住まいの安全性を高めるためには、建物の耐震性などに気を配るとともに、地盤についても意識をしておく必要があります。今回は地盤調査の仕組みや目的、費用の相場について詳しく解説していきます。また、地盤改良がいらない土地を選ぶポイントについても併せて見ていきましょう。
目次
地盤調査とは
建物を建てる際には、支持層となる地盤の状態がとても重要となります。ここではまず、地盤調査の基本的な仕組みや目的について確認しましょう。
地盤調査が必要になるタイミング
地盤調査は土地を購入したり、家を建てたりするときに必要となります。土地を購入する際には、行政機関や各地盤調査会社が無料で開示している資料を通して、調査結果を土地購入の検討材料とすることが可能です。
家を建てる際には、設計を依頼した建築士や施工会社を通じて、調査の必要性の有無を判断してもらうのが一般的です。そのうえで、調査が必要と判断されたときには、建築士や施工会社を通して、地盤調査会社に調査依頼を行います。
地盤調査で分かること
地盤調査は、土地がどのくらいの建物の重さに耐えられるのかを調べるために行われます。具体的な内容として挙げられるのは、「地盤構成や強度・支持力の把握」「土質・土層の把握」「地下水位の把握」「液状化判定」などです。
地盤構成については、「人工的につくられた土地」であるのか、「自然に形成された土地」であるのかを明らかにします。また、強度や支持力は住宅を支える基礎的な力のことを示し、地盤調査のなかでも特に重要な項目です。
また、土層や地下水位・液状化判定などは、地震への強さを示す指標となります。これらの項目を基に、土地の全体的な質を調べるのが地盤調査の目的です。
地盤調査を行う費用相場
地盤調査にかかる費用は、調査方法によって異なります。ここでは、地盤調査の主な種類とそれぞれの特徴、具体的な費用相場について見ていきましょう。
調査方法の種類
地盤調査方法の種類には「SWS試験」「ボーリング調査」「表面波探査法」の3つがあります。SWS試験は住宅用の地盤調査において、もっとも多く利用されている方法であり、「スウェーデン式サウンディング試験」とも呼ばれています。
先端がスクリュー状になっている鉄の棒を地中に差し込み、一定の深さに達するまでに必要となるおもりの重さや回転数を基に、地盤の強度を確かめる仕組みです。地盤調査のなかではもっともシンプルな方法であり、2時間程度で済む点がメリットとされています。
ボーリング調査は、主にマンションなどの地盤調査で用いられる方法で、穴を掘って地盤の状況や地層境界の深度などを調べます。地盤の支持力を把握するために行い、地質構造や各地層の強さ、地下水位なども分かります。木造の一戸建て住宅ではあまり使われることがありません。多くの調査現場で利用されていることから、データの信頼性が高い点が特徴とされています。
表面波探査法は、振動を発生させる装置と振動を検出する装置を地面に置き、振動波が伝わる速度によって地盤の強度を測定する方法です。地面を掘らずに調査できるため、比較的に短い時間で測定することが可能である点や、他の方法よりも地盤の硬度を正確に調べられるところがメリットです。
一方、地質の種類を詳しく調べることはできず、地中の空洞や埋設物によって結果が左右されやすいといった難点もあります。
地盤調査費用の目安
3つの方法のうち、もっともコストを抑えられるのはSWS試験です。一般的な住宅の敷地面積であれば、5~10万円前後の相場で調査を行えるとされています。
ボーリング調査は測定箇所の数や地層によって費用に差が生まれるものの、15~25万円程度が相場とされています。また、表面波探査法の費用相場はSWS試験とボーリング調査の中間程度であり、8~12万円が目安です。
地盤調査を行う流れ
地盤調査の具体的な手順は、調査を担当する会社によっても異なります。ここでは、一般的な流れを見ていきましょう。
手順は調査結果によって2通り
調査の依頼を受けた地盤調査会社は、地形図や土地条件図などを基に、ある程度の地盤状況を把握してから現地へ向かうのが一般的です。その後は現地調査に基づいてデータを作成し、地盤の判定を行います。
そのうえで、地盤の改良が必要とされた場合には、建物の荷重に合わせて改良方法の選定が行われます。地盤改良の方法にはさまざまな種類があるため、実情に合わせてもっとも費用対効果が高いものを決める必要があるのです。
そして、工法が決まった段階で具体的な設計を行い、施工会社へとバトンタッチするのが一般的な流れです。しかし、調査会社によっては調査から工事までを一貫して行うところもあります。
地盤調査で気をつけておきたいチェックポイント
地盤調査には住まいの安全性を支える基礎としての重要な役割があります。そのため、信頼できる施工会社を見極めることがとても大切です。
ここでは、地盤調査を依頼するうえで注意しておきたいポイントを見ていきましょう。
調査会社を見極める3つのポイント
調査結果によっては地盤改良工事や基礎の見直しが必要になるため、調査会社は慎重に選ぶことが大切となります。そのうえで、特に意識しておきたいのは、「専任技術者が在籍しているか」どうかです。
地盤調査に関する資格としては、「地盤品質判定士」や「住宅地盤主任技師」などが挙げられます。これらの資格を保有した専門家が在籍しているとともに、会社自体も豊富な実績を持っていれば、信頼性が高いと判断できます。
また、「地盤調査報告書」を発行してもらえるかどうかも依頼先を見極めるひとつのポイントです。調査報告書は土地の状態を証明する重要なデータとなるため、事前に発行されるか確認しておきましょう。
さらに、調査不備などが起こった場合の補償制度などを確認しておくことも大切です。
地盤改良がいらない土地を見つけるポイント
地盤改良の費用は、あくまで目安であるものの、土地価格の5%以上かかる場合もあるとされています。決して安くはないコストとなるため、できれば慎重にデータを集め、地盤改良の必要がない土地を選びたいものです。
ここでは、地盤から見た土地選びのポイントを紹介します。
標高と立地
基本的に、周辺の土地よりも標高が高い土地は地盤が強く、低い土地は水がたまりやすいため、地盤が弱いといった特徴があります。また、田んぼや河川、池などが近くにある場合には、土地の状態が軟化している可能性があるため注意が必要です。
土地の成り立ち
地盤は一度掘り返すと弱くなる性質を持っています。そのため、自然に形成された土地と比べて、人工造成地には注意が必要です。
また、住宅用の土地のなかには、田んぼや沼などを宅地として造成したものもあります。その場合は、通常よりも地盤が弱くなっているケースもあるため、古地図や過去の航空写真などで土地の成り立ちをチェックしてみるといいでしょう。
ただ、土地の具体的な強度は、地盤調査を行ってみないと分からないのも事実です。そのため、土地を購入する際には、地盤改良費用がかかる可能性にも目を向けて見積もりを行いましょう。
難しい土地選びは専門家の力を借りてみるのもひとつの方法
地盤調査や地盤改良がいらない土地の土地選びは、専門的な知識や経験が必要となる部分もあるため、一人では何かと不安を感じてしまいやすいものです。そうしたときには、LIFULL HOME’Sの「住まいの窓口」を通じて、ハウジングアドバイザーの意見を聞いてみるのもいいでしょう。
住まいの窓口では、無料で「土地と建築会社の選び方講座」を行っており、ビデオ通話でも受講が可能です。受講時間は60~90分程度となっているので、土地探しの際には活用してみてください。
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