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地球のために、自分のために 住まいとエコ

「建築は第3の皮膚」? 快適に暮らせる健康住宅をデザインする「バウビオロギー」

シックハウス症候群や化学物質過敏症など、住まいと密接に関係した疾病が増えるにつれて、健康的な住環境への関心が高まっています。ここでは建築生態学(バウビオロギー)にもとづいた住宅を紹介します。

スイス発祥のバウビオロギーの考え方

科学的に考える「健康的な住まい」

ここ十数年、天然木やしっくい、天然由来塗料などの自然材料を多用し、人工的な化学物質をできるだけ使用しないいわゆる健康住宅への需要が高まっています。また冷暖房のエネルギーを太陽熱や地熱などの自然の力を利用する住宅も話題となっています。

それら個々の技術や健康住宅のあり方・考え方を繋ぐ体系的な思想として、また実際のプランを考える上で、「バウビオロギー」という思想が注目されてきています。一世紀以上前にスイスで生まれたこの思想は、「健康な住まいを求める新たな学問」で、建築を「第3の皮膚」と考える点が象徴的です。

エコなポイント バウビオロギーとは?

建築生態学。健康な住まいを求める新たな学問のこと。スイス発祥。

≪特徴≫
  • 建築を「第3の皮膚」と考える
  • 建築が人に悪影響を与えて病気を引き起こすのを防ぐ
  • 建築によって健康状態を高める
  • 社会や地球環境に対して建築はどうあるべきかを考える

第2の皮膚である衣服が濡れたままでは風邪を引く。同じように、建築が人に悪影響を与えれば人は病気になります。そうならないためにどうするか。さらにより健康状態を高めるには建築はどうあるべきか。これがバウビオロギーの考え方の基本です。また、範囲をより広く、社会や地球環境に対して建築はどうあるべきかという点も、思想の両輪として重視しています。

日本での認知はまだまだこれからですが、まさに「住まいとエコ」を考える上で、根本的な視点を提供してくれる思想かもしれません。

バウビオロギー25の指針一覧表
1.建設敷地を吟味する 2.工業地帯の中心や幹線道路から住居地をはなす
3.緩やかに分散した建築の風景、緑あふれる都市計画 4.自然とむきあう、個性的で人間的な住環境とは
5.自然建材を適材適所に 6.周壁面は呼吸できるように
7.室内の湿気を吸放湿性のある建材によって調整する 8.空気中の汚染物質を、建材の吸着性によって無害化する
9.断熱、蓄熱のバランスを 10.室内空気温度と周壁面温度のバランスを
11.太陽エネルギーを有効利用しつつ、放射熱による暖房を 12.新建築物件の湿気と建材の乾燥
13.心地よい室内の匂い、有毒ガスを放出しないこと 14.色彩、照明、自然採光のバランスを
15.遮音、振動の検討 16.高い放射能を示さない建材を用いる
17.自然の大気電場を保持する 18.自然地場を歪めない
19.人工の電磁場をひろげない 20.生命に必要な宇宙的・地上的放射線を変えない
21.空間造形のための生理学的認識 22.調和的な尺度、プロポーション、フォルム
23.環境問題と製造エネルギー 24.限りある資源、貴重な資源の乱開発に歯止めを
25.社会に負荷を与えない

バウビオロギーの25の指針(NPO法人日本バウビオロギー協会/訳)は、この指針すべてに合致しなければならないというものではなく、バランスよく意識していくことが大切

「なんとなく気持ちいい、不思議と使いやすい」住まい

(株)ケイ・ワタベ一級建築士事務所代表 渡邉公生さん

渡邉公生さん。(株)ケイ・ワタベ一級建築士事務所代表、NPO法人日本バウビオロギー協会理事長。京都精華大学デザイン学科建築学部建築生態学講師。日本初のバウビオロギスト。1998年にスイスに渡り、バウビオロギーの第一人者、ボスコ・ビューラー氏に師事。以降「日本のバウビオギーの確立」に取り組む

バランスをとりながら設計することが大事

京都で一級建築士事務所を営む渡邉公生さんは、日本のバウビオロギー建築の第一人者です。バウビオロギーの25の指針を建築に活かすためのポイントを聞きました。

「バウビオロギーの建物は基本的には天然由来の材料で建てるのが望ましいですが、この材料は必ず使わなければいけないとか、逆にこれは使ってはいけないとか、絶対的な条件はありません。さまざまな要素のバランスが重要です。土地や予算などの諸条件に照らし合わせて、できる限り平均点の高い建物を建築することが大事なのです」

限られた予算の中で何かひとつの要素だけを100%追求すると、必ずどこかに副作用が出てきます。この副作用を出さないことが重要だとか。25の指針のそれぞれに点数を付け、バランスを取りながら副作用という失点を抑え、その平均点をできるだけ高くすることを目標にしているそうです。

バウビオロギー住宅の事例

土地の条件を詳細に把握するなど細かく調べてから設計に入るため、次ページで詳しく紹介するこのNさん宅の場合、出会って4年、建て替えの依頼を正式に受けてから設計終了までで、2年余りかけた

重要な要素は室内の空気と色彩

25の指針の中で渡邉さんが最も重視しているのは「室内の空気の質」だそうです。成人が1日に呼吸する空気の量は食物や水よりも多く、健康への影響度が最も高いからです。渡邉さんはF☆☆☆☆の建材にも注意が必要と指摘します。

≪合板の日本農林規格F☆☆☆☆とは?≫

合板の日本農林規格のうち、ホルムアルデヒド放散量の規定。F☆からF☆☆☆☆までのランクがあり、 F☆☆☆☆が最も放散量が少ない

「F☆☆☆☆といっても、ホルムアルデヒドを規制しているだけ。しかも極少量は放散しているのです。さらに建材や家具に使用されている化学物質は他にも10種類以上ありますから、アレルギーの人にとっては決して安心だとはいえません。こうした物資を吸収する天然素材で、空気を健康な状態に保つことが大事です」

また、室内の色彩や質感も住み心地を大きく左右する要素。生命感を感じられない素材は長くその場にいると辛くなるので、できるだけ使用しないそうです。

割高になる建築費も長期的に見れば経済的

意識下の快適さを求める

バウビオロギーの目差す快適さは、「意識下の快適さ」です。それは、「なんとなく気持いい、不思議と使いやすい」という自然な感覚です。そのために、たとえばキッチンの配置を決める際には、奥様が左利きなのか右利きなのかなどの癖も考慮に入れるそうです。「家は3軒建てないと満足できるものはできない」という格言がありますが、ここまでオーダーメードで設計してもらえば、一軒目で十分な満足感が得られそうです。

エコなポイント バウビオロギー住宅に大切なこと
  • 室内の空気
  • 室内の色彩や質感
  • 意識下の快適さ
  • 様々な要素のバランス
得られるメリットは大きい

バウビオロギー住宅は、工業製品と比べると高価な天然素材を多く用い、基本的に現場施工の割合が高くなるため、建設コストは工場製品化した住宅と比べてどうしても割高になってしまいます。しかし満足度が高く、長く住み続けたくなる住宅であるという視点から見直すと、長期的にはむしろ経済的ともいえるのです。

≪バウビオロギー住宅のメリット≫
  • 建替え費用が1〜2回節約できるため、施主本人のみならず子孫に対しても非常に大きな経済的メリットを残すことができる
  • 「住む人が健康に暮らせる」ので居住者の医療費の節約になり、精神的にも安定。さらにそうしたマイナス要因が排除される結果として、暮らしの質が高くなる

たとえば、一般住宅は30年に1度建て替えが必要と仮定します。バウビオロギー住宅は10年ごとの修繕のみと仮定して、住宅費の比較をシュミレーションしました(参照:60年間の住宅費概算比較)。金額は概算ですが、快適で住み続けたくなる住宅を建てれば住宅の長寿命化に繋がり、長期的にはコスト節約になるという考え方を示しています。

このように、住む人のことを考えた健康住宅の人気が高まっていくことで、自然派エコ住宅が広がっていくのではないでしょうか。

■60年間の住宅費概算比較
築年数 バウビオロギー住宅 一般住宅
新築時 延床面積132平方メートル
建築費3,200万円
(坪単価80万円)
延床面積132平方メートル
建築費2,000万円
(坪単価50万円)
10年目 修繕費30万円 修繕費30万円
20年目 修繕費30万円 修繕費30万円
30年目 修繕費30万円 リフォーム費1,000万円
40年目 修繕費30万円 修繕費30万円
50年目 修繕費30万円 修繕費30万円
60年目 修繕費30万円 取り壊し費100万円
建築費2,000万円
合計 3,380万円 5,220万円

一般住宅は30年に1度建て替え。バウビオロギー住宅は10年ごとの修繕のみと仮定しての住宅費の比較。金額は概算ではあるが、快適で住み続けたくなる住宅を建てれば住宅の長寿命化に繋がり、長期的にはコスト節約になるという考え方を示したシミュレーション

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