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2011.09.15

【月刊ニシアワー9月号】伐旬 森の時間に寄り添う暮らし

読むための所要時間:4分30秒



伐旬。なんて読むかわかりますか?これは、「きりしゅん」と読みます。
私はこの村に来るまで、伐旬という言葉を聞いたことがありませんでした。伐旬とは文字通り、木を伐る旬のことです。木を伐るのに旬なんてあるの?と、多くの人は疑問に思うかもしれません。私が初めて聞いたときには、その理由と厳格に守られてきた事実に感動したことを覚えています。

伐旬がある理由
日本の田舎では、伝統的に伐旬が大事にされてきました。田舎では常識で、秋から冬にかけて木を切るということは決まっていて、田舎のおじいさんおばあさんはみんな知っています。この村で山主のおじちゃんと話をしていると、会話の中で自然と「伐旬」という言葉が出てきます。何も知らなかった私は、夏に「木を伐るところを見せてください!」とお願いして、「今は旬じゃねえけぇ、伐らんぞ。」と言われて不思議に思ったことがあります。

スギやヒノキは冬もずっと葉っぱをつけていますが、秋以降はほとんど成長が止まってしまうんです。春になって光合成が活発になってくるとたくさんのデンプンがつくられて、カビとか虫にとってはご飯がいっぱいあるという状態になります。だから、そういう時期に切ってしまうと虫やカビにやられてしまって、木がすぐにだめになってしまうんです。これが、秋から冬にかけてしか木を伐らないようにしていた理由です。



伐旬を守れなくなった社会
近年、日本の農山村でもこの伐旬を守れなくなりました。大量生産型の大きな製材所は、大きな設備投資をしてそれを上回る売上を上げ続けないといけない。つまり一年中ずっと工場を動かし続けて稼働率を最大に引き上げないと赤字になるそうです。だから自然のペースにあわせて仕事をするなんていうことが通らなくなってしまいました。自然の持っているサイクルを無視しないと成り立たない、不自然な社会になってしまっているのです。

地域で大切に育てられた木を、自然のサイクルの中で最大限に大切に使う。そんな時間の流れを、今もう一度見直すべきなのではないでしょうか。


森の時間に寄り添う暮らし
伐旬は、暦で言うと秋のお彼岸から春のお彼岸までの期間を差します。生態系のサイクルの中に人の暮らしが溶け込んでいたころ、この期間に山の仕事をするというのは、とても自然なことでした。

9月下旬、稲刈りが終わると田んぼの仕事は一旦落ち着きます。秋祭りをしてねぎらい、寒い時期の仕事に備えます。山の様子を見ると、広葉樹の葉っぱは冬に落ちてしまいますし、下草も苔も枯れてしまいます。光が差し込み、雑草も少なく、人がとても入り易い環境になるのです。だから、冬は林業。伐採後の木のコンディションの面でも、仕事の効率の面でも、林業は冬のお仕事ということが頷けます。また、山仕事にもいろいろありますが、椎茸を栽培するほだ木も、暖をとるために使う薪も、この頃に切ります。見通しも良くなるので、猟も始まります。森の時間が流れる村で、生態系のサイクルに寄り添い生産活動をしてきたんです。



人が生態系のサイクルの中に組み込まれていた時代は、そんなに昔ではありません。数十年前にはまだそんな生活があったと言います。当時は山師みたいな山のお手入れ専門職で稼ぐ人もいたし、そもそも木の値段が高かったので、立派な木を数本伐れば、嫁入り道具を買うお金や学校へ行くお金を捻出できたそうです。私のご近所に住む84歳のおじちゃんも山主さんなのですが、「6人兄弟だったけど、木を売ってみんなの学費にしたんじゃ。全員が大学に行くことはできんかったけど、山があったおかげでみんな食べていくことができたんじゃ。」と話してくれたことがあります。


いま、森の時間に寄り添って暮らす
今の時代にこんな暮らしをしている人はそうそういませんが、今でも全く伐旬を守れないというわけではありません。西粟倉村でも、柱や構造材など何十年何百年と永く使われるものは、今でも伐旬を守って伐られています。

また、失われたつながりや伝統をすべて取り戻すことはあまり現実的では無いかもしれませんが、今でもその大切さを知ることはできます。ニシアワーでは、お客さまに伐旬について知って頂き、実際に体験ができるツアーも企画しています。お家の大黒柱を自分で選んで伐旬の時期に伐るというツアーや、伐旬の時期に木を伐るところから始まる学習机をつくるツアーなどです。森に寄り添う時間の中で、自分でものをつくることで、見えてくることがあるかもしれませんね。

森も人も元気な、自然のサイクルに寄り添った暮らし。
そんな暮らしを、ニシアワーからお届けします。


ヒノキの学習机づくり体験ツアー
大黒柱伐採ツアー


レポーター : 熱田尚子(株式会社 西粟倉・森の学校)






人が、森の生き物の一員になり森の時間に寄り添って暮らす。
季節がめぐる、命がめぐる、ぐるぐるめぐる。ニシアワー。

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