「安心R住宅(仮称)」について、国土交通省が発表している現段階での制度について解説していきます。この制度によりどのような中古住宅が市場に流通するのか気になるところです。「安心R住宅(仮称)」の枠組みや、メリット・デメリット、注意点などを解説していきます。

「安心R住宅(仮称)」は、2017年3月に案がまとめられたばかりで、制度の内容や運用方法はこれから決定されます。この制度は、中古住宅(既存住宅)の市場への流通を促進させるためのものです。
品質の不安や情報の少なさを払拭し、国が商標を付与することで、中古住宅を安心して購入してもらうことが目的です。中古住宅の情報が正確に購入予定者に伝わるのであれば、新築住宅にこだわらない方々にとっては役に立ちます。現段階の公表資料を参考に、もう少し詳しく解説していきます。(2017年8月31日時点)

 

「安心R住宅(仮称)」は、中古住宅を<br>安心して購入してもらうための取り組みです

「安心R住宅(仮称)」は、中古住宅を
安心して購入してもらうための取り組みです

空き家への対応の仕方をはじめ、国内の住居に対する取り組み方が少しずつ変化しています。少子高齢社会において、常に新しい住宅を作り続けてしまうと、既存住宅は使われなくなり、資源の無駄となります。なかにはまだ十分に住むことができる住宅もあり、既存住宅を有効活用しようという風潮が強くなっています。

 

ところで、中古住宅のメリットとデメリットはなんでしょうか。

■中古住宅のメリット■
・新築住宅に比べ、価格が安い
・注文住宅とは違い、住宅を見て決められる

 

■中古住宅のデメリット■
・物件によっては、古くて汚い
・リフォーム履歴など、選ぶために必要な情報が少ない

 

外壁や内装の欠損や汚れはリフォームすることできれいになりますが、住宅について詳しくない購入予定者にとって、住宅の品質が心配ではないでしょうか。
国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」によりますと、二十数年前と比べると中古住宅の流通シェアは増加していますが、立地条件の割に価格が安い中古住宅を見つけても、購入に至らない大きな理由になっていると考えられます。米国をはじめイギリスやフランスなどの先進国と比較すると中古住宅の流通シェアが圧倒的に低いことも制度創設の理由でしょう。

 

これまでの中古住宅のマイナスイメージを払拭し、要件を満たす住宅には国が「安心R住宅(仮称)」という商標を与えます。購入予定者はその商標をもとに安心して住宅を選択できる制度です。「安心R住宅(仮称)」の対象となる住宅の要件は、「不安」「汚い」「わからない」を払拭できているかどうかです。具体的には以下の通りとなります。

 

<「安心R住宅(仮称)」の住宅要件>

構造

・昭和56年6月1日以降の着工もしくは、耐震診断や耐震改修を実施済み

・ホームインスペクションを実施し、構造上の不具合や雨漏りがなく、既存住宅売買瑕疵保険が付保可能である

リフォーム

・事業者団体ごとのリフォーム基準を満たすか、参考価格などのリフォームプラン情報を提供する

・外装、主な内装、水廻りの現況の写真等を提供する

情報 ・事前に情報収集を行い、指定された項目ごとに情報の「有無」「不明」を明示する

出典:国土交通省『「安心R住宅(仮称)」及び住宅ストック維持・向上促進事業について』

 

例えば、構造上の不具合や雨漏りがなく、希望すれば既存住宅売買瑕疵保険を付保できる用意をしておかなければならないとあります。要件のなかには、「広告時点において」満たしていなければならないため、比較検討する際に必要な情報が増えると考えられます。

 

「安心R住宅(仮称)」は、現状の中古住宅市場の課題を解決し、安心して住宅を購入してもらおうとする制度です。これまで以上に中古住宅が購入しやすくなるのではと期待する反面、心配な点もあります。それは公表されている内容通りに制度が運用できるか、期待通りの情報が得られるかという点です。

 

日本が米国に比べ中古住宅市場が浸透しない理由として、過去の修繕履歴情報が蓄積されていないことが挙げられます。平成21年6月4日に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」で長期優良住宅は建築及び維持保全の状況に関する記録を作成し保全しなければならないことになっています。しかしこの制度の対象の多くは、昭和56年6月1日以降に着工した長期優良住宅です。特に所有者が何度か変わった住宅に関してどの程度、修繕記録が調査できるかが課題です。

 

過去の修繕記録を調査できるかが<br>大事なポイントになります。

過去の修繕記録を調査できるかが
大事なポイントになります。

購入予定者としては、事業者が収集すべき各項目で「不明」ではなく「有無」と記載されている物件から検討することになるでしょう。そうすると、今まで修繕履歴情報を重視して記録してきた事業者やしっかり調査している事業者に相談するのがいいのではないでしょうか。
「安心R住宅(仮称)」の対象となる住宅を提供する事業者団体の行う業務は以下の通りとなります。ご参考にしてください。

 

「安心R住宅(仮称)」の対象となる住宅を提供する事業者団体の行う業務

リフォーム基準の設定

従来の既存住宅の「汚い」イメージの払拭に質するリフォームの基準を定める

事業者が守るべきルールの設定 商標の使用に関して事業者が守るべきルールを定める
事業者の審査、指導、監督 商標の使用を希望する事業者に対して審査・許可し、指導、監督を行う
相談業務 購入検討者等が相談できる窓口を設置し、本制度に係る相談業務を行う
運営状況等の報告 商標付与の実績等の制度の運営状況及びその評価等について、定期的に国へ報告する

出典:国土交通省『「安心R住宅(仮称)」及び住宅ストック維持・向上促進事業について』

「安心R住宅(仮称)」は、国が要件を満たす団体事務局(事業者団体)に商標の許可を与え、団体事務局(事業者団体)の指導・監督のもと、不動産会社(事業者)が広告販売時にその商標を使用することができるというものです。

 

事業者団体ごとに、リフォームの基準やルール、指導や監督の程度が異なるため、安心できる事業者を選びましょう。また相談業務として窓口を設置しなければなりませんので、相談サービスを利用しながら事業者を選ぶといいでしょう。

 

相談窓口でどの事業者がいいかなど<br>
相談してみてもいいでしょう。

相談窓口でどの事業者がいいかなど
相談してみてもいいでしょう。

国土交通省『平成28年住宅市場動向調査』「比較検討した住宅」によりますと、中古戸建住宅を購入した世帯は、購入時に中古戸建住宅のみに絞った人が75.7%、分譲戸建住宅との比較検討者は39.0%、注文住宅との比較検討者は15.2%、となっており、最初から中古戸建住宅に絞っている人が多いと考えられます。

 

一方、新築の分譲戸建住宅を取得した世帯は、購入する際、新築分譲戸建住宅のみからの検討者が70.3%、中古戸建住宅と比較検討した人が25.6%、中古マンションと比較検討した人が11.9%となっており、こちらも、新築に絞っていることが見てとれます。

 

今回、「安心R住宅(仮称)」制度が浸透すれば、新築や中古の区別なく周辺環境や設備、通勤・通学環境など生活環境に重点を置いた住宅選びがしやすくなるかもしれません。これから住宅を購入しようとされている方は、この制度について詳しく調べてみてはいかがでしょうか。

 

●まとめ●
・「安心R住宅(仮称)」制度が開始される。
・一定の基準を満たす事業者や住宅に国の商標が付与される。
・修繕履歴情報についての記載があり、購入時の判断材料となる。

 

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