2011.08.18
【月刊ニシアワー8月号】森を育ててきた人
読むための所要時間:3分
西粟倉村には、森の時間に寄り添い、世代を越えて想いをつなぎながら暮らしてきた人たちがいます。50年後の未来にも残したい、時間の流れと暮らし方。おじいちゃんから受け継いだ山を孫のために育ててこられた山主の延東さんに、どんな風に森を育ててきたのかを聞いてみました。
木を植え育ててきた西粟倉村民の一人、延東義太(えんどう・よした)さん。
延東義太さんは、西粟倉を代表する山主の一人です。延東さんはおじいちゃんがすごく山に熱心な方で、お父さんが早くに亡くなられて一代飛び越えて山を引き継がれました。子供の頃から囲炉裏端でこんこんと山の話をおじいさんから聞かされて育ってきて、気がついたら自分も一生懸命山を育てていたそうです。
山の手入れは手間がかかる。
延東さんの山にあるスギは、延東さんが中学生のときにお母さんやおじいちゃんと植えたものだそうです。今やっと60歳。自分が植えた木は、自分の子どもの世代でもまだ小さくてどうしようもないのだとか。だから、孫に託して孫にその気があるなら伐ってお金にする、という気持ちで育ててきました。
木は人間の子どもと一緒。
と延東さんは言います。良い木に育てていくためには丁寧にお世話をしていかなければならないのです。植えてからまず10年はずっと下草を刈っていきます。下刈りをしたら今度は、上がって枯れた枝を落とす枝打ちという作業があります。1本ずつ丁寧に、5年に1度は枝打ちをしなければいけません。木が成長してからも、間伐という、段階的に木を間引いていって森へしっかり光を入れていく作業をしないと、良い木は育たないのです。
山の手入れは何十年、何百年単位の手間のかかる作業です。しかも、山1つの膨大な面積を管理するには人を雇わなければならず、お金もかかるのです。それでも延東さんは「次の世代に残せるもんを残しとんじゃから、まあええわな。」と手入れを続けておられます。家族を大切にする想いと重なった、森へのこの想いが、立派な森を育ててきました。西粟倉村には、こうして大切に育てられてきた森がたくさんあるのです。
受け継いでいくべき想いやかたち。
前の世代の想いを受け継ぎ、次の世代へつなげる。そうは言っても、前の世代の想いがどんなものだったのか改めて考える機会というのは、普段の生活ではあまり無いように思います。今月は、ご先祖様のことを考えるのにちょうど良い季節でしたね。ご先祖様が帰ってくるといわれるお盆、みなさんはどう過ごされましたか?
西粟倉のお盆には、ご先祖様を敬う村独自の行事があります。15日の朝、川で石を積みその上にお供え物を供え、お盆に帰ってきたご先祖さまを河原でお見送りします。「ごりんさん」と呼ばれるこの行事、護岸工事がされてしまってハシゴをかけないと降りられないような河原で、今でもおじいさんおばあさんたちが続けておられるそうです。私はまだ実際に見たことがないのですが、村の人に「ごりんさん」のことを聞くと、当然のように毎年やっていると答えられます。降りやすい河原は早い者勝ちなのだとか。お話を聞いていると、この村ではご先祖様の存在がとても身近な存在なのかも、と思います。
このような伝統行事も、現代の多くの家ではだんだんと簡略化されてきてしまっているのではないかと思います。でもやっぱり、このようなご先祖さまや家族を大切にする想いやその伝統は、次の世代に受け継いでいくべき尊いものだと感じます。そして、その気持ちはそのまま、林業にもつながると思うのです。林業はまさに、世代を越えて想いをつないでいくものです。山を育てること自体が、想いをつなぐことになるのです。延東さんは、おじいちゃんから受け継いだ山を、孫のためを思って手入れを続けてこられています。
おじいちゃんに、
「尚子の家はうちのヒノキで建つぞ。」
と言われたことがあります。
実は私も、山主予備軍。でも現状はというと、おじいちゃんもお父さんも、もう山には入っていません。このまま放っておくと、ずっと昔にヒノキを植えてくれた、顔を見たこともないおじいちゃんの想いを、つなぐことができません。私は今度、おじいちゃんに山を見せてもらう約束をしています。西粟倉へ来て、ずっと丁寧に森作りをされてきた山主さんのお話を聴いて、自分の代でバトンを絶やすことをしてはいけないと思ったからです。
森の成長は何十年、何百年もかかるもの。自分が植えた木を自分で伐ることはありません。それでも、前の世代から次の世代へ、森に流れる時間のスパンの中でバトンを渡してきました。これからも、このバトンをつないでいくべきなのです。世代を越えて想いや技術をつないでいく。これが、森の時間に寄り添う暮らし方なのかもしれません。
レポーター :
熱田尚子(株式会社 西粟倉・森の学校)

人が、森の生き物の一員になり森の時間に寄り添って暮らす。
季節がめぐる、命がめぐる、ぐるぐるめぐる。ニシアワー。
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