【月刊ニシアワー11月号】月夜茸と夜の森
読むための所要時間:4分
秋の森で怪しく緑に光るきのこがあります。それはツキヨタケ。
西粟倉の原生林でもちょうど紅葉のピークに合わせてツキヨタケを見る事ができると聞いて、探しに行ってきました。
ツキヨタケ探検隊
光るツキヨタケを見られるのは、夜の原生林。つまり、真っ暗な森の中です。ひとりで行くには怖すぎるため「ツキヨタケ探検隊」を結成。先輩や友達に声をかけ、夜8時の森へと向かいました。
夜の森の暗さといったら、部屋で電気を消すのとはわけが違います。人家も街灯からも遠く離れて木々に囲まれたそこは、人工の光が全くない真っ暗な空間です。ありったけの懐中電灯と1人1つのヘッドライトを持って、森へと向かいました。
予想はしていたものの、森の入り口で車のライトを消すと、驚くほど暗い。持っていたライトもみんなで一斉に消してみると、今までに経験したことのない、身動きがとれないほどの暗さです。本当の「真っ暗」を知った気がしました。
「獣の臭い」を感じるのです
暗いだけでも怖いのに、いざ森に入るとさらに怖さは増します。昼間には何度も通ったことのある遊歩道で、今までにないくらいに「獣の臭い」を感じるのです。夜行性の動物が活発に動いているからなのか、近くにいるのか、暗くて何も見えない分私の嗅覚が研ぎすまされてしまったのか?理由はわかりませんが、とにかく森を歩いている間、獣の気配は消えることがありません。「この暗闇で、いきなり熊に襲われたらどうしよう・・・」と、熊よけのために身につけた鈴を必要以上にリンリン鳴らしながら歩きました。
肝心の探検隊の成果はというと、時期を過ぎてしまっていたらしく残念ながらツキヨタケを見ることはできませんでした。暗さと獣の気配に、「ここはヒトのテリトリーじゃない。」と強く実感できた探検でした。リベンジは来年の秋。またみんなで夜の森に見に行きたいと思います。
田舎の夜は怖い
この日、夜の森を1時間ほど探検して帰宅すると、ガレージの前にはタヌキが2匹。そして玄関先では3頭のオス鹿が出迎えてくれました。里に降りてくる獣が増えすぎていることは全国どこの農村でも問題になっていますが、西粟倉も例外ではありません。田舎の夜は、都会の夜とはまた違った意味で、怖いのです。
私は今この村で平屋を借りてシェアハウスをしていますが、1ヶ月ほど、5部屋もあるこの広い家に1人で住んでいました。
なんといっても怖かったのが、家にいても感じる獣の気配。今では慣れて笑い話にできますが、1人で暮らし始めた頃は信じられない現象の連続に毎晩怯えていたものです。1人で家にいるはずなのに、そこらじゅうから(しかも暗闇から)物音が聞こえてくるのです。
ダダダッ、ガサガサ、カカカッ、ザザーッ・・・
音がするのは、庭、天井、床下。つまり家の周りも上も下も、やっぱりそこらじゅうから聞こえてくるのです。あくまでも私の予想ですが、家の周りの音は、裏山から鹿がダダダッと降りて来て庭の草をガサガサと食べ歩いている音。もしかしたら猪や猿なんかも来ているのかもしれません。上から聞こえてくるのは、たぶんテンやイタチなどの小動物がカカカッと爪を立てて走り、ザザーッと壁を伝って庭へ降りて行く音。床下でゴソゴソしているのはタヌキかネコくらいだと思います。あまり考えたくないですが、熊が柿をとりに来ていたりもするのかもしれません。
こうして書き並べてみると、なんてところに住んでいるのだろうと思います。サファリパークです。猪や熊に襲われないように、これからもなんとかうまく暮らしていけたらと思います。
田舎で暮らすということは
大袈裟なようですが、やっぱり田舎の広い家に1人でいるというのは、想像以上に怖いものです。そして寂しい。
寂しさに関しては昼間でも言えることで、ここでは多くの若者がしている1人暮らしのスタイルが、成り立ちません。お庭があって、畑があって、家と家との間隔は広くて、家の裏には山がある。1人でいると寂しいのは当たり前です。家族みんなで、里のお手入れをしながら日々を丁寧に暮らす。やっぱりここは、そういうところなんだろうなあと、改めて思います。
まだ始めたばかりの田舎暮らしに、戸惑う事はたくさんあります。
でもこれから、「人が、森の生きものの一員となり、森の時間に寄り添って暮らす。」そんなニシアワーな暮らしをゆっくりと体現し、この連載でもお伝えしていけたらと思います。
● 月刊ニシアワーよりお知らせです

冷え込みの厳しい仮設住宅に、暖かい無垢床を。贈り主を募集しています。
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レポーター :
熱田尚子(株式会社 西粟倉・森の学校)

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