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寛容社会 多文化共生のために<住>ができること

日本に暮らす外国人(在留外国人)は、2016年6月末に過去最多となる231万人を記録し、外国人労働者も2016年にはじめて100万人を越えました。しかし、「外国人不可」の賃貸住宅の存在や、連帯保証人という日本独自の慣行など、住まいという生活の基盤を確保するにあたって外国人が直面するであろう問題はまだ多数あります。また一方で、日本社会には、ベビーカー論争や様々なネット炎上にみられるように、少数派や異なる価値観を排除したり、些細な失言を徹底的に攻撃する不寛容が広がっています。LIFULL HOME'S総研では、こうした社会の不寛容化は、外国人を排除しようとする態度とも通底しており、外国人にとって暮らしやすい社会は日本人も暮らしやすい寛容な社会であるとの仮説に基づいて「寛容度調査」を行いました。

2017.04.19

深夜のポジティブ

たまたま入った盛り場近くのコンビニで、レジの向こう側にいたのは、耳慣れない響きの名前の、若いアジア系女性だった。アジア系にしては色白だと思った。指定したタバコの銘柄が棚に切れていたのでバックヤードまで探しに行って、小走りで戻って来た。

「申し訳ございません。あいにくソフトパックは切らしていました。ボックスならございますが、いかがでしょうか?」

驚いた。敬語も完璧だ。幸い後ろに並ぶ客もいなかったので、日本語がとても上手ですねと、話しかけてみた。

化粧っ気のない滑らかな肌の顔がほころんだ。彼女は、都内の大学でソーシャルビジネスの勉強をしているベトナム人留学生だった。流暢な日本語は、一応大学入学前に日本語学校にも通ったが、もともと「名探偵コナン」が好きで独学で身につけたところも大きいと言う。卒業後は日本で実践を積み、いずれ母国で環境系の事業をやりたいのだそうだ。今は経済成長で精一杯のベトナムも、すぐに環境意識が高まるはずだと彼女はみている。「あ、でも。ひょっとしたらアメリカの大学に行くかもしれません」と最後に付け加えた。

頑張ってねと声をかけて店を後にして、タクシーに乗り込んだ瞬間にふとある感覚が蘇ってきた。

前職を辞めた後、暇を持て余していた私は、バンクーバーのダウンタウンにコンドミニアムを借りて、4週間の短期コースで語学学校に通っていた。語学学校では、テストの成績で振り分けられたクラスに生徒が10人ほどいて、そのうち6人くらいは日本人と韓国人と中国人のアジア勢で占められ、残りは中南米や中東からの学生だった。ほとんどが20代前半の若者たちである。

全員に詳しく聞いたわけではないが、母国で多少なりとも挫折を経験した子が多かったように思う。希望の大学に入れなかった韓国人。就活に失敗した日本人。あるいは、このまま卒業してもいい就職はできそうにない専門学校生。留学で箔をつけたい中国人。もっと良いポジションに就くためには英語が必要なブラジル人。日本の美容室の勤務がハードなわりに給料が安いので、海外に新天地を求めて来た美容師もいた。国費で援助されて来ているサウジの若者も、国の同年代の中で順風満帆なエリート人生を歩んでいるようなタイプには見えなかった。

しかし彼らの多くには、共通する好ましい傾向があった。それは、留学によって逆転勝利のきっかけを掴もうとしている、とでも言うべき基本的にポジティブな姿勢だ。これまでの自分を変えたい、人生の可能性を広げたい、そして自分の未来をより良くしたい。強烈なハングリー精神を感じるほどではないものの、世界中から集ったポジティブなモチベーションが、小さな教室を満たしていた。(PROLOGUEより)

文:LIFULL HOME'S 総研所長 島原万丈

報告書

全データ

報告書全体(71.2MB)

各章データ

  1. PROLOGUE(3.8MB)
    1. LIFULL HOME'S 総研 所長 島原万丈

  2. INTRODUCTION(6.6MB)
    1. 在留外国人増加の実態

      株式会社アンド・ディ 取締役 橋口理文、奥田理

    2. 多文化主義の現在と今後の日本

      早稲田大学 文学学術院准教授 田辺俊介

  3. RESEARCH(26.4MB)
    1. 寛容度調査分析レポート

      株式会社アンド・ディ 取締役 橋口理文、奥田理

  4. TALK x TALK Part01(2.3MB)
    1. ”違い”よりも”同じ”を見つけよ 出会いが育てる多文化共生

      国士舘大学 文学部 教授/博士(社会学)鈴木 江理子

  5. REPORTS(10.0MB)
    1. OUTLINE

      外国人定住者との共生を探るー外国人集住地域の取材を通して見えたことー

      慶応大学 政策・メディア研究科博士課程 小野有理

    2. 01 神奈川県・県営いちょう団地

      画一化が進む現代社会で、多文化によるまちづくりの実践/実験を行う

    3. 02 埼玉県・川口芝園団地

      高齢化などの日本の課題を外国人との共生を契機に解決する

    4. 03 東京都・西葛西

      同胞ニューカマーを受け入れ日本に根づかせたパイオニア

    5. 04 東京都・新大久保

      増え続ける在日ネパール人社会のコミュニティとネットワークをつくる

      フリーランスリサーチャー 田中沙季、ライター・編集者 深澤晃平

    6. 05 北海道・ニセコ

      外国人が発見し、国際リゾートになったニセコ

      ライター 田方みき

    7. 06 不動産会社の取り組み

      賃貸住宅と外国人居住者、模索と問題点

      株式会社 東京情報道 中川寛子

  6. TALK x TALK Part02(2.4MB)
    1. 反グローバリズム時代のクールジャパン的 外国人材活用とは

      A.T.カーニー日本法人会長 梅澤 高明

  7. ESSAY(6.0MB)
    1. Open the Door:日本は誰に扉を開けばいいのか?

      日本大学スポーツ科学部教授・マサチューセッツ工科大学不動産研究センター研究員 清水千弘

    2. アメリカがあった街

      劇作家 石神夏希

  8. EPILOGUE(4.5MB)
    1. LIFULL HOME'S 総研 所長 島原万丈

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