二世帯住宅を建てようと考えている場合、「間取りタイプによって建築費がどのくらい変わるのか」、「どんな間取りなら二世帯みんなが暮らしやすいのか」などが気になるのではないでしょうか。

今回は、そんな二世帯住宅のタイプとそれぞれの建築費相場、建てる際の注意点などを一級建築士として数多くの一戸建て住宅の設計を手がけている中西ヒロツグさんに伺いました。

二世帯住宅は、主に3つの間取りタイプに分かれます(下図参照)。LIFULL HOME’S編集部の2017年調査によると、二世帯住宅に暮らす人の約半数が完全同居型で、10人に1人程度が完全分離型で暮らしています。

 

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二世帯住宅というと、「家族が多くて大きな家」というイメージがあり、建築費も単世帯用の一般的な住宅に比べて高いと考える人も多いでしょう。しかも、間取りのタイプによって、建築費の目安も大きく変わる印象もあります。

 

実際のところ、間取りのタイプ別でどの程度の建築費を目安とすればいいのでしょうか。平均的な延べ床面積と一般的な住宅設備設置という条件でどの程度の目安となるのか、中西ヒロツグさんにお話を伺いました。

 

  • 完全同居型

完全同居型の二世帯住宅は、部屋数の多い単世帯用住宅と同じように考えられます。部屋数と面積以外で特段コストアップになる要素はありません。木造2階建て・延べ床面積30〜40坪(約99〜132m2)の注文住宅で2,000万〜3,000万円台が一般的な建築費となり、坪単価の目安は65万〜100万円程度となります。

  • 部分共用型

部分共用型の二世帯住宅の場合、2ヶ所以上あるスペースの違いによって建築費の目安は上下します。例えば、「玄関のみ共用」なら、LDKや浴室、洗面、トイレが2つ以上あることになり、「玄関とLDKを共用」に比べると、よりコストがかかることになります。

 

特にキッチン、浴室、洗面、トイレといった水回りをつくるのはコストウエイトが大きく、同じ規模(例えば木造2階建て・延べ床面積30〜40坪の注文住宅など)の単世帯用住宅と比べて2〜3割程度、建築費が高くなるケースが多いようです。坪単価の目安は80万〜130万円程度です

  • 完全分離型

完全分離型の二世帯住宅は、ほぼ2軒分の機能やスペースがあり、水回り設備のほか、建具、サッシ、内装仕上げなどのコストも2倍程度に増えるため、単世帯用住宅と比べて3〜5割程度、建築費が高くなるケースが予想されます。坪単価の目安は85万〜150万円程度です。

 

部分共用型や完全分離型の場合、システムキッチン×2、ユニットバスルーム×2など、同じ用途の設備が複数設置されますが、どの程度、コストに違いが生じるのでしょうか。設備価格&施工費を考えてみましょう。

  • ダイニング・キッチンが2つあると?

システムキッチンの設備価格&施工費だけで150万〜200万円程度アップ。家電や食器・食品の収納スペースなども個別に必要なため、LDKを別々に作るとなると、面積的にもコストへの影響が大きくなります。建具や内装、給排水設備、照明などの費用もかかります。

  • 浴室&洗面が2つあると?

浴室が2ヶ所になると、ユニットバスルームの設備価格&施工費で100万〜150万円程度アップ。浴室には脱衣室を兼ねる洗面室が隣接するので、洗面室も2つ必要になり、洗面化粧台の設備価格&施工費が50万〜100万円程度アップします。キッチンと同じく、建具や内装、給排水設備、照明などのコストも必要です。

  • トイレが2つあると?

便器や手洗い器の設備価格&施工費が50万円程度アップ。これに加え、建具や内装、給排水設備照明などのコストも必要です。 

  • 玄関が2つあると?

玄関ドアや床仕上げ、収納等の設備価格&施工費が意外とかかるので、玄関が2ヶ所あると、100万〜200万円程度アップします。

完全分離型は主に、2階が子世帯、1階が親世帯などの「上下分離型」、東側が親世帯、西側が子世帯などの「平面分離型」に分かれます。

 

「平面分離型」にすると、それぞれの世帯に階段が必要となって間取りに制約が出やすく、そのため広さを求めると建物の規模が大きくなり、「上下分離型」に比べて割高になります。

 

「上下分離型」の場合、世帯の専有スペースがワンフロアで生活動線が楽である半面、音が別フロアに伝わりやすいというデメリットもあります。遮音性を高める工事を追加すると、「平面分離型」とさほどコストは変わらなくなるケースも見られます。

 

二世帯住宅は新築の建売住宅として販売されることはかなり少ないため、二世帯住宅で暮らしたいという場合は、注文住宅で新築するか、中古の二世帯住宅を購入するのが一般的。さらに、既存の一般的な単世帯用一戸建て住宅を二世帯用にリノベーションすることも考えられます。二世帯化の注意点を中西ヒロツグさんに伺いました。

 

単世帯用一戸建てを二世帯用にリノベーションする場合、間取りをそれほど大きくは変えられないため、ほとんどが「上下分離型」になりがちです。2階を子世帯住居として独立させ、玄関は共用というプランが多く見られます。

 

1階を親世帯とする場合、家で過ごす時間が長い親世帯が快適に過ごせるよう、採光や通風に配慮したプランニングが特に重要となります。高齢なら、ヒートショック対策となる断熱改修工事も不可欠だと考えましょう。

 

わんぱくざかりの子どもがいる場合、生活音が気になることも想定して、建具での区画、床遮音シートや防振天井などで、音や振動の伝わりを緩和させることも考えたいポイントです。

 

二世帯住宅化のリノベーション費用の一例としては、スケルトンリフォーム(骨組以外をまるごとフルリフォームする方法)で2階に子世帯を新設したケースで、耐震補強・断熱改修の費用を含めて約2,000万円。同じ規模の二世帯住宅を新築するのと比べて、約半分の建築費となりました。

 

二世帯住宅はどんな間取りにすると暮らしやすくなるのか、気になるところですが、「二世帯住宅に正解はなく、家族の関係に応じて、家族みんなが暮らしやすい間取りを考えることが大切です」と中西さん。間取りを考える際に特に注意したいポイントも教えてもらいました。

  • 一人になれる空間をつくる

親子・家族であっても、それぞれ価値観の異なる人間。フレキシブルに使える和室など、個室以外でも一人になれるスペースを設けて、気兼ねなく暮らせるような工夫が必要です。

  • 最低限の独立性も確保

完全同居型の場合、親世帯・子世帯での生活時間帯の違いが、お互いのストレスになりがち。完全同居型だとしても、別途ミニキッチンを設けるなどして、普段はLDKを共用しつつも、必要な時のために最低限の独立性を保てるような工夫が必要に。

  • 将来の暮らしまで想定

例えば「上下分離型」の二世帯住宅の場合、将来の相続や転売を考えた場合に足かせとなりやすいなど、家族の将来の暮らしや、さまざまな可能性まで想定してプランを立てたいものです。

 

どんなタイプの二世帯住宅にすると自分たち家族は暮らしやすいのか。それを探る手段の一つとして、数多くの二世帯住宅事例を見ることが大切になってきます。こちらのサイトで二世帯住宅を建てているハウスメーカーのプランをチェックして、理想の二世帯住宅のヒントを見つけましょう。

 

参考:二世帯住宅の住宅カタログ一覧

単世帯用住宅の建設費よりもコストがかかる二世帯住宅。建てる前に、お得な補助金制度や減税の制度を把握しておきましょう。

 

下記でご紹介する国土交通省管轄の制度のほか、地方自治体でも、二世帯住宅の新築や改装等に関連する制度を設けているところもあるので、自分の居住地の役所の窓口やホームページなどで確認してみるとよいでしょう。

  • 三世代同居に対応した良質な木造住宅の整備の促進(地域型住宅グリーン化事業の拡充)

三世代(祖父母・父母・子)同居対応住宅の建設を対象とした補助金制度です。補助金額は次のように工事内容によって異なります。

  • 「長寿命型(長期優良住宅)」:工事費の1割以下で上限130万円
  • 「高度省エネ型(低炭素住宅)」:工事費の1割以下で上限130万円
  • 「高度省エネ型(ゼロ・エネルギー住宅)」:工事費の1割以下で上限195万円

※いずれも、地域材を使用する場合は20万円を上限に加算 

  • 長期優良住宅化リフォーム推進事業・住宅の三世代同居改修工事等に係る特例

個人が所有する家屋を三世代同居のためにリフォームを行い、居住開始した場合に、長期優良住宅化リフォーム推進事業・住宅の三世代同居改修工事等に係る特例制度の対象となり税額控除を受けることができます。

 

キッチン、浴室、トイレ、玄関のいずれかを増設する工事で、改修後はいずれか2つ以上のスペースが複数になることが条件です。

 

住宅ローンを組む場合と、自己資金で支払う場合で控除額が異なります。自己資金で支払う場合を見てみると、工事費用額(50万円超であることが必須)の10%が、その年の所得税額から差し引かれます。

 

まとめ

  • 二世帯住宅の建築費は、「完全同居型」「部分共用型」「完全分離型」の順にコストアップする。
  • 「完全同居型」の建築費目安は、木造2階建て・延べ床面積30〜40坪で2,000万〜3,000万円台。
  • 「部分共用型」の建築費目安は完全同居型の2〜3割アップ。
  • 「完全分離型」の建築費目安は完全同居型の3〜5割アップ。

お話を伺った方

中西ヒロツグさん

一級建築士、イン・ハウス建築設計代表。注文住宅の設計、一戸建てやマンションのリノベーション設計を中心に活躍。巧みなプランニングに定評があり、数々の建築賞を受賞。大手ハウスメーカーの技術顧問を務めるなど、同業者からの信頼も厚い。「大改造!!劇的ビフォーアフター」にリフォームの匠として8回登場。著書に『暮らしやすいリフォーム アイデアノート』など。

http://www.inh-arch.com

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