計画戸数54,000戸の大規模ニュータウン

泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト事務局の三井孝則さん泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト事務局の三井孝則さん

高度経済成長期の住宅需要にこたえるべく開発された、泉北ニュータウンの計画戸数は約 54,000戸で、62,148戸の多摩ニュータウン、56,320戸の港北ニュータウンに次ぐ規模。
緑豊かな住環境を有する大規模ニュータウンとして、昭和42年から泉ヶ丘地区、栂地区、光明池地区と順次開発が進められた。日常生活に必要な商業・サービス施設などが徒歩圏内に配置されているだけでなく、住宅地と商業地は混在していない。また、鉄道、道路、公園等も整備されており、良好な居住環境を保ってきた。

しかし、人口の減少、少子・高齢化にともない、空き家問題をはじめ、住民の高齢化、住宅や施設の老朽化などの問題が目立ち始める。短期間に大人数が入居したニュータウンであるがゆえに、この問題が顕著に表れている。堺市は泉北ニュータウンを「持続発展可能なまち」とするための再生指針を発表し、ニュータウンに関わる市民、自治会、NPO、事業者、大学(教育機関)、行政等がパートナーシップをもって取り組むことを目指している。

その一端として「泉北レモンの街ストーリー」など、さまざまな取り組みを続けている「泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト」。今回は、事務局の三井孝則さんと、「泉北レモンの街ストーリー」リーダーの苅谷由佳さんからお話を聞かせてもらった。

恵まれた住環境を愛するプロジェクトメンバーたち

「泉北レモンの街ストーリー」リーダーの苅谷由佳さん「泉北レモンの街ストーリー」リーダーの苅谷由佳さん

まずはお二人に、泉北ニュータウンの魅力を聞いてみた。

「まちなみがきれいで、緑も公園も多い。駅から小学校、中学校、近隣センターと、車に会わずに動ける緑道があり、子育てするにも安心な街だと思います」と、三井さんが言うと、
「子どものころは堺の市街地に住んでいたのですが、小学校の運動場が小さく、プールもありませんでした。でも泉北ニュータウンで子育てをしていましたが、森の中にあるような立地に学校があり、校舎の建て方も土地を贅沢に使っています。緑道でランニングを始めたんですが、季節により、時間により、景色が違って、本当に素晴らしい環境だと思います」と、苅谷さんも大絶賛。

取材スタートから、二人の泉北愛に圧倒されてしまった。また、開発当時は小さかった樹木が大きくなって木陰をつくるなど、まちびらきか50年経った今だからこその魅力もあるという。高齢者の一人暮らしも増えてきているというが、住人間のネットワークがあるため、孤独死といった事件は耳にしたことがないそうだ。

「地域内のつながりは強いと感じます。自治会も古くからあるし、団地ごとのネットワークもある。高齢者同士のネットワークもあるようです」と、三井さん。
しかし、ニュータウンの今後を考えれば、年齢層のバランス改善は不可欠。長く住んでいる人たちには当たり前すぎて気づかない魅力を発掘し、発信すれば、若い人が戻ってきたり、集まってきたりするのではないかと考えている。

「人口減少といっても、13万人もの住人がいます。土地もあり、近隣では農業も営まれていますから、泉北ニュータウンの中でほとんどのものがそろうんです。だからこそ、どう活用できるかなどの工夫が至るところにあるはずです」と、苅谷さんは言葉に力をこめた。

始まりは行政主導のプロジェクト

堺市主導で、泉北ニュータウン魅力発信プロジェクトが始まったのは、2014年8月のこと。それが現在の「泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト」につながっている。しかし、活動に助成金などは受けていない。助成金がなければ続かない活動では意味がないと、自ら活動資金を生み出している。

「泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト」活動の初年度は、まち全体をひとつの家に見立てて食堂・庭・居間・廊下・玄関、チームに分かれ、さまざまな企画を創出・実施した。たとえば食堂チームは、「だんぢりキッチン」を提案&実施。横と縦の関係がしっかり結びついている、だんじり組織を見習いたいとの思いがこもったネーミングで、リヤカーをだんじりに見立てて食材を運び、公園でカレーやスープを作り、みんなで食べる企画だ。

廊下チームや庭チームのメンバーは緑道ピクニックを発案。緑道ランを開催したり、公園でワークショップを開いたりしている。近年はヨガなどとのコラボ企画も行ったとか。同時にLOTUS caféを開催し、泉北のカフェや洋菓子店に出店してもらっているのだという。美しい花や木漏れ日、風など、公園の魅力を知るきっかけにするのがコンセプトだそうだ。

三井さんと苅谷さんは庭チームだった。苅谷さんの庭で収穫したはっさくやレモンを配ったところ、ジャムをつくってみてはどうかというアイデアが飛び出し、「泉北レモンの街ストーリー」の発端となったのだという。「泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト」の初めての企画では食堂チームが用意したパンに、参加者みんなでつくったマーマレードをつけて食べたのだが、レモンの皮むきなどの下準備がとても大変だったとか。

だんじり組織のような強固なつながりを目指しただんぢりキッチンだんじり組織のような強固なつながりを目指しただんぢりキッチン

「泉北レモンの街ストーリー」プロジェクトとは

泉北レモンを使った商品も開発中泉北レモンを使った商品も開発中

「泉北レモンの街ストーリー」の目標は、泉北をレモンのまちにすることと、レモンを泉北の特産品にすることの二つ。
「このあたりはレモンの名産地である瀬戸内と気候が似ており、日差しが豊かです。何より、我が家の庭のレモンは特段手入れもしていないのに毎年1本につき150個前後の実をつけており、泉北の気候がレモン栽培に向いていることが実証されていると思いました」と、苅谷さん。

レモンはたくさん実をつけるうえ、完熟しても枝から落ちないため、日持ちがする。うまく育てれば、鉢植えでも15~20個ぐらいの実がつき、花の香りが良いのも魅力なのだとか。また、柑橘類は病気になりやすいイメージがあるが、レモンばかりを植えている農家とはちがい、庭の木々の中で調和していると、農薬を使わなくても問題ないことが多い。アゲハチョウの幼虫がつくのは仕方がないが、毎日葉の裏表をチェックしていれば、大量発生は防げるという。

活動に協賛する人は、レモンの苗木と一緒に通し番号の打たれたレモンプレートを500円で購入する。レモンプレートの協賛金で活動の経費をまかない、今後はその協賛金で、公共の場にレモンの苗木を植樹したり、鉢植えを置く計画をたてている。プロジェクトメンバーは泉北で土地を借り、2015年からリスボン、マイヤー、ジャンボ、アレンユーレカ、クックユーレカなどのレモンを合計約70本植樹し、農薬を使わず育てている。本格的な収穫は2021年ごろからになるが、2017年3月に開催された泉北レモンフェスタでは、「泉北レモンを定期的に購入したい」という申し込みが多く、将来的な収入を見込めるという。
現在フロマージュやシロップやマーマレードなどを商品化したが、レモンは多くの人に人気がある果物なので、泉北の業者とコラボレーションして新しい商品開発にもこぎ着けたいそうだ。

泉北レモン®の定義は「堺市南区泉北ニュータウンとその周辺地域で収穫される農薬不使用の皮まで使えるレモン」だが、協賛者に農薬不使用を強制するわけではなく、自分の庭でとれたレモンは個々で自由に育て、収穫した果実も自由に使うのが原則。
すでにレモンを植えている家庭でも、プレートを購入すればプロジェクトの協賛者になれる。現在既存レモンにプレートをかけている家庭が約40軒、新しく苗を購入した協賛者が約300軒もあるという。

「泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト」全体としては、まちで活躍するプレイヤーを増やしていきたいと考えている。
先日も15名のメンバーが新規に加わり、3月開催の泉北レモンフェスタでも、レモンの枝葉を使った草木染めなどのコラボ企画も増えている。こうして次々に企画が生まれ、「今日はここの公園で何かやってる」「来週はここでやってる」という状況になれば、「泉北へいけば何かができる」と、チャレンジしたい人が集まってきてくれるのではと期待している。

泉北レモンの収穫がはじまれば、人気商品となりそうだ。興味のある人は、今から泉北ニュータウンの企画をチェックしておこう。

2017年 06月13日 11時03分