家を新築するにあたり、上下階の移動がなく暮らしやすい「平屋」を選択肢に入れる人もいるのではないでしょうか。「開放的な空間で子育てを楽しみたい!」と、若い世帯が新築で平屋を建てるケースも見られます。

今回は、そんな平屋のメリットや建築費の相場、建てる際の注意点を調べてみました。

 

平屋とは「1階建て」とも呼ばれ、ワンフロアで構成される一戸建て住宅のこと。平屋は、一戸建て住宅で最も多い2階建てと比べて、どんな違いや魅力があるのでしょうか。一級建築士として数多くの一戸建て住宅の設計を手がけている中西ヒロツグさんにお話を伺いました。

  • 生活動線が楽

まず、平屋の魅力としてあげられるのは、階段の上り下りがないために移動が楽なこと。例えば、掃除のとき、2階建てでは掃除機を持って上下階を行き来したり、寝室に忘れ物をしたらいちいち階段を上がって取りに行かなくてはならなかったり、といったように大変なシーンが思い浮かびます。平屋なら移動が水平方向だけで済みます。将来、階段の上り下りが辛い年齢になっても、暮らしやすいつくりです。

  • 家族のコミュニケーションがとりやすい

子どもや家族の誰かが個室にこもっていても、同じフロアなので目が届きやすく、声もかけやすく、コミュニケーションがとりやすいつくりです。

  • 広さをより感じられる

延床面積が同じ建物の場合、平屋はワンフロアの面積=延床面積となるので、その広さの魅力を享受できます。例えば延床面積100m2の家の場合、平屋はワンフロアで100m2の広がりがありますが、2階建ては、1階と2階が同じ面積の「総2階建て(※)」の場合、ワンフロアは50m2の広さとなり、空間の広がりが、平屋ほどには感じられません。

 

※総2階建てとは…1階と2階の床面積が同じ2階建てのこと

  • 構造的に安定しやすい

建物の耐震で重要な要素となるのは、建物の重量です。重量があるほど建物は揺れるからです。平屋は2階建てに比べて軽いので、耐震性の点で有利です。平屋のシンプルで安定した構造は揺れに強いほか、住宅デザインが優雅に見えるという利点もあります。

  • 開放的なプランをつくりやすい

平屋は一層分の柱や梁で屋根を支えるシンプルな構造。耐力壁(構造を支える壁)が2階建てに比べて少なく済むので、開放的な間取りがつくりやすいのも特徴です。さらに、小屋裏(屋根裏)空間をオープンに使って(小屋裏と居室の間に天井板を張らない)、屋根勾配を現したダイナミックな吹き抜け空間とすることも可能です。開放的なプランにすると、各部屋の温度差が少なくなるため、ヒートショックの予防にもなります。

  • メンテナンスしやすく費用も安く済む

住宅は定期的なメンテナンスや修繕が必要になりますが、平屋は軒が低く、屋根や雨樋、外壁等のメンテナンスがしやすいのも特徴。2階建てに比べて、修繕時の足場を組む費用が抑えられます

  • 庭と行き来しやすい

さらに、各部屋が庭と直接つながる間取りにすれば、屋外の空間を生かした住まいにできます。部屋の延長空間としてデッキを広げたり、部屋とガレージをつなげてカーライフを楽しんだり。幅広い活用方法が考えられます。

平屋の建築費の目安は? 2階建てより割高って本当!?

 

平屋は魅力が多い半面、気をつけなければいけない点もあります。実は、平屋は同じ延床面積の2階建てに比べると、建築費が高くなりやすいのです。2階建てより構造がシンプルなのに、どうして割高になるのか、中西さんに聞きました。

  • 基礎工事と屋根工事により費用がかかる

建築費用の中でも特に費用がかかるのは基礎工事と屋根工事ですが、平屋の場合、基礎も屋根も、同じ延床面積の総2階建てに比べて面積が約2倍と広いため、よりコストがかかります。屋根は高い断熱性能が求められるので、その面積が広い分、断熱工事のコストもかかります。

 

さらに、地盤が軟弱で地盤改良工事が必要となった場合、平屋は基礎面積が広い分、コストアップになります。

  • 外壁面積は2階建てより小さいのに費用差がない

外壁の面積は2階建てに比べて小さくなりますが、水切り等、使用する金物が増えるので、外壁工事については2階建てとあまり変わらないコストになります。

  • 逆にコストが安い面も

屋根工事、外壁工事などの高所作業が2階建てに比べて少なく、費用がかかりがちな仮設足場が少なくて済みます。また、階段やバルコニーが不要なので、その費用もかかりません。

  • 平屋の建築費の目安は? 2階建てとどの程度違う?

平屋の建築費は同じ規模の2階建てと比べると1〜2割程度割高となっています。一般的な平屋は木造・2LDK・延べ床面積85m2(約26坪)といった規模が多く、建築費の目安は2,000万円前後です。

 

面積が広くなれば、それに比例してコストも上がります。逆に小規模になった場合は、建築の手間は変わらないため、安くなることはあまりありません。また、この目安費用は、一般的によく使われている建材や設備で想定した費用なので、クオリティの高いものを使う場合はコストアップすると考えましょう。

 

建築費用を抑えるためには、設計や間取り、設備をなるべくシンプルにするなどの工夫が必要となってきます。

 

平屋を建てる際に注意すべきなのはコストだけではなく、土地の広さにも気をつけなければいけません。基本的に平屋を建てるには、2階建てに比べて敷地がある程度広くなければ建てられないためです。

 

家族3〜4人程度なら、最低でも延床面積83m2(約25坪)程度以上の広さを確保したいところですが、その場合、必要となる敷地面積は、建ぺい率(※)50%の地域では166m2(約50坪)以上、建ぺい率30%の地域なら、約277m2(約84坪)以上が敷地の目安となります。

 

家族3〜4人ほどがゆったり暮らせる広さ、例えば延べ床面積120m2(約37坪)の家なら、建ぺい率50%の地域では240㎡(約73坪)以上、建ぺい率30%の地域で約400㎡(約121坪)以上が敷地の目安。広い平屋を建てるには、それなりの広さの土地が必要となります。

 

建ぺい率が50〜80%の地域では2階建て住宅が立ち並んでいることが多く、そこに平屋を建てるとなると、日当たりやプライバシーを確保するのが難しくなると考えられます。平屋を建てるなら、郊外や田園地域など、建ぺい率の低い地域で考えるのがよさそうです。

 

※「建ぺい率」とは…敷地面積に対する建築面積の割合。用途地域によって30〜80%と定められている。

参考:同じ広さの土地で建てられる住宅に違いがある!?建ぺい率と容積率を知る

最後に、平屋にはどんな間取りがあるのか見てみましょう。実際の図面を元に中西さんに暮らしやすい間取りについてのポイントを聞きました。

  • 3つの中庭で採光・通風とプライバシー確保を両立

十分な広さの敷地で隣地からの視線が気にならない立地なら、全面ガラス張りにしてたっぷりの開放感を得ることも可能ですが、住宅街の限られた敷地では隣地との距離が近いため、開口部の取り方に工夫が必要です。特にすべての空間がワンフロアにあり、窓も1階のフロアのみになるため、ウチとソトの繋げ方がポイントとなります。

 

規模が大きい平屋の場合は、家の中央部の採光や通風が確保しにくくなるので、平面をL型やコの字型にして奥行きを抑えたり、天窓や越屋根(大屋根の上につけた窓付きの小さな屋根)を設けたりする工夫が必要になります。

 

 

例えば上で紹介している間取りの家では、建物の一部を切り欠くように、外部と繋がる3つの庭・中庭をつくりました。採光と通風を得ながら、木格子で隣地からの視線を遮って、プライバシーと防犯性を確保。家の中央にあるLDKから3方向の屋外空間への連続性があり、視線が外へ自然と伸びるつくりとなっています。リビングには北側に高窓を設けて、安定した日差しも取り入れています。

 

また、広がりを感じられるよう、移動だけの空間である廊下をつくらないこともポイントです。個室と水回り空間はLDKから直接繋がっているため、生活動線も短く済み、家族間のコミュニケーションが取りやすくなっています。

 

左_玄関側外観はプライバシーを重視。右_リビングから「木の庭」を望む。外からの視線は受けず、明るさや開放感を得ています(画像/イン・ハウス建築設計提供)

魅力の多い平屋の新築を検討しているなら、コスト面やプラン面などの注意点を踏まえつつ、実際の平屋事例を複数チェックしましょう。下記URLなら、570軒以上もの施工事例から、プランニングのヒントが見つかるはずです。

 

参考:平屋住宅の施工事例一覧

 

まとめ

  • 平屋の建築費は、同じ規模の2階建てと比べて1〜2割コスト高になりやすい。
  • 平屋の建築費の目安は、木造・2LDK・延床面積85m2(約26坪)で2,000万円前後。
  • 平屋を建てるための土地は、延床面積83m2(約25坪)程度の家の場合、建ぺい率50%の地域で166m2(約50坪)以上の広さが必要。

お話を伺った方

中西ヒロツグさん

一級建築士、イン・ハウス建築設計代表。注文住宅の設計、一戸建てやマンションのリノベーション設計を中心に活躍。巧みなプランニングに定評があり、数々の建築賞を受賞。大手ハウスメーカーの技術顧問を務めるなど、同業者からの信頼も厚い。「大改造!!劇的ビフォーアフター」にリフォームの匠として8回登場。著書に『暮らしやすいリフォーム アイデアノート』など。

http://www.inh-arch.com

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