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【五感で楽しむインテリアの知恵】 おもてなしのしつらえ

【五感で楽しむインテリアの知恵】おもてなしのしつらえ


おもてなしのしつらえ

わが家には、度々仕事仲間や友達がご飯を食べにやってきます。約束をする時には、なるべく半日仕事がない日を選びます。料理を作るのはもちろんですが、散らかっていた部屋を片づけ、さぼっていた掃除をするのに少し時間がかかるから。
特別なことをする訳ではありませんが、自宅を「おもてなし風」にしつらえるには、いくつかのポイントがあるように思います。

img_01 雑誌の「おもてなし」特集では、テーブルセッティングや、花の飾り方など、プラスする技だけが紹介されています。
でも、本当に必要なのは、普段の生活感をリセットすることなのではと思います。すべてをピカピカに整える必要はないけれど、こんなことを準備して、こんなしつらえをすればきっと気持ちよく過ごしてもらえるはず。

そんな知っているようで知らない小さな工夫が、皆さんの参考になればと思います。

簡単掃除から始まるおもてなし

おもてなしの日。お客さまがいらっしゃる前に、まず一番にすることが玄関の掃除です。いつもきれいにしておけばいいことなのですが、なかなか手が回らなくて。

img_02 とりあえず玄関に並べっぱなしになっていた靴をきれいに片づけ、ほうきでささっと掃き掃除。
取材で訪れた家で、時々、玄関にその家の人の靴がずらりと並んでいることがあります。しまう場所がないから仕方ないのかもしれませんが、履き古した靴は、本人は気にならなくても、他人には意外に不快なものです。
もし、しまいきれないなら来客時だけでも別の場所に隠す。そんな心がけがお客さまを迎える心を伝えてくれるのはないかと思います。

掃除が終わったら、夏はお客さまが到着する少し前に外に打ち水をします。水は「清らかさ」を感じさせてくれるもの。きれいに掃き清めたところへ水を打つ。これだけで、「ようこそ」という気持ちを表してくれます。

img_03 玄関が終わったら、次に洗面所の掃除を。
もしかしたら洗面所なんて使わないかもしれないけれど、「ちょっと手を洗わせて」ということは、あるかもしれません。

そんな時、リビングはきれいなのに、水回りが汚かったら、おもてなしが台無しに。たださっと洗面ボウルを洗うだけ。それだけでも、きちんと感を演出できます。
そして、客用のタオルを人数分小さなかごに用意しておきます。

ついでに、トイレのタオルも取り替えて。トイレで手を洗った時、そこにあるタオルがなんとなく湿っていたら気持ち悪いもの。洗い立てのパリッとしたタオルは、どんな飾りよりも大切だと思います。

img_04 わが家では、リビング代わりにしている和室に添って縁側があります。訪ねてきた方は、この昔ながらの廊下が珍しくて「わあ~」と喜んでくれます。縁側から庭を眺めることが多いので、窓ガラスもきれいにしておきます。ここまで手が回らないときは、うちでは連れ合いがこの役目を引き受けてくれます。

時々時間がなくて、さあ一緒にご飯にしましょうとテーブルにつき外を眺めた時にガラスが汚れていると、ああ、やっぱり拭いておけばよかったと後悔するのです。

来客1時間前に

掃除が終わったら、次に小さな花を生けます。買ってきた花もいいものですが、できるだけ庭の花を挿します。
庭の草木は、驚くほど季節の移り変わりを告げてくれます。6月になると、紫陽花の花が青や紫にいろづき始めます。微妙な色合いの花びらはしっとりした梅雨にこそ似合う色。
そんな季節の変わり目をダイレクトに教えてくれるのが庭の自然。花屋さんの花ほど派手ではないけれど、そんな自然そのものを生けることで、その時期だけのしつらえになるはずです。

img_05 そして約束の時間の1時間前から、お香をたきます。
家には、暮らしている人は気づかない生活の匂いがこもっています。それを消し、かつ目には見えない香りで、「ようこそ」の思いを告げるのが目的です。

ただ、料理をいただく場では、お香の匂いはきつすぎるので、玄関に。ここから自然に風にのって、部屋まで香りが流れてくるようにします。

そしてトイレにも。私は寝室にも必ずお香をたきます。寝室に直接誰かが入ることはありませんが、実は一番生活の匂いがこもりやすい場所なのです。3カ所にお香をたいているうちに、料理の最後の仕上げに取りかかります。

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会話も大切なおもてなしの要素だと思います。気の合う仲間だけならば、最初からワイワイ盛り上がりますが、時には友達の友達、という人が一緒に来てくださることも。そんな時、自己紹介をしたら、後の会話が続かなくて……。
そんな気詰まりを少しでも和らげたいと、部屋の端っこに、会話の糸口になる「しかけ」を施しておくこともひとつの手。たとえば、最近買った小物を並べておきます。「わあ、これどこで買ったんですか」「これはね……」といった具合に、会話が始まります。
または、行こうと思っている展示会や個展のDMをかごにまとめておく。「あ、これ私も行きたいと思っていたんです」「こんな展示会があるんですね」とおしゃべりが弾みます。

共通する興味を探すこと。その助けをしてくれるのが、カンバセーションピースです。
音楽が好きな人なら好きなCDをかけておくのもいいし、読書が好きな人なら、最近読んだ一押しの本を立てかけておいても。

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お客さまが到着したら

まずは最初にお茶を一杯。寒い季節なら温かいものを。夏なら冷たく冷やした飲み物を。私は大抵コーヒーや紅茶でなく、番茶を出すようにしています。コーヒー党、紅茶党とどちらかわからなくても、番茶ならみんな飲めるはずだから。

img_08 このお茶に小さな甘いものを添えることも。
でも、後にご飯を食べる場合は、あまりお腹にもたれるものは避けます。一番のおすすめはお干菓子。季節をちょっと先取りして店頭に並ぶお干菓子は、目にもとても美しいものです。

初夏には燕子花や水しぶきなど。盛夏にはすいかや風鈴。ひと口甘いものがあると、食事の前のひとときをちょっとゆっくり目に過ごすことができます。

img_09 お茶と一緒に出すのがおしぼりです。
これも冬は熱湯につけ、アツアツにして、夏は水で絞ってから冷蔵庫に入れてき~んと冷やして。タオルでもいいのですが、私はてぬぐいを使っています。かさばらず小さく出せるのと、手ぬぐいの色や柄で季節を演出できるから。

この時、自分も座っておしゃべりに加わるのが大事です。
料理を準備している場合、最後の仕上げをするために、お客さまがいらしても「ちょっと待ってて」と言って、台所にこもってしまいがち。

そうすると、リビングにお客さまが取り残されてしまいます。段取りよく進むことより、ちょっとぐらい遅くなっても、きちんと顔を見て話す時間がとても大事だと思います。

食事のしつらえ

わが家は普段テーブルには、クロスを敷かず、ランチョンマットを使っていますが、来客時だけはテーブルクロスを敷きます。和食の時は麻のシンプルなクロスを。エスニックの時は、ざっくりとした織り目の布を。お茶なら花柄やチェックの布を使うこともあります。
テーブルクロスは、専用のものを買わなくても、生地屋さんで見つけた布で十分だと思います。

img_10 高価なテーブルクロスを1枚持っているよりも、自分のテーブルのサイズに合わせてカットしたいろいろな布を持っていた方が、季節や料理に合わせてかけかえて楽しむことができます。
ちょっとこだわりたいなら、ビンテージの布や、手織りのもの、海外のテキスタイルデザイナーの布などを少しずつ集めておくといいと思います。
たかがテーブルクロスですが、広い面積をしめるので、その印象は意外に強いものです。

img_11 テーブルクロスと一緒に必ず用意するのが、小さめのナプキンです。これは、膝においてもらうためのもの。わが家は畳に座って食べるスタイルなので、ミニスカートの人もこれがあると安心。食べこぼしなども気にならなくなります。

そして、汚れた手や口のまわりを拭くために、紙ナプキンも用意しておきます。最近では、北欧のきれいな色、デザインの紙ナプキンなどが出回っているので、見つけた時に買い置きしておくといいと思います。

箸置きも必ず用意します。使いかけの箸をテーブルクロスの上に置くと汚れがつくのを気にしないといけません。余計な気を使わせないためにも、箸置きはあった方がいいと思います。

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器のしつらえ

わが家では、普段のご飯もおもてなし料理も、大抵が大皿で出して取り分けて食べるスタイルです。
各自小皿に取って食べてもらうので、汚れたら新しいお皿とすぐに変えられるよう、小皿は多めにテーブルの端に用意しておきます。グラス類も同じ。ビールを飲んでから、ワインや日本酒を。好きなお酒を飲めるよう、大小のグラスもトレイにのせてひとまとめにしておきます。

img_13 大皿料理が基本ですが、前菜だけは、思いっきり小さな器で銘々に用意します。
マリネや和え物などを、ちょこっと盛りにして、まずは乾杯して前菜を。ゴマ和えや、マヨネーズであえた魚介類など、どんなに簡単なものでも、大皿に盛って出してもいい料理をその人だけの器に盛りつけてサーブすれば、ちょとだけ特別感が感じられます。

img_14 その後ど~んと大皿で次の料理を。
このメリハリがたいして手の込んでいない普通の料理でも、ドラマティックに見せてくれます。

大皿は、料理に対して「ちょっと大きすぎない?」と感じるほど、ビッグサイズにすることがおすすめ。まわりに空間があり、中にこんもり盛りつける方がおいしそうに見えるし、ご馳走に感じます。
陶器の器だけでなく、揚げ物をかごやザルに盛ったりと、素材の変化をつけると、食卓の上にコース料理のような流れが生まれます。

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img_16 こうして楽しく食事をして、お客さまが帰る時には、小さなお土産を用意しておきます。これは、わざわざ買わず家にあるものにすることがポイント。料理を作ってその上何かを買ってまで用意してしまうと、かえってお客さまの気持ちの負担になってしまうから。あくまで「おまけの気持ち」程度に。

私がよく用意するのは、その日お出しした紅茶の葉やコーヒー豆を小さな袋につめてリボンをかけてお渡しする方法。この他、最初にお茶に添えたお干菓子だったり、時には料理に使ったスパイスをお裾分けすることも。

思いがけない小さなプレゼントは、その日の思い出ともなるのではと思います。

家に誰かを招く時、前日までは、「やっぱり仕事が忙しいのに、やめておけばよかったかな~」などと気が重くなることもあります。でも当日、掃除をしたり、花を生けて準備を始めてしまうと、とたんに心がウキウキし始めます。そして、楽しくおしゃべりして、食べて、お客さまが帰ってしまった後、洗い物をしながら、「また誰かを呼びたいな」と思ってしまいます。レストランでなく、自宅で一緒にご飯を食べることは、何かが違うひとときのような気がします。

そして、お客さまを招くことで、自分の暮らしを見直す機会にもなります。私にとって、おもてなしは、同じことの繰り返しの日常の中で、別の視点で生活を見つめる時間なのかもしれません。


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【筆者プロフィール】
一田 憲子(いちだ のりこ)

OLを経て編集プロダクションへ転職。数年後にフリーの編集・ライターに。インテリアを中心に、暮らしまわりのテーマを手がける。著書に「扉をあけて。小さなギャラリー」、「仕事と暮らし ふたつの鍵を手にしたら」、「一田食堂」、「彼女たちの年齢革命」(すべて主婦と生活社刊)など。自他共に認める道具好き。仕事をしているのか?道具屋巡りをしているのか?日本全国を飛び回る日々を送っている。
http://ameblo.jp/ohesono-sukima/

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