で建てられている |
住戸面積 |
良好な住環境を確保するために、必要な住戸面積(75m2以上)を確保している |
居住環境 |
景観や環境の維持について自治体の審査を受けている |
バリアフリー性 |
将来的なバリアフリー工事に対応できるように廊下などに十分なスペースが確保されている |
可変性 |
居住者のライフスタイルの変化に合わせて、間取りの変更が柔軟に行える |
維持管理・更新の容易性 |
建物の構造に与える影響をできるだけ少なくして、メンテナンスが行える |
維持保全計画 |
定期的な点検や修繕について、適切な計画が立てられている |
認定されることで得られるメリット
長期優良住宅と認定されることで、さまざまな税制上の優遇措置を受けられます。まず住宅ローン控除の対象となる借入限度額が増えます。一般住宅の場合は4,000万円までですが、長期優良住宅では5,000万円までです。
住宅を取得したときにかかる不動産取得税は、一般住宅の評価額の控除額が1,200万円であるのに対して、長期優良住宅では1,300万円までが控除されます。さらに新築住宅を建てると固定資産税税額が2分の1に軽減される期間が、一戸建ての一般住宅が3年間なのに対して、長期優良住宅では5年間です。
|
一般住宅 |
長期優良住宅 |
---|---|---|
控除対象借入限度額 |
4,000万円 |
5,000万円 |
不動産取得税の 課税標準からの控除額 |
1,200万円 |
1,300万円 |
固定資産税の軽減適用期間 |
一戸建て:3年間 マンション:5年間 |
一戸建て:5年間 マンション:7年間 |
2022年3月31日までに新築された住宅が対象
ほかにも、住宅ローンのひとつであるフラット35では、長期優良住宅向けの金利優遇制度が設けられています。一定の基準を満たすことで一定期間の金利を引き下げるプランであるフラット35Sや返済期間が最長50年のフラット50の利用が可能となり、金利負担を軽減できます。
住宅の新築やリフォームで受け取れる補助金
長期優良住宅として新築したり、リフォームを行ったりすれば補助金の交付を受けられる可能性があります。金額やポイントについてまとめると、次のとおりです。
補助金の種類 |
金額 |
ポイント |
---|---|---|
地域型住宅グリーン化事業 |
最大110万円 |
木造の認定長期優良住宅を建てた場合に利用できる。国土交通省から採択された中小工務店に依頼をした場合のみ。地域材を利用することで加算金を得られるケースもある |
長期優良住宅化リフォーム推進事業 |
評価基準型:100(150)万円 認定長期優良住宅型:200(250)万円 高度省エネルギー型:250(300)万円 ※カッコ内の金額は、三世代同居対応リフォーム工事の実施、若者・子育て世帯、既存住宅の購入者がリフォーム工事を行う場合 |
耐久性・耐震性・省エネルギー性・維持管理のしやすさといった観点で住宅のリフォームを行うときに受けられる補助金 |
長期優良住宅を建てる場合、一般住宅と比べて建築費用は高くなる傾向があります。しかし、補助金の活用や住宅ローン控除の優遇措置などを受けることで、負担を軽減できます。上手に制度を活用しましょう。
長期優良住宅と認定されるまでの流れと必要書類
長期優良住宅と認定されるには、必要な書類を準備して申請を行う必要があります。どのような手順で進めるべきかをチェックしておきましょう。
認定の流れ
長期優良住宅の認定申請は、建築主もしくは施工会社を通じて行います。住宅を着工する前に長期優良住宅建築等計画を作成して、自治体に提出します。
第三者機関(登録住宅性能評価機関)の技術審査を経て、基準を満たしていれば適合証が交付されます。そして、必要書類をそろえたうえで自治体に認定申請を行います。
必要となる書類は自治体によって異なるので、事前に確認をしておきましょう。審査で問題がなければ、認定通知書が発行されて長期優良住宅として認定されます。
必要となる書類・申請費用
長期優良住宅の認定に必要となる書類は多岐にわたっており、主なものとして認定申請書・設計内容説明書・配置図・各種図面・各種計算書などが挙げられます。特に図面や計算書を自分で準備するのは大変なので、施工会社や専門家のアドバイスを受けてそろえましょう。
申請に必要な費用は自治体によって異なり、1~5万円程度が必要です。どのような書類が必要になるかを含めて、費用についても各自治体にあらかじめ確認をしておきましょう。
認定を受けてからも定期的なメンテナンスが必要
いったん長期優良住宅と認定されても、定期的な点検やメンテナンスを行って、住宅の状態を保つ必要があります。点検のスケジュールは事前に提出する「維持保全計画」に基づいて進められるものであり、必要な箇所(構造耐力上主要な部分・雨水の浸入を防止する部分・給排水設備)は修繕工事を行います。
点検は少なくとも10年に一度は行う必要があり、災害発生時には臨時点検が必要です。点検や修繕を行った記録は保存しておく義務があります。必要な点検を実施しなければ、長期優良住宅の認定を取り消されてしまう可能性があるので注意しましょう。
また、長期優良住宅と認定を受けた後に大規模なリフォームを行う場合は、改めて申請を行わなければなりません。安心して長く住むために定期的なメンテナンスは不可欠なので、維持保全計画に沿って取り組んでみましょう。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
ポイント
- 長期優良住宅は法律に基づく認定基準・認定条件をクリアした住宅で、長く安心して暮らせる
- 認定を受けることで、税務上のメリットが得られる
- 一定の条件を満たすことで、住宅の新築やリフォーム時に補助金が交付される
- 長期優良住宅と認定されるまでの流れを押さえ、スムーズに手続きを進めよう
- 認定を受けてからも、定期的なメンテナンスが必要となる
長期優良住宅の基準やメリットを紹介しました。いつまでも家族が安心して暮らせる家を目指しましょう。
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