住宅の建て方やデザインは、国や地域によってさまざまな違いがあります。海外風の家に憧れがあり、自分の家を建てる際の参考にしたいと考えている人もいるのではないでしょうか。今回は、輸入住宅に関する情報発信などを行っている、一般社団法人輸入住宅産業協会で専務理事を務められている森田順さんにお話を伺い、北米やヨーロッパなどを中心とした海外の住宅の特徴や、日本で住宅を建てる際に海外の要素を取り入れるコツを解説します。

日本の住宅

まずは日本の住宅の特徴を知り、海外と比較してみましょう。

家の建て方は、その地域の歴史や文化、気候風土などの影響を受けます。日本国内だけでも、地域によってさまざまな住宅が見られますが、一般的に昔ながらの日本の住宅には以下のような特徴があります。

  • 玄関はドアが外開きまたは引き戸で、土間がある
  • 浴室には深い浴槽と洗い場がある。トイレと分離しているのが一般的
  • 和室がある
  • 夏の日差しや雨を防ぐ深い軒がある

日本の家は、縁側のような緩衝空間が設けられるなど、外部とのつながりを重視したつくりですが、一方で玄関・土間から室内に入るときは靴を脱ぐので、玄関まわりはそれを想定したつくりになっています。

 

浴室も、日本ならではの入浴の習慣があらわれています。欧米などはシャワーだけで浴槽がない場合も多いのですが、日本は日常的に浴槽にお湯をためて浸かる習慣があるので、必ず浴槽を設置します。

 

部屋の間取りという点では、日本でも洋風の間取りの住宅が増えており、特にリビング、ダイニング、キッチンなどは洋風のつくりになっている家がほとんどです。また、昔は部屋が障子やふすまで仕切られプライバシーを保ちにくかったのですが、近年では防音性の高いドアで仕切られることが多くなってきました。都心を中心に和室や深い軒のある家も減ってきています。

一言で海外の住宅といっても、国や地域によってその事情は異なります。まず言えるのは、先に挙げたような浴槽や和室など、日本的な部屋・設備はない場合が多いということです。

 

加えて、欧米においては以下のような特徴があります。

  • 日本よりも広々としたつくりが多い
  • ビルトインガレージ(建物の一部に組み込んだガレージ)があることが多い
  • リフォームやメンテナンスをして住むことを前提とした部材でつくられている
  • 長く住むことを前提に、頑丈につくられている
  • 寒さの厳しい北欧や北米の住宅は、気密断熱性能に優れている

日本はどうしても敷地面積が狭いので、欧米の方が全般的に広々としたつくりになっています。日本よりも比較的体格の大きい人が多いこと、家を建てるときの基準となるモジュール(基本寸法)が日本と異なることなども、ゆったりとした住宅が好まれる理由です。

 

日本の一般的な住宅が採用しているモジュールは、尺貫法(日本古来の長さ・面積などの単位系)による3尺(約910mm)。それに対して、欧米は4フィート(約1,220mm)や1,200mmを基本としています。この違いによって、廊下や階段、部屋の一つ一つに余裕が生まれるのです。実際に欧米のモジュールを採用した住宅に住んでみると、廊下や階段などで大きな荷物を運ぶときや、車いすを使うときなどにゆとりの差を実感できるでしょう。

日本と欧米のモジュールの違い

日本と欧米のモジュールの違い(スウェーデンハウス株式会社提供)

さらに、欧米は車社会なのでビルトインガレージがあり、車を収納するほか、倉庫や趣味のスペースとして使われるなど多目的に利用されています。

 

また、欧米では住宅を自ら手入れする文化があります。日本で家を建てる場合は住宅メーカーごとに工法が異なり、部材などもオリジナルのものを使用することが多いのですが、欧米はいろいろな住宅で共通して使える部材、設備が一般的です。共通部材はホームセンターなどでそろえられるようになっていて、DIYでメンテナンスを繰り返しながら長く住むことを前提としています。

海外の住宅

海外の住宅の中でも、日本の輸入住宅などでもよく取り入れられるのは、北米型(アメリカ・カナダ)の住宅と、北欧型(スウェーデンやフィンランドなど)の住宅です。それぞれの特徴を間取り図とともに紹介します。

北米は土地が広いので、住宅も大きく、全体的にゆったりとしたつくりにする傾向があります。特に、家族で過ごす時間を大切にするのでリビングなどは広めです。こちらは北米スタイルを取り入れ、日本に建てられた輸入住宅の間取り図です。この住宅の場合は広々とした玄関ホールや和室などもあります。

 

日本ではあまり見られませんが、欧米などの住宅によくあるのはユーティリティコーナー(納戸)です。この図では1階のキッチンの近くにありますが、アイロンがけをしたり、裁縫をしたり、家事をするスペースとして使います。さらに、この住宅にはウォークインクローゼットなども設けられており、収納や家事をする空間をしっかり取った間取りだといえるでしょう。

海外の間取り図1

(セルコホーム株式会社提供資料より作成)

次に紹介するのが北欧スタイルの輸入住宅です。北米に比べるとややコンパクトで、無駄なスペースが少ないので、より日本の住宅に近いつくりになっています。

 

ポイントとしては、まず“家事のしやすさ”です。北欧は共働き家庭が多く、育児も家事も家族で分担するのが当たり前なので、効率的に家事ができるように設計されています。1階には大容量のパントリー(収納スペース)があり、食品のストックや食器などを収納することができます。家事の動線も考えられていて、1階はキッチンからリビングや玄関、パントリーなどに行きやすくなっていますし、2階は洗濯機置き場からクローゼット、洗濯物を干すバルコニーへの移動がスムーズです。

 

また、“家族とのコミュニケーション”を大事にする国民性もあらわれています。特徴的なのは、2階のファミリールーム。お客さまを通すこともある1階のリビングとは別に、家族だけでくつろげる空間としてファミリールームを設けるのは北欧では珍しくありません。

 

さらに、1階はキッチン、リビング、ダイニングがつながった回遊性の高い間取りになっていて、広々としたダイニングで子どもが勉強をすることも想定しています。対面キッチンで料理をしながら、ダイニングやリビングで過ごす家族とコミュニケーションをとることもできます。日本の住宅と比べて建物全体の断熱性が高いからこそ、ドアや仕切りを少なくすることができ、回遊性が高い間取りを実現することができるのです。

海外の間取り2

(スウェーデンハウス株式会社提供資料より作成)

海外の住宅のリビング

日本で海外風の住宅を建てる場合、「輸入住宅」という方法があります。輸入住宅産業協会による輸入住宅の定義は、「海外の設計思想による住宅を、住宅1戸分として資材別輸入もしくはパッケージ輸入または相当程度の輸入資材・部品を用いて建設したもの」となっています。メーカーなどによっても条件が異なりますが、日本で輸入住宅を建てる場合、次のようなメリット・デメリットがあります。

 

メリット

  • 欧米のモジュールを採用すると、廊下の幅などを広くつくることができ、バリアフリー性に優れている
  • 気密断熱性が高いので、冷暖房の効率が良く、遮音性も高い
  • 骨太な材料で頑丈につくられているので、耐震性能が高い
  • 内装や設備などはデザイン性に優れたものも多い

デメリット

  • 和室をつくることは可能だが、昔の日本家屋のように建具を取り外して、隣り合った和室を1つの大きな広間として使うといった使い方は難しい
  • 木など自然素材を多く使うことができるが、デッキや窓などに木を用いた場合、塗装など定期的なメンテナンスが必要になる

バリアフリーや省エネといった視点では、輸入住宅には優れた点があります。長く住むことを想定し、こだわりの素材で頑丈な住宅をつくることも可能です。その半面、長く使う前提だからこそ、メンテナンスが重要となり、それを面倒に感じる人もいるかもしれません。住環境にこだわりのある人には好まれます。

 

また、親戚一同が和室の続き間に集まって食事をするなど、日本独自の風習やライフスタイルとは合わない面もあるでしょう。一方で欧米はホームパーティーを行う文化があるため、広いリビングダイニングやガーデンデッキなどを使ってパーティーを行うのには向いています。

輸入住宅は、素材やインテリアなどにこだわりのある人や、家で家族と過ごす時間をゆっくり楽しみたい人に特におすすめです。しかし、日本の住宅にも優れたところはたくさんあります。すべてを海外のものにする必要はなく、日本の住宅の良いところも取り入れ、上手に組み合わせるのもよいでしょう。

 

たとえば、モジュールは欧米のものを採用すると、廊下や階段などを広めに設計できます。さらに、窓や玄関ドアも気密断熱性の高い欧米のものを使用。その一方で、トイレやお風呂などに関しては日本の製品は優秀で、生活スタイルにも合ったつくりになっているので、水回りの設備は日本のものを取り入れてもいいでしょう。

住宅の建て方や間取りは、国や地域によってさまざまな違いがあります。日本の住宅、欧米の住宅、それぞれの特徴を理解したうえで、自分たちのライフスタイルにあったポイントを上手に取り入れましょう。

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