全国529ケ所の踏切を「改良すべき踏切」に指定

道路と線路が交差する「踏切」は、鉄道が通過するだけでなく、自動車や自転車、歩行者が通行するため、安全対策が特に必要な場所の一つだ。
昭和36年には全国に約7万ケ所あった踏切だが、立体交差化やアンダーパス化などが進められ、平成26年の時点では約3万4,000ケ所とこの50年で半減しており、遮断器のない第3、4種踏切については約1割にまで減少している。
この背景にあるのが、踏切に起因する「事故」や「渋滞」の発生である。中でも、自動車と歩行者の交通量が多く、渋滞や歩行者の滞留が多く発生する踏切を「ボトルネック踏切」と呼び、そのうち、朝夕のピーク時に1時間あたり40分以上遮断機が下りている「開かずの踏切」の解消は、大きな課題の一つとなっている。
そんな中、国土交通省は、2017年1月に全国で新たに529ケ所を開かずの踏切として指定し、鉄道会社や自治体に向けて改善を義務付けることを発表した。

「踏切道の現状」(参照:国土交通省「踏切対策の推進について」)「踏切道の現状」(参照:国土交通省「踏切対策の推進について」)

改正法によって指定された「改良すべき踏切」

「開かずの踏切」への対策が講じられる発端となったのが、2005年に起きた東京・竹ノ塚駅付近の踏切事故だ。1時間のうち最大で58分間も遮断される踏切だったという。
国土交通省はこの事故の発生以降、全国の道路の管理者や各鉄道事業者の協力のもと、2007年当時3万6,000ケ所あった全国の踏切の実態を総点検し、安全性に問題がある踏切を「緊急対策が必要な踏切」として1,960ケ所を挙げていた。さらに、踏切の現状を"見える化"するために、所在地や踏切の構造や課題などのデータが一元化する「踏切安全カルテ」を公表するなど、様々な対策が行われてきた。
その後、2016年4月に改正踏切道改良促進法が施行されたことで、それまで踏切の改良に必要だった「改良方法の指定」について、鉄道事業者と道路管理者の合意がなくとも、国土交通大臣が「改良すべき踏切道」に指定することで推進できることになった。

その「改良すべき踏切道」の改正後第1弾として、17都道府県58ケ所の踏切が指定され、第2弾となる2017年1月は、"緊急に対策の検討が必要"な踏切を中心とし、全国42都道府県529ケ所の踏切が指定された。
第1弾と第2弾を合わせた都道府県別の指定数では、東京都が85ケ所と最も多く、次いで愛知県の69ケ所、神奈川県55ケ所、兵庫県52ケ所、埼玉県45ケ所が続いており、開かずの踏切が都市部に集中していることがはっきりとわかる。
なお今回の追加では、東京都山手線にある唯一の踏切である東京・北区の「第2中里踏切」も、開かずの踏切に指定されている。

踏切道改良促進法の施行後に実施された「改良すべき踏切道」の指定ケ所<BR />(参照:国土交通省の「踏切道改良促進法に基づく法指定箇所一覧」を元に作成)踏切道改良促進法の施行後に実施された「改良すべき踏切道」の指定ケ所
(参照:国土交通省の「踏切道改良促進法に基づく法指定箇所一覧」を元に作成)

開かずの踏切が引き起こす問題と背景

「開かずの踏切」によって、生じる社会的損失は極めて大きい。
まずは、踏切道改良促進法が起案される要因ともなった踏切事故の発生。多数の人が乗車する鉄道の事故による影響は非常に大きいといえる。踏切事故の件数は、年々減少傾向にあるものの依然、1日1件のペースで発生しており、死亡事故については4日に1件のペースで発生している。このうちの約4割が65歳以上の高齢者である。さらに、開かずの踏切では、通常の踏切よりも事故発生の割合が4倍に跳ね上がっている。
そして交通渋滞などによって生じる損失時間。全国の踏切全体の1日当たり損失時間は約140万人・時間(約40億円相当)であり、そのうちの3%に過ぎないボトルネック踏切は損失時間では4割弱を占めている。またボトルネック踏切における通過者1人当たりの年間の損失時間は約1,100分(約5万円相当)にもなるという。また、踏切が開かないことにより、まちが壁を隔てたように分断され、物流や消費が滞ってしまったり、緊急車両の通行の妨げになったりすることも考えられるだろう。

こうした「開かずの踏切」が生じる理由の一つには、都市圏の鉄道の過密ダイヤが挙げられる。複数路線の乗り入れが進み、車両の間隔が短くなることで踏切に進入する頻度は高くなる。また、車両間隔の調整のためにスピードを落とすことで踏切を通過するのに時間を要することになる。

踏切事故の件数と死傷者数の推移<BR />(参照:内閣府「平成26年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」を元に作成)踏切事故の件数と死傷者数の推移
(参照:内閣府「平成26年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」を元に作成)

「開かずの踏切」解消に向けた取り組み

改正法で国交省は、更に2020年度までに1,000ケ所以上の「改善すべき踏切」を指定して改善を義務付ける方針だ。これらを解消するには、線路の高架化や道路のアンダーパス化など大規模な改修が必要だ。
例えば、大阪市淀川区の「南宮原踏切」のケース。朝、夕のピーク時には、1時間のうち最大で58分間も遮断器が下りる大阪市内でも最も遮断時間が長い踏切の一つであったが、エレベーターやスロープを備えた跨線橋の設置に加え、自動車用道路を線路下の地下道にすることで、2018年末までに廃止が決定されている。また、前述した東京・竹ノ塚駅においても、2021年を目処に踏切が撤去され、高架化される予定だという。

国交省の指定によって浮き彫りになった「開かずの踏切」の問題。今後、解消に向けて自治体や鉄道事業者には改善が義務付けられるものの、大規模な改修工事に時間とコストがかかることは必至である。
同時に、踏切事故を未然に防ぐ対策として、踏切内の自動車と歩行者のレーンを色分けするカラー舗装や歩道の拡張、歩行者用の立体横断施設なども進んでおり、開かずの踏切の対策は着実に進んでいる。
踏切待ちはまだまだ続きそうではあるが、安全の面からもいち早く解消して欲しいと願うばかりだ。

踏切道改良事業のイメージ(参照:国土交通省)踏切道改良事業のイメージ(参照:国土交通省)
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2017年 03月12日 11時05分